4章-26 キミの体、ふわりと、夜空に・・・だよっ
決勝戦は言うまでも無く日程延期
原因の一端はアタシにもあるんだけどさ・・・
石畳削って馬石像作ったのはユニア嬢だよっ
クレーターは・・・不可抗力だよっ
「そーいや、おーちゃん飛んでたよね」
「うん・・・」
1回戦、3回戦としっかり飛んでたから否定しようが無い
「まえのダンジョンでは、聞き流したけど、今回堂々と飛んでたよね」
「うん・・・」
あのぉ、何をそんなに熱くなってるんです?
「なんで、あんな風にビュンビュン飛んじゃってるのよっ!」
え? そこなの突っ込む所?・・・
「やっぱイメージ的に、“魔道士” って言うと、
固定砲台・・・(と言っても判らないか)どっしり構えて大火力の雰囲気でー
ちんまい “魔女”は、飛びまわってるのが似合うってゆーか・・・」
「そこじゃないのっ」
ほえ?
「道具も使わず翼も生やさず、あんなに自由に空を飛ぶ魔法なんて見たこと無いわよっ」
・・・そゆことね
「アレ、スキルだけど呪文じゃないから・・・」
「それに・・・タヌ子、ちょっと窓閉めて」
「はぁい、シショー」
薄暗くなったところで、背中を向ける
『フェアリー・ウィング』
背中からはうっすらとした光の羽、鳥の翼と言うよりは半透明な妖精の羽
周りに光の粒子を振りまいている
「昼間だと明るいからほとんど見えないだけだよっ」
「ほぅ・・・光の翼、これ実体は無いんだね」
羽をつまもうとしてたらしい
「あ、もー窓開けていいよ」
翼を解除、数センチ浮かんでた足が床に着く
「この羽、ほしい・・・ちょーだぁぃっ」
「師匠、ワタシも欲しいですっ」
「そーは言ってもねぇ・・・
この羽は、苦闘の果てに妖精さんから貰ったものなんだよっ」
このスキルはイベント期間の間だけに現れる妖精の居る特殊な島に、数ヶ月こもって(※1)習得したレアスキル。このイベントを逃した人、イベント期間内に習得できなかった人は『無かった事』にされている
召喚獣に乗らず、アイテムにも頼らずに空を飛ぶ唯一の方法なんだよねっ
ちょっと早めの夕食をとった後、腹ごなしの散歩も兼ねて街外れまで歩く
日は傾き始めもうすぐ夕焼けかなー
「単独で飛ぶのは一朝一夕には無理だけど、補助つきで飛行体験させてあげることは出来るよっ」
まー、スカイダイビングやハンググライダーのタンデムみたいなもんだ
「「「ぜひともっ!」」」
・・・ん? 「」の数が・・・(※2)
「一度でいいから空を飛んでみたかったんだ、乗り物とかじゃなくって」
鎧さん?!!
・・・確かに、あの巨躯のフルアーマーが飛行したら、別の意味でカッコイイ
ここ最近出番が無くて影が薄くなりかけてた
「いい? 飛べない人を飛ばすのって、泳げない人と海に潜るのと同じ・・・いやもっとキケンだからね」
こくこくと頷く3名
「指示にはきっちり従う事、でないと・・・」
「「「でないと?」」」
「墜落するわよ」
硬直する3名
「じゃ、まずはタヌ子から」
「「なんで?!」」
「若い順だよっ、年齢が低いほど飛び易いんだよっ」
タヌ子こと杏がおずおずと前に出る
「師匠・・・お願いします・・・」
「まずは浮く事から、落ち着いて・・・感情を安定させることが重要だよっ
手をこちらに・・・」
『ティンカー・リンク』
スキルをまだ体得していない相手の能力を外から引き出すリンク
泳げない人の手を取ってあげるようなもの
アタシの全身にまとわり付いている光の粒子が手を伝ってタヌ子をも包み込む
「わわっ・・・」
力が作用しているのだろう、違和感に声が震えている
「小さかった頃を思い出して、妖精はピュアなハートで飛ぶんだよっ」
すぅっ・・・タヌ子の足が地面から離れる
「浮いたね、上昇するよっ」
手をつないだまままっすぐ上がっていく、高度10mくらいで水平飛行に移行する
もとから天然のタヌ子はすんなり飛べたねー
キラキラと光の粒子を纏って狐と狸が空を駆ける
おーおー、タヌ子の奴 丸い目をまん丸に見開いてキラつかせてやがる
ちょっとサービスして横ロール1回転、そろそろ次が待ちわびてそうだから交代かな
「ししょお~~、もーちょっとぉ~」
さて、お次は・・・
2人ともキラっキラのまなざしを向けてくる
「それじゃあ、鎧さん」
とたんにマミさんが膨れる、だってさー、巨体丸めてわくわくしてるポーズが可愛かったんだもん
「ハイ、無心でー、力でも頭でもなく、気持ちの重心を移動させるかんじでー・・・」
フェアリィ・ウィングで飛行する際、術者の重量は無関係。心の力のみが重要となる
おー、飲み込み早いなー 空中でポーズが取れるくらいにはなってる
「うおおおお、わはははは」
巨体が唸るぞ空飛ぶぞ
普段落ち着いてる鎧さんがあんなにもはしゃいで・・・
やっぱ生身の飛行ってロマンなんだろうなぁ
アタシかて、このスキル習得後はしばらく無意味に飛び回ったからね~
どー見ても機動兵器にしか見えない空中機動を全身で堪能する
赤みが差した陽の光が黒光りするボディに反射して
まさに『陽を浴びてきらめく巨体』
着陸しても興奮醒め止まないよう
そしてマミさん
「むふーっ、いよいよ妖精魔法の秘術に触れれるのよねーっ」
どぅどぅ、まず落ち着こう
『ティンカー・リンク』
きらきらの粒子が手を伝わってマミさんを覆い・・・
バシッ!
弾かれた?! (○△○;)
「おっかしーな、なんか妖精の力が否定されてる?」
妖精はピュアな子供の心を好み、大人の欲望を嫌う。エネルギーになっても属性は変わらない
アタシだって飛べるようになりたての内は、飛行中の戦闘行為はもちろん、武器を抜く事もできなかったからね
「まずは落ち着く!、欲望は控える!、でないと始まらないよっ」
マミさん、深呼吸して荒い鼻息をなんとか静める
・・・でも上手くリンクできない・・・なんでだろ?
武器とかはもってないみたいだし・・・あ
「カメラは置いていこうね初フライトで、空撮なんて無理だよっ」
しぶしぶカメラを控えてたタヌ子に渡す
そーそー、アタシだって最初は武器抜いてたら飛べなかったんだから
素手になったらなんとかリンクが作動した
よし、行ける
「いい? くれぐれも平常心、煩悩や妄想はご法度だよっ」
垂直上昇から水平飛行に移る
「これが・・・妖精魔法・・・」
「分析や解析は着陸してから! 小難しい事に頭使っちゃダメ」
ちなみに、純粋な感情や感動はほとんど影響を与えない
少しずつ慣れてきたようなのでリンクはつないだまま手を離す、だいたい2m位までは離れても大丈夫
先導するように少し前に出て上昇、ちょうど目の前を掠めるような位置取り
「あ・・・目の前に光り輝く幼女・・・だきしめたいっ、むふーっ!」
あ、そんなギラついた欲望噴出したら・・・
マミさんを覆っていた光がぱっと霧散する
「え?・・・ひぇええぇぇぇぇぇぇ・・・」
マミの身体は薄暗い虚空の中落下して行った
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落下した時、幸運にも下に木があったらしく地面への直接激突は免れた
満身創痍で気絶したマミさんを(鎧さんが)担いで、我々は宿へと帰った
一応、応急手当
骨折こそしなかったものの、捻挫3箇所+打ち身多数、擦り傷多数と、しばらくは大人しくせざるを得ない状況
これで大人しくなってくれればいいのだけどね・・・
拙い作品をお読みいただきありがとうございます
隔日更新とか言っておきながら、間に合いませんでした。陳謝・・・
セクハラ女王のマミさんに天罰をとの声をいただきましたので
落としました・・・空から
【解説】
(※1)特殊な島に、数ヶ月こもって:ゲーム内で数ヶ月、プレイヤー時間では述べ数日、
(※2) 「」の数が:またそんなメタな言い方を・・・
ブックマーク、評価、とかはあまり気にしてませんが
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活動報告の方によろしくお願いいたします!
『メタもベタも極めてみせるよっ!』




