11章-09 鬼畜じゃないよ駆逐だよっ
一番の恐怖は去った・・・だぁれ? 「オマエが破壊した」なんていう人は
痛みすら感じないようにスライスして・・・あだだ・・・肋骨ビビ入ってるんだった・・・
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一番恐れていたハナサカ様、『覇那散華若興 』は沈黙した。
でも、進行してくる魔物が全てその場で消えるわけではない。
いくら「お約束が支配する世界」であっても、ハナサカ様が呼んだのでも支配してるのでもない。魔物たちには別の首謀者がいる。直接的には無関係なのである。
穂の部分が全部無くなって、すっかりつんつるハゲチャビン、金色のほそなが~いソーセージみたいだ
(ソーセージ・マルメターノの丸める前状態)
「ふむ、ハナサカ様は停止したようじゃ、これでもう感情を押さえて戦う必要は無い(※1)」
HAL長老は胸をなでおろした
「あとは魔物の排除のみですね・・・あ、呼吸は静かに、もう少しですから」
マー君の治癒魔法がアタシのヒビの入った肋骨をじわじわと治していく
長老は、10台半ばくらいに見える少年少女・・・よく似てるから兄妹だろうを呼びつけると指示した
「フムヤ、フムナ(※2)、伝令を頼む。 『ハナサカ様は沈黙した』と」
「りょーかい長老、残敵駆逐は若手の仕事なのですー」
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「はぁら~、エムゼトちゃんはシッポにじゃれるのすきですねぃ・・・」
「せんせ、だっこー」
「ピュータくんはあまえんぼさんですぅ」
「クスワンちゃんとハッパちゃんはお姉ちゃんなんだから喧嘩しちゃダメですよぅ」
地元の里では保母さんやってただけあって、タヌ子は子供たちをすぐさま掌握してしまっていた。
最初ロープに吊るされて木の上まで引っ張り上げられた時は、一部から笑われた事もあったけど
その(誤解されたままの)体形のせいか納得されてしまった。
「さぁ、久方ぶりに『ワクステの女豹』の復活かねぇ」
豹柄のぶかティ(一部横引き伸ばし)をきた天然パーマのオバチャンが立ち上がる
「忘れてもろたらアカンでぇ、『トラキチ団』もいるんやでぇ!」
縦縞服のオバチャン集団がつづく
「ウチもや」
「やったるで~」
「いてこましたる~」
呼応するように次々と立ち上がる母親集団
ママさんバレーどころか ママさんウォリアーだ
「子供たちの未来は私たちが護るーっ!」
「「「にゃーっ!!」」」
「はわ・・・はわわわ・・・」
育児ストレスの溜まった母猫(主に中年以降)の迫力に
半ば腰を抜かしつつ見送るタヌ子だった
「かぁちゃん・・・」
「ママー」
親たちが駆け出してしまって子供たちが不安げにざわめく
「みんなー、おねーちゃんとあそぼー」
コルセットの紐の端をつまんだ斜め座りのタヌ子(※3)の元に、子供たちは一斉に駆け寄る
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「伝令来たぞ! 『ハナサカ様沈黙、感情抑制不要!』ってさ」
「ありがてぇ、もう抑えなくて良いんだな」
「うぉぉ、あばれるぜぇ!」
治療が終わったので伝令の後についてったアタシは飛んでもないものを見てしまった
伝令をうけた村人たちの動きが変わった。リミッターが外れたかのような爆発力、
嬉々として魔物たちに襲い掛かっているのだった。
「にゃああ~っ!!」
「シャーーッ!」
『防衛の為の応戦』から『狩り』へ・・・
なんとな~く分かった気がしてきた。今までは抑圧されていた戦闘本能(※4)の枷が一気に外れた肉食獣
一見そんなに力強くは見えない村人の爪が、筋肉特盛りのオーガを切り裂いてゆく
アタシの知っているオーガより二周りは巨大な、凶暴化改造済みの魔物
見たカンジ戦況はほぼ一方的。オーガの好んで使う武器、大型の棍棒は森の中では十分に振り回せず、村人にしてみれば自分たちの庭のような森、どこに足場があるか解っている空中殺法。
一人が注意を引いたら別の者が死角から斬りつける
むー、昔よくやったっけ、ペアで交互にタゲ取って背後から強打入れ続けるハメ技戦法
いや、ちょっと違う・・・ダメージ効率が妙に悪い、意図的に急所をはずしてる?
あ~っ! この人たち わざと戦いを引き延ばしている? 獲物にあえて止めを刺さない、小突き回すにゃんこの狩りっ。ここはアタシなんかが手を出していい局面じゃない。
楽しみを奪ってはいけない。
アタシの役割は討ち漏らしがないかの確認、場所を変えよう
・主婦軍団
「ほら、そっちいったわよ」
「おっしゃ、トラキチ団フォーメーションや」
まるでバーゲンセールの戦場でチームプレイする主婦軍団
オークの小集団を追い込んで取り囲む、この後フルボッコな展開が目に浮かぶ。
かと思えば、体格の差を迫力で押し返してタイマンはっている猛者もいた。
「子豚ちゃん、おとなしくウチらの晩飯になりな」
モコモコパーマヘア、紫の豹柄シャツのオバチャン。この後に目をそらしたくなる光景しか想像できない
やっぱオークはご馳走なのかな?
むー、オバチャンたちに援護はまったく不要みたい、アタシは別の残敵を掃討すべく移動し始める
・・・まー、アタシにはミニMAPという簡易レーダーがあるから、容易い事なんだけど
発見!、敵影3! 距離50m
は・し・れー、好食の~、剔尅華撃断~
ひゅ、パァッ、ひゅぅぉぉ~~~ん
頚動脈から赤い霧が噴出し、達磨落し式に弾き飛ばされた気管と声帯の占めていた空間から呼気がもれる、オーク3頭ほぼ同時だ
野太い悲鳴は聞きたくないからね・・・あとは舞うのみ
妖しい輝きを放つ 鋼の爪が血を求め 裁きの時は来た!そこに跪け!
赤い霧の中花びらが舞い、骨と内臓だけになった亡者3体が崩れ落ちるように倒れる
令和浪漫に華が咲く・・・なんてねっ
「「「きゃ~~~っ」」」
突進してきたのは自分の分を倒し終えたママさんウォリアーたち
森の木々を足場に飛び上がると空中で舞う花びらをキャッチしてゆく
鍋や笊、めいめいが持参した器にお肉を確保してゆく
「血抜き完全、透けるような極薄スライス」
「完璧に精肉済みだわ~」
・・・一戦した後は、そのままオバチャンたちに囲まれる、逃走の選択肢は無い
「すっごいわぁ、プロの冒険者さんってこんな事もできるのね~」
「あらキレイな爪ね、薄っすら紅差して、とてもお似合いよぉ」
「あ、ワタシしってる~、その刃って東の国のヤツでしょ? たしか『サシミボーチョウ』ってやつ」
「聞いたことあるわァ、主に魚だけど、腕のよい職人が振るえばそれだけで数段味が良くなるって」
「不器用なアンタじゃ使いこなせないって」
「アンタこそナタかブッチャーナイフがお似合いよ」
ケンカ始めちゃってる人も居る、険悪そうじゃないから放置放置
その間にアタシは脳内MAPをスクロールして索敵・・・いま戦闘中な数組を除いてフリーは無し
掃討は完了してるって思っていいんじゃないかな?
大量のオーク肉を仕入れてホクホク顔のママさんウォリアー軍団、凱旋、帰路に向かう。
「ところで冒険者さん、料理は得意?」
「旅してるからそれなりに・・・ねっ」
料理スキルはカンスト済み・・・なんてことは言わない、謙虚たれ
「この薄切り肉、どーやって食べたらオイシイのかしらね」
「そこはま~かせて、簡単で美味しい食べ方しってるから・・・でも手伝ってね」
「はっはっは、アタイたちは不器用だけど、ずっと男たちの腹を満たしてきたんだ」
「夕飯楽しみだねぇ」
どこの世界もおばちゃんは姦しい
キライじゃないけどねっ
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テーブルの上には防火用の素焼き皿、炭火、即興で作ってもらった五徳、その上に鍋
コンブ出汁の大目のお湯が沸騰し始めてる
「コレはこーやって食べるんだよっ」
薄切り肉を箸でつまむと、沸騰した出汁の中で軽く動かす。極薄だからあっという間に火が通る。
一旦高く持ち上げて、火が通っている事を回りに見せる。
後は用意したタレの中にちゃぽんと浸けて・・・ぱくっ
「タレが冷やしてあるから猫舌でもだいじょうぶだよっ」
お手軽に出来て美味しい、ちょっと高級感(感じだけね)を楽しむにはコレだねっ
トン・・・いやオークしゃぶ~ タレはポン酢、ゴマ、ガリペパ、この部分は量を用意する為にママさんたちに手伝ってもらった。
「簡単だけどなんか繊細なお味ね」
「今まで食べてきたオークと一味ちがうわ」
「この極薄切りが秘密なんじゃないの?」
「コレじゃ物足りないってひとは、あちらのオーガステーキをどうぞー」
こっちは地元民の料理、オーガはティル村にもいるのでちょっと食べる気になれない
今回は宴じゃないのでマタタビジュースは無し。火使ってるからね、暴れまわってひっくり返したら大変
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「この村、どう変わっていくんだろう」
森の大樹の中ほどに建てられたLISAさん家、ベッドの上から窓の外の月夜を眺めつつ
アマゾネコ(※5)・・・じゃなかったLISA姐さんがつぶやく
「問題ないんじゃない?今までどおりに自由にやったら・・・あれ見てよ」
部屋の隅で抱き合って寝てるVAXとオギ。
ショタやおいやショタBLじゃないよっ、オギは寝るときはいつも黒ギツネの姿なんだから
これはこれで尊い・・・
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出会いがあれば、お別れもある。
アタシたち一行もいつまでも村に居座るわけには行かない。
この先村は隠れ里をやめる予定なのだ。課題もやる事も山済み、お邪魔し過ぎてはいけない。
「村長さん、お世話になりました。では、我々にも待っている人たちがいますので」
ピシッと決めた騎士然としたポーズで鎧さんが挨拶する
「ありがとうなぁ、まだまだ現役でいられそうじゃ」
「くれぐれも無理はしないようにお願いしますよ・・・きゅ!」
治療棟のお年寄りたちとはかなり仲良くなったマー君、心なしか嬉しそうだ
(種族の壁は超えられるんだ、信じあえるんだ、んきゅっ)
「にぃちゃん、次は負けねぇぜ」
「おぅ、また返り討ちにしてやるさ」
タツアン、ギャンブルしてたな・・・(¬へ¬;
おずおずと小さな女の子が歩み出る
「まじょさん、あたしおっきくなったらまほうつかいになる」
マミさん、よく見ると顔がぷるぷる震えてる。営業スマイルが崩れるのを必死にこらえてるんだ
「たいへんだぞ~、でもいっしょうけんめいお勉強したらなれると思うわよ」
ぷるぷる、ぷるぷる・・・
「がんばります、せんせ」 ちゅ
ぼふんっっ!
あ、オーバーヒートした。一回こけるが、帽子で顔を隠して立ち上がる、今の顔だけはお子供たちに見せるわけには行かない
「オギ、またこいよ!」
「おうよVAX、つぎに会うときまでに、オイラもっとつよくなってやる」
いいライバルできたねー
アタシはステイさせてもらったLISAさんへ
「冒険者同士、意外とどこかで出会えるかもしれないねっ」
「アタイも何人かの冒険者と出会ったけど、ここまで村に馴染んだヤツは初めてだ」
「でもこれから大変になると思うよっ、困った事があったら呼んで」
アタシはフクロウ便召還チケットをその手においた
「ギルドまで行かなくても手紙が出せるアイテムだよっ」
「恩に着る、達者でな」
そろそろ出発しようと背を向けたとき、駆け寄ってくる集団が
「せんせ~~」
「いっちゃヤダ~~」
児童避難所でタヌ子が預かった子供たち、駆け寄ってタヌ子を取り囲む
小さな子達がベソをかく、んーこれはつらいなー、幼稚園の卒園式だ~
「みんな、またくるわよ、おやくそくですぅ」
腰を落とし一人ひとり握手とハグでこたえてゆく
「げんきなあかちゃんうんでね~」
あうぅ、最後まで誤解解けなかったのですぅ・・・ぅぅ(T△T)
拙い作品をお読みいただきありがとうございます
猫の森、いよいよお別れです。やっと帰って来れますね。
村はしばらくは事後処理で忙しいでしょう、そして落ち着いた頃に未曾有の危機を迎えるなんて展開・・・これはまだ少し先のお話
【解説】
(※1)もう感情を押さえて戦う必要は無い : 憤怒や殺意の負の感情をむき出しにすると、ハナサカ様の攻撃ターゲットに含まれてしまう。そしてそれは稼働レベルを上げることに他ならない
(※2)フムヤ、フムナ : 「FM-8」と「FM-7」 ともに富士通のPC。
この辺りになると使った経験のある人もいるかも、FM-8には磁気バブル記憶装置というHDとフラッシュメモリの中間のような不揮発性記憶デバイスが内装されていたが、作者は他で見た事が無い
FM-7は現役当時最もR-18GAMEが多く出されたPCとして有名?
作者はNEC派でした。
キャラ名に法則性持たせてたらなんか「うぽ○て」みたくなってきた (¬▽¬;
(※3コルセットの紐の端をつまんだ斜め座りのタヌ子 : こらタヌ子、ししょーはそんな淫らな子に育てた覚えはありませんっ!W まータヌ子の必殺技『杏式だっこ』なんだろーけどさ
ふと思いついた!巨人族の女性にこの技を伝授したら人間サイズ勢は総崩れになる。あまりにも危険なので、間違っても口にしないようにしよう!
(※4))抑圧されていた戦闘本能 : ハナサカ様が起動してしまわないように、穏やかに暮らしてきた。
狩をするときも冷静に、それが里の掟
殺意、悪意、闘争心等は、ハナサカ様の排除対象と認識されてしまうので強く抱いてはいけない。
(※5)アマゾネコ : エルドラドはこの辺りにはない・・・いったい何人がこんなネタわかるのだろうか
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『メタもベタも極めてみせるよっ!』