11章-08 『覇那散華若興』だよっ
すみません、ちと遅れました。
世に言う『最終(終末)兵器』とは、以下の条件があるものなのだと思うよっ
・火力
ぶっちゃけ「被害を与える能力」、破壊だけとは限らない、「洗脳」でも「吸収」でもいい。大切なのは、確実に効く事、効果が行き渡る事
・適応力
対抗策をとられた場合に対処する能力、大抵は火力の増加や形態の変化など「進化」するケースが多い
・継続力
目的達成まで稼動し続ける事。使用者が必要ならそれを保護する必要もある。一瞬全破壊の爆弾ならまだしも、じっくり侵略(侵食)していくタイプならギリギリわずかに残った所から逆転されるケースもある。
大抵はどこか不完全な箇所があって、そこを突かれて無効化されるのが古今東西のお約束。
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うん、フラグってやつの恐ろしさを実感
ただでさえこの世界は『お約束』の横行する世界
一部の人の言う「テンプレート」略して「テンプレ」が世界の流れを作るらしい
タッ、トッ、タッ、トッ、タッ、トッ、タッ、トッ ・・・・・・
なんか、聞いたような、聞いたような気にさせられてた様なリズム
「ハナサカ様の警報だー! 里周辺に侵入者!」
「緊急事態だ! 『覇那散華若興』様が起動したぞ!!」
あ~~言わんこっちゃない
「戦闘可能な者はウォークローを忘れるな」
「子供たちの避難をはやく!」
むー、統制取れているにゃあ。自由人の集団とばかり思ってた、ネコと猫人は違う
自分の先入観 ちーとばかし恥ずかしいじぇ
「マミとアンズは育児棟の、タツアンは治療棟の避難手伝いを! マー君は打って出た村人さんの援護、僕は前面に出て食い止める!」
鎧さんがパーティに指示を出す、
的確な指示・・・なんだけど
「アタシは? ・・・いちおー子供だからお留守番?」
鎧さんの腰アーマーの端を引っ張って聞いてみる
「あ、おーちゃんは自由にして」
気を使われて・・・いる?
「何もいう気も必要もないよ。 マルチラウンダーのおーちゃんは、指示を出してないときがイチバン強い!」
意味が違った!∠(≧△≦)ゝなー
「オーリ、ウチらも行くぞ!」
LISAさんがアタシの手を引く、身長差の都合で引きずられるというより宙を飛ぶ身体
「子ども扱い、しないんだ」
「それは、プロ冒険者に対して失礼だろ?」
「そう言ってもらえるとありがたいよっ」
駆け込むように武器庫らしい小屋に入る
「さ、好きなのを選べ」
壁一面の棚に似並ぶ鋼の爪。これが『ウォークロー』か
爪の長いの分厚いの、直線的なのや湾曲したの、サイズも爪の数もいろいろだ
使ってみたい・・・でもいきなり実践ってのは少々不安が残る。
手を覆うクロー系列は剣と違って手とのフィット感がものすごく重要、手に合わないクローは指を痛めることもある、ここはガマン。
「わるいけど、自分のを使わせてもらうよっ」
「わるくなんかないさ、そーそいや腰に剣下げてたな」
「剣だけじゃないよ、斧でも槍でも弓でも一通り・・・器用貧乏なんだよっ」
んーと、今日のセレクトは・・・コイツで行こう
薄桃色の細く長い鋼の刃『魂葬桜花』(※1)、『魂葬牙禍』のプロトタイプ、ひとたび振るえば舞い散る桜吹雪の中に対峙者は消えるという
「凄く長いウォークローだな」
「剣と爪のあいのこだよっ」
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- 育児棟 -
「あわてず騒がず並ぶのですぅ、よい子は押し合わずに列を作りましょう
ちゃんとよい子にしてたら、また抱っこしてあげるのですぅ」
タヌ子は手馴れた感じで子供たちを誘導、
「は~い、ちょっと揺れるけど怖くないよー、静かに座ろうね~」
光る円形魔方陣が子供たちを乗せて垂直に舞い上がる。
お得意の魔改造呪文『フローティング・ディスク改』
「うわー、まほうだー!」
「とんでるー」
登った先には樹上避難所があり、ママ猫さんたちが素早く子供たちを回収してゆく。
「この分ならまもなく子供たち避難完了ね、大人は自分で登れるって聞いたから」
「むふー、次でラストですぅ」
「ほいさっ、むむむむむ・・・ふーっ、
じゃあ治療棟のほう行ってくる。 子供のお世話は任せた!」
マミさんは、次の避難場所へと駆けていく
「あうぅ・・・ママサン達は皆行っちゃったし、どーやって登ればいいのですぅ(※2)」
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- 治療棟 -
「お爺さんたち、ボクは村を守って戦ってる人たちの援護に向かいます」
「行ってこい犬の、癒し手は貴重じゃ、ワシらよりも護り手を守ってくれ」
「俺っちも後からいく、頼んだぜ!」
タツアンとマーベリックは軽く拳をぶつけあうと、それぞれの持ち場へ向かう
「手足の不自由なンは後何人いる?」
巧みなロープワークで安全確実に怪我人・病人を運んでいく。トレジャーハンターというよりレスキュー隊
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- 村の外 -
森は隠れ里らしいけど、森全部が村となっているわけではない。
ワクステ村とは居住設備を集約した里の一部に過ぎない。
ただし、最終防衛ラインでもある
さすがは樹上生活者、木々を走り枝から枝へと跳び、アニメやマンガの忍者のように駆け抜けていくLISA姉さん。ついつい光翼を開きたくなるのをぐっとガマン。
付いて行けない訳ではないのだけど、初見のコースを疾走するようなもので反射神経が疲れる。
アタシゃ地元民ではないのだよっ
「しっ・・・敵だ」
LISA姉さん、ハンドサインしながら急停止、木々の隙間、地上に魔物が見える。
オーガ1体、オーク3体、ぱっとした認識ではそんな感じだけど大きさも体形も違う。
豚顔オークなんか やや引き締まって少しイケトンなってるし、オーガはオニクマシマシ。
どちらもやや実践向き太マッチョ、
念のため見といたミニMAPのアイコンも赤、完全に魔結晶入りの魔物だ、多分任意的に強化されている。
「とりあえず、倒しちゃっていいのよね?」
「倒さねば倒される。しかもそれは自分だけとは限らない」
「じゃ、デカイのお願い、オーク3頭はアタシが料理する」
薄っすら桜色の6枚の刃が風のように、光の糸を紡ぐように走る
舞う、軽やかに・・・ 舞う、艶やかに
薄赤い霧、舞い散る花びら・・・嗅覚を気にしなければ美しい・・・(※3)
人間のアタシは、少々鉄くさいかなって程度だ
「秘技、剔尅華撃断、別名を『桜大閃』っ!!」
血は霧となり肉は薄い花弁となって風に舞う
頭部を除きほぼモツと骨だけになったオークが、崩れるように地に伏せる(※4)
「オラァっ! よそ見してんじゃねぇっ」
LISAが飛び掛るように突っ込むと、棒立ちするオーガの胸板にクロスする傷跡が刻まれる
大胸筋と鎖骨を的確に断ち切られたオーガは腕を振り上げる事もできない
「これで真正面は安全地帯だ、逝きな」
正面に急接近しての鳩尾へのボディアッパー、斜めに深くクローが突き刺さったところで拳に捻りを入れる。うわ、こりゃ心臓掻き回しだ。
「あんな大物を・・・ナイスファイト!」
「そっちこそ、凄まじい技だな」
ひらりと花弁が1枚落ちてきた。LISAの目の前に
ひょいと空中にあるのをつまむ姐さん
「なんだ? これは?」
「多分オークの肩ロース、たべられるかな?(※5)」
「火を通せば食えるんじゃないかな」
不謹慎かもしれないけど、これが野生だよっ がおーっ
もちろん、魔物化してないオークさんは食べる気ないよっ
「・・・きこえる・・・ハナサカ様に何かが?」
アタシには何も聞こえない
「オーリ、祠へ向かうぞ!」
LISAさんが走り出す、アタシの手を引いて・・・
魂葬桜花は長く鋭くて こういう時は危ないので、素早く腰のウェポンラックに移す。
鞘は付いてないけど刃は内側、アーマースカートがあるから安全
走り抜ける傍ら、村人さんの戦っている光景が目に入る。見るからに善戦してるので気にせず進む。
ツーマンセルで木々の間を飛び回り巨大オーガを翻弄する様は、さながら『○撃の巨人』・・・
お約束通りの後頭部狙いだー
- 社 -
覇那散華若興 、黄金に輝く1本のの巨大なネコじゃらし
広めに間合を取ったLISA姉
「注意しろオーリ! そいつ自体は移動しないが、穂先が飛び出し、強制的に自らのミニチュア(リアルサイズのネコじゃらし)を握らせてくるんだ!
そうなったら最後、完全に操られてしまう、大地全てを花畑に変えるまで・・・」
うわ、自立型侵略装置じゃん、
警報音は音量最大で流れ続けてるし、全体が光ってる・・・完全に起動してるよっ
「LISAさん、これどーやって止めるの?」
「今までは、里に侵入した魔物を撃退すれば止まったけど・・・
ちぃっ、すぐ近くまで来てやがる」
「ならアタシが打って出て食い止めるよ、LISAさんはハナサカさんを何とか停止して」
「打って出るのはアタイの役だ、我々猫型獣人はハナサカ様の指令には抗えない」
言うだけ言い残し、突風のように飛び出していった
確かに放っておいたら世界とまでいかなくとも大陸1つ滅ぶね、これ
勝手な推測だけど、
本体を叩かないと・・・埒が明かないのかな
とりあえずブロードソード2本を抜き突進、魂葬桜花は対魔物用で対物には向かない。
がいんっっ!
強固な見えない壁に弾かれ近づくことができない!
考えろ!
魔力障壁? あの結界は猫型獣人のみを通し、別種族を弾き返す
だけど、猫獣人は操られてしまうのだ
どうやって種族を見分けてる? どうやって敵意・悪意を判断してる?
・・・多分、意識&感情だ、その部分に特化したAIを持ってるんだから
なりきれ! ネコになれ! 憧れつづけた猫獣人、でも心のコアだけはアタシ自身だ!!
レイヤー魂を爆発させろ!
硬かった障壁がなんか押せば凹む圧力力場のように感じる
気合をこめてそのまま壁をこじ開けて突進する、
A▼フィールドを引き裂くのって多分こんな感覚なんだろうにゃあ
分厚いウレタンの塊を引き裂きながら全身を押し込んでいくような感覚・・・
「あの子は何なんだ? 別種族を弾く障壁をもがきながら突き抜けていくぞ」
抜けたっ! 貴重なアーティファクトなんだろうけど危険すぎる。壊させてもらうよっ
ガィンッ!
打ち込んだ剣が難なく弾かれる。これ、金じゃない
でなきゃ金属棒にかすり傷1つ与えられないはず無いもの
曲がりなりにもミスリルコーティングしてある剣だよっ
「なら、これならどうだぁっ!」
インベントリから取り出したグリップつきの細長い箱、Ra-Set2(※6)
ガコーン!
1発でダメなら連打だーっ!
ガコーン!ガコーン!ガコーン!
ぎぎぎぎ・・・・
金属の柱なのになぜか動いて曲がってアタシの身体に巻きつく・・・硬くて曲がってパワーを発する金属魔道装置・・・まさか、これが噂に聞くオリハルコン?
噂には聞いたけど超高密度エネルギー金属、武器よりも魔道装置のコア部品に使われるらしい
ミスリルより硬く革よりもしなやか、アダマンタイトよりレア
締め上げてくる、鎧の上からではあるけど、・・・苦しい
フルプレート鎧とは違って、動作自由度重視の軽鎧だから、打撃斬撃には耐えられるけど、締め付けに関してはあまり効果がない
その上専用インナーは防刃ではあるもののごく薄でクッション性はほとんどない
さらに致命的な事にアタシ自身の身体にもほとんどクッション性がない(T△T)
「くぁっ・・・は、はなせっ! 放さんかにゃんこー!!」
・・・・・ぴしっ
からん・・・
からからからん
ぴしっ・・・ぱらぱらと穂先から縮小版のロッドが零れ落ちる
そして全部が抜け落ちてただの曲がった金属柱となると、装置は動きを止めた
- この大地は花畑にならずに済んだ -
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「まさか、あんなくだらないダジャレが機能停止のキーワードだったなんてね」
「「「・・・」」」
拙い作品をお読みいただきありがとうございます
感情を読み取り、奥に潜めた敵意・悪意を判定する演算力
高度な人工知能は、あまりにもくだらないギャグには耐えられなかった・・・?
【解説】
(※1)『魂葬桜花』 : 本文でも言ってるけど『魂葬牙禍』のプロトタイプ、逆刃刀3連装の大型クロー(桜花の方が長い)
違いは刃渡りと色合い、刃は薄っすら赤みの差した脚反りの日本刀風で返しのエッジは無い上、長さも長めなので突くより斬ることに主眼を置いた設計。ここから剣術と格闘に両用できるバランス調整、負傷力と与える苦痛を強化して生まれた完成形が『魂葬牙禍』
『振るえば舞い散る桜吹雪』とは、実は血煙と肉片・・・遠目に見る分には美しい
(※2)どーやって登ればいいのですぅ : 実はタヌキは木登りが苦手、やってやれないことは無いらしいけど、イヌよりマシな程度。 駄肉タヌ子の場合、言うまでもない (¬▽¬;
余談だけど、二次元限定でタヌキと混同がやたら激しいアライグマは、木登りは得意とのこと
シッポに縞があるのはアライグマ! 本来外来種なのにタヌキを語って忍者しているのもいるとか・・・
(※3)薄赤い霧、舞い散る花びら・・・嗅覚を気にしなければ美しい・・・ : 霧は魔物の血、花びらは抉られて飛び散った肉片
回復させない為のミンチ製造機の『魂葬牙禍』に対して)『魂葬桜花』 は刺身包丁、 てっさ(ふぐ刺し)のような薄い破片が多数舞い散る
(※4)頭部を除きほぼモツと骨だけになったオークが、崩れるように地に伏せる : はっきり言ってオーバーキル、やりすぎ。全骨格筋をそぎ落とされてるから失血と頭部への血流切断が無かったとしても生きたまま倒れる。
(※5)たべられるかな? : 世界によってはオーク肉が一般的に食べられてる事もあるらしい。
高級食材にはゆうめいろいどこでろ
この界ではMOB魔物は時間経過で死体が消えてしまう。(そして再湧きする)
もし魔物素材が欲しいなら、消える前に採取しておく必要がある。
(※6)Ra-Set2 : 特殊鉱山で使われたパイルパンカー・・・じゃなくて掘削機
トワーフ技師のラガオーさんの発明、自由にいじって良いと渡してくれたけど返し忘れてた
(10章-08 参照)
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『メタもベタも極めてみせるよっ!』