9章-09 DayDream だよっ
あっけまして、おっめでとぉぉ~ぉぅっ!! ∠(≧▽≦)ゝノシ
アタシの世界の中ではそんなに時は経っていないような気もするんだけど、見ていてくれる皆さんの方では2回目の新年を迎えてるらしいね
アタシの隠し能力、メタ能力って、こんなご挨拶程度にしか役立たないけど
これからもよろしくだよっ!
冷えかけ溶岩の様な浅黒いイフリートの胸板を砕いて、その中身とご対面したまではよかったんだけど・・・
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野道を走っている、
アタシの視点なのにアタシ自身の後ろ姿が見えてるなー、なんか不思議な感覚、
あ、これ、MMORPGの世界だ、
負荷軽減のため背景の端っこの方はポリゴンが簡素化されてる。本来断面丸いはずの木々を這う蔦が四角はおろか2枚のテクスチャを×形に組み立ててある。これけっこー遠目には立体に見える
この省略のやり方は、アタシの昔プレイしてたMMORPG『MAGI』だ。な~っつかしい
「ドラゴン登場エリア到着、もうすぐ来るはず」
「はやいね~、ファーストアタック取られちゃったなー」
多分チャットウィンドウなんだろうけど、インサイド中のアタシには普通の会話に感じる
懐かしさのあまり涙がにじむ
「よっしゃ! 一番手げっと!」
「あまりペチペチするなよ、飛ばれたら厄介だ」
現れた巨大ドラゴンに群がっていく冒険者たち
おーおー、乱戦乱戦、そろそろかな?
ロッドを構え、移動先を読んでいきなりの大技を“ぶっぱ”する
「メテオ・インパクトぉぉっ!」
この魔法は、発動にタイムラグがあるから先を読んで撃たなきゃ当たらない
バッ・・・バササッ
ずっごおぉぉぉんっっ!!
体制建て直しに離陸しようと翼を広げた古代竜の後頭部に召喚した隕石がブチ当たる
ホントは片翼叩き折る予定だったんだけどなー
ちょいズレたけど結果オーライ
「ナイス!」
「いい所あてたー」
「一気に行くぜぇ!」
アタシも剣を抜きつんのめったドラゴンを殴りに行く、
「むー、ドロップ何かなー」
「まだここからだって」
もーすぐメテオもマスターランクだじぇっ
楽しんでたよなー、仮想とはいえ満喫してたねー
でも、この辺りから、カンストしちゃったプレイヤーが次々と消えてっちゃったんだよにゃあ・・・
- ? -
トートツに場面が切り替わった
ざわついた屋外、行き交う人々、この服装は20世紀末から21世紀初頭だぁね
あ、ここ即売会ぢゃん・・・あ、アタシ16歳くらいになってるー
アタシの服装、某アニメの「チビでがめつくて態度のでかい魔導師」(※1)のコスプレだー
隣には長身でスタイルの良い友人のさとぴょんが、ライバルの「露出多めなどう見ても悪の女幹部な魔導師」のコスチューム、この2人なら比較的正当なペアとしてウケ狙えるよねっ
「あのー、写真よろしいですか?」
すかさずペアでのポーズをとる、ざざっと一定距離で曲がった壁のようにカメラ持ちが集まって並ぶ。
この瞬間って、コスプレ愛好家冥利に尽きるよね、うん、快感
撮影の波が過ぎても行き交う人からの視線、けっこー気分いいかも、
でも、あんまし芳しくない声も拾っちゃうんだよねー、アタシ耳はいい方なんで
『・・・あの2人、キャラ逆なんじゃない?』
何が逆なもんかー! 長身でスタイルいい方が体型の出るコスを着る、何処に間違いがあるー
アタシゃ、チビだし駄肉だらけだよっ、胸しか見とらんのかーっ! 内心ぷんすこ
まー、高校生当時のアタシは、胸は人並み以上にあったなー、胸以外もてんこ盛りだったけど
ソロでコスする時は、ちょいと視線誘導してやれば欠点の方には目が行かないもんだったねぇ
社会人なった頃からかな、同人イベントから足が遠のき始めたのは・・・
悲しいけどレイヤーの最盛期なんて短いモノなんだよっ・・・
・・・カエリタイ、・・・カエリタイ・・・アノ頃ニ帰リタイ・・・
唐突に頭の中に声が響く、
・・・カエリタイ・・・あの頃に帰リタイ・・・
・・・・・・帰りたいワケあるかーっ!!
視界がノイズでワイプされるように洗い流されると、数瞬前までの状態・・・イフリートと対峙した状態に帰ってくる
さすがは上位精霊、アタシの中の記憶を元に幻をぶつけてきやがった
ラスボスが精神攻撃として『楽しかった思い出』の幻を見せるなんてベタもいいところだよっ
だけど、1つだけ大きなミスをした事に気づいてないなー
確かにアタシは別の世界からここに来てるよ、でも・・・でもね
他の召喚勇者とかと違って、アタシは望んでこちらに来た
帰りたいなんて思った事なんて、一度も無いッ!!
精霊との戦いは精神力の勝負、気合で負けたら致命傷
裏を返せば、気持ちが頑健である限り・・・負ける理由が無い
気迫を乗せて剣を握り締め、対峙する
こころもち噛み締めた口元の口角が上がる
・・・カエリタイ、・・・カエリタイ・・・帰リタイ・・・
へーへー、そーですかい、その暗示は効かないよっ!
・・・?! ひょっとして この声、イフリート自身の心の声なんじゃなかろうか
そもそも最上位クラスの炎の精霊のはずだぞー
こんな山中のダンジョンにいていい筈が無いっ!
「炎の王よ、何故こんな所にいる」
しばしの間のあと、イフリートは語り出した
「私ハ、召喚サレタ・・・ソシテ コノ依リ代ニ受肉サセラレ・・・」
「ズット・・・ズット一人待タサレタノダ! 何年モ」
そうだよにゃあ、イフリートクラスになれば召喚するのも手間だし、何かしらの依り代を用意してとどめておくよにゃあ
ここの管理者は魔物配置とかブロック設置のゲーム感覚なのだろう・・・
生命の定義がどうなってるかは分からないけど、この世界の精霊にも感情はあるんだって事
「貴方を倒したら、精霊界に帰れるの?」
「コノ岩塊ノ依リ代ガ無クナレバ・・・オソラク
・・・ダガ、コノ体ニハ全力デ戦ワネバナラナイ呪イガ・・・」
なんとなくだけどムカついた、ダンジョンマスターってのは、配置される魔物の事を将棋やチェスのコマ程度にしか思ってないんだなーって
「わかったよっ、アタシが・・・アナタを開放してあげる」
「イイノカ? 我モ全力で抗ウ事ニナルノダゾ」
「心配ありがと・・・でも、勝負は一瞬で着く! 使うのは禁忌とされている奥義だから・・・」
確かこの世界では、空間を曲げる事もしくはそれに殉ずる技術・技能は、法的に禁止されていると聞いた。20世紀台の地球の『核』に相当するとイメージしてくれればいい。
確かに防ぐ方法が確定しておらず、コントロールに不安の残る技術・・・禁止されても当然だ
「縁理流忍闘術禁忌・・・」
一瞬で世界が暗転する、真っ黒だ
そして明滅する
赤・黄色・マゼンタ・緑・シアン・青・そして白
- イロイッカイズツ・・・ -
謎の真言と共に空間を渡り、躱す事も受け止める事も不可能な別次元から8つの連撃
その名を・・・
「奥義!『黒瑪瑙』!!」(※2)
7色のモノトーン化した7つの人影が虚空より現れイフリートをぶちぬいてゆく
8人目のアタシが止めを刺すと同時に7つの空間門と7人の別次元のアタシは虚空に消えた
イフリートの岩石質なボディが弾け、オレンジの光が霧散する
残ったのはグズグズに切り刻まれた「元は人型だった」岩塊、イフリートの『依り代』
改めてよく見てみると、所々風化しかけてる箇所もあり かなりボロボロだ。
このイフリート自体、そう長くは無かったんだと思う
戦った後で言うのもなんだけど、ブラックなダンジョンマスターに召喚されてボロボロになるまで使われた被害者だったのかもしれない
「さようならイフリート、ちゃんと帰れたかな」
ぽわ
最後の一太刀の残身のまま余韻に浸ってる所に、いきなり炎が現れた
「忘れていた事があったので戻ってきた」
・・・っととっ、(※3)せっかくビシっと決めたところを・・・気持ちのいいフィニッシュのカイカンをかえせー
ふと現れるイフリート、さっきまで戦ってたのと違って全身が炎だけのエネルギー体、足は無く腰から下に行くにつれてぼやけている。正統派なジンのデザインのこっちは「イフリート(真)」とでも呼ぼう
「すまんな、我を解放してくれたお礼をせねばと言う事だ
実は、精霊界に戻ったら上司にたしなめられて・・・」
サラマンダー戦も終わってるので他の面々も集まって来ている
「きゅー・・・上位精霊の上司って・・・」
イフリートは頭ポリポリしながらバツの悪そうに
「精霊とは、元素神の直轄下なのだよ・・・ドワン様は礼節を重んじる・・・(※4)」
大雑把だけど聞いた事がある、4大元素を担当する神様がいるって事を
「あの依り代は不便なものだったが、情報だけは随時入ってくる便利機能があった
そのおかげで、そちらのそれぞれが欲しがっているものが大体は解っている
順に贈らせてもらおう」
面々の並ぶ中、端から順に近づいて語り始めるイフリート(真)
まずはリーダーの鎧さんへ
「巨人の戦士よ、汝は心に『護りたい』と誓った、よって『挺身の力』を・・・」
「ありがたい、これでもう護りきれなかったと悩む事も減るだろう」
そしてマミさん
「魔導師よ、『創りたい』と願った汝には『細工の力』を」
「たすかるわー、これで研究も捗るというものよん」
(本来は職人のスキル、魔導師には取れないスキル)
お次はマー君の番
「聖職者の汝には『神託を聞く力』・・・万能ではないが優先権を工面しよう」
「きゅ~~っ、神に仕える身としてこれ以上のことは無いよっ、わぉ~~ん」
犬型獣人は感極まると野生が出る、普段は理性で押さえつけてる反動らしい(※5)
タツアン
「有形無形の宝物を求める汝には『風の噂』の力を・・・新たなる謎への道しるべを与えよう」
「ほぅ、今後の人生が楽しくなる力じゃねぇかい」
タヌ子
「一行を影から支える汝には癒しを与えよう、傷とかではなく心の奥を癒す為の力『解呪の力』を」
「ありがとうなのです、もらえるものは誠意を持って感謝していただくのですぅ」
オギ
「幼き者よ、常に外敵に脅えていた汝には『隠遁の力』を与えよう、もう無駄に脅えることは無い」
「え? オイラもなんかもらっていいんかい? 今回何もして無いのに」
オギ、何げに凄いものもらってない?
そしていよいよアタシの番
「少女よ・・・すまぬ、汝に新たに与えられる力は我には無かった。上司にも掛け合ったが見つからなかった」
むー・・・なんで? まー予想は付いてたんだけどね。
アタシはこの世界のシステムから外れた存在だ、隠しているけどスキルなら十分間に合ってたりする
でも何も無しってのは癪に触るな、せめて情報くらいは欲しいかな
「なら、知識をちょうだい・・・片鱗でいいの、貴方の司るこの世界の炎の道理を」
アタシの知っているのは20世紀末付近の『物理』とか『生物』とかに過ぎない(※6)
この世界特有の基礎が抜けているのだよっ。
コイツとかもよく判っちゃいないし・・・前にインベにしまっといたフレームジュエルの欠片を取り出して弄ぶ
「ほぅ、大地の炎の結晶体か、なかなかの純度だな」
「わかるの?」
「曲がりなりにも炎の精霊だ、たまにオヤツに食べる、カロリーが凄く高い」
たべるのー? Σ( ̄□ ̄;)
「そういえば、御主も戦っている最中に何かくちにしていたな・・・、オヤツ好きという点では親しみを感じるぞ。
その鉱石の知識でよいのなら、基礎から全て教えてやろう」
こうして、アタシはフレームジュエルについてのエキスパートになった・・・まぁ、乱用しなければ文明汚染にはならないだろう。(普及して無いとはいえ、一応は既存の技術だからね)
「ではさらばだ、我は自由な精霊に戻ろう・・・心配は要らない、我は世界の何処にでもいる」
イフリート(真)は、ボワっと拡散するかのように消えていった
おつかれさまー、もうヘンなのに捕まるんじゃないぞー
「社畜イフリートからフリーになったイフリーターなのですぅ」
タヌ子・・・何処でそんな言葉を・・・∠(T△T)ゝなー
拙い作品をお読みいただきありがとうございます
新年明けましておめでとうございます
いい「初夢」見れました? (初夢は新年なってから見る夢)
ラスボスが最終決戦中に幻をみせるってのは、ポリ○ン系の演出だよねw
作者のバイブルの1つに「銀嬢伝」も入ってたりしてね・・・
最初MMORPGの幻から同人即売会へと唐突に切り替わったのは
記憶の中から「楽しかった時の思い出」を掘り起こして見せ付け、ホームシックを誘発させるのが目的だったので、悲しい思い出に変化しそうになると場面が切り替わったという訳
おーちゃん「いい夢みせてもらったじぇ」
【解説】
(※1)「チビでがめつくて態度のでかい魔導師」: トラゴンもまたいでいくってアレ、ラノベ黎明期っつーかアニメ化も映画化もしたからメジャー作品
(※2)奥義!『黒瑪瑙』!!: 空間を捻じ曲げて繋ぎ、防御も回避も不可能な攻撃を敵に収束するチート極まりないスキル。
こう言うとコレさえ使えば無敵!と思われるが発動の代償は「MOB5体の命」
つまり5体敵を倒した後でないと使用できない。(しかもこのスキル自体は単体攻撃)
威力はそれなりに高いが最強と言うほどではない、火力だけならまだまだ上には上がある。
「ガード不可」かつ「必中」という部分がこのスキルのアドバンテージ、弱点等が分かっているなら如何に厳重に守られていてもピンポイントで狙うことが出来る所がチートくさい、故に禁忌
何故8人に分身するのかは解明されていないが、渡った空間のエコーといわれている。
ただ単純に空間を渡り戻ってくるのは至難を極めるため、この技では7つの空間を経由して元の空間に帰ってきている、コレが【イロイッカイズツ】の真意
第三者の感覚では1秒に満たないけど、術者の方は7色7つの迷宮をダッシュで駆け抜けて攻撃している
(時間の進行速度が異なるとも時間軸が直行しているとも言われているが詳細不明)
ちなみに読みは「くろめのう」ですよー、英訳すると・・・日本最初のPC版ファンタジーRPG、魔法の概念すらないシンプルな世界で脳筋5人が迷宮を駆け巡る名作でした
(※3)・・・っととっ、: コケそうになった 実は「奥義」と呼ばれる系のスキルは消耗の激しい者がほとんど、スキルを放った直後はほぼスタミナなど空っぽに近い
(※4)ドワン様は礼節を重んじる・・・: 炎の元素をつかさどる神様ですが、身近な人間関係や家庭、環境などの運気にも関わっていたりします
プカツ(水元素神)は心理状況や精神面での関係のあり方、変化など
オウスラド(風元素神)は問題の障害や壁、トラブルなど
テンパクル(土元素神)は仕事や仕事環境、金銭や社会的な人間関係に対してのエネルギーコントロールを担当してたりします
詳しく詳細に知りたい人は、タロットカードの専門書でも読むといいでしょう
(元素神は小アルカナのスートに対応した設定なのです)
(※5)普段は理性で押さえつけてる反動らしい: 犬型獣人の文化、根底の思は「人と共に人で有れ」
獣人では有るが獣より人であることを選んだ種族、獣的な行為は恥ずかしいと思う傾向が゛あります。
ただし、禁じてはいないので火急の際には獣人の能力をフルに発揮する事もあります。
(※6)20世紀末か付近の『物理』とか『生物』とかに過ぎない: 理系大学行ってたのだから『人間工学』『素材工学』などの『○○工学』の知識もあるのだろうけど、文面的に小うるさくなるので割愛しました。
神様がいて魔法があって4大元素が基本となっている世界に、現代科学なんてものがそのまますべて通じるはずが無い、根底が違うんだから。
ブックマーク、評価、とかはあまり気にしてませんが (あると嬉しいのは事実だけど)
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ではでは、改めて
- 今年もよろしくお願い申し上げます -
『メタもベタも極めてみせるよっ!』