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航空傭兵の異世界無双物語  作者: 弐式水戦
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第15話~秘密の共有と、レイヴィアの動き~

 エーリヒ付き添いの元、王都の外で初の夜間飛行を成功させた神影は、エーリヒに戦闘機の歴史などを説明し、時には立ち止まって、地面に絵を描いたりしながら、王都へ戻っていた。


 エーリヒは、神影が戦闘機に関する話をしている間、ずっと目を輝かせていた。


 破壊兵器である戦闘機だが、その外見などから人気が高く、子供なら『カッコいい』や『強そう』などの感想を抱くだろう。

 エーリヒも、正にそれだった。


 神影は、自分と同じように戦闘機に興味を持つ者が居るのは素直に嬉しいが、それが破壊兵器である事だけは伝えなければならない。

 そのため、話の纏めとして、エーリヒに言った。


「エーリヒ、確かに戦闘機はカッコいいし、俺も大好きだ。でもな、戦闘機ってのは、その気になれば町1つを平気で焼き払ってしまうトンでもない破壊兵器だって事は覚えといてくれ。そして俺が、それを使えると言う事もな」

「ミカゲ…………?」


 真面目な面持ちで見つめる神影。

 一瞬、神影が何を言っているのか分からなくなったエーリヒだが、暫くすると、その表情から笑顔が消えた。


 単独でも町1つを平気で焼き払える程の力…………それを手に入れ、種族間戦争に投入しようとする考えは、この国ならば直ぐ考え付くだろう。

 学生時代の授業で、魔人族や、魔人族に寝返ったとされる一部の国を、この国が何れだけ嫌悪しているのかを叩き込まれたエーリヒは、国が神影の本当の力を知った時、どう動くのかを瞬時に悟った。


「分かってくれたか?」


 その問いに、エーリヒは無言で頷いた。


「つまり、あの時に君が言った事って………」

「ああ、そう言う意味だよ」


 そう言われたエーリヒは、暫く考えるような仕草を見せた後に、再び頷いた。


「分かった、君の能力は誰にも言わない。約束するよ」


 嘘偽りを感じさせない真っ直ぐな視線を向けて言うエーリヒに、神影は満足そうに頷いた。


 そうしている内に、2人は王都に到着した。

 城に入ると、神影はエーリヒから次の訓練の予定を伝えられた後に、部屋へと戻っていった。



──────────────



《………そうか。異世界人の中に、そのような魔道具を持った者が…………》

「はい。それに2人の話によると、その魔道具は戦闘機と言うらしく、飛行能力に加えて攻撃能力もあるとの事です」


 神影が部屋へ向かっている頃、レイヴィアは自室に居た。

 廊下に誰も居ない事を確認し、念のために人払いと防音の結界を施した上で、通信能力を持った緑色の石、伝魔石が埋め込まれた腕輪を発動させて、ある人物と連絡を取っていたのだ。


「…………本日の報告は、以上です」

《うん、ご苦労だったな。レイヴィア》


 腕輪に埋め込まれている伝魔石が点滅し、何処と無く威厳を感じさせるような、男の低い声が聞こえていた。


《…………して、ミカゲ・コダイとやらが持つその魔道具の事は、ヴィステリア王国の者は知っているのか?特に宰相は》

「いいえ。城の者達のミカゲ・コダイへの扱いからすると、恐らく、付き添っていたもう1人以外は知らないかと」

《そうか…………》


 そう言うと、彼女と連絡を取っている男は溜め息をついた。


《それにしても、自分達で戦争を吹っ掛けておきながら、都合が悪くなると異界の…………それも少年少女達を巻き込むとは、連中は何を考えているのか理解に苦しむなぁ…………》


 腕輪に埋め込まれた伝魔石から、呆れたような声が聞こえてくる。

 この国に対して呆れているのは、レイヴィアも同じだった。


 メイドとしての仕事上、城の中を歩き回っているレイヴィアは、時折、勇者達が座学の授業を受けているのを耳にするのだが、講師は種族間戦争に関する話になると、それまでゆったりしたペースで授業を進めていたとしても、途端に言葉の勢いが強くなり、魔人族や魔人族側に寝返った国々の事を、兎に角悪く言うのだ。

 その講習の内容を詳しく聞いてみれば、やれ"裏切り者"、やれ"保ってきた平和を崩した恥知らず"など、魔人族に対する罵詈雑言のオンパレードだった。

 

 自分達で戦争を起こしておきながら、よくそのような事をぬけぬけと言えるものだと言うのが魔人族側の意見なのだが、これだけの罵詈雑言を並べられる彼等に、怒りを通り越して逆に尊敬してしまったのは、彼女の記憶に新しい。


《それに、連中の言い分を易々と信じる勇者も勇者だ。いきなり異世界に召喚されて混乱し、全うな判断がしにくかったなら話は別だが………》

「ミカゲ・コダイ曰く、ユウト・ヒジリカワなる少年が、1人で話を進めていたとの事です。残りの面々は、そのまま無条件に彼の言う事を信じていたとか」


 それを聞いた男が、また深い溜め息をつくのが伝魔石から聞こえてきた。


《その者の人物像が、何と無く掴めてきたぞ…………恐らくソイツは、己の正義感だけで物事を判断し、自分が思ったように突っ走ってしまうタイプだな。しかも、変にカリスマ性があると言うから質が悪い。これでは勇者達の中に、我々魔人族側の意見を聞いてくれる者は、居なさそうだな………》


 男の見解は、正にその通りだった。

 強い正義感の持ち主である勇人は、何かトラブルがある度に間に入って解決に導き、クラスメイトからの信用は高い。

 だが、自分の中での正義感を疑わないため、神影と沙那の関係についても、『沙那は優しいから、古代の話に付き合ってあげているだけだ』と言う考えで、真偽を確かめる事無く自己完結しているのだ。

 加えて、基本的に彼は物事を善人論で見るため、先ずは相手側に原因があると疑うのだ。

 そのため、神影が功達3人組や他の男子生徒から嫌がらせを受けた際にも、彼等を責めるのではなく神影を責めるのだ。

 そのため、彼は神影からは苦手な人物として認識されており、幸雄や太助からは、神影を責めたりする度に殺気混じりの視線を向けてくる程に嫌われている。


 そんな彼だが、前述の通りクラスメイトから厚い信頼を得ている。

 そのため、カミングスの言い分を真に受けた事から、魔王を倒して元の世界に帰る事を決めた際、彼の意見に反対する者は居なかったのだ。


「ですがミカゲ・コダイは、少なくとも完全に、この国を信じている訳ではなさそうですし…………」


 そう言いかけたレイヴィアは、名案を思い付いたとばかりに目を見開いた。


「明日にでも、ミカゲ・コダイを我々魔人族側に引き込むのは如何でしょう?彼とはそれなりの関係を築けていますので、許可さえいただければ、私が………」

《いや、今は駄目だ。流石に早すぎる》


 レイヴィアの言葉を遮って返ってきたのは、否定の言葉だった。


《確かに良い案だとは思うが、いきなり我々の方に勧誘しても怪しまれるだけだ。先ずは然り気無く、彼に魔人族についてどう思うかを聞き、魔人族に関する誤解を解いていく事から始めろ。勿論、怪しまれないように言葉は選べよ?》

「承知しました」


 レイヴィアが答えると、伝魔石の光が消え、通信が切れた。


 小さく溜め息をついてベッドに腰掛けようとした時、彼女は、誰かが近づいてくる気配を感じ取る。

 チラリと時計に目をやると、針は深夜0時を指していた。


「(こんな時間に廊下を歩く人物と言ったら…………彼しか居ないわね)」


 自分の制止を振り切って部屋を飛び出していった主人の姿を思い浮かべたレイヴィアは、気配を頼りに、廊下を歩く人物が自室のドアの前を通り掛かるタイミングを待ち、ドアを開けて廊下に躍り出た。


「うおっ…………!?」


 レイヴィアが気配を感じた人物は、彼女の予想通り、神影だった。

 突然現れた彼女に驚き、一瞬声を上げた神影だが、直ぐに両手で口を塞いだ。

 それから暫くしても、反応は無い。

 どうやら、誰も起こさずに済んだようだ。


「お帰りなさいませ、ミカゲ様」


 そんな神影の事など気にも留めず、レイヴィアはそう言った。


「ああ、ただいま戻りました…………って、ちょっとレイヴィアさん、いきなり出てきたらビックリするじゃないですか」

「あら、それは失礼。門限を守らない悪いお方の気配を感じましたので、つい」


 からかうように言うレイヴィアに、神影はばつが悪そうに頬を掻いた。

 メイドが主人をからかうと言うのは、アニメでない限りほぼ有り得ない事なのだが、今日までの約2週間の生活である程度打ち解けたのか、2人は世間話をしたり、互いに敬語とは言え、軽口を叩くような間柄になっていた。

 とは言え、主にからかう側に立つのはレイヴィアなのだが。


「………まあ、良いでしょう。取り敢えず、もう夜も遅いですので、早く戻ってお休みください。明日も訓練ですし、私が起こす時間も変わらないのですから」

「了解ッス」


 神影がそう返すと、レイヴィアは再びランタンを持ち出した。


「では、参りましょうか」


 そうして、2人は神影の部屋へ向けて歩き出す。

 そして部屋に着くと、互いに挨拶を交わして別れる。

 その後、神影は軽くシャワーを浴び、レイヴィアが用意していた寝間着を着て直ぐベッドに飛び込み、眠りにつく。

 部屋に戻ったレイヴィアも、そのままベッドに潜って眠りにつくのであった。

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