10章-09 理系女と職人(リケジョとマイスタ)だよっ
一回死に掛けたからわかる!
死なんてものは、そこらじゅうに転がってる
不慮の事故や自分のミスで死ぬのは仕方ないかもしれないけど、誰かの悪意によって殺されるのだけは防ぎたい。
アタシ自身だけでなく身の回りの仲間に対しても、守れるものは守る!倒せるものは倒す!
そのための牙、爪は常に用意周到に準備しておく
(※今回、理屈っぽいです)
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「ふぁぁあふ・・・おはよー」
「昨日はずいぶんと夜更かししてたね」
「美容に良くないわよ」
昨日は羅刹・・・じゃなくて『Ra-Set2』、お借りしてきちゃったんだよね~~
ラガオーさんは言った「構造でも確認するがよい」と、
つまり、中を見てもいいって事なんだよね、こりゃ研究しない訳には行かないよっ
昨夜、実際に分解してみて構造が分かった。おかげでほぼ徹夜になっちゃったけど・・・
これ、排莢こそないけど、ガス圧駆動ブローバックシステムだよっ
中空になった杭の中にフレイムジュエルから作ってあるペレットがセットされていて、
トリガーを引くとガス圧で中の撃針が前進、ペレットに突き刺さる。
撃針の先端にはWillメタルが使用されていてペレットは熱に変換、混ぜられていた物質が一気に蒸発してガス化する。
その圧力で杭が打ち出され、半分ほど飛び出したところでガスはバイパスへと一部抜ける。
バイパスへ流れたガスはトリガー駆動用に一部蓄積され、残りは次のペレットを装てんするためのピストンをうごかし、さらに余ったガスは杭のブレーキとなるべく逆方向の駆動圧へと回される。
自動小銃との大きな違いは、突き出した杭にちゃんとブレーキを掛けている所、
杭が飛び出してすっぽ抜けないように考えられている。
ロックピンとかの引っかかりにぶつけてたりしたら、早々に壊れてしまうからね。
この辺りはドワーフ職人の意地とかこだわりとかを感じさせられる見事な構造だ
これ、ブレーキ機能を外せば自動小銃に応用できそうなんだろうけど、作ってる側はあくまで削岩機の構造の研究であって、武器への応用なんて多分そういう発想とか概念が頭にないんだろうね・・・ファンタジーに銃は禁物って事なのかな
アタシもこの世界で銃を作る気にはならない、今のところはね。
作っちゃったら世界が変わってしまうから。
この剛健かつ精密な構造は、生半可な鍛冶屋では作れない、ドワーフの細工師と後はバンの親方くらいなものだろう。
アタシは万一気乗りした時に備えて、構造のメモをとっておいた、図入りでね。
ドワーフ職人は、技術的アイデアに対してあまり執着しないので特許とかをとる事があまりない。
『真似できるもんならやってみやがれ』って心意気らしい、実際真似するくらいなら超えてやるって職人気質とプライドがあるらしい。
この世界、量産技術はないもんね・・・
アタシかて丸パクリする気はない、アタシならもっと稼動域すなわちリーチを大きく取れる工夫と、打ち出すときの反動の抑制、そして実際にとっ突く破壊力を研究したい。
ぶっちゃけ削岩機ではなくパイルバンカーが欲しいのだよっ!
理由? 『ロマン』のたった1つだけ・・・ダメ?
じゃ、いってきま~す
今回は魔道具関連のオブザーバとしてマミさんを連れて行く
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【特別鉱山・ロビー奥の作業場】
「こいつはたいした魔道装置じゃな
ワシは魔法に関しては専門外じゃが構造はつかめたぞ」
作業台の上には蓋の開けられたモノアイ
ラガオーさんはやや鼻息荒く説明を開始した。
「この部分はレンズとプリズムで『目玉』としての機能じゃな」
精密ドライバーの様な工具でさし示す親指大のレンズの付いた部品
「こんなちっちゃい部分が実質上の「目」・・・他の部品はなんなの?」
「そこじゃよ、これはゴーレムの目だと言ってたよな、フレイムジュエル製の身体の中をあちこち移動してたと聴いておる
この円盤状の筐体はジュエル内に彫られたレールの中を走っておったのじゃ
この縁の部分がマナ・モーターの回転子とほぼ同じ、6つの素子でレール内を動いていたのであろう」
ほむほむ、マナモーターのリニアモーターかー
「移動の際のこすれた粉、粉末のフレイムジュエルがここから取り込まれる。
粉末はこのタンクにいったん貯められた後、この箱状の部分に移されて中で反応を起こす。
そしてここからエネルギーの塊を放つようになっている」
「むー、あの怪光線の発生装置・・・意外と小さいんだ」
「この中には円筒形のクリスタルとWillメタルの触媒が入っていてな、円筒を取り囲むように反応を起こし、クリスタルの中に光の力を蓄える。
クリスタルの両端は鏡面加工になっていて中で光が往復しエネルギー密度を上げる仕組みになっている。」
ラガオーさんは脇の黒板に大雑把な図を走り書きすると
それって・・・レーザー発振管じゃん、タイプ的にはルビーレーザーに近い
「これを考えたやつは天才かもしれん、だが研究者ではあっても技術者じゃなかったようじゃの」
「どーゆーこと?」
「じゃが加工が甘いため熱がこもってしまうのじゃ、連続で使用したらすぐに壊れてしまう。
差し詰め・・・基本的に使い捨てか時間を置いての単発使用がやっとじゃな、不安定かつ大型化もできん。
まったく持って、惜しい造りじゃ」
「・・・・・」
アタシは黙っていた。厳密には関連する情報を頭の中でフル検索していた。
イフリートからもらった知識は直接頭に流し込まれた形なので文書ファイルみたいなものなのだ。
あくまで『知識』であって『知恵』ではない、写真記憶で本が入ってるって感じ。
えっと・・・近代科学では光は電磁波だけど、この世界では『炎=熱+光』であるらしい(※1)
4元素に基づく世界なので、『郷に入れば』でそう考える。強引にでも脳内で変換して考える。
探したいのはそこじゃない! その先、どうやって光を取り出す? より純粋な力強い光、できれば熱を極力伴わない反応のさせ方・・・・・・これ?!!
「加工が悪いのなら調整すればいいんじゃない? やっぱ鉱物担当はレンズやプリズムとかは苦手?」
ううみゅ・・・アタシも悪人なのにゃ、ドワーフの職人気質&頑固さを狙ってのカマ掛け
「何を言う! ワシはこう見えて、細工物にかけてはちとうるさいぞ!」
光学的な仕上げの荒さはそのまま発熱に繋がる
「ジュエルを粉にして装填するのは安定性に欠けるとして、カートリッジ化がいいわね
反応用メタルは結晶中心の高純度部分ほど発熱量は減ると思う」
「お、おう」
「そしてこの図、こうしたらいいんじゃない?」
ラガオー氏の描いた発振管の図に手を加える。
クリスタルの周りにジュエルの粉を吹き込む方式から円筒状にまとめたジュエルを差し込む仕様に、
カートリッジの撃針の位置には水晶モニタパネルを応用した色変更の可能な光源(※2)
反応用のWillメタルは反応容器の側面から複数を差し込むことで均一な反応を
反応量の加減も可能
あとは、出力側にプリズムを並べ光軸を調整可能にする、1軸で十分、もう1軸は全体を回頭
させればよい。
「マミさん、MLCコア(※3)との接続は可能だよね」
魔道具に関しては、ベテランのマミさんに確認、
「角度調整にサーボ2つ、トリガー、装填、スペック的には十分ゆとり有るけど・・・
ひょっとして尻尾に? なに考えてるのよっ」
「先端ゆにっとって中身空っぽの飾りだから、何か仕込めないかなーって。
このゴレ目玉仕込んだら絶対面白そうだよっ」
「尻尾じゃと? これもアーティファクトなのだな」
ぴゃうっ
いきなりつかんだら、ビクッってくるよっ! ぷんすこ
「これアダマンタイトじゃねぇか、こいつなら光を撃つ必要なんかねぇんじゃないか? 素直にぶん殴りゃ片がつく」
「実際に赤ゴレ、この尻尾で砕き割ったのよね
あ、一人でやったワケじゃないよっ。ウチらのパーティとジッソのチームが協力で作戦実行したんだよっ」
『カバーロック解除』
別に口に出してはいない、意識を向けただけ
シッポの付け根のロックが外れ、手で引っ張るとピンクのフェイクファーカバーがするりと抜ける。
中から黒光りするAuto‐Tail本体が露見する。
メンテ時と緊急時以外はかーいくないのでカバー外したくないけど今回は特別
ロックピンを抜いて先端部分をひねる。ネジになっているシッポの先がぱかっとはずれた
「ほらここ、からっぽでしょ。ここに仕込めたらいいなーって」
「自走モーターと粉末生成を外し、発振管と目玉だけにするなら余裕じゃろう
ええのぅ、アダマンタイトのこの光沢」
「アダマンタイトの地金なら、いくらか持ってるよ」
ラガオー氏の目の色が変わる
「細工師さん、レンズやプリズムは作れるの?」
「おぅよ、この発振機のクリスタルも磨き直せばもっとよくなるじゃろうて」
「カートリッジは、回転弾倉にして排莢はしない、多用するものでもないから弾数は6発程度」
「一列に並べれば省スペースじゃぞ」
「弾倉回転式にしておけば、任意にし、選択できるじゃない、弱装弾とか
毎回大火力ぶっぱしてたら危ない。加減が必要な時もありえると思う」
「なるほどな、こりゃ腕が鳴るワイ、削岩機みたいな大味なものより、こういう細工物が作りたかったのじゃ」
「ご協力感謝だよっ、とりあえずね」
インベントリからアダマンタイトのインゴットを1つ出す。
大きさは一般的な鉄インゴットより小さいけど、重さ的にはほとんど変わらない
「そんなもンより、そのシッポを良く見せてくれんかい」
げ、そーきたかー
「稼働中のは触ると危ないよ、その代わりに緊急交換用ユニットを見せたげる」
ついうっかりで怪我でもさせたら大変だからね
「見事な加工だ、これを作ったのは?」
「鉱山街バンのリーダー、ミーディル親方だよっ」
「あの若造(※4)、親方にまでなりおったか・・・」
拙い作品をお読みいただきありがとうございます
細工ものといえば、やはりドワーフさんなのです。
インパクトと興味の対象で、レーザー発振菅が注目されてますが、本来の目的は『目玉』の方を組み込みたかった。後方視界、ペリスコープ、いろいろ使えそう
【解説】
(※1)この世界では『炎=熱+光』であるらしい :燃焼ではない炎も存在するからね、魔法とか。
なまじ理系だっただけにその辺りは混乱するけど、この世界の『理』で動いているんだから
そーゆーモンだと割り切らないとね、少なくとも魔法は使えないんじゃないかな
(※2)カートリッジの撃針の位置には水晶パネルを応用した色変更の可能な光源 :励起させたクリスタルに種火となる光を入力することでレーザー発振の波長(光色)を操作しようというアイデア
実際、発色可変レーザーなんてトンデモ理論だけどそーゆー励起体だって事で
(※3)MLCコア :M・L・Cの事、接続インタフェース内臓のPCと思っていただければOK、尻尾の付け根にある第二の頭脳、魔道トーナメント優勝賞品
詳細は4章-11を参照
(※4)あの若造 :ドワーフはエルフの次くらいに長命種族、知り合いだったとは世界は意外と狭い
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『メタもベタも極めてみせるよっ!』