5章-03 魔法と常識 だよっ
タヌ子にひっ付かれて半パニクってたのは、別に拒絶してた訳じゃない
実は駄肉の感触なら既に知ってた・・・自分ので (¬▽¬;
でも他人のをいじった経験はないんよね、昔の記憶が部分的に蘇る
随分と違うじゃあないの、スキンシップってヤツは経験ほとんど無いんだよっ
こちらの世界はファンタジー分除いても新しい経験の連続だよっ
夕闇も深くなってきた頃、村に1台の馬車が着いた
出迎える者は誰一人居なかった
今日は、村を挙げての大宴会の真っ最中
馬車というにはずさんな、丸太や動物の皮を組み合わせた大雑把過ぎる造り
そこから次々と小さな影が飛び出ては暗がりへと消えていった
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店を上げて、村を巻き込んでの宴会モード
魔法学校のサーラ先生にこの辺りの検証的なのを聞いてみる、お酒好きな先生は既に赤ら顔だけど・・・まーだいじょぶでしょ
「ねぇ先生、1つの魔方陣でバラバラに飛ばされることってあるの?」
「フツーはないわ、壊れかけてたり、暴走してたり、構文でバグがある場合にあるかも・・・って程度」
「先生はどう思いますー?」
「一言で言えば『幸運』かしら、壊れかけた転移魔法陣なんて、破壊魔法よりタチが悪いわよ」
「それってどこかに飛ばされるか分からないって事ですかぁ?」
「それは運のよかったケース、バラバラに引き裂かれたり、塵一つ残らなかったり」
「ぞぉ~~っ」
「ほぉ~~」
タヌ子は青ざめ、アタシは前人未到の究極攻撃呪文のイメージに心躍らせた
「そこ、危険な事妄想しないっ! そもそも完全な形での転送魔法陣なんてのは遺跡かダンジョンに残されているくらいで、今はもう技術は失われているのよ」
そーだよね、テレポートやワープなんてのは21世紀になっても空想の産物で実用理論の片鱗すら生まれていない
ラノベ系のアクションで一切説明されずにホイホイ使われちゃってる「別空間からの武器や装備の取り出し」
これって、取り出す事自体が究極の兵器なんだよね(※1)
いちいち取り出した武器で戦うよりも、相手の体内に爆発物でも出現させれば一瞬で勝負は付くのだし
脳みそとか心臓とかを直接取り出しちゃってもいい、エグいけど必殺だ
「なんか思いっきり邪悪な事考えてなかった? そーゆー顔してたわよ」
「えぇっ? なんでー? 」(ΦωΦ)
「不完全な転移魔法陣を破壊魔法として応用するってのは禁じられてるからね(※2)」
「ほえ、法規制ってヤツ?」
「そう、転移魔法陣の研究は人間界のほとんどで協議の上禁止されてるのよ。
違反すると騎士団に捕まっちゃう、一応一部の国には特別に認められた研究施設があるらしいという話を聞いたことはあるわ」
むー、21世紀における “核” のような扱いかなー。興味本位でいじったらお縄についちゃうのだぁね
タヌ子の災難は、どこぞのバカが禁忌に手を出してはみたものの、怖くなって破棄
放置された出来損ないに子供が引っかかってしまったってのが事の発端って事になるのかなー
「あ、ネコちゃん魔法使えたよね、1つ頼んでいい?」
店主兼シェフのケイティさんから声が掛かる
「にぁにー?」
「氷のストックが切れちゃったの、山まで取りに行くのも時間かかるし、村唯一の魔法使いは、飲んだくれててちょっと不安定だしぃ・・・おねがいっ」
「いいけど・・・アタシの魔法だと “凍らせるもの” は別途必要だよー」
「おっけ、じゃこの樽おねがいねー」
まぁた大樽を片手で扱ってるー、この人どれだけパワーあるの?
「樽、割れちゃうかもしれないよっ」
体積膨張とかの科学的講釈はヤボなのでしない
あ、そーそー
木のジョッキに入ったリンゴジュースを樽の上に置く
「フリーズ・ブラスター!」
シュゴーーッ、ぴききっ
おー、ものの数秒で大樽丸ごと凍りついたー
なんつー冷却力だ・・・って、本来この呪文って魔物を凍らせる魔法なんだよね
熊の1匹2匹確実に凍らせる攻撃呪文
体温のある巨体を凍らせる事を考えると室温の水樽なんてのは物の数には入らない明らかな過剰火力なんだよねー
「ありがとねー」
大樽もって厨房へと戻っていくケイティさん
ジョッキはちゃんと回収したよ
シャーベットなるかなーって思ったんだけど・・・完全に凍ってて少し溶かさないと取り出せそうに無い。せめて棒の1本でも差し込んどくんだったー
でもそれだと、ジョッキサイズの巨大アイスキャンディ・・・(¬▽¬;
「ししょー、どーしたんですぅ」
大皿抱え込んで食べまくるタヌ子が笑顔のまま問う
タヌ子って、食べ物があればあるだけ食べてしまうタイプなのかもしれない
その調子で食べまくるとクッションがバランスボールになるぞー
今日だけは見逃すけど
「あらあら、凍らせたはいいけと飲めなくなっちゃったのね」
追加の皿を持ってきたケイティさんが覗き込んできた
「まかせといてー」
皮袋を取り出すとジョッキの中身をストンと落とし込んだ
「ふんっ!」
握力1発氷を握り砕くと、中身をサラサラとジョッキに戻してくれた
なんつー怪力、この店で悪ふざけする客が居ない理由が判っちゃった
完成、果汁100%アップルフラッペ
ロングスプーンをジョッキに突っ込んでくれた
とりあえず一口、濃厚な香りが鼻腔に広がる
「あらおいしそ、新しいデザートになるかも」
料理研究家らしい見解だけど、調理方法に問題ありまくりだと思うよっ
目を見開いてぽか~んとあっけに取られた顔してたら
「料理は愛、愛とはパワーよ」
片手ちからこぶポーズのケイティさん
そうかもしれないけど、この世界ってみんな何らかのチート持ち?
って思い始めた今日この頃なのであった
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夜も更けてきた、宴会は続いてるけどそろそろオナカも限界だ
村の面々は入れ替わり立ち代りの参加だけど、一応主賓なので最初から居るんだよね
フーフーいってるタヌ子をなだめすかして新居へ帰る
・・・懲りないね、この娘
寝室は複数あったからそれぞれに入る。受け渡し時に説明受けたからその通りの部屋割りに従っとく
寝室の内装は思ってたよりシンプル、あのカトチ嬢の設計だからもっと乙女乙女した甘々なのになってるかと思ったけど、アタシがシンプルなのを好むってどっかで聞いたんでしょね
家具は設置済みって言ってたからベッドが用意されてるの知ってた
でも・・・なにこれ、妙に高級感
華美な装飾があるわけではない、むしろシンプル、でも緻密
腰掛けてみると跳ね返るような弾力、今までのと違う
藁ではないし羊毛綿でもないね、分解するわけにもいかないから後で聞いてみよう
多分これも世界観破壊な技術なんでしょね
今日はアレコレあったんで気疲れしたよっ、おやすみ~
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目が覚めた、妙に高級感のあったベッドは快眠をもたらしてくれた
窓を開けると朝のひんやりとした空気と日差しが心地よい
「たいへん! 事件よっ! 」
窓から見えたのは放牧と酪農やってるメリヤおばさん
アタシも前に村にいた頃、お手伝いバイトしたこともある(※3)
息せき切って広場へと駆け込んでくる、なんかベタベタの予感
「ウチのミノ子が殺されたのよっ!」
むー、朝っぱらから物騒な厄介事だよっ
拙い作品をお読みいただきありがとうございます
むー、最後の最後で推理モノ展開ですかー
カミサマの気まぐれに振り回される悲劇のヒロイン
・・・なんて、付き合ってあげる気は無いよっ
どぅどぅ、そう息巻くでない
平和を満喫させてあげる義務なぞカミサマ側には無い!
日常展開になってもどーせラブコメとか出来ないっしょ
『Next にゃんこ'S Hint! 「ひつじ」』
【解説】
(※1)取り出す事自体が究極の兵器なんだよね:小石1個でも脳みその中に放り込まれたらまず即死する。主要な血管内に異物入れられるだけでも致命傷。
いやまて、隙間の無いところに物質を重ねるように送り込めば核反応的な事になる
『*かべのなかにいる*』は1発LOST(消滅)なのだよ
(※2)不完全な転移魔法陣を破壊魔法として応用するってのは禁じられてるからね:魔法が一般化されているこの世界においての禁忌 “核” のようなもの
効果範囲も照準もマトモに付けられない上に防ぐ手立ては無い、核よりもある意味物騒極まりない
人間社会では許可なく研究するだけでも捕まったりします
(※3)アタシもお手伝いバイトしたこともある:生産系スキルも大体極めてます『乳搾りマスター』はダテじゃない
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『メタもベタも極めてみせるよっ!』




