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航空傭兵の異世界無双物語  作者: 弐式水戦
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第29話~神影達と魔王の夜~

 王都を脱出し、ルビーンへと向かっている神影とエーリヒは、魔物との実戦訓練をしている内に夜になってしまったため、近くにあった村の古い宿に入って休んでいた。

 既に夕飯や風呂は終えており、神影はベッドに寝転がり、エーリヒはもう1つのベッドに腰掛けていた。


「それにしても、まさか魔物での実戦訓練に熱中して時間潰しちまうとは思わなかったな」

「まあまあ、お陰で結構強くなったんだから良いじゃないか」


 仰向けに寝転がって呟いた神影に、エーリヒが苦笑を浮かべながらそう言った。


 エーリヒが言ったように、神影はゴブリンと戦って彼の課題を指摘されてからは、ルビーンへの移動よりも魔物の討伐をメインとしていたため、かなりレベルが上がっている。

 城を出るまでは5だけだったレベルは一気に15に上がっており、各ステータス値も以前の3倍近い数値を叩き出している。

 また、魔力が極端に低い上に特に優れている属性も無い事を補うため、士官学校卒業後にエーリヒが身に付けた魔力の使い方を教わった事により、魔法の詠唱や魔法陣の展開を必要とせず、魔力を自由自在に操る特殊能力、"魔力操作"や"魔力応用"を身に付けた。

 残念ながら第1世代のジェット戦闘機は未だ使えないが、それでも大きく前進しているのは確かだった。


「それにしてもミカゲって、城で役立たず扱いされてた割には直ぐ特殊能力を手に入れるよね。おまけに耐性がつくのも早かったし」


 仰向けに寝転んでいる神影に視線を落とし、エーリヒはそう言った。


「…………ああ、言われてみりゃそうだな」


 少しの間を空けて、神影は相槌を打った。


 彼の特殊能力の1つに"麻痺耐性"と言うものがあるのだが、このように"耐性"と付くものは、効果を1回や2回受けた程度で身に付く程安いものではない。

 未だ城に居た頃の座学の授業で、耐性がつく早さには個人差があるものの、麻痺や毒などへの耐性は、効果を何回も受けて漸く身に付くものだと習っていた。

 それが先日の模擬戦で、体に巻き付いた鎖から電撃を受けた、ただそれだけですんなりと"麻痺耐性"が身に付いていたのだ。

 "物理耐性"なら、日頃のトレーニングでエーリヒと組手をする際にダメージを受けるために自然と身に付いてもおかしくないのだが、"麻痺耐性"の場合は違う。

 魔法に関する訓練はある程度していても、耐性をつける訓練はあまりしていなかったため、こうもあっさり耐性がつく事について不思議に思わない訳が無いのだ。


「ねえ、ミカゲ。ちょっと考えたんだけど………」


 そう言って移動してきたエーリヒは、神影のベッドに腰掛けた。


「こうやってホイホイと特殊能力を手に入れられるのは、君の天職………確か"航空傭兵"って言ってたよね?それが関係してるんじゃないかな?」

「…………俺の天職が?」


 エーリヒの言葉を受けて起き上がった神影は、皿のように丸くした目を向けた。


 それに頷いたエーリヒが続けるには、そもそも"航空傭兵"なんて天職はこの世界に存在しないため、分かっている事は、今のところは戦闘機を使える事だけ。

 ならば、戦闘機を使える事以外にも何かしらの秘密があるのではないかと言うのが、エーリヒの考えだった。


「………と、まあ、こんな感じで考えてるんだけど、どうかな?」

「……………確かに、そうだな」


 神影はそう返した。


 実のところ、神影自身もこの天職を把握しきれていない。

 異世界ではオーバーテクノロジーの塊とも言える戦闘機を使い、様々な空中戦闘機動(マニューバ)を使える事から、少なくとも強力なものだとは容易に想像出来る。

 だが、この天職について神影が知っているのは、戦闘機を纏って空を飛び、実際に兵装を使用出来る事、様々な空中戦闘機動を自在に使える事、そして"僚機勧誘"により、相手に自分の天職をコピー出来ると言う事だけ。

 それ以外にどのような力があるのかは、全く知らないのだ。


「まあ、それについては追々調べていけば良いさ。取り敢えず寝よう」

「ああ」


 そうして神影が目を閉じるのを見ると、エーリヒは部屋の明かりを消してベッドに入った。

 

 その数分後、部屋の中に2人の少年の寝息が小さく響いた。



──────────────



 場所は変わって、此処は魔族大陸。

 人間大陸や、その南にある亜人大陸とは広い海を挟んだ先にあるこの大陸には、名前の通り、魔人族が住んでおり、大陸の中央には城が聳え立っている。


 その城の一室では、1人の黒髪に赤い瞳を持つ男が寝床につこうとしていた。

 180㎝を超える高身長に加えて引き締まった肉体を持ち、何処か威厳のあるような雰囲気とは裏腹に、アニメでありそうなナイトキャップを被ると言うギャップを見せているこの男こそが、グラディス・ヘルシングであり、魔人族の長──つまり、魔王だ。


「それにしても、まさか勇者パーティーを離脱する奴が出るとは思わなかったな…………」


 ベッドに入りながら呟く彼が思い出すのは、数分前に入ったレイヴィアからの通信だった。


 勇者パーティーの中では最弱である上に、そもそも"勇者"の称号すら持たなかった神影が城を出た事を聞いて最初は驚いたグラディスだったが、それまでに聞いていた神影の境遇や、神影が持っている能力を思い出し、出ていっても不思議ではないと考えを纏めたのだ。


「そういや俺に報告してる間、レイヴィアが何と無く寂しそうにしてたが、まさか彼奴……………いや、それは無いか」


 そう呟くグラディスだが、次の瞬間にはニヤリと笑みを浮かべた。


「まあ、そうなれば彼奴を弄るネタが…………げふんげふん、異世界人達とのコネが作れるから、俺としては歓迎だがな」


 威厳を感じさせるような見た目に反して中身は悪戯好きなのか、神影との関係をネタにしてレイヴィアを弄ってやろうと考えた瞬間に悪寒を感じたグラディスは、慌てて言い直し、そのまま眠りにつくのだった。

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