10章-07 メイドさんinアビスだよっ
・・・・・・深淵、Abyss、堕ちる墜ちるどっち?
残念だけど、今は動けない。このまま終わってたまるかだよっ
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おーちゃんが沈んでいってしまった。深い亀裂があったらしい
一刻も早く救助しないと!
救助に精通した人が居ればいいんだけれど、そんな悠長にしている暇はない!
突然の出来事にマミは動揺した。
「行ってくるですっ」
タヌ子が息せき切って潜ろうとした。
「杏ちゃん、大丈夫なの?」
「泳ぎは比較的得意なのですっ」(※1)
「ちょっとまって! こんなもんしかないけど、ないよりはマシよね」
マミは湯船(?)の縁に置いてある荷物からペットボトルのキャップ大はある大き目の丸薬を取り出す。
「これは?」
「空気生成の効果のある丸薬(※2)、口に含んでるとなんとか窒息しないで済む程度の空気が出てくるの
噛み砕いちゃダメ、飲み込んじゃダメ、いい?」
そして適当な大きめの石を布にくるむとベルトのように括り付けた。
「あとこれ、潜る時の重り、おーちゃん捕まえたらこの石は捨てて上がってらっしゃい
おーちゃんには重りが6kgついてるから追いつくために大体10kgほど、重いわよ
行って! とりあえず事態は一刻を争うから!」
「いってくるのですぅっ!」
反動をつけてほぼ垂直に潜っていくタヌ子。
・・・どこまでつづくのですぅ? この深い穴
進むほどに体が締め付けられるのですぅ(※3)
普段そんなに深くまで潜っていった事は無い
温泉は濁りの少ない透明度の高い泉質だったけど、深くなると光は次第に届かなくなってくる
比較的夜目の効く獣人族でよかったと思う。人間だったらこの深さでは何も見えないくらい暗い。
み・つ・け・た!
「こーいう時くらい、役に立ってみせるのですぅっ!」
シッポをスクリューのようにぶん回して水中を加速する。
下へ、下へ・・・つかまえたっ
ししょーは完全に意識を失ってる。
「さぁ、帰るですよっ」
腰に結わえてあった布を解き重りを投下。
なんなの?!この重さ?
水の中ってちょっと持ち上げたならすぐ上がるんじゃなくて?(※4)
わたしなんて、なーんにもしなくたって水面に浮かぶのに、ぜんぜん持ち上がらないですぅ
早く水面まで戻らないと・・・わたしはまだ丸薬があるから不十分だけど息ができる。
でも師匠はそうも行かない。こちらから空気を吹き込んだとしても、水の中では下手をすれば水を奥に押し込んでしまう事になる。急がないと
「ししょー、いっしょに帰りましょうね」
浮かび上がる力が足りない、こんな体してるのに情けない・・・そうだ!
わたし自身が浮き袋になればいいのですぅ!
がり・・・ぱきっ
口に含んでいた丸薬を噛みしめ2つに砕く、表面積が増えた分空気の発生量が増えた気がした
意を決すると、杏は丸薬の欠片を飲み込んだ。
「どんな手を使っても、つれて帰るのですぅ」
オナカの中で飲み込んだ丸薬の欠片が空気を発生させる。
この際身体の違和感は無視、ひたすら上を目指す。
水面が見えてきた
ざばぁっ
「引き上げてきたですぅっ! 息が止まってるの、何とかしてぇっ!」
――――――――――
【主人公が意識取り戻したので視点元に戻しまーす】
「かはぁっ!」
ひゅー、ひゅー、ひゅー
生きてたよーッ、目の前にマミさんの顔・・・視界はぼやけてるけど
「息を吹き返した」
「これで一安心、バトンタッチよ」
「きゅっ、まかせて! ヒーリング!!」
全身の虚脱感が消えていく・・・アタシ、救助されたんだ。
「ししょー・・・よかったですぅっ!!」
まるでキツネ空中殺法のように飛び込んでくるタヌ子
おいこら、フライング・ボディプレス?! 復活直後で対応できないってば!
ぼむっ
「んなっ!」
「ししょー、生きてた、よかったですぅぅっ」
ぎゅむーっ、ぎゅむむ~っ
「んな~っ、んなぁ~~っ」
しがみついてくるタヌ子、普段とは逆に圧し掛かられた。せめてもっと優しくー!
あれ? なんかいつもと感触が違う、包み込まれるというより押しつぶされる。
硬いとゆーか張り詰めたとゆーか、空気入れ過ぎたビーチボールみたい。ぱっつーんってカンジ
ふかふふかのぽよぽよじゃない。
「ありがとね・・・でも、このままだとまた窒息しちゃうよ」
「あ、はわわっ」
あわてて飛び退きぺたんと座り込んだタヌ子・・・少々息が上がってる。
改めて目にすると様子が違うとゆーか、あからさまにシルエットが違う。
助けに来てくれて水を飲んだ? そんなレベルではないくらい、水着がはち切れそうになる位にオナカが膨れている。なんで?
「杏ちゃん、あなたまさか、あれ飲み込んだの?」
「えへ・・・りっぱな浮き袋になれたですぅ」
そっくり返って信楽焼き張りの太鼓腹をポンポンするタヌ子、ホントに擬態語そのままの音がした
浮き袋? 自らをフロートにしてアタシを引き上げてくれたってこと?
んなっ・・・なんつー無茶したんだよっ
みちっ・・・ぷつっ、ぷちちっ・・・
ん? 何の音?
あ、水着が一部ほつれてる、中身の圧力に耐え切れなくなってきた・・・とか?
なんかヤバくない?(※5)
「吐きなさいっ! 危険よっ」
「あぐっ、がはぁぁっ」
マミさんタヌ子に飛び掛ると、のどの奥に指を突っ込み強制的に吐かせる
- 表現的に見て気持ちのよいものではないので描写自主規制 -
「空気が抜けたのですぅ、ぷしゅ~」
「・・・ったく、下手したら体が破裂しかねないわよ、あの大きさは100錠分なんだからね
口に含んで発生する空気を吸うのなら問題ないけど、飲み込んじゃったら空気の出口がなくなって・・・」
うわ、怖い
(思わず想像しちゃったじぇ)
「今回やむなく使ったけど、あの丸薬は試作の失敗作なのよ」
「ちゃんと水中で息できてたですぅ」
「それって本来の使い方じゃないから。
あの薬って本来はダイエット薬として開発依頼されてたのよ」
え? なにそれなにそれ
「空気でオナカいっぱいにして食事制限というコンセプト(※6)の失敗作、ダイエットどころかオナカがかえって出っ張る失敗作。
でも注文主は喜んで受け取ってった、いったいなんに使うんでしょ?」
・・・深く追求しないでおこう
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男性陣合流
「へぇ、そんな事があったんスか・・・」
「助かってよかった、僕も泳げないから分かる」
うん、鎧さんも沈む、沈んだら浮かんでこない、飛行能力がない分だけアタシ以上に深刻
ちなみにアタシはついさっき復活したてなんで傍観者MODE
「俺っち、職業がら水難救助とくいっスよ」
トレジャーハンターって水系列の罠への対応とかもあるんでしょね
「水中のおーちゃんって重いらしいわよ、なかなか浮かび上がれなかったんだって、あのタヌ子ちゃんでさえすら」
「浮きそうなのにな」
「石くくり付けて沈ませて、捕まえたら重り外すって方法でやったわ」
「俺っちなら、先に錘をつけたロープを投下してロープに沿ってつかまりながら潜るな、体力節約だ。
引き上げる時はローブを登ればいい」
「ロープ無かったのよ、事を急いだし」
むー、素潜りの記録チャレンジなんかで使われてる方法だー
技術あるんだなー
「で、姉御、その間の息継ぎはどうやったんで?」
「それは空気発生の丸薬の試作があったから、それの大きいヤツを・・・
とっさの事とはいえ無茶したわ」
「それ、副作用とか無いんだろーな?」
ポリポリ
「のど越しはしゅわしゅわするし、満腹感がハンパないのですぅ
あとはもう少し味がついてたらいいのにですぅ」
・・・・・・タヌ子、そんなものオヤツにしちゃいけないって ∠(○△○)ゝなー
拙い作品をお読みいただきありがとうございます
水難救助完了、意外にもタヌ子は水中向きだった
女性メンバーの中ではって事になるけどね
(ついでにゲ□インの仲間入り)
たぶんトレジャハンターのタツアンなんかは救助技術含めて達者だと思う
マー君はお坊ちゃま育ちなので溺れない程度の泳力
鎧さんは問題外
タイトル、特に深い意味ないですよー、上昇負荷とかないし
おーちゃんではモフモフのぬいぐるみにはなれなかった・・・
(タヌ子の職業は家政婦です)
【解説】
(※1)「泳ぎは比較的得意なのですっ」 :駆けるのは速くはないが、ニホンタヌキはイヌ科の中では泳ぎがうまいとの事。
木登りも巧みで、木に登って果実や木の実を取ったりもすることができる。
でも、人間形態の時のタヌ子は木登りは苦手そう
(※2)空気生成の効果のある丸薬 :後述してるけど、試作品であり完成ではない。
体内の水分と反応して空気を発生する。胃カメラ検査とかの際に使用する発泡剤に近いけど、炭酸ガスではなく呼吸可能なガスを発生させる。
現代薬学でいう「プロタイン系アスコルビンマイシン」へと後に伝わる原型とかそうでないとか?
(こんなネタ誰が分かるのだろうか)
(※3)進むほどに体が締め付けられるのですぅ :水圧が掛かっているという知識がないのでよく分かってない。泳げる動物でも普通は(一部の海生動物を除き)水圧が掛かるほど深くは潜らない
(※4)水の中ってちょっと持ち上げたならすぐ上がるんじゃなくて? :水中では実重量はあまり意味を持たない。重要なのは『密度』というか『比重』
「鉄1kgと綿1kgどっちが重い?」なんて小学生向けのお話があるけど
水中だったら綿は勝手に浮いてくれる
ちなみに一般的な物質で最も高比重なのは白金、金よりもウランよりも重い
アダマンタイトはさらに重い (という設定)
ちなみにミスリルは魔法的な属性のあるチタンのイメージ、軽めの金属
(※5)中身の圧力に耐え切れなくなってきた・・・とか?なんかヤバくない? :ほつれて開いた穴からはぷっくりとお肉がはみ出し、穴の拡大と共に膨張を・・・このまま放置すると弾けてしまうのは明確
・・・なんて細かく描写しちゃうと、ノクターン行きになってしまうので割愛
(何処がはじけるのかは各自ご妄想ください)
(※6)空気でオナカいっぱいにして食事制限というコンセプト :マンナンとか、チアなんたらとか、お腹の中で膨らませて食欲制御なんてのはダイエットの定番アイデア(効果については諸説あり)
魔法でダイレクトに体型操作するダイエットポーションは既にある。しかし薬効そのものが不安定、味・匂い共に酷い上、空腹時に1瓶の液体を飲む必要がある・・・と扱いにくいもの故に人気は低い。
美容アイテムの探求はいつの時代もニーズが止まない。
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