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10章-16 アリムタ・バトルエンジェル だよっ

気の向くまま旅をして、行く先々でいろんな事に鼻を突っ込んで

大きな運命の流れなんてのは無いのかと問う人がいる


アタシは勇者でも英雄でも無いただの異邦人(エトランジェ)

アタシはもっとこの世界を知りたい、もっとこの世界を味わいたい、もっと好きになりたい

知りもしない、好きでも無いものを守る? アタシにはムリだ、動機が生まれないよっ


好きでもないものを地位や義務感から守るのが英雄

よく知りもしないものを感情に任せて戦ってしまうのが勇者


【この作品は、吾流峰子 のオリジナルです [海賊版サイト対策]】

本網站的所有圖片、文章的版權帰 吾流峰子 所有、未經許可禁止拷貝或使用和銷售。

original: http://ncode.syosetu.com/n7904dz/

――――――――――


M・B(モータル・ボール)選手には大きく区分けて『技巧派』と『武闘派』の2タイプがいる。

技巧派はいかにボールを確実に保持し、コースを駆け抜けるかのテクニックに重みを置いているのに対し、武闘派はボールは相手を張り倒して奪うもの、バトルこそがM・Bの華だと位置づけている。

きっかりと派閥が分かれているわけではなく、技巧派選手もバトル攻防はするし武闘派選手が華麗な走りを見せる事もある。つまりは『どちらかといえば』なのである。


このレースでは

【技巧派】 タキエラ、スグラ、カジャティ

【武闘派】 ザリーキー、ギヌヴァ、ガシュザン

こんな分類になる。スグラやガシュザンはオールラウンダーとも言える



「やはり機先を制したのは 11番 タキエラ選手!『洋紅色の疾風(カーマイン・ゲイル)』の面目躍如だァ!!」


やっぱトップ選手は速い、急がないとゴールされちゃう


――――――――――


「やはり許せねぇ」


「そちらこそ邪魔をしないで欲しい」


対面し睨み合う2名、先行するカーキグリーンの丸みを帯びた鎧、88番 カジャティ。

斜め後方から速度を合わせる青い鎧、22番 スグラ


「おまえが当たらねえ攻撃振り回すもんだから、ボール取りに行きずれぇんだよ」


「そっちがちょこちょこするから、変な挙動するんだよ」


構える二人、まさに一触即発


「先行グループは、ボール争奪戦で対立している模様」

「どうもお互いの行動が、相手の妨害になってしまったんでしょうなぁ」


両者が一気に間合いをつめる


鉄球腕(フレイル・アーム)!」


先に動いたのは22番 スグラ、腕から鉄球が放たれる


「ケッ、バカの一つ覚えが」


88番カジャティ、身を捻るようにギリギリで鉄球を回避しつつさらに肉薄する。


「そうかな」


シャーッ! ガインッ!


急速に戻ってきた鉄球がカジャティの側頭部を打つ

その衝撃でねじれるように回転しつつ転倒する


「おやっさんにチューンナップしてもらったこの鉄球は戻りの隙もほとんどない、おとなしく寝てな」


「甘ェ、イィ~ヤッ!!」


転倒したカジャティ丸い背中の装甲で体を支え、そのまま回転するようにスグラの足を払う


「コレだけで終わるとは思っちゃねぇさ、ハァッ!!」


足を払った回転はそのまま、支点を背中から腕に変え逆立ちするような体勢から激しく振り回した脚を転倒しつつするスグラへと叩き込む。ブレイクダンスかカポエラのようだ。

蹴り飛ばされたスグラの身体は氷壁に叩きつけられ、めり込むようにそこで止まった。


「俺がこれまでどれほど転倒してきたのか知らねぇみたいだな、俺にとって転倒はダウンじゃねぇ・・・ちっ、ヘルムが歪んじまいやがった」


――――――――――


急げ急げ、コースのスロープ(傾斜)だけじゃ加速が足りないから、全身を左右に振って加速し続ける。


前にいるのは、44番ギヌヴァ選手? でかい・・・

これだけ大きければ効果も高いかも。


加速しつつその背後に接近・・・風除け、押しのけられた気流が渦を巻いてアタシの背後を推してくる。ここでぐんと加速、ぶつかる前にラインを変更、このときも風の流れがアタシをはじき出してくれる。

昔のレースマンガの定番、スリップストリーム(※1) さぁ、きっと狼さんのお話?ロータスよりポルシェ派でしたーっ(∂~∂)


ギヌヴァさんクリア! 攻撃される前に離れてしまおう。


そろそろ先頭集団に追いつく頃のはず。視界の端に青いものがチラッと見えた。

うわ、スグラさん壁にめり込んでるよ、こっちでも激しいバトルがあったんだろーね。


・・・って、やっと追いついた、11番 赤鎧のタキエラ選手

走りに特化した選手なら、バトルに持ち込めれば・・・イケるっ!(≧▽≦)9


こーゆーのは奇襲とゆーか思い切りが大切、一気に間合いをつめる!


「パイル!!」


斜め後方から近づくアタシにエルボーの迎撃、肘からはメタル製の杭が飛び出してくる

でも明らかな誤算が1つ・・・その高さじゃアタシの身長には届かないんよ


「11番 タキエラ選手、迎撃に失敗! 攻撃は空を切る」


「彼女は選手の中では小柄ですからねぇ、自分より小さい相手と戦った事がありません」


実況解説が聞こえる

それならばなおさらの事、低位置から攻めるっきゃない


エルボーを掻い潜ると正面に回りこむ、死角にすっぽりだー(※2)

そして、爪先・・・滑走ブレードの先端にぃ・・・飛び乗るっ!!


ご存知の通り、ブレードの先端にはブレーキ用のエッジが付いている

急ブレーキが掛かって前につんのめる

そのタイミングで両脚を刈るタックルからの突き押し、巨人族相撲(ギガントスクイーズ)で使った技『水車落し』だよっ (∂▽-)-☆

まー、格闘スキルで戦ってもいいんだけど、女の子の下腹部を拳でブチ抜いちゃイケないと思ったんよね。 一部のマニアな人には喜ばれるかもしれないけど・・・腹パン反対~

なになに? 頭部ならいいのかって? アタシかてオンナノコ、顔面は殴られるのも殴るのも嫌。

でも後遺症を残しかねないボディより、1発KOを狙える こめかみ(テンプル)顎狙い(アッパー)は有効なんじゃないかと思う


独り言は程々にして、手から離れたボールをスライディングするようにキャッチ!


「一風変わった投げ技で、タキエラからボールを奪った 00番 オーリ」


「追う側から追われる側になりましたねー、誰が仕掛けてくる?」


「現在この付近にいるのは44番 ギヌヴァ選手、88番カジャティ選手、序盤に転倒した99番ガシュザン選手は現在追い上げ中」


「なお、33番ザリーキー選手はコースアウトにつきリタイヤ」


「ぬぅんっ!」 ボギュン!


十中八九、爆発物を利用した物体の射出音、反射的にブレイク(※3)を掛ける

コース右サイドへ向かっていたラインを折り曲げるように左へ跳ぶ、さながら背面跳びのように。


回避行動を開始しながら目に映ったのは、高速で伸びて向かってくる5つの蛇、いやこれは指だ!


「動いたのは44番 ギヌヴァ選手、ついに新兵器の封印を説いたァ!」


「資料によりますと、『グラインド(うねる)フィンガー()』と言うそうです。

最新鋭の技術を用いて高速で打ち出してはいますが、飛び道具ではないのでルール規定的には問題ありません」


撃ち出され伸びる指はややうねりながら迫ってくる。構造的にはチェーン()に近い。

だけどアタシは知っている、この鎖のバーツ1つ1つに刃がついている事を・・・

食らったら最後、ガリガリと削られてズタボロにされる。

空中で後転しながら足を振り、迫る指を回避する。両手はボールを保持してるから使えない


ガガッ!


ヘッドギアの耳元を刃の行進が掠めていく

やはりこのボールの重量は、機動力に大きな枷を掛けてくる


「残念だったな、このコーナーの左サイドには、大型の障害物(シケイン)がある。

このまま着地したら進路変更も飛び越える事も出来まい! あきらめてボールを渡せ」


一応言われるまでもなく知っている、この先は太い木の根っこがコース上にはみ出している場所だ。

左高速コーナーのイン側半分を塞ぐように巨木の根が山なりに約3mの高さで立ちはだかる。

安全にアウトコースを大回りするか、ジャンプしてインコースをショートカットするかの二択。

ついでに今のジャンプの軌道だと、根の壁の直前に着地する事になる、再ジャンプしても間に合わない。


けど思惑通りに激突クラッシュなんてしてあげない。着地の瞬間というより瞬間の直後、衝撃だけ足で逃した後、両脚を前へ・・・当然しりもちを搗く。

ここはもともとのアタシに対して分厚くたっぷりと盛られた場所(※4)、めいっぱい重装甲だ。

半つや消しシルバーに黒い分割線の入ったレオタードのように見える丸いオシリだけど、コレ全部ミスリルの装甲、剣すら弾くらしいので尻餅程度でダメージは無い。


そのままコースを進む、障害物の巨木の根のアーチの中をほぼ仰向けで(くぐ)る!

1mくらいの隙間だから、他の選手は通れないけど、アタシなら余裕!


――――――――――


試合2日前、ラガオー氏のラボ


「これが新作武器、『グラインド・フィンガー』」


「むー、おっきなガントレット」


「まぁ巨人族(ジャイアント)は、足元にあるものを扱うのが苦手だ。それを補う為に装備で腕を延長する選手は多い」


アタシは初めて出会った頃の鎧さんを思い出した。確かに下段は苦手だった記憶。


「こいつは延長する事を攻撃に発展させた武器での、その名の通り指が伸びる。威力的になら最上位クラスじゃが重過ぎて注文主以外取り扱えるヤツはいないじゃろう」


――――――――――


後続の選手はこの木の根の上を飛び越える以外に無い、アタシを狙ってきたギヌヴァ選手もだ。

多分狙いはこのアーチを抜けたところ、上から攻めてくるはず。

予測撃ちへの対処は予測の外側を行く行動! なんだ、普段からやってるじゃない!


両手で保持したボールのリングを今頭上を通過中の木の根に叩きつける。リングのエッジが木の根に食い込んで急ブレーキとグリップを生む。そのまま鉄棒の逆上がりのように、根を軸として回転、ほぼ真上へと飛び上がる、もちろん斜め方向に捻りを入れて・・・

案の定そのままスライディングしていった場合の予測地点をねらって指が射出されてた。


「ボールが欲しいのなら・・・うけとりなっ!!」


空中で全身のバネをつかって縦回転、そのままサッカーのスローインのようにボールを投げつける

射撃武器&投擲武器は禁止されてるけどボールはルール上問題ないはず。

他選手にパスを出すことはルール上認められている。

それに、こんな事も思い出したから・・・


――――――――――


「グラインド・フィンガー、強力じゃが欠点もある。

1回射出したら伸ばしきらないと引き戻す事は出来ない。ヨーヨーと同じじゃな。

そして、伸ばしている指には『握力』は無いということじゃ」


たしかに

チェーン状の指のすべての関節を駆動するなんて無理だからねー


――――――――――


予想外の行動に、反応の遅れたギヌヴァは、顔面にボールの直撃を食らってもんどり打つ

ごめんね。けっこー痛そう・・・


むー、予測よりボールが跳ね返ってこない。アタシの腕ではあと40cmほど届かない

こっちも隠し機能(という程では無い)を使うかなっ

右手を伸ばしながら手首を急角度に曲げる、これがスイッチ。腕装備のブレードの肘ロックが外れる。

ブレードは手首の接続部を軸として180度回転、フォールディングナイフのように展開する。(※5)

リーチ60cmげっとー


ボールに付いてるリングの隙間にブレードを突っ込んでキャッチだじぇ

あとはゴールに飛び込むのみ・・・


『!!!』


視界にオーバーラップする視界外緊急アラート、前方ゴールのみに集中し過ぎた!(※6)

振り向くのはもちろん、後方視界のウィンドウを開く暇もない、()()アラートとはそういうもの。

直感に・・・本能に任せて腕とシッポを振り左へ身体をスライドさせる、AutoTail のリンクは既にアタシの脊髄反射にまで馴染んでいる。後方視界ウィンドウを開くのは後だ。


ガッ!!


ヘッドギアをブレードが掠めた。武器の刃ではない、足についている滑走用のブレードだ。

振り向かずに回避したのは正解だった。振り向いてしたら顔面直撃、

コレだけは避けたい∠(○△○)ゝなー


普通、走りに大切な滑走ブレードは攻撃には使われない。ここが傷ついたらマトモにコースを走りきる事が出来ないデリケートな部品だからだ

まー、ゴール寸前だからってこんな奇策を仕掛けてくるのは奴しかいない・・・


振り向くより早いはずの後方モニタのウィンドウが開く、遅いよ


うわっ!!


大きめに開いたモニター視界に目いっぱいに広がる顔のどアップ!

腫れぼったくも鋭い瞳の小さな目、大きめの鼻、やや下膨れの頬に分厚い唇とそれを囲む口髭と繋がった顎髭、申し訳ないけど ものすごく凶悪そうな顔、心臓によく無いレベル


「ボールをよ・こ・・・」


反射的にカメラを引く、同時にモニタには掌が迫ってくるのが見えた。


「んなーっ! シッポつかむなーっ!!」


引き上げた尻尾の先をくるりと回すようにしならせ、一気に打ち下ろす!(※7)

相手が自分より重いのなら、打撃にも速度が必要となる

ピンクのちょいモフ、ただし中身は重金属(アダマンタイト)の多節棍が脳天直撃!


「おーっとォ! ゴール寸前で最後の賭けに出た88番カジャティ選手、カウンター的に打ち落とされるーっ!」


作用と反作用、後方へ打ち出せば反動で進む。今回の推進剤はカジャティさん

アタシは斜め上へと飛び上がりつつ・・・ゴールラインを超えた


「僅差の所でアリムタ杯を制したのは―――」

「ゼッケン00番、オーリ選手だーっ!」


ピキッ・・・ バカァッッ!


ヘッドギアが割れた、さっきのが累積ダメージに止めを刺したらしい

ゴール後なので問題は無いはず

中に収めてた髪が広がる、バサバサになるのは嫌だからジャンプの時の要領でまとめとこう


「きらめく氷の中に薄紅色の翼が広がる

 アリムタ・バトルエンジェルの降臨だーっ!」


うわ、はっずかしいぃ~~っ!!

魔道トーナメントの時と違って、今回は本名登録なんだよーっ!


拙い作品をお読みいただきありがとうございます


- アリムタ・バトルエンジェル -


この一言にこの所の2話は収束する・・・なんてね (¬▽¬;

ジェームズ・キャメ□ンに捧ぐ・・・原作ファンなんだけどね


カジャティ選手が普段からヘルメットのバイザーを開けないのは地顔が悪人面だったからという裏話もあります

今回はスグラ選手とのバトルでバイザーを破損し視界に影響が出たのでオープンしていたという事で


今回の未使用ネタは、

カジャティをヒップアタックで押しつぶす

→「この匹婦が・・・」

・・・原作ファンに粘着されちゃいますね


【解説】


(※1)スリップストリーム : 本来は主にカーレースで使われるテクニック。車体の後ろに発生する低気圧と車体の切り裂いた空気の流れが巻き戻る渦の力を利用して空気抵抗を軽減する。


(※2)ブレイク : 回避のための急激な進路変更の事、本来は戦闘機などで用いられる言葉。最近空戦機動の多かったおーちゃんなんで、そっちの用語が無意識に使われる


(※3)死角にすっぽりだー : グラマラス女性に共通する死角、格差社会w


(※4)分厚くたっぷりと盛られた場所 : おーちゃんはまだ二次性長期前なので腰幅も肉付きもあまり無い。後6年もすれば、上も下も1m近くにまで育つ・・・予定


(※5)フォールディングナイフのように展開する。 : 実際の折りたたみナイフと刃の向きが逆たけど気にしないで~

振り出してる途中でも一応角度固定ロックは可能らしいし、逆手持ちの剣のように振るうことも可能


(※6)前方ゴールのみに集中し過ぎた! : 前進速度が上がれば上がるほど、前方へ集中せざるを得ない。

個人差はあるが40km/hで視野は平常時の約半分になる

MBのトップスピードと言われている130km/hともなると静止時の15%程度までに減少する。

視野角およそ30度、ほとんど正面しか見えて無い


(※7)くるりと回すようにしならせ、一気に打ち下ろす! : 振り上げた勢いを極力殺さないように先端部を円運動させるのは良くある事、かの宇○刑事だってやっている


ブックマーク、評価、とかはあまり気にしてませんが (あると嬉しいのは事実だけど)

ご意見、ご感想、誤字脱字のご指摘、メッセージ等あると非常に嬉しいです


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