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2章-09 職がないよっ

ゲームだと、魔法使いってシステムで決められた呪文を選択して使用するだけの職なんだけど

実際は魔術師って日々魔法の研究する事がお仕事なんで、その人ごとに微妙な違いが有っていいんだと思う


結局、昨日は中途半端な時間になっちゃったんで、ダンジョン行きは次の機会に延期することになっちゃった

どーやら、この街名物らしい新人いびりを撃退しちゃったせいで、周りが騒がしくて

結局宿から出られなくなっちゃった・・・むー

宿屋の中でだらだら過ごす

夕飯は当然マミさんのおごり


そして一晩おとなしく寝て、今は3人で鎧さんの部屋で談話してる


「おーちゃんが気に病むことはないさ、ただ試合をした、それだけさ」


「新人脅して優越感に浸ろうなんて、恥ずかしくないのかしらね」


「これで懲りただろう、いい薬だよ」


当事者本人そっちのけで2人して昨日の事を話し合ってる

・・・あのー、そもそも最初に絡まれた時に、止めてくれてれば

ここまで大事にはならなかったような気が・・・


「どうして、立会い人まで買って出て、アタシに試合なんかさせたの?」


「僕が見たかったから」


カィーン!


「おわぉぅ!」


手にしたスプーンで鎧さんのこめかみを引っ叩く

もう何度かやってるので熟知している彼の弱点、ヘルメット内に響く騒音

フルヘルムだから耳もふさげない


平和的に対処した場合の限定だけど、うちら3人ってちょうど“3すくみ”になってない?


アタシは鎧さんに容赦ないツッコミを入れるけど、

マミさんの「さわさわ&もふもふ」にはあっけなく陥落する

鎧さんは、暴走したマミさんを遠慮なく掴み上げて、ぷら~ん とぶら下げる


お互いが弱点(?)を判ってるせいとは言い切れないけど、畏怖とか圧力みたいなものとは無縁のフランクなツッコミ&突っ込まれ関係ができてるような気がする


この世界に来てそう経っていないアタシにしてみれば、頼りになる先輩方なんだけどね


「そーいや、そろそろお昼も近いし出発しないか?」


宿からギルド会館まで歩いて15~20分くらいだったかな

ただし、そのルートは大勢の人々で賑わう広場を突っ切らないといけない


「ひょっとして、昨日の今日だから人だかりとか怖い?

 ここは一肌ぬいじゃいましょうかー」


マミさんが片手だけのガッツポーズを見せる


宿屋の正面出入り口ではなく中庭に出る


「鎧ちゃんはデカくて重いからそこに座ってー」


地面に胡坐をかく鎧さん


「おーちゃんはここ」


鎧さんの1mほど前に立たされる


「ではいくわよ~」


マミさんは2人の間に立つと詠唱を始めた

周りがうっすらと光って見える、いや光っているのは3人の周囲の地面


ぐらりと地面が揺れる、予想しない出来事にちょっとよろめく


真後ろにいるマミさんが「がしっ」と、いや「わしっ」と腰の辺りを支えてくれた


「動いちゃダメよん、バランス崩れると危ないから、でゅふ」


3人は燐光を放つ魔方陣の円盤に乗ったまま空高く昇っていった


これが某古典TRPGにあったフローティングディスクの魔法

実際に体験するのは初めてだよっ

でも確か高度3フィートまでだったはず


「本来はお宝を運ぶ為の呪文だけど改良したんよん

 動かないでねー、バランス取り難しいから・・・役得やくとく~」


ものの数分と経たないうちにギルド会館に到着

マミさんはずっとアタシの腰を掴んだまま離してくれなかった


着陸して魔法陣が消えると、彫像のように不動状態だった鎧さんは立ち上がり肩を回す

「久しぶりだなー、『フローティングディスク』」


「いちおー、魔法使い(メイジ)らしい所も見せとかないとね」


初めての飛行呪文体験・・・のはずなんだけど

やわやわと腰からお尻をず~っと揉まれっぱなしだったのでダイナシだよっ( ̄△ ̄)


ちょっと目立ってしまったので、騒ぎとかにならない内に会館に入ってしまおう

中に入ってしまえば、野次馬さんとかも来ないはず・・・


「こんにちわー、まってましたよ」


受付のレピンさんが、にっこりと微笑んでくれる

口の端にかすかに引きつったような所があるのは何故?


「こちらにお入りください」


カウンターの脇のドアから奥へと通される


ギルド内のあちこちから、ぽそぽそとつぶやく声が聞こえる

ネコミミが勝手に声を拾う


『一撃猫だ』『あれが一撃娘』『一撃女、ちっこいんだな』


なにその【シュミでヒーローをやっている禿げたお兄さん】みたいなアダナは・・・

や~め~て~

アタシゃパワーファイターじゃないのに

パンチ1発で敵を粉砕するシュミなんてない、甲斐甲斐しく尽くしてくれる改造人間の押しかけ弟子もいないよ~~~っ


短い廊下を進んだ奥の部屋

中は、応接室というより会議室


テーブルには『ギルド長』ビルナルドさんが席に着いて待っていた


「オーリくん、わざわざすまないね。

 ま~掛けたまえ・・・そちらの2名は?」


「保護者です」


「嫁です」


ついてきた2人がそれぞれ答える

・・・ツッコミたい・・・とくにマミさん


「まあいい、後見人と言うことで話を進めるとしよう、まずは掛けてくれ」


はうっ、スルーですか

器が大きいのか物事を深く考えないのか、はたまた今回の件は細かいボケは気にしてられない程に事が厄介なのか・・・


「わざわざ足を運んでもらったのは、昨日のシステム異常の件だ」


まー予想通りかなー、魔法OAシステムについては全く解らないので、技術的なことを言われても困るよっ


「険しい顔をしなさんなって、まずはこれを見て欲しい」


壁に貼ってある表のようなものを指し示す


============================


NAME    オーリ

Age     10

Tribe   Human

Crass   -

Level   1


Skills  ■■■■■


HP      265

MANA    252

STAMINA 236


Str     185

Int     213

Dex     199

Will    185

Luck     46


============================


・・・これ、アタシのステータスじゃない!

個人情報保護なんて概念、この世界には無いんだろーか


せめてもの救いは、各ステータスが調整後スキルランクによる値になっていた所、本当のスペックの1/4くらいの数値

でも、このステータス値って高いのか低いのか判らない


「これは、ギルドが冒険者登録に使っている『人物鑑定装置』の表示を写し取ったものだ

 これを見てどう思う? 『不倒』のアマドくん」


「すごいステータスですね、でも人外とか魔物の類とまでではありませんね

 大体Lv30くらいに相当するのでは」


「確かに数字だけを見ればそのとおりだ、

 だが忘れては居ないか?彼女はLv1なのだよ」


「言われて見ればすごい素質よね、このほぼ均一に鍛えられたステータス」


「その通り、Str(筋力)はLv30の戦士に近く、Int(知力)はそのLvの魔術師に近い」


そしてビルナルドさんはまじめな顔でアタシに向かって言う


「オーリくん、高いレベルで均等に高い能力を持つキミだが、

 不思議な事に該当する『職業(クラス)』がないのだよ」


アタシって、この世界では職なしって事になるの?

なんなの? このいきなりの「内定落ちました」通達( ̄△ ̄)



拙い作品をお読みいただきありがとうございます


やっとメインタイトルへと繋がりました

なお『フローティングディスク』ってのは、TRPGの元祖ともいわれるD●Dにあった呪文だったりして

どうやらこの世界では専門家が研究する事で呪文にアレンジが利くようです


ブックマーク、評価、とかはあまり気にしてませんが

ご意見、ご感想、誤字脱字のご指摘、メッセージ等あると非常に嬉しいです

よろしくお願いいたします!


『メタもベタも極めてみせるよっ!』


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