9章-08 Fire Dancing! だよっ
やってくれるじゃん、普段からアタシの目指している「テンプレ破り」
取り巻き先に倒してからボス戦っていう定番を真っ向からひっくり返してくれるなんて・・・
まさかそっちから先に仕掛けてくるとはね、気に入ったよっ
・・・お礼に踊ってあげようじゃない、全力の真っ赤なステップで
アナタと私の影が揺れる
アタシのメタ感覚では今日はクリスマスだって言うし
ヒールは履いてないけど踊り明かそう
別世界の皆さん、めりくりだよっ!
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ヤバい、せっかく分断したのに・・・何とかしないと一気に逆転されちゃう
何故イフリートはサラマンダーを再召喚したのだろう、厳密には何故全滅してから再召喚したのだろう。
ここでちょっと仮説を立ててみる。あのサラマンダー5匹はセットなのだと
サラマンダーは肉体を持つとはいえ精霊の眷属である。倒された死体もしばらくすると骨1つ残さずに消える。これって、死んだんじゃなくって精霊として帰っていくって事なんじゃないのかな?
そして目の前のイフリートが眷属としているのは固定の5匹で、呼び出す時も5匹セットなんじゃないかな?
仮説に基づきウラワザを試してみる、ハーメルンマーチを再度敢行、同じ曲でね
もし再召喚したサラマンダーが先程倒したのとリンクしていたのなら、全サラマンダーはアタシをタゲるはず。
このハーメルン・マーチというスキル、同一の相手に2回は効か無いという特性がある。
1回魅了した敵に対して再度同じ演奏を行うと、逆に即座にヘイトが跳ね上がる(※1)のだよっ
お、仮説的中! 5匹の視線がアタシに向かってる、しかも明らかに敵対心の目だ!
向かってくるサラマンダーたちを引き付けて再度分断、即座にスキルをキャンセル。
十分に距離を稼いだら今度は回りこむように鎧さん達へと歩を進める。
「スイッチ! クロスするよっ」(※2)
アタシは攻撃対象を切り替え、イフリートへ
鎧さんたちはアタシを追ってくるサラマンダーへと向かう
スイッチとは戦闘中に交代する事、クロスってのはそれぞれ別にタゲを取っている者同士が、交戦する敵を互いに交換する事
これにより敵の攻撃が向かってこない状態で渾身の一撃を入れることができるという、「GAME的な裏技」
まーゲームじゃなくても交戦中で集中している相手とは別からの攻撃が来たら対処しずらいけどね
対集団剣術スキルは、再度使用可能時間がかなり長い。故に連発できない、次に使えるのは大体5時間後くらい。今回は使いどころを間違えてしまった。
しばらくアタシには集団へ対する有効打は無い(※3)
多分眷属再召喚のトリガーは『全滅』、生かさず殺さずすれば補充はされないはず・・・
ぶっちゃけ、いくらでも補充されてしまうみたいなので殲滅しちゃいけない
殲滅重視のNUKERであり、DPSを重視する短期決戦型のアタッカーのアタシは敵を引き付けて維持する持久戦に向かない
「分かった、全滅はさせないようにする」
表情見えないけどアイコンタクト、こっちが見えてないだけで、向こうはこっちの事見ててくれるんだよねーフルフェイスの戦士
説明しなくても意図を分かってくれるってうれしいよね
餅は餅屋、持久戦はそのエキスパートへ
イフリートの方は・・・けっこーダメージ行ってるみたい
角は1本が半分程度で折れ、体表には所々にヒビが入り、赤熱していた武器も力を失いつつある・・・さすがは歴戦のベテラン冒険者
初手は、スイッチにより反応される可能性の少ない安定状態だから、火力重視で双剣強撃!
もう1本残った方の角が斬り落とされて飛んでいく
斬り上げ宙を舞うアタシは、着地を待たずに方向転換、愛用のロングボウに持ち替える
距離を取りつつリボルバー・アロー(※4)を瞬時に集中で打ち込む、秒間6連射!
効果はいまひとつ、体表に纏った炎が矢のダメージを軽減してる?
なら、その炎・・・ひっ剥がしてあげるよっ、氷系上位呪文で
「吹けよ嵐、呼べよ嵐、嵐よ叫べ・・・ヘイル・ヴァルカンっっ!!」(※5)
素早く持ち替え、脇に挟んで固定したロッドの先端に発生した渦から放たれるきらめく奔流
魔道トーナメントの時とは違って今回は掃射しない・・・銀色のビーム・・・厳密には連なった無数の巨大雹が超連射で叩きつけられる
この30cmクラスの巨大な雹は1発1発が嵐を圧縮した範囲攻撃、ブチ当たって砕けるとそこを中心に吹雪が渦巻く
炎で相殺しようとも立て続けに打ち出されるが次弾がそれを飲み込む、大体1分間に600発くらい。気合とランクをあげればもっと連射力を上げることも可能だけど、この技って反動押さえ込むのが難しい、命中精度は落としたくない。いま着弾点が程よくバラけてイフリートのほぼ全身を乱打しまくっている。へっへっへ・・・冷やしまっせ~
蓄熱メイスは熱量を失いただデカいだけの鈍器になっている
「冷やしイフリートはじめました・・・ってねっ」
ここまで冷やせば接近して打ち合える、熱ダメージ回避に一撃離脱しなくて済む
本来エネルギー体のはずの精霊のくせに物理攻撃が効く、これもここのダンジョンマスターの設定によるものなんだろうけど、付け入れる隙があるのなら遠慮なく攻めさせてもらう
見た感じ岩石のような、溶岩のような、頑健さと粘りを感じさせる質感
纏う炎を剥がした今なら直接攻撃が効きそうだ、岩石系は斬撃より打撃が有効だと思う
久々に使うかな、あの武器
『エンペラーナックル』手首から指へ向けて青く光るラインの走る縁理流格闘術に合わせて最適化した格闘戦用武器
単なるメタル強化グローブではなく掌低や豹拳にも対応、収束された意志力、『気』とも呼ばれるエネルギー伝達効率に優れ、格闘スキルの上級者ならこれ以外は無いという上位装備(※6)
インベントリから両手に呼び出しつつ間合いを詰める
接近戦が嫌なのか、圧縮された火炎のミサイルが何発もこちらに向けて放たれる
爆発系なのか貫通力重視なのかは見た目では分からない
まー、出会いがしらにいきなり角1本切り落とされたら警戒するよね
「まあまあ、そんな熱くなりなさんなって、みゃんみゃんっ!」
手首を曲げ軽く腕を振り、ほぼ無挙動的に炎の矢を回避する。『フェリシア・ステップ (※7)』
一見単なるネコ踊り、でもその実は重心制御と体勢を絶妙にコントロール。突進中であっても、挙動を崩さずに回避運動を取るオリジナルテクニック
ヴォォンッッ
飛び道具をかわされ、接近を許してしまったイフリートはその豪腕を振るい薙ぎ払う
手持ち武器を振るう間合いの内側に飛び込んだとはいえ
巨躯の向こうと違い、アタシはまだ攻撃可能な位置に無い
- でもそんな事、想定済みだ -
「縁理流格闘術、一の拳、『寸勁』!」
このナックルは気功系の技と相性がいい
直撃寸前の豪腕を『発勁』によって相殺、パーリングする
跳ね上げて作った隙間が広がりきるのももどかしい、『回転回避』ですり抜けるように転がり進む、ほほ足元、前傾したボディの中央付近まで一気に踏み込む
「二の拳、『螺旋壊撃昇』っ!!」
全身を目一杯捻りこんだアッパーカット、今回はさらにブレイジング・タービンの回転力が追加されドリルのように天を穿つ!
気を纏った拳はイフリートの鳩尾にめり込む、胸板出っ張りすぎ、雄っぱいで顎への直撃ルートコース塞いでるンじゃねぇっ!!
拳を軸にドリルのように高速回転する全身・・・拳、膝、肘、踵、と超多段ヒット
岩石質の表皮を削り破片を散らしていく
「アタシのドリルは天をも貫くっ! ぶ・ち・ぬ・けぇぇっ!!」
そして、ぶ厚い胸板を砕き割り、そのまま顎を捕らえる拳
全身ドリルとなったアタシは、2・3回転分顎にめり込むと跳ね上げ、そのまま高く上っていく
・・・天元突破ァ!!
「近接から遠距離、剣術・射撃・魔法・格闘・・・ いかなる状態からでも攻め手を緩める事の無い距離選択無用、これがサマルの戦い方だよっ!!」
顎を砕かれ、のけぞるように倒れ行くイフリート
その断ち割られた胸元の亀裂の中からオレンジ色の光がアタシを照らす
『・・・?!』
今見えたのって、核? 精霊の本体?
オレンジの光に包まれたアタシの視界が一瞬暗転する・・・
拙い作品をお読みいただきありがとうございます
- 精霊の真の力とは? -
今年もあと数日となってしまいました。
最初の頃こそ1日複数回更新とかやってましたが最近は遅れがちで申し訳ありません
それでも 1年半以上もの間、エタらず続いてます
PVも400万(!!)突破いたしました。(ID持ってない方が多いようです)
これからも、おっさんホイホイと悪ノリは欠かさない方針です
皆様からの声が届く限り、この作品は続けていきます故
これからもよろしく申し上げます。
【いつもの解説】
(※1)即座にヘイトが跳ね上がる: 要するに「よくも騙してくれたな!」って敵意が湧き上がるという事
ハーメルン・マーチというスキルは2度目は効かない
(※2)「スイッチ! クロスするよっ」: 本文でも述べてたけど、スイッチは交代、クロスは対戦相手の交換の事。
定番戦法の「タンクがタゲを取って、タゲられていないアタッカーがダメージを入れていく」のも取りようによってはスイッチの応用かも?
【クロス型の補足】
AとMOB1、BとMOB2が交戦中だとする
ここでAとBが交戦相手を交換した場合、MOB1の注意はAに、MOB2の注意はBに向かったままなので、最初の1撃は確実に注意の向けられていない無防備な所に入れる事が可能な、アタッカーと化すことが出来る
また、敵が1体の場合は複数の攻撃グループが交互にタゲを取り合うことにより連続して意識の隙を突き続けることになる
欠点はスイッチを敢行した後、十分な火力やヘイト稼ぎが出来になった場合、特に多人数での交換型の場合タゲが複雑に乱れ混沌と化す可能性もある
(※3)集団へ対する有効打は無い: 厳密には無い事もない。近接系の技で有効かつ都合のいい技は無いって事
魔法などの広範囲攻撃ってのは、目標とする敵だけを倒すのが難しかったりする
近接戦の最大のメリットはファジーかつ絶妙な微調整、余計なモノを巻き込んだりやり過ぎたりする事がない点にある。
(※4)リボルバー・アロー: 初出4章-03、弓のすぐ脇にリボルバー弾倉のように6本の矢を保持し、高速6連射するスキル。再使用可能時間がほとんど無いという凶悪スキル
素早く番え、引き絞り、狙い、放つ、弓術の基本を強力かつ高速で行うだけという基礎にて奥義
ちなみに『ロングボウ』と言ってはいたけど正式には『レザー・レイヤードロングボゥ』。多重積層構造に張り合わせ樹脂で固めレザーを巻いた強力な弓
(※5)・ヘイル・ヴァルカン: 初出4章-21、見た感じでは巨大雹のバルカン砲なので純粋攻撃呪文と思われがちだが、実はこれ天候操作呪文の応用、吹雪・嵐を固形化するまで圧縮し連続で叩きつけている
物理打撃・冷却・氷結・中程度範囲攻撃を一定時間超連射可能(40秒ほど)と高性能だが
最低到達点冷却温度はフリーズ・ブラスターに劣る(意外にも単発辺りの マナ燃費効率は上回る)
(※6)これ以外は無いという高級装備: 廉価版にウィナー・ナックルなんてのもあるが、格闘家の間では半端な選択とされているらしい。冷静に判断すると、物理的直接打撃力
では『勝者』が勝り、気の伝達効率では『皇帝』に軍配が上がる
(※7)フェリシア・ステップ:初出6章-12、 総重量の2割近い重い尻尾を用いて重心をずらした回避テク。直線的な突きや飛び道具に対して有効
回避行動を取りながらも重心は移動させないため、その後の建て直しが容易で隙を作らない
要するに回転するブーメランの重心位置はドーナツのように何も存在しない場所であると言う事
ブックマーク、評価、とかはあまり気にしてませんが (あると嬉しいのは事実だけど)
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『メタもベタも極めてみせるよっ!』