プロローグ1
異世界召喚───
それは、ファンタジー系創作物においては非常にポピュラーなジャンルの1つであり、男女を問わず誰もが1度は憧れるものだ。
元は平凡な人間だった主人公が突如として異世界に召喚され、危機に陥った世界を救う勇者になって世界各地を旅して回り、多くの人々との出会いと別れを繰り返し、時には仲間を増やし、様々な試練を乗り越えて強大な悪に打ち勝つ。
そして、冒険の最中に出会った最愛の人と結ばれ、はたまた多くの異性に囲まれてハッピーエンドを迎える。
そんな夢と希望が溢れる異世界召喚だが、残念ながら、そうなるまでの過程全てが上手くいく訳ではない。
時として最底辺からのスタートを強いられ、周囲から蔑まれて理不尽な目に遭わされる者が、必ず1人は現れるものなのだ。
そのような展開が起こる異世界召喚のパターンの中で最も多いものが、クラス召喚である。
それは、ある学校の1クラス分、または数人の生徒達が突如として異世界に召喚され、彼等を召喚した国の王族から、魔王を倒したり、脅威となっている別の国から彼等を守るように頼まれると言うものだ。
そして、そのクラス召喚では殆んどの生徒達が高いステータスを持つのだが、その中で1人、または少数の生徒が、非常に低いステータスを持つ事になる。
そうなる生徒は大抵がクラス内カーストの低い者で、学校でもあまり良い目では見られておらず、クラスメイトからの嫌がらせの的になっている。
加えて、そうなるのは基本的に男子生徒が多い。
このような存在は、蔑みや理不尽な扱いの格好の的にされ、クラスメイトや、彼等を召喚した国の上層部の人間によって殺されたり、訓練のために迷宮へ潜った矢先に何者かによって奈落へ突き落とされたり、城での理不尽な扱いに耐えかねて自分からクラスを離脱して独自で行動を取ったりするのが、クラス召喚の常である。
そうして単独行動を続けて、多くの仲間やヒロインに恵まれながら独自に元の世界へ帰る方法を探したり、自分を蔑んだクラスメイトへ復讐を行ったりするのも、クラス転移ではお決まりの展開である。
「…………で、そんな境遇に立たされる1人に、俺がなっちまったって訳なのさ」
日がすっかり沈んで空が黒く染まっていく中、尾部から尻尾のように生えているエンジンノズルの轟音を平野に響かせながら、腰や脚から鋼鉄の翼を生やした、黒髪に金色の瞳を持った少年、古代 神影は自嘲を浮かべた。
「ミカゲ、君は一体何を言っているんだい?」
彼の隣では、同じように鋼鉄の翼を生やした、長い金髪にエメラルドグリーンの瞳を持つ少年が呆れたような目を向けている。
「ああ、いや。別に大した事じゃねぇよエーリヒ。ちょっと、思う事があっただけさ」
そんな曖昧な返事を返した神影は視線を戻し、自分がこうなるに至った経緯を思い返すのだった。