10章-14 Underground Sports だよっ
好きな作品とかって、ついつい自分でも体験したくなっちゃう
現実では空想妄想の中で疑似体験して済ませちゃうもんだけど、
もし、近い体験が出来るチャンスがあったなら、なりふり構わず突っ込んで行きたくなるよっ
【この作品は、吾流峰子 のオリジナルです [海賊版サイト対策]】
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「こっち! こっちじゃ!」
聞き覚えのある声・・・ラガオーさん?
「嬢ちゃん達、楽しんどる様じゃな」
「雪国ならではのスポーツの祭典、大迫力だよっ」
「まぁここは何でもデカいからのぉ・・・とか言うのは置いといて」
ニッと笑ったんだと思う、髭で口元見えないんですけどー
「もっと大迫力なンを見たくはないかの?」
「それって、噂に聞いた地下競技?!」
「おっと、おちつけって、アムドの弟(※1)
アングラだったのは昔の事だ。国を離れていたオマエさんには分からんだろうが、ルールが細かく制定されて違法じゃなくなってるんだ、試合観戦したって危険なんかねえって」
まー、誰だって自分が好きなものを悪くは言われたくないよね
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「どうじゃっ! ここならコース全貌を一望できるVIP席じゃいっ」
ジャンプ競技場からちょっと離れた隣の山のトンネルを抜けた先(※2)
少々階段を上った先に設置された窓の大きな部屋
なんか王都コロシアムの控え室につくりが似てるにゃあ・・・
窓の外、眼下には曲がりくねった氷のコースが見える、ボブスレーかな?
スケートだかミニスキーだかを履いた選手が滑走していく、かなり速い
「いいながめじゃろ、今は試合前の練習走行タイムじゃからな。試合はもう少ししたら始るぞぃ」
練習走行する選手たちは、やっている事がみな違う。てんでんバラバラ。
ひたすらに速度を求めるすべり方をする者、スノボのハーフパイプ競技の様にエアトリックの練習をする者、え? ジャンプ?スピン?
ボール持って走ってる人もいる・・・う~ん、わからん!
「コレ、どんな競技が行われるの? 皆練習してる事がバラバラなんだけど・・・」
「この地で生まれた球技じゃよ。
選手もいろんなタイプか居るからのぅ、奥が深い事この上ない
おっ、そろそろ試合が始る、とにかく見てみるといい」
球技? だからボール持ってる人がいたのかー
ラガオーさん、みんなにアイテムを配っている。円筒が2本くっついたような形、これは!?
「うわ、珍しいわね~『ドワーフの遠眼鏡』有名だけどなかなか手に入らないのよねぇ」
わきゃ、危ない危ない・・・マミさんの声で余計なことを聞かなくて済んだ。
アタシが『双眼鏡』って言ってしまったら話がややこしくなる可能性もあった。大抵その展開は『それは、何処で聞いたんだい』とか言う方向に流れて出生のごまかしに苦労するのが転生者の定番テンプレ。
うかつに未知のものに対しての単語を使わないように気をつけないとね。
「そんなに有名か? こんなもん大抵のドワーフなら作れるだろ。」
「数が出回ってないのよ」
「レンズ磨きとか手間のワリに華がネェかんな、作りたがる奴が少ないンじゃろな。
この『CRF-91』はワシの手作りだ、欲しけりゃ後で譲ってやるわい
さ、そろそろはじまるぞ!」
ウ~~~~~
試合開始を告げるサイレンの音が響く
アタシは双眼鏡・・・じゃなくて遠眼鏡を目に当てた
腕章をつけた運営スタッフが数人、サーっとコースを滑っていく。たぶんコース上に異物が落ちてないかチェックしているのだろう。
「一応、大体のルールだけ先に言っておこう、
1試合7人が同時にスタートし、コースを走り抜ける。
そして、ボールを持った状態でゴールした者が勝者だ。観戦するならこれだけ知っていればいい」
スタート地点に等間隔に散らばった7人の選手、それぞれが鎧に身を固めている。
デザインやカラーは様々、中にはマークや文字・・・多分スポンサーの宣伝なんだと思うの付いている選手も・・・なんか脳裏にレースの曲(※4)
スタートの旗がゴング音とともに振り下ろされ、各選手一斉にスタート
軽量級選手は加速が速い
「みてなよ、最初の見所は50m地点のボールの奪い合いだ」
約50m地点には上からロープで吊るされたボールがある。高さはコース床面から約4~5m
正面からジャンプしてボールを抱え込もうとする者、斜めから跳ぶ者
黒いボールは弾かれて宙を舞い、それを追ってさらに選手たちが跳ぶ
ボールをキャッチしたのは、コース壁面をハーフパイプ・トリックのように滑走してきた赤い鎧の選手
「ナンバー10、ザファエラ選手じゃな。コースの何処でも駆け抜ける走りの選手じゃ」
そのまま逃げ切ろうとした赤い選手は、ボールが邪魔するらしくスピードが出なくなり、他の選手から総攻撃に晒される。
「ボールは10kg近くあって、持っている選手はどうしても速度が落ちる。これがまたゲームを面白くする、先行逃げ切りはカンタンにはできないようになっている」
うわきゃ、殴る蹴る体当たり、ぶっちゃけバーリトゥードだー、さすがに寝技は無かったけど
攻撃のたびにボール保持者はめまぐるしく入れ替わる。熱い、熱いよっ!氷上だけど
むー、けっこー過酷な生存競争を見ている気分だよっ
「ルール上、選手は任意の選手に攻撃を仕掛けることができる。
この試合は『Bリーグルール(※5)』なので、武器の使用は禁止されておる
一見野蛮に見えるがルールは厳格で、顔面や鎧の隙間を狙ってはいけないし、コース外や転倒中、停止中の選手に手を出してもいけない。意外と怪我は少ないんじゃよ」
隣で観戦しているラガオーさんの解説が入る
ガンッ、ガシッ、ドガガ・・・・ゴワシャ!
激しい打ち合いの合間に、急に片方の選手が消えた。
どうやら転倒したらしい
選手たちに襲い掛かるのは他の選手だけではない。複雑に曲がったコースの壁や所々に設置された氷柱や立ち木、はみ出た太い木の根などの障害物、ボール争奪ばかりに気をとられ過ぎるとたちどころに事故る!
なんて事を思っていたら、意外と思えるほど決着は付いた
コースの全長は5km近くあるのだけど、選手全員が100km/h近い速度で滑走しているのだ。
1試合は3~4分で終わってしまう。
もつれ合うようなデッドヒートの中、ゼッケン88のカーキグリーンの選手が転げ込むようにゴールした
「やはりカジャティは乱戦に強いな、手堅過ぎてオッズが低過ぎるのが問題じゃが」
多分賭け事の算段でもしてたのだと思う、別にとがめたりする気はない、この世界での競技は全てギャンブルの対象であるのが常識な事くらいアタシだって覚えたよっ。
「勝者、ゼッケン88、カジャティ!」
アナウンスとともに歓声が沸き起こる
コロッセオバトルにアイスホッケーとアメリカンフットボールを合わせたような競技
「どうだ、面白いだろ! 氷上の格闘技、モータル・ボール」
モータル(mortal)・・・『死の運命/命にかかわる/致命的な』、なななんつー凶悪な名前(※4)
でもなかなかにスピーディでワイルドなスポーツ
「致命的・球技、アングラ時代の名残りでこう呼ばれちゃいるが健全なスポーツじゃよ、実は3日後に大きな記念試合がある」
「へぇ」
「アリムタ杯(※6)といってな、『Aリーグ』のオールスターエキシビションマッチなのじゃ」
シッポが持ち上がり、S字を描いて先端が下がり、ぴっこぴっこ・・・
「・・・マミ、ヤバいな」
「でゅふ~、止めても無駄な気がするんだけど・・・」
「猫姫様は好奇心旺盛で・・・俺っちは遠慮したいがな」
「うきゅぅ~、あんな巨人の中に入ってったら踏み潰されちゃうよー」
たしかにそーだ、上から、遠くから見ていたから分かりにくかったけど、選手は皆巨人族なんだよね。つーかここ、ほとんど巨人しかいない。
でもお目々らんらん、シッポぴっこぴこ
「やってみたいんか?」
ラガオーさん、わかってらっしゃる
一度火の着いた好奇心はカンタンには止まらない
「うん」
「とりあえず参戦するんであれば、その鎧はダメだ、レギュレーション違反になる」
「レギュレーション?」
「ああ、元々は裏家業闇スポーツだったから比較的自由だったのじゃが、今年から王室の認めた正式スポーツになったんでな、ルールが厳しくなった」
「ほむほむ、例えば?」
「防具にはヘソ出し、肩露出等の部分的露出があってはならないとか、各箇所の装甲の厚さの範囲の規定とか、厳密事細かに規定されておる。
少々小煩いが、健全なスポーツとして成立させる為には仕方の無い事なのじゃよ」
アタシの鎧、いちおーウエストは露出じゃなくてクリア素材・・・とゆーのは置いといて
アングラならルールなんて有って無いようなもんだからね。
正式な競技として認められるには細かい規定を含めた申請が必要になる。
それくらいは分かってる。
「ついてこい、靴とか専用の装備が必要になるからの、アリムタ杯までに仕上げるぞぃ」
拙い作品をお読みいただきありがとうございます
モータル・ボール・・・
ハーフパイプ状のコースを走りながら鉄製のボールを奪い合う
Bリーグでは武器の使用は認められていない
Aリーグでは武器使用可能だが飛び道具ならびに投擲してはいけない。
理由はその物体がコース内に残って後続選手に危険を及ぼす為。
同様に装備を落した場合30秒以内に拾わないと失格(破損による破片は除く)
逆走は事実上出来ないので。武器の類は装甲に固定もしくは内装型にするのがセオリーらしい
白状しまーす、今回の元ネタ、日本のマンガ原作の某映画は、公開初日に見ました!
ちなみに原作ファンのツボもカバーした良作でした。キャメ□ンすごい!
半年近く昔の事なのは、ストーリー展開上の都合なので気にしないでください。
他にも色々ネタにしたいけど時期を逃してるの多いです。
例えば「ピンクのウサギの暗殺者」SA○AGG○のネタなんてもやりたいとずっと思ってるし・・・
【解説】
(※1)アムドの弟 : アムドは鎧さんの兄。ラガオー氏にしてみれば、何年も前に国から出て行った鎧さんよりも、同じ町で暮らしている職人仲間である兄の方が親しい間柄という事。
鎧さんは本名「アマド・アコア」
(※2)隣の山のトンネルを抜けた先 : 要するに谷底に競技場があるのでその壁面に観客席が作られている。山をいちいち越えるのは面倒なのでトンネルが掘ってあるという事
上からじゃなくて、もっと近くで見ればいいという異見もあるけど、その場合コース全体は見えなくなる。
残念ながらモニタースクリーン(魔道具)なんかは王都と違ってこのヴァーレルには普及していない。
(※3)なんつー凶悪な名前 : アングラ時代からの名称だけはそのまんま使用されいるとの事
実写取り込みっぽい格闘ゲームに名前の近いのがあったような
特殊フィニッシュで、ぐっちゃぐちゃはっぴーつりーになるR-18Gな記憶が・・・
(※4)なんか脳裏にレースの曲 : F1とかのテーマ「TRUTH」ってヤツ。好みによって「ぐらんつ」や「りっじ」でもOK、要するにこれからレースっぽいのが始るよーって気分が盛り上がってくれればいいのだよっ
(※5)Bリーグルール : ちなみに武器使用可能な『Aリーグ』というものある。Bリーグより迫力があり豪快なバトルが見られるが、ルール規定がより厳密なものとなる。
「豪快さのAリーグ」「個性のBリーグ」と言われている。
(※6)アリムタ杯 : アリムタとはインド神話の伝承で不死の霊薬、転じて数年ぶりに訪れた生命の萌え出ずる季節、春を象徴したネーミングらしい。
ちなみに命名は精霊使いでもある王妃、脳筋王にはこーゆーセンスはないw
ブックマーク、評価、とかはあまり気にしてませんが (あると嬉しいのは事実だけど)
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『メタもベタも極めてみせるよっ!』