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航空傭兵の異世界無双物語  作者: 弐式水戦
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第14話~傲慢な騎士と、初めての夜間飛行~

「さて、今夜楽しみだなぁ。どの機体使おうかなぁ~」


 今日の訓練を終え、エーリヒと夜に待ち合わせる約束をして別れた神影は、食堂へと足を進めながら、数時間後に行う夜間飛行に胸を踊らせていた。


 自分が航空兵器を纏う能力を持っていると言う事を知ってから2週間、周囲の目やフランクからの反対もあって中々初飛行まで辿り着けず、虎視眈々と機会を待ち続けた結果、今夜初めての飛行訓練を行えるようになったのだ。

 長い間我慢してきたのもあって、神影は擦れ違う貴族や騎士達がヒソヒソと彼への悪口を囁き合っているのも構わず歩みを進める。

 今の彼の頭の中は、今夜の夜間飛行のお供にして、異世界生活で初めて展開する機体を何にするかで埋め尽くされていたのだ。

 

「(俺としては零戦やP-51を出したいが、いきなり高性能の機体を使うのも危ないからなぁ…………やっぱり練習も兼ねて、初期の戦闘機を使おうかな)」


 楽しさのあまり、今にもスキップしそうな程の機嫌の良さで歩いていた神影は、前方の曲がり角から姿を現した長い銀髪の騎士に気づいた。

 高身長で顔も整っており、令嬢達が小さく黄色い声を上げる。

 相手も神影に気づいたが、彼を視界に捉えた瞬間、嫌そうな表情を浮かべた。

 その時点で、関われば厄介な事になると本能的に悟った神影は、さっさと通り過ぎようとした。


「おい」


 だが、それは相手の方から呼び止めてきた事によって止められた。


「…………何でしょうか?」


 一応、声を掛けられたなら答える事にしている神影は、歩みを止めて振り返った。


 その銀髪の騎士は神影の傍まで歩み寄ると、口を開いた。


「ミカゲ・コダイと言う異世界人は貴様だな?」

「ええ、そうですが………俺に何か?」


 神影がそう訊ねると、銀髪の騎士は神影の足元から頭までに視線を巡らせる。

 そして、拍子抜けだとばかりに鼻で笑った。


「サナやオウカ達が矢鱈と気に掛けていたからどんな奴かと思えば……………あの2人は、こんな成り損ないを気に掛けていたのか」

「は、はあ…………?」


 何やら勝手に話を始めた銀髪の騎士に、神影は戸惑っていた。


「おっと、自己紹介が遅れたな。俺はブルーム・ド・デシール。デシール公爵家の者にして、今年、この王立騎士・魔術師士官学校の騎士科を首席で卒業した男だ」

「へぇ………」


 神影は生返事を返した。

 彼は、他人の肩書きに関する興味が全く無い。

 そのため、公爵家の者だとか、士官学校の騎士科を首席で卒業したとか言われようと、神影からすれば、『だからどうした?』としか返事のしようが無いのだ。


 神影は溜め息をつくと、さっさと話を終わらせたいと言う気持ちを隠す事無く口を開いた。


「…………で、その公爵だの首席卒業だの言ってる騎士さんは、俺に何の用ですか?飯の時間迫ってるので早く行きたいんですけど」


 そう言うと、神影は壁に掛けられている時計を指差した。

 針は6時50分を指しており、神影は早く食堂に行きたいと言わんばかりに、爪先を地面にコツコツと打ち付けている。


「………貴様、先程の俺の自己紹介を聞いた上でその態度なのか?」


 ブルームの目が鋭くなった。

 どうやら、自分の功績に全く興味を示さない神影の反応を見て、コケにされていると思ったようだ。


「チッ…………あの終わりの町出身の落ちこぼれと言い、この成り損ないと言い、今年は落ちこぼれとの遭遇率が高過ぎる………コレは、神が狙ってやっているのか…………?」

「んなモン俺が知るかよ」


 付き合いきれないとばかりに投げやりな態度で、神影はそう言った。

 周りの貴族達は、そんな神影を指差してヒソヒソと囁き合っている。

 それは、神影が成り損ない勇者でありながら、士官学校騎士科の首席卒業生であり、公爵家の息子であるブルームに対してタメ口で話している事から、不遜な輩だと侮辱するものだったが、神影はその全てを無視していた。


「フンッ、まあ良い………だが、1つだけ言っておく事がある」


 そう言うと、ブルームは神影の耳に顔を寄せた。


「貴様はどうやら、サナやオウカ、それからカナデの3人から、かなり気に掛けられているようだが…………貴様にあの3人は似合わんな。騎士科を首席で卒業し、王妃様や他の卒業生の方々からも期待された未来ある俺こそが、あの3人に相応しいのだ。貴様や、あの終わりの町出身の魔術師のような落ちこぼれは、その辺で朽ち果てた方がお似合いだ。そして、この国のためだ」


 そう言って一旦顔を離すと、ブルームは腰に提げてある剣の柄を掴み、刀身を半寸程覗かせてから再び口を開いた。


「まあ、愚かにも生き残りたいのならば、あまり調子に乗るような真似はしない事だな。さもなくば、この剣の錆になるぞ」


 それだけ言うと、ブルームは剣を収めて去っていった。


「………面倒くせぇナルシスト野郎だな」


 苛立ち気味に片手で頭を掻きむしり、神影は再び食堂へと足を動かす。

 そして扉の前に着くと、神影は少し乱暴にドアを開け放った。

 既に勇者組は9割程来ていたらしく、席に着いて談笑していたが、入ってきた神影に、誰もが視線を向けた。 


「よぉ!成り損ない勇者がやって来たぞ!」

「訓練何してたんだ?遊んでたのかぁ?」

「彼奴の事だ、まぁ~た戦闘機がどうだこうだと喋ってたんじゃねぇのか?」


 功達3人組がそう言ったのを皮切りに、男子生徒達が嘲笑を浮かべる。


 そんな下品な笑い声を無視して、神影は何時もの席に着いた。


「やあ、古代。訓練お疲れ様」

「お疲れぃ」


 幸雄と太助の2人が、何時もの労いの言葉を掛ける。


「おう、ありがとな。2人もお疲れ様」


 苛立っている神影だが、ずっと自分の味方をしてくれていた友人達にそのままの調子で話す訳にはいかないため、笑みを浮かべて返事を返した。


「なあ、古代。お前昼飯の時来なかったが、何処行ってたんだ?」

「そうだよ、待ってたんだよ?」


 其処で、沙那が話に入ってきた。


「ああ、そりゃ悪かったな。講師の人との訓練で夢中になって、昼飯後回しにしちまってさ………」


 そう言う神影に、幸雄や太助、沙那達は目を丸くした。


「つまり貴方、昼食も食べずにずっと訓練していたの?」

「そ、そんなの駄目だよ神影君!ちゃんとご飯食べないと!」


 驚いた様子で言う奏に沙那が続くと、桜花も同意だとばかりにコクコクと頷く。


「いやいや、んな訳ねぇだろ。時間遅れたけど、ちゃんと飯は食ったから大丈夫だよ」


 神影は変な誤解を生んだりしないよう、右手をヒラヒラ振りながら否定した。


 そうしている内に、夕食が用意された。

 それから神影は、喋るのを最小限にして夕食を平らげると、食器を返してさっさと食堂を出て、部屋に引っ込んだ。



──────────────



 時刻は夜9時50分。

 勇者組は風呂を終え、訓練の疲れから、殆んどがベッドに倒れ込んで寝息を立てている頃、神影の部屋だけは、未だに明かりがついていた。


「……98……99……100!良し、準備運動終わり!」


 相変わらずジャージ姿の神影は、一切の眠気を感じさせない様子で、夜間飛行に備えて準備運動をしていたのだ。


 神影の天職は、航空機を召喚して乗るのではなく、その身に直接纏って飛ぶものだ。

 つまり、飛行中の風圧をそのまま受ける事になる。

 それが、登場したばかりのような時速100㎞程度なら話は別だが、高性能な機体を展開すれば、その速度は500㎞を超える。

 次の段階では、亜音速で飛ぶ第1世代のジェット戦闘機。そして極めつけには、最高速度がマッハ2を超える最新鋭戦闘機が待ち構えている。

 それに、そもそも戦闘機を使うとなれば、急旋回や急降下をする事は避けられない。

 そうなれば、体へかなりの負担が掛かる。

 そのため、たとえ微々たるものでも準備運動は欠かせなかったのだ。


 因みに、勇者組は基本的に、夕食を終えて風呂に入った後は直ぐに寝るようにフランクから言われており、遅くても10時には寝る事になっている。

 そのため、全く寝る気配を見せない神影に、当時レイヴィアは、早く寝るように口を酸っぱくして忠告していた。

 だが、他の勇者達より成長が遅れている事を理由に説得されたため、準備運動の後は風呂に入り直す事や、遅くても11時には寝る事を条件に許していたのだ。


「今は…………9時50分か、準備運動も終わったし、そろそろ行くか」


 神影がドアの方に向かおうとした時、ノックする音が聞こえた。


「ミカゲ様、レイヴィアです。入ってもよろしいですか?」

「良いですよ」


 そう答えると、ドアが開いてレイヴィアが入ってきた。

 彼女があるいてきたのであろう廊下は、既に明かりが消されているようで、ドアの傍にはランタンが置かれていた。


「これは…………申し訳ありません、お風呂に入るところでしたか?」


 その問いに、神影は首を横に振った。


「いや、お構い無く。今から出掛けるんで」

「…………は?」


 神影から返された予想外の返答に、レイヴィアの口から間の抜けた声が漏れ出した。


 何時も妖艶な雰囲気を身に纏い、余裕そうな態度を崩さない彼女だが、最近は神影のペースに振り回されていた。


「み、ミカゲ様…………今、何と?」

「だから、出掛けるんですよ」


 まるで散歩にでも行くような調子で、神影は答える。

 そして、呆然としているレイヴィアの隣を通過しようとする神影だが、其処で我に返ったレイヴィアが、ジャージの袖を掴んで引き止めた。


「お待ちください。幾ら勇者ではないとは言え、貴方は異世界から召喚されたお方。もし何かあれば………」

「大丈夫ですよ、ちゃんと付き添いの人は居ますので」


 そう言う神影は、まるで近所の大人を味方に引き込み、花火をしようとする子供のように見えていた。


 神影は、呆然とするレイヴィアの手を優しく払うと、部屋を出て廊下を数歩進んだところで振り返る。


「では、ちゃんと帰ってくるし、起こすのも何時も通りで良いので」


 それだけ言うと、神影は彼女から逃げるように走り出した。


「………あっ、ミカゲ様!?」


 ハッと我に返り、呼び止めようとするレイヴィアだが、既に神影は、廊下の闇の向こうへと消えていた。


「…………」


 それを見送る事になってしまったレイヴィアは、部屋の明かりを消して廊下に出ると、ランタンを持ってドアを閉め、自分の部屋に戻ろうとしたのだが、其処で、ふと歩みを止めた。


「(そう言えば、彼は何をするつもりで、こんな時間に…………?)」


 内心そう呟き、レイヴィアは窓の外に目をやった。


 月が輝き、勇者達も眠りについて居るこの時間、神影が何をするつもりなのか検討もつかない。

 彼は剣を持たずに出ていったため、剣の練習や魔物の討伐に出掛けたとは考えられない。

 それに、剣以外の訓練をするなら未だしも、もし後者なら、彼女は間違いなく神影を止めている。

 ()彼女は、彼の専属メイドとして通っているのだから。


「今、監視対象が居なくなると言うのは、やはり厄介ね………取り敢えず、探さなきゃ。あの様子からすれば、城の敷地内に居る筈」


 レイヴィアは、腕につけている金色の腕輪を近づける。

 すると、ランタンは光を放って姿を消した。


 それから彼女は神影の気配を探ると、転移魔法で神影を追った。

 其処で、見た事の無い形の空飛ぶ鎧を目の当たりにするとは夢にも思わず。











 部屋を飛び出した神影が城の裏に着いた頃には、既にエーリヒが来ており、ベンチに座っていた。


「すまん、エーリヒ。待ったか?」

「いや、僕もさっき来たところさ」


 どちらか一方が女性なら、明らかにカップルに見えるような会話を交わす2人。


 エーリヒからの返答を聞いた神影は満足そうに頷き、両手を勢い良く合わせた。


「よっしゃ、それじゃあ早速行こうぜ!俺、ずっとこの時を楽しみにしてたんだ!」

「ちょ、ちょっと待って!置いてかないでよ!」


 早く戦闘機を試したくて仕方無いのか、言い終えるや否や走り出した神影を、エーリヒが慌てて追い掛ける。


「……………」


 それを物陰から見ていたレイヴィアは自らに魔法を掛け、周りから見えなくすると同時に気配も消し、2人を追い掛けていった。


 何も知らない神影とエーリヒは、渋る衛兵を言いくるめて外出許可を得ると、そのまま王都を出ていた。


「…………良し、この辺りで良いだろ」


 そう言って神影が立ち止まった頃には、王都の町は、闇夜の中で、辛うじて小さく見える程度になっていた。


「王都から結構離れたけど…………こんなに離れる必要はあるのかい?」

「ああ、音が凄いんだよ。でも、昼間にやる訳にもいかないからな」


 そう言うと、神影はエーリヒに背を向け、そのまま話し掛けた。


「エーリヒ、これから見るものは………他言無用な」

「えっ………?ねえミカゲ、それはどういう───ッ!?」


 エーリヒの言葉は、突如として神影が光に包まれた事による驚きで中断された。

 目を固く瞑り、さらに両腕で目を覆うエーリヒ。


「ッ!?こ、これは………何て強い光なの…………!」


 彼等の後をつけてきたレイヴィアも、堪らず背を向けて目を瞑った。


「うぅ……一体、何が…………?」


 目映い光が消えると、エーリヒは目を擦り、ゆっくりと開けた。


「ねえ、ミカゲ。一体何の真似…………え?」


 月明かりに照らされる神影の姿を視界に捉えたエーリヒは、驚きのあまりに目を見開いた。


 神影の姿を下から見ていくと、先ず両足は、脛にプロペラがついたブーツ状の薄い鎧に覆われており、足の裏から車輪が1つずつ競り出ている。

 だが、それでは前後のどちらかに倒れるだけだ。

 それが理由なのか、腰から尻尾のように映えている、実機で言う機体後部に当たる部分の下からも小さな車輪が降りてきており、神影が後ろへ倒れないように支えている。

 そして、両腕には黒い機関銃が備えられており、極めつけには、神影の脇腹を挟むように一際大きな複葉の主翼が生えていた。

 左右各々で、ざっと2メートル近くあるだろう。


 それを見たエーリヒは、衝動に任せて駆け出し、神影の前に回り込んだ。


「ミカゲ!コレは何なの!?どうしちゃったのさ!?」


 目を瞑っている神影の両肩を掴んで揺さぶり、説明を求めるエーリヒ。

 目が見えるようになったレイヴィアも、体から太い尻尾や大きな翼を生やした神影を問い詰めたい気分だが、此処で飛び出す訳にはいかないため、何とか飛び出さないよう、感情を抑えていた。


「機体、フォッカーD-Ⅶ………機体損傷率、0%………エンジン、補助翼、方向舵、昇降舵…………何れも異常無し」

「えっ…………?」


 神影が小さな声で呟き、ゆっくりと目を開けた。

 金色の瞳が顔を出し、エーリヒを映し出す。


「うおっ!?」


 目を開けた瞬間、視界全体に広がるエーリヒの顔に、神影が驚く。


「な、何だエーリヒか………ビックリした………」

「それは此方の台詞だよ。その変な鎧は何なの?何が起こったの?」

「ちょ、ちょっと待て。落ち着けって」


 肩をガクガク揺らすエーリヒをどうにか宥め、神影は自分の天職や、王都を出てきた目的を含めて全て説明した。


「成る程…………つまり君の世界には、航空兵器とか言うものがあって、それは空を飛べる上に、物凄い攻撃力を持っている。それで君の天職は、そんな航空兵器を纏って、自由に使う事が出来る…………と言う事かい?」

「ああ、そうだ。それで、その力を試すため、今日こうして町を出てきたって訳だ」


 エーリヒの意見に神影は頷き、さらに目的を付け加えた。


「そうだったのか………じゃあ、誰にも見られないような時間帯にしたのは…………」

「勿論、コレが国の奴等にバレて、利用されたりしないようにするためさ。今の時間帯にこの辺ほっつき歩く物好きは居ないだろうし、離れているから音で起こす心配も無いしな」


 神影はそう言った。


「んじゃ、早速飛んでみるよ」

「う、うん」


 エーリヒは頷き、恐る恐る下がった。


 それを確認した神影は、両足のプロペラに意識を向ける。

 すると、プロペラがゆっくりと回転を始め、膝付近から伸びている排気口が一瞬火を噴く。

 その瞬間、プロペラの回転の勢いが一気に上がった。


「良し…………行くぞ!」


 エンジンの出力を上げ、神影はゆっくり前に出て徐々に速度を上げる。

 そして神影は、足が地面から離れるのを感じた。

 視線を下に向けると、地面が離れていくのが見える。

 

「よっしゃ、離陸成功!」


 神影が歓喜の声を上げると、先程まで直立の体勢だった体が吸い上げられるかのように動いて地面に対して平行になった。

 それは、まるで神影の体全体が1機の戦闘機になったようだった。


「スゲェ…………スゲェぞ!コレなら、今後の生活もやっていけるかもしれねぇ!」


 興奮した様子で、上昇、降下、旋回を繰り返す神影。


「「…………」」


 エーリヒや、離れた場所で見ていたレイヴィアは、目の前の光景が信じられなかった。


 見た事が無い形の鎧モドキが飛行能力を持っているなど、2人は思いもしなかっただろう。


「そう言えば、機銃もついてるんだよな………」


 そう呟いた神影は、両腕の機関銃を上に向けて、何時の間にか指が掛けられていた引き金を引いた。

 暗い世界に、2挺の機関銃のマズルフラッシュが弾け、銃声が響いた。


「うわっ、何だ今の!?」


 エーリヒは驚きのあまりに飛び上がりそうになった。

 レイヴィアに至っては、はしたなくも口をあんぐりと開けている。


「お~い、エーリヒ!」


 すると、ブンブンと響くエンジン音の中から、エーリヒを呼ぶ神影の声が響いた。


「どうしたの!?」


 飛び回っている神影に、エーリヒは大声で聞き返す。


「お前、確か特殊能力で"全属性適性"持ってたよな!?なら、光属性の魔法使って地面照らす事って出来るか!?」


 その質問に、エーリヒは声を張り上げる代わりに、基本的な光属性魔法の1つである"灯光リトルシャイン"を発動させ、両手に作り出した2つの光る玉を掲げる事で答えた。

 その事からエーリヒの返答を察した神影は、速度と高度を落としていった。

 そして、着陸体勢に入ったためか、主翼に対して垂直になるような姿勢に変わる。

 どうやら、離着陸時と飛行時で姿勢が変わるギミックがあるようだ。


 そうして地面に降り立った神影は、ゆっくりと動きを止める。


「凄いよミカゲ!本当に空を飛ぶなんて!」


 エンジンを切った神影に、エーリヒが詰め寄った。


「そう言えば、戦闘機って空を飛ぶだけじゃなくて、攻撃も出来るんだよね?今のもそれに関係してるの?」

「ま、まあ待て。取り敢えずコレ解除させてくれ」


 神影にそう言われたエーリヒは、一先ず離れる。

 神影は脳内で解除するのを思い浮かべると、神影は先程より弱い光に包まれ、それが消えた時には、纏ったフォッカーD-Ⅶも姿を消していた。


「ふぅ………良し、こんなモンかな」

「えっ、やりたい事ってコレだけだったの?」


 もっと凄い事をすると思っていたのか、少し拍子抜けしたように聞き返すエーリヒに、神影は苦笑を浮かべて頷いた。


「あ、ああ………ゴメン、こんなの見たって面白くねぇよな」


 その言葉は、エーリヒが首を横にブンブン振った事で否定された。


「見た事無いものが見れたんだ、面白かったに決まってるじゃないか!ねえ、ミカゲ!戦闘機について、もっと詳しく教えてよ!」

「わ、分かった。分かったから!帰りながら話そうぜ!」


 目を輝かせて詰め寄るエーリヒを必死で引き剥がそうとする神影。


「け、計算外だわ………まさか、彼があんなものを持っていたなんて………コレは、あの方に報告した方が良さそうね」


 レイヴィアはそう呟くと、転移魔法で城へと戻っていった。


 それから、何とかエーリヒを引き剥がす事に成功した神影は、彼と共に王都へ向けて歩き出すのだった。

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