10章-21 精霊も大変だよっ
炎属性と氷属性、どっちか1つあげるって言われたら炎を選ぶ人が多いんじゃないかな?
数センチ程度の炎、ちょっと触れば火傷。同サイズの氷、しばらく握っててシモヤケ。
高温に上限は無いけど低音には絶対零度というENDがある。
氷(低温)ってのは、ある程度以上極まったパワーが無いと大して戦力にならない?
「氷の短矢」って、結局は物理ダメージだしー
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ぷっ、こりゃすげえっス
タツアン、笑っちゃいけない
楕円・・・正確には巨大な拳の跡にぴっちり押し込められプレス加工された氷河の女王アラハト
どー見てもTOONだねぇ(※1)
上位精霊であったとしても、カミサマのダイレクト・アタックに抗う術はない
もちろん必中、神様はミスをしない、ローカル神ならちゃめっケを出すこともあるが。世界をつかさどる上位の神様は生真面目だ。そしてとても多忙なので事を終えたらさっさと帰ってしまう、なにせ世界全部をたった22名で切り盛りしているのだから。この辺りはマー君からの受け売りね。
必殺技(?)を放った当人は、術の反動でへたり込んでいる。
「きゅ~~・・・体中の力を持っていかれたカンジだよぉ・・・」
『きゅ~』がオノマトペなのか口癖なのかあやふやな気がする。
どうやら、イフリートにもらった力により、神様との回線というかパイプというかが太くなったらしいんだと。
大幅なパワーアップだけど消耗も大きくなってしまったようだ。
微調整に関しては、本人にがんばってもらう以外に無い。アタシゃ聖職者じゃない、専門外だよっ。
すっぽんと「げんこつ型」からプリンかゼリーのように抜け出ると、メコメコ、パキパキと身体を再構成してゆくアラハト。めり込んだ地面自体が氷河の一部なので、本体部分と再接続してる分回復が早い
「わっちの・・・負けじゃ」
転倒どころか全身を地面の窪みに詰め込まれたのである。(※2)
氷河の女王は負けを認めた。
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「なんで今回は、我々にあのような試練を与えたのです?」
パーティリーダーでかつ地元民の鎧さんがアラハトに訊ねる。
「それに答える為には、精霊について話す必要があるのー」
氷河の女王アラハトに先導され、高地にあるヴァーレルから氷河に沿って下っていく
歩いて行くとそれなりの距離があるのだが、今回はアラハトの力で“動く歩道”になっているのでラクチン。
「精霊というものは、みな繋がっておるのじゃ・・・寄り代の無い時は形すら持たないからの」
・・・一つにして全、どっかで聞いたなー
「上位精霊は下界と元素神の間を定期的に往復し、この世を動かす力の流通を担うのが役目」
そーいやイフリーター・・・いや イフリートも言ってたかも、そんな事
「わっちもしばらく地上で過ごしたら、寄り代を離れ交代するのじゃ。
その時に細かい知識等は共有化されるので、引継ぎに問題は起こらない」
これも聞いたなー
寄り代から離れられず、限定的な情報しか入って来なかったて・・・とか
「そして聞いたのじゃよ、行方不明になっていた精霊が帰ってきたと・・・」
ぶっちゃけ、拉致られて通信リンクの切れていた精霊が、再接続してきた・・・って事だよね(¬~¬;
情報共有って言うとシステム的に整ってるイメージするけど、ある意味プライバシーなくなってるよね。
アタシは精霊じゃなくってよかったかなーって不謹慎ながら思い始めてたりする。
「水元素神と火元素神は互いに対となり、バランスをとりあう間柄となる。その眷属も同様じゃ」
「で、私達にイフリートのニオイでも嗅ぎつけたってワケ? ご明察、私達のパーティが寄り代を砕いて開放したわ」
「そうじゃ、イフリートから何かもらってないか? わっちはそれが気になっての」
「もらったわよ、欲しかったもの、欲しくても手に入らなかったものを一人1つずつ・・・」
「ふむふむ、臭いとは違うが似たようなものじゃ。 わっちはそれが気になったのじゃ」
マミさんとアラハトの会話を聞いてると切に思う。精霊の組織ってのも色々大変なんだなー
知識の共有って、元々1つだった思考を中央に集めて統合してから各ノードに分配されるタイプ(※3)と
個の状態を保ったまま知識データ交換しあい均一化するタイプ(※4)、どっちなんだろ?
固定のハードウェアを持たないエネルギー生命体(?)だけに判断は難しいね
「おかしいのぅ、数が合っておらんぞ、一人ひとつ力をもらったはず」
「ウチのししょーはちょっと特殊ならしく、うまく力が渡せなかったと聞いてるのですぅ」
「弱っていたとはいえ、イフリートも情け無いのぅ。水元素神陣営ば慈悲深いことでは定評があるから見逃せんのじゃ」
「・・・で、本心は?」 (((¬▽¬;>>
「炎陣営の株ばかりが上がるのは放っておけない」
マミさん、曲がりなりにも上位精霊にツッコミ入れる? 即答してしまうアラハトの方もアレだけど・・・
元から対抗意識強い間柄だったのね (¬▽¬;
なんて思っていたら、こっちに詰め寄ってきた。
「な、なんか力は欲しく無いかぇ?」
むー、鼻息荒いよー
スキル、能力、まにあってま~す。
今の状態でさえ、自重と手加減に苦労してるのに
「の、の、せめて知識だけでも」
「・・・で、本心は?」 (((¬▽¬;>>
「頭に炎の知識だけあるのはバランスよくない、断固阻止したい」
つい先ほどからマミさんのツッコミにいいようにあしらわれているアラハトである。
そういえば聞いたことがある。
基本はエネルギー生命体である精霊というものは、言い換えるなら情報生命体とも考えられる。
すなわち、精霊はルールや契約に強く縛られる存在であり、その辺りをうまく使って精霊を使役するのが精霊使いだとの事。
自分から勝負を仕掛けて、自分の設定した勝利条件で負けを認めたことにより、本人の意思にかかわらず立場的に従ってしまっているのだろう。
「せめて知識だけでもよいから持っていくのじゃ」
うわー、このままだと永遠に言われそう・・・
アタシは半強制的に吹雪石の知識を受け取らされた。
「火炎石の知識と同程度に復習しておくのじゃぞ」
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「さぁ、着いたぞよ」
「これが・・・氷河の終わり・・・」
氷河の終わり、それはビジュアル的にソーゼツなものだった。
普通の“水”の河川ならば、緩やかに海へと流れゆくだけなんだけど、巨大な氷がゆっくりと流れる氷河の場合、当然のことながら水は氷として固まってるわけで、その先の湖に迫り出す崖のように水上に伸びている。
時たまその崖の先端が落盤して水中に落ち、ゆっくりと溶けて湖の水となる。
大体1日に4~5m、後ろから新たな氷が押し寄せて崩れ落ちては水となる。無限に続く氷山崩壊・・・アタシも動画で見た程度だけど、目の当たりにすると自然の凄さを感じるよっ
「この石には圧縮された吹雪の力が宿っているのじゃ」
氷河の精霊女王は懐から結晶を取り出すと、端っこを少しだけ齧り氷河の終点の水面へ向けて放り投げた
湖の水面が白く凍りつき、道となって先へと延びてゆく
「さらばじゃ冒険者たち、わっちはここでお別れじゃ・・・ここからは管轄外なのでな」
気候に関与する上位精霊は担当管轄範囲に関しては厳格に定められているらしい
考えてみたらすぐにわかったのだけど、この世界では高度や地熱、風や日当たりに加えて精霊の力が気候を決定する。
細かい所はある程度の裁量を与えられているとのことが、上位精霊にとって上司は元素神なので絶対的に逆らえる訳も無く(※5)宮仕えの縦割り社会をホーフツとさせる。
氷河の端、崖の少し手前が四角くへこむ。よく見ると階段が先ほど作られたばかりの道へとのびている。
「出発だよっ!」
いま、アタシ達は湖を渡り新たな地へと向かう
拙い作品をお読みいただきありがとうございます
おかげさまで、これを書いている最中に1000万PVを突破いたしました。
ひとえに皆様の熱い御支持の賜物です。
炎系列にやたらと対立する氷河の女王なのでした・・・
ちと伸びてしまいましたが、北国ヴァーレル編はここで終了です。
この後ツンドラ(寒冷荒原)・ステップ(草原)・サバンナ(熱帯草原)と進み帰路につく予定
素直に何事も無く進める予定はまったくないけど・・・(¬▽¬;
【解説】
(※1)どー見てもTOONだねぇ : 昔々の海外からの輸入アニメに多用されたスラップスティックな表現、有名所では「ト○とジェリー」などハ○ナ・バーベラ系列とか
(※2)全身を地面の窪みに詰め込まれたのである : 女性型の身体は、氷河の一部を変形させた『寄り代』であり、本体はエネルギー体で氷河全体に拡散分布しているとの事。
アラハト「精霊じゃなかったら死んでたぞ」
(※3)中央に集められてから各ノードに分配されるタイプ : 基本的に「全体で1つ」で、各「個」はそのノードに過ぎないタイプ。例を挙げるなら「StartTrek」の「ボーグ」や「ノゲ○ラ ゼロ」の機凱種、「試練の迷宮」の魔道AIもこのタイプ、なろう系でよくある並列分散思考もこれ
(※4)個々の状態のままデータ交換しあうタイプ : 基本は「個」、ハード分散型、親玉サーバーが無いのが特徴。有名な例は「攻殻○動隊」の「タ○コマ」など
(※5)元素神なので絶対的に逆らえる訳も無く : 4名の元素神は、創造神の次の地位を持ち、22名いる事象神より上位の存在である。
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