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2章-14 無職だけどダンジョンに行くよっ

ゲームの世界ってのは処理を円滑にする為に単純化してあるものだ

防御力の数値が同じなら、全身カバーの皮鎧でも、ビキニプレートでも、重ヘルメットに半裸のマッチョでも、攻撃に対する守りは同じ

でも実際は装甲の隙間に当たったら致命傷なんだよね

さて、脳天フットスタンプで床に強制キスさせられたマミさんが“残念モード”から復帰してやっと会話できるようになった

床に正座させてるけどね


「改めて聞くよっ、どーしてこんなデザインにしたのっ?」


「可愛いから・・・」


アタシは咄嗟にパンチの構え


「ひ~、ミスリルクローのパンチはかんべんして~

 実はこれ、観察に基づく計算と理論あってのデザインなのよー」


「ほ~、説明してもらうよっ」


「金属鎧というのは、どのように作っても身体の動きの妨げになってしまうのは仕方ないってのは判るよね?」


そーゆーもんなのは判ってる、うなづいて返す


「おーちゃんの戦い方を見ていると、とにかくよく動く、転がる、全身がバネの様にしなった攻撃がほとんど」


「まー、この小さな身体ではそうでもしないとやっていけないし・・・」


「胴体を全部装甲で覆ってしまうと曲がらないし捻れない、スピード重視の動きを殺してしまったら元も子もないと思って」


「だからってオナカ全部露出させちゃう事もないじゃない」


「でもこれにはもう1つ意味があるの、おーちゃんの必殺技『カウンター』

あれって、相手の太刀筋を読みきって初めて放てるって(ヨロイ)から聞いたわよ」


・・・得意技ではあるけど、必殺技なのかなー


「見た目で装甲が無い所があれば、たいていの相手はそこを狙ってくるよね

 狙いが判ってれば太刀筋を読むのも簡単になると・・・視線誘導って言うのかなー」


「理屈はわかったよっ、でも不意打ちや横槍、弓や魔法で狙われたら?

 アタシ鎧の隙間が大きかったせいで死にたくないもん」


「その点は大丈夫」


パシッ!・・・カララン・・・


アタシの足元に短剣(ダガー)が転がる

正確にはマミさんが投げつけたダガーがアタシのオナカに当たり、そのまま弾かれて床に落ちた

痛みも怪我も無い


「そのインナー、スパイダーシルクの糸を魔法処理して作り上げた透明度の高い特殊な繊維製・・・皮鎧よりずっと丈夫」


目からウロコ、露出してるのではなくシースルーだったんだ

ズルしてメニュー機能で装着してたから気が付いてなかった(オイ)

・・・でも、恥ずかしい事には変わりないんだけど・・・


「本当は全身に使いたかったけど、そこまで作れなかったって言うのと

 通気性と吸水性が悪いから装甲の下の見えないところは別素材にしたわ」


「それって、見たことも無いスゴイ技術だよ」


「うん、今研究中のシースルー防護服の試作、

いつか着せてあげる、全身透け透けのフルアーマー(むふー)」


・・・それはちょっと嫌


「ところでお二人さんよ、せっかくだから昨日延期にした

 ダンジョンでもいってみるかい」


今までずっと置物と化していた鎧さんが、提案してきた


気遣いの人だなー


「必要ないとは思うけど、ポーションや非常食とかは用意しておいたよ」


気配りの人だなー


「好奇心と ストレス発散と お小遣い程度の収入、出会いは無いと思うけど」


欲張りの人だなー


「うん、いってみよう・・・楽しみ~」


アタシは好奇心が湧き上がるのに逆らえなかった


ダヌパの街ゲートを出て歩く事少々、古びた石造りの遺跡風な建物が見えてきた

天井の一部は崩れかけているが、地下には影響ないんだそうな


入り口の周りには冒険者たちが数組たむろっていた

その連中を狙った行商人とかもいる


「ここは若い冒険者の育成のためにギルドが管理しているダンジョンなんだよ」


うん、入り口の両脇には重鎧に身を固めた警備スタッフがついていた


「私達も昔はお世話になったわよね~、このダンジョン」


「ああ、懐かしいな」


むー、昔話されるとついてけないよっ


「ところで先輩がた、ここはどんなダンジョンなんです?

 そもそもダンジョンってのはどういうものなのか教えて欲しいよっ」


「このダンジョンにはスケルトン系のアンデットとゴブリン変種が住み着いている、比較的難易度の低いダンジョンだ

そして2つ目の質問だけど、実はまだ全てが解明されているわけじゃあないんだ

 魔物が定期的に湧き出し、罠や鍵とかがいつの間にかリセットされているという

 不思議な迷宮空間なんだ

 この辺りは実際に体験して感じてもらうほうが早い」


「もう1つ質問っ、街にはいろいろな種族の人がいたけど、

 『魔物』と『種族』ってどう違うの?」


「これも原因は研究途中なんだけど、瘴気とか何かの拍子によって人を襲うように変質してしまった生き物とアンデット等の魔法生物を合わせて“魔物”と呼んでいるんだよ

特徴としては、その体の中に魔結晶と呼ばれるものが入っている

この魔結晶が体を変質させ危険な蛮行をコントロールしてると言う説が今の主流なんだ」


「必ずではないけど、魔物は金貨やアイテムをもっていたりもするのよね

 魔結晶は本体が倒されると一緒に消えるけど、たまに残る事もある

 ギルドが買い取りして研究機関へ送ってるわ」


ドロップってヤツねー、こーゆー所はゲームっぽい


「一説によると魔物には黒幕がいて魔物を使って金品等を集めさせてるって

 いう研究家も居るのよ、何が目的なのかは判らないけど」


「ベタだけど目的って魔王とか邪神の復活とかだったりしてー」


そんなテンプレ展開ありはしないよね、にぱースマイルで相槌


「その辺りは専門家の間でも議論の的らしいよ」


やだやだ、ベタベタなテンプレート

いや意外とファンタジー世界では常識なのかも・・・拒否したいけどね


「おう、面白そうな話してるじゃねぇか」


いきなり割って入ってきた男の声、後方約5m

我がネコミミレーダーに死角なしっ


振り向くと黒い服にレザーアーマーの男が腕組みしていた


「おっと失礼、オレの名はタツアン、見ての通り盗賊(シーフ)だ」


中肉中背、ややボサボサの黒髪に大き目の三白眼

雰囲気的にはわんぱく小僧がそのまま大人になったような感じ

やや童顔なせいか鋭さよりもコミカルな印象を受ける


「そのシーフさんが僕たちに何か御用かね」


「いやさ、オレも混ぜてもらおうかと思ってね

 見た所戦士2名に魔術師のパーティ、バランス的にはオレが入るとちょうどいい

 斥候・鍵空け・ワナ外し、弓だって結構使えるぜ」


「ここ低難易度ダンジョンだから、レジャーみたいなものなんだけど~」


マミさん、露骨にイヤな顔


「姐さんスルドイなー、言い訳も詭弁もナシだ、

 オレはトレジャーハンター、常に『面白い』を探し続けてるのさ」


タツアン氏はにっと笑うとアタシに向かって大声で言った


一撃子猫(ボーパル・キティ)、オレはアンタが気に入った!付いて行かせてくれ!」


 ・・・・・∠(○△○)ゝな~


面白いを求めるロマンチストなポリシーまでは理解できた

しかし、初対面でここまでする?

ひょっとして、ロ●コン?


「ちょっと、おーちゃんフリーズしちゃってるじゃない

 いきなり初対面の女の子にそんなこと言ったら犯罪よっ」


マミさん、食って掛かる


「初対面かも知れねェが、見てたんだよ・・・ずっと

 そこの旦那が張り倒された辺りから・・・」


低く小声で語った口調が一転する


「あの時から、もう目が離せなくなっちまったんだ!

 この娘と一緒に居れば絶対に面白い事になるって天啓が降りてきたんだ」


「「ス、ト、-、カ、-・・・」」


女性2人でボソッとハモった


「まさか、宿の中まで覗いてたとか?」


「寝顔とか着替えとかお風呂とかお手洗いとかをこっそりと・・・

 むふーっ ゆるせんっっ!」


マミさん、シャー! って顔になる


「それはねぇ!まだやってない」


「とーぜんだよっ!やってたら、まっ2つ確定だよっ!」


いっとくけどね、マミさんは最初の3つは前科あるってーの!!


しっかしまー、たいした入れ込みだよっ

でもアタシ自身としてはテンプレートな運命だけは避けたいと切に願っている

アンタの言う面白い事なんてのは起こりそうにないはずなんだけど・・・


でも待てよ、こーゆー狂信者って袖にしたら

反動である事ない事吹聴されちゃうかもしれない、ファンから粘着へ一直線

甘い考えかもしれないけど、どーせレジャー迷宮の1回だし、

条件つけてなら付き合ってあげても?


「ねぇマミさん、約束を守らせる魔法ってあるの?」


「それって制約(ギアス)の事?あるにはあるけど

 掛けられる相手が同意しないとまず成功しないよ」


「用心深いねぇ、でもそれくらいじゃないと生き残っていけねぇ世の中だ

 むしろ堅実でいい、よっぽど理不尽な条件でもない限り俺は受けるぜ

 オレは自分にだけはバカがつくくらい正直者なんだ」


「アタシが守って欲しい約束は2つだけだよっ

 1つ、私達を騙そうとしたりしない事、不意打ちや裏切りは怖いからね

 2つ目は、私達について、許可した事以外の情報を第三者に渡さない事」


「了解した、その程度の約束、魔法に頼らずとも守れる

 信用の代償としちゃ安いもんだ」


「おにーさん、いいのかい?ギアスってのはほぼ一生モノなんだよ」


「かまわねェよ、とっとと掛けとくれ」


「たいした度胸・・・いや信念ね、じゃ掛けちゃうから受け入れてね」


マミさんが呪文の詠唱に続けて制約内容を唱え、タツアン氏が制約を復唱する


「・・・これでいいのかい?別段変わった感じはねぇけど」


「呪文は成功してるわ、心底受け入れてるみたいね」


「これでお仲間と認めてもらえるんだよな?」


「ええ、ギアスを悪用する気は毛頭ないけど、保険だけ掛けさせてもらったわ」


何故だろう、心の中に例えようのないモヤモヤが渦巻いてる


「・・・ごめん、マミさん・・・ギアスを解除して」


「えっ?」


「だから・・・今掛けた魔法を解除して欲しいの」


「どーゆー事?」


モヤモヤの正体はうすうす判ってる、自分への苛立ちだ


会ってすぐじゃよく知らないから、

疑わしいから、

古今東西、チームの崩壊は内部の裏切りってのが定番&テンプレだから


だからって魔法で強引に押さえつけちゃう?

それって、チーレム主人公が『こいつジャマだから潰す』って言ってるのと変わりないじゃない


うかつだった、軽率すぎた

ギアスってのは重いものなんだ、解除されるまで人の心の底を捻じ曲げる呪いなんだ

アタシが今までに読んできた物語にも、ギアスによって一生を台無しにされてしまった登場人物が何人もいる


彼は自分のポリシーにバカ正直な自由人だ

他人の心を、ポリシーを、魔法なんかで本人以外が捻じ曲げちゃいけない


「この魔法って本人が心底受け入れないと成功しないんだよね

 一生を縛るかもしれない魔法(ギアス)を受け入れたって事は、

 その覚悟だけで信用に値すると思うんだよっ」


マミさんは自分の顎に手をやって考え込んでるようだった


「普通は意識的ではないにしろ何らかの抵抗があるはずなんだけどね

 どうやら、ポリシーのためにはその他の何事も惜しくはないって御仁ね

 天晴れだわ、純粋すぎるバカよ・・・良くも悪くも」


ギアスが解除される、本当に済まないマミさん

後で魔力回復POTでもプレゼントしよう


「いいんかい?あの条件ならそのまま受け入れOKだったんだぜ」


タツアン氏、いやタツアンはニカっと斜に構えたポーズをとる


「アンタの事を信用したって事さ、でもあの約束は守ってくれると嬉しい」


置物、いや聞き役に徹していた鎧さんが握手を求める


「わかってるって、あの()に真っ二つにはされたくないからな

 こちらこそヨロシクっ、『不倒』のダンナ

 ダンナのことも知ってるぜ、オレは情報集めもシュミなんでね」


サイズの異なる手が握り合わされる、こーゆー構図好きだなー

・・・アタシゃ“腐”ぢゃないよっ


アタシたちのパーティは4人になった


「1つ気になったんで聞きたいことあがあるよっ

 貴方に天啓をくれた神様ってドコの神様?」


タツアン氏は得意満面の顔で


「オレの神様は、いつもここにいる」


右手の親指で自分の胸を指した


・・・たいしたロマンチストだよっ


「ゆるぎないポリシー主義って尊い、嫌いじゃない」


ぽそっと漏らしてしまう


「生ツンデレ、いただきましたぁぁっ!」


・・・マミさん、空気読もうよ ( ̄△ ̄)



拙い作品をお読みいただきありがとうございます


2章はこのお話で終了です、これより3章「迷宮」へと物語は展開します


私が物語を作る時は、まず頭の中に断片的なアニメっぽい動画が再生されるので、それを組み立てながら文章を書いてたりしてます


悲しいかな 私の脳みそには映像出力端子が付いておりません

こうやって文章で出力する以外に無いのです

ちなみに絵に関しては、まったく描けないと言う訳ではありませんが、イメージを形にできるほどの画力も実装されておりません


さらには、ここ数ヶ月(2017/05/30 現在)手の指はギプスで固定されており、

ペンはおろか、箸や洋服のボタンにも苦労する次第です (T△T)

描いてみたくとも“物理的”に不可能なのが悲しいっ


絵師さん紹介してっ!(≧o≦)


ブックマーク、評価、とかはあまり気にしてませんが

ご意見、ご感想、誤字脱字のご指摘、メッセージ等あると非常に嬉しいです

よろしくお願いいたします!


『メタもベタも極めてみせるよっ!』

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[一言] 「そのインナー、スパイダーシルクの糸を魔法処理して作り上げた透明度の高い特殊な繊維製・・・皮鎧よりずっと丈夫」 お臍を隠したいのだったら、ウールでメッシュの腹巻きでもすればいいのでは。 …
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