10章-03 脳筋王とツンデレ王妃だよっ
考えてみたらこのお話、転移モノのジャンルに入ってるけど、アタシってゲームからシームレスに世界に来たんだよね、転移でもないよーな気がするよっ
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北国ヴァーレルの朝は早い、日光が貴重だから人々は日の射す限り外へ出る。
反面夜は早い、日が落ちると皆家に篭ってしまう
朝食は定番のチーズトースト、ティル村もそうだけど、山岳地方では定番なのかなー(※1)
パンはちょっと黒めのライ麦っぽい、高密度でどっしりと麦の強い味わい、ジャイアントの巨体を支えるだけの高エネルギー食品
サイズは大体フツーの(日本で見られる)食パンくらい、ただし形は楕円形で多分バゲット状のパンをスライスしたんでしょね、もっとデカイかと思ってた・・・ただここはジャイアントの国なので1切れを1口か2口で食べるらしいけどこればっかりはムリ、お作法は勘弁してもらってちまちま齧らせてもらおう
このチーズはシェーヴル(山羊乳)タイプだねー、火を通すと香りが柔らかくなって食べやすい
ミルクの入ったポタージュっぽいスープ、野菜の貴重な雪国のせいか乳製品が主体?
ひょいパクってなカンジに食を進める巨人兄弟、どー足掻いてもこのペースには付き合えない
これタヌ子、張り合うんじゃないの!
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部分的にプレートの強化装甲の入った黒いコート、ヴァーレル国の騎士とゆーか兵士、通称『ジャイアントフォース』が一人こちらに走ってきた、何事?
聞いてみると王宮へのご招待らしい
「こんな一介の冒険者たちにわざわざ王族が何の用なのかしらね」
「アタシ達なんか、ここの法に触れるような事しちゃったのかな」
思い当たるような事・・・なんかあったかな?
せいぜい轌代わりにしてきたイフリートの角くらい・・・?
「そんなに気にしなくていい、ウチの王様はやたらフランクなのさ」
「この国は見かけほど広くない、人間の国と比べたら大き目の町の様なものかもしれない」
「実際、過疎化も進んでいる。この極寒の地を離れていく巨人も後を絶たないからな」
「兄さん、皮肉かい」
仲いいなー、この兄弟
ジャイアントフォースにつれられて王城へと向かう
大きな、でも階数はさほどでもないお城、1フロアが大きいからねー
もしやとは思ったけど、やっぱり王様も日光浴・・・お城は何のために?
ヴァーレルの国王ガリュー、デカい男だった。
身長は他の巨人より頭1つ以上体格も1周り以上大きい
やや赤みの掛かった短く刈り込まれた髪と同色の髭(※2)、さわやか笑顔の体育会系イケオジ風
サークレットというか額金(※3)というか、頭に着けているのは王冠なのかな?金色に光ってるし
一応、国王謁見の際のお作法は知っている。多少の差異はあれど基本は一つ、膝をつき頭を下げる。
「王の前でぞんざいに振舞い、タメ口きく俺様ってカッコイイ」なんて態度を取る転生勇者サマはそれなりに多いらしい。アタシゃ礼儀知らずにはなりたくないなー、こういうのって「儀礼」、冠婚葬祭とか「お作法」ってモンがあるでしょうに
「頭を上げるがいい、冒険者たちよ。それは玉座前の儀式作法、日光浴中に礼などいらぬ」
ホントにフランクな王様らしい、さわやか笑顔イケオジ
その隣に並び立つのは長身でグラマラスな女性、王妃かな
大きな白い毛皮のショールをかけてはいるが比較的薄着、このショール獣一頭まるごとだ。(※4)白狼かな?かなり大きいジャイアントサイズ
アクセサリの類はほとんど着けてないけど、はっきり言ってファビュラス感MAX
「お前達を呼び付けたのは大した理由があったわけではない、この国は来訪者が少ないのだ」
「あなた、交易の商人はそれなりにいるでしょうに」
「しかしの、変化がないんよ。ニュースにはなっても心踊るものが無い」
「商人に冒険談を求めても仕方ないでしょ」
むー、傍から見てるとイチャついてるようにしか見えんぞー
王妃がハスキーかつねっとりした感じの声なのでなおさらだ
「と、いうわけじゃ、目の前には外から来た冒険者がいる」
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「・・・と、このような顛末で何とか帰郷したのです」
国王への語り手はパーティリーダーである鎧さんに一任っ!
同種族かつジモティなら確実に信用してくれるでしょ
説得力の無い「子供」や胡散臭いという風潮の残っている「盗賊」「魔導師」、まだ偏見の残っている「獣人族」・・・
つくづくウチのパーティってイロモノ揃い∠(○△○)ゝなー
「しかし驚いた、あの『試練の迷宮』を正規ルートでラスボス正面突破してくる奴がおったとはな
ウワサ通りの生真面目者よ」
「そーねぇ、ほとんどの人は迂回ルートを通るわよね
・・・でもそのおかげで変化が起こりそう」
まーた所かまわずイチャつきよってリア充がーと思いながらも王様夫婦にツッコミは入れられない
「変化?」
思わず口に出てしまう、アタシとしては個人が世界を変えてしまうことは極力避けたい。
「精霊力の力関係が大きく変わったからね
・・・久しぶりに、ヴァーレルに春が来る」
王妃の鼻にかかった甘々声が、凛とした引き締まった物言いに変わる。
『側室』から『女王様(クール系)』ってカンジ、こんな事本人には言えないけど
「数年ぶりに雪が溶け、草木も芽吹くであろう
ここしばらく低迷していた炎の精霊力が力を取り戻した」
ほぅ・・・単なるファビュラス王妃なだけじゃ無いんだなー
「そこな小娘、何を惚けた目で見て居る、わらわは王妃であるが、精霊使いでもあるのだぞっ」
あ、なんかちょっとカワイイ、ツン的なキャラだー(※5)
王妃観察してると王様の方から声が掛けられた
「遠路はるばるこのヴァーレルまで、来訪した目的は何かな?」
「仲間の里帰りにお付き合いしてきただけで・・・」
「それだけかの?ホントに」
こーゆー時ってウソついても後でバレるってのが定番なんだよにゃあ
「観光、そしてWILL鉱石探しかな」
爽やかイケオジの表情が一瞬だけ険しくなる
「WILL鉱石に関してはまだ国外に発表した事は無いのだが・・・」
あ、政治的問題? こーゆーの嫌だ、関わりたくないから『お子ちゃまMODE』でいこう、素直が一番
「イフリートが教えてくれたよっ。フレームジュエルを点火するのに必要な触媒なんだって」
イフリートと戦ってきた事も、イフリートから話を聞いてる事も事実、今回はその角という物的証拠すらある。天地神明やましい所なんて無いのだから、どんな事を言われても相手が誰であっても臆する必要は無い。
十字の入ったキラつきお目々とにゃんこスマイル(※6)でまっすぐ視線を返す。
む~~
しばしにらめっこ
「よかろう、なら1つ依頼を受けてもらおうか」
うわ、なんか定番的な流れになってきちゃった
拙い作品をお読みいただきありがとうございます
蜂窩織炎闘病中・・・がんばるよ、エタらないよ
【解説】
(※1)定番のチーズトースト、ティル村もそうだけど、山岳地方では定番なのかなー :ハイジトーストとして有名な、焼いたパンに溶けかけるまで炙ったチーズを乗っけたもの。
ハイジのを再現したければ、チーズは「ラクレット」がしっくりくるよん
ちなみにこのチーズも火をしっかり通すと香りが柔らかくなる、ゴルゴンゾーラ食べられないチーズ初心者はよく焼こう
(※2)短く刈り込まれた髪と同色の髭 :ドワーフは髭をサンタのように伸ばすのを好むがジャイアントは短めに整えるのが主流なようだ
(※3)額金 :額の部分のみの防具、「~ってばよ」の有名忍者が着けてたアレ
国が変われば風潮も変わる、歴史が異なれば文化も変わる、ましてや種族が異なるなら常識だって変わるはず。安易に地球の北欧の歴史をベースに考えてはいけない
西洋の王冠は権威の象徴だけど、巨人族の王冠は武勲寄りなんだというイメージ。装飾&儀礼化した兜という裏設定
(※4)このショール獣一頭まるごとだ :頭からシッポまでを綿無しのぬいぐるみのように加工したエリマキ大抵は口の所がクリップになっていて1週させて止める形
日本でも大昔に狐の襟巻きとかが流行った事もあったそうです。
でも巨人族は狐だと首とかに巻けないからもっと大型の獣にせざるをえない
(※5)なんかちょっとカワイイ、ツン的なキャラだー :姉御っぽい怖そうなキャラが変化する時ってなんかいいよね、王妃はきつめの顔立ちで、一時期流行った「姫化された某ラスボスキャラ」的な雰囲気がイメージにあったりします
(※6)にゃんこスマイル :お口が『ω』な最近のアニメで多様されてるアレ
ブックマーク、評価、とかはあまり気にしてませんが (あると嬉しいのは事実だけど)
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