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航空傭兵の異世界無双物語  作者: 弐式水戦
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第91話~"アルディア"への説明~

 アメリアに迫られ、今日このギルドへやって来るまでの出来事を話す事になった神影。彼の話は1時間程続いたのだが、その間"アルディア"の3人は、様々な反応を見せていた。


 先ず迷宮攻略の話では、3人は同じ冒険者と言う立場もあって目を輝かせ、ボスである巨大ゴーレム達との死闘を繰り広げた話では、まるでその光景を映像で見ているかのようにハラハラした表情を浮かべていた。

 ボスとの死闘を制し、急成長を遂げると共に迷宮攻略の報酬として宝物庫を手に入れた事を聞かされた時の彼女等の表情が驚き半分羨望半分と言ったもので、迷宮攻略の話題1つだけで様々な色を見せる彼女等の反応に、エーリヒが苦笑を浮かべていたのはここだけの話だ。

 次に2人のハーフエルフの少女を保護したと言う話では、先ずヒューマン族と他の種族との混血児が実在する事に驚いており、連れてきたエリスとエミリアがそれだと聞いた際には、その驚き具合も一気にはね上がっていた。

 最後に調査隊とのいざこざについての話なのだが、其処で初めて、彼女等の表情に怒りの色が加わった。


 ブルームやゴルトの傲岸不遜な振る舞いに加え、神影を勇者パーティーに引き戻そうとした勇人が無理矢理取り付けた、2対10と言うあまりにも理不尽な組み合わせでの模擬戦。

 "黒尾"の一件で勇者や騎士・魔術師団が神影やエーリヒをどのように見ているのかは聞いているものの、其処まで横柄な振る舞いをされれば、当事者ではないとは言っても気分の良い話ではないのだろう。


「一応、連中を諌めようとしてくれた奴は居たんだけどな………」

「あまり効果は無かった、と?」


 そう言葉を続けるオリヴィアに、神影はコクりと頷いた。

 ブルームやゴルトはイリーナとソフィアが、勇人は太助や奏が諌めようとしてくれたのだが、双方共頑なに自分の意見を変えようとしなかった。それは最早、意固地と言う単語で片付けられるレベルを遥かに超えており、単なる子供の我が儘にしか見えなかった。

 つまり彼等は、自分達の考えや価値観こそが正しいと思い込み、それを他人に押し付けて無理矢理同意させようとしているだけに過ぎないのだ。

 

 3人は、そんな身勝手且つ幼稚な連中に呆れると共に、どんな連中なのか顔を見てみたいとすら思ってしまっていた。


「ソイツ等には呆れてものも言えないけど…………まあ、マトモな人間が居たと言うのは不幸中の幸いだったわね」

「ん。味方が居るのは、良い事」


 そんな調査隊メンバーの横暴且つ幼稚な振る舞いを聞いた時には怒りや呆れと言った感情を抱いたものの、そんな中でも常識的な考えが出来る人間が居たと言う事を知れたためか、アメリア達は表情を緩めた。


「それに、周りに流されず正しい事をしようとするのは勇気が要る事だからね。ミカゲの味方になって連中を諌めようとしていたと言う人達は立派だよ」


 アメリアとニコルに続けるようにして、オリヴィアが太助達を称賛した。


 彼女の言う通り、大人数で1つの事を始めたら、普通の人間なら流されるのが当然だ。

 それがいじめである場合、殆んどの人間は自発的かいじめっ子側から強要されるかを問わず、そのいじめに加担するか傍観するかのどちらかに徹し、表立って被害者の味方をしようとはしない。ましてや被害者を守るためにいじめっ子達に真っ正面から歯向かうなんて事は絶対にしない。何故なら、自分達に矛先を向けられたくないからだ。

 人間と言う生き物は時として非常に姑息な存在になってしまうもので、たとえどんなに間違った行為であっても、そうする事で自分を守れるならばそちら側についてしまうのだ。

 中には、いじめをする側が不利な状態になると手のひらを返して被害者側に回ると言う、某童話に登場するコウモリのような非常に質の悪い輩も居る。

 そんな中で太助や幸雄達は、矛先を向けられる事を覚悟した上で神影の味方となり、時には富永一味や恭吾と言ったいじめっ子連中を追い払っていたのだから、3人にとって、彼等は称賛するに値する存在になっていたのだ。

 同時に彼女等は、そんな彼等が何時までも勇者パーティーに留まっているのが勿体無いと感じていた。

 何が過ちで、何が正しい事なのかを判断出来ず愚行に走る連中や、そんな連中を黙認し、この世界よりも付き合いが長い筈の神影を見下したりするような者達と一緒に居たところで太助達には何の得も無く、逆に連中の行いに巻き込まれて何かしらの被害を被る羽目になるのが目に見えているからだ。


 現にブルームやゴルトが、出迎えに来たエーリヒに罵声を浴びせた他、グース達の家の部屋に勝手に入ると言う横柄な振る舞いや、勇人が神影を勇者パーティーに無理矢理連れ戻すために無理矢理模擬戦をさせたと言う事を知らされて激怒したイーリスは、現在支部長室にて、王国上層部へ叩きつける抗議文を作成中だ。

 これで勇者パーティーや王国軍に何かしらの制裁が下されるのは決定したも同然である上に、その一件が勇人や彼に加担した男子や騎士達の独断であるとは言っても、勇者パーティーや王国軍の評価は大きく下がってしまった。

 それが後々どのように響いてくるかは当然ながら予想出来ず、下手をすれば関係の無い者達を大勢巻き込んでの破滅と言う最悪な結果を招いてしまう事すら十分に有り得る。

 そんな何時爆発するかも分からない不発弾を大量に抱え込んでいるような場所に留まったところで、何の意味もメリットも無いのだ。


「(ボク等からすれば、少なくともマトモな人達は助かってほしいんだけど…………)」


 勇者パーティーや王国軍、はたまた上層部の事は気に入らないが、流石に誰彼構わず敵視する趣味は無いため、太助達のような良識を持った人間までもが巻き込まれるような事態だけは起こらないでほしいと願うオリヴィア。

 勿論、このような事を願っているのは彼女だけではなく、アメリアやニコル、そして神影達も同じ事を思っているだろう。

 特に神影には、幸雄や太助、沙那達と言った恩人が居るのだから尚更だ。


「瀬上や篠塚達、変な事に巻き込まれたりしてなきゃ良いんだけどなぁ………」


 神影がふと呟いた事で、彼等の間に気まずい雰囲気が流れ始めた。


 その際、いっそ良識を持った者達だけ引き抜いてしまえば良いのではないかとも考えるオリヴィアだが、それでは神影を無理矢理勇者パーティーに連れ帰ろうとした勇人と同レベルになってしまう。

 国や勇者パーティーが冒険者を勝手に引き抜く事が許されないのと同じように、冒険者もまた、国や勇者パーティーの人材を引き抜くような真似は出来ないのだ。

 そのため、今の神影達に出来る事はただ1つ。良識を持った者達に災厄が降り掛からない事を祈るだけだ。


「ま、まあ取り敢えず、勇者の話はこの辺で終わりにしましょう。他に話したい事もあるし」


 このまま話を続けても余計に気まずくなるだけだと感じたのか、アメリアが話題を打ち切った。


 それから数分程度の休憩を挟み、話題はエリス達の事へと変わった。

 神影の話でサラッと流されたとは言え、彼女等はエルフとヒューマン族とのハーフだ。人間主義を掲げているこのヴィステリア王国で生まれ育った"アルディア"の3人にとって、初めての異種族との接触と言う事である。

 人間主義者にとっては穢らわしく、奴隷と見なされているエリス達だが、それよりも3人が抱いた印象は、『珍しい』である。

 一応、奴隷として働かされている亜人族はしばしば見掛けるのだが、こうして間近で見たり、話したりするような機会は無かったのだ。

 それに今の彼女等は、奴隷ではなく冒険者なのだから尚更である。


「まさか、亜人族と出会う日が来るなんてね」

「ああ。それもヒューマン族とのハーフだと言うから尚更だよ」

「……初めての、異種族」


 そんなやり取りを交わしながら、エリス達をまじまじと見つめるアメリア達。

 エルフの特徴でもある、先端が尖った長い耳を見た際には目を輝かせていた。


「それにしても、悲惨な目に遭ったのね。里を焼かれて親を殺されるわ、奴隷として売られた先で迫害されるわ……」


 そう言って、同情の眼差しを向けるアメリア。

 内容こそ全く違うが、彼女等3人もまた、悲惨な目に遭わされた経験がある。

 その事から、少なくとも何の災いや苦しみも受けず平和に暮らしてきた者よりかは、エリス達の心情は理解出来るつもりだった。


「はい。ミカゲさん達が助けてくださらなかったら、今頃……」


 追手に捕まって連れ戻されるか、そのまま森で野垂れ死んでいただろうと続けようとするエミリアだったが、そうなった時の自分達の姿を想像したのか顔を青ざめさせ、神影が優しく頭を撫でて話を止めさせた。


「………まあ、そんな事もあって、今はエーリヒの家で一緒に暮らしてるんだよ」


 彼女等の精神面に気を使ったのか、神影が強制的に話を切り上げた。


 その後、"アルディア"の3人が戻ってくるまで戦闘訓練を行っていた事を話し、オリヴィアから"軽戦士"としての戦い方のコツをレクチャーしてもらった後、共に夕食を摂って解散するのだった。



 その際、このルージュ冒険者ギルドでは初めての異種族冒険者であり、美少女でもあるエリスやエミリアとお近づきになりたいと言う冒険者や、1階の騒ぎを聞き付けて仕事を放り出してきたイーリスも混ざり、ちょっとしたパーティー状態になっていたのは余談である。

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