9章-07 Burning! だよっ
西洋ファンタジーってのは、他の宗教のカミサマとかを魔物や邪神にしてしまうってのは良くあるケース
原因は「世界一有名な一神教」だってのは言うまでもない
ヒンドゥー教の神様のシヴァなんて、昔話では破壊神扱いで毎日のように歴戦の戦士に狩られる存在に・・・
「おじいさんは山へ シヴァ狩りに・・・」
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「ただっ広い玄室ね、部屋というよりホール・・・」
「そんなレベルじゃねぇな、コロシアムがいくつも入っちまうくらいだ」
確かに広い、人工的に作られたとしても、自然に生成されたとしても、どっちにしても不自然なくらいに・・・
「考えられる事は2つ、飛び回る敵か、やたらデカい敵か・・・ってところかしらね、でゅふふ・・・」
「奥へ進む前に・・・非戦闘員は入り口付近で待機だ。危なくなったら扉の外へ逃げるんだ、これも『試練』である以上扉の外までは追ってこない」
と、ゆーワケで、タヌ子とオギはお留守番、メイドと幼児をラスボス戦に巻き込むわけにはいかない
・・・幼女はいいのかって? いいんだよっ
『しかし中身は・・・』なんて口を挟みたいヤツは、首から上が要らないものと受け取るよっ
強ければそれでいいんだ、力さえあればいいんだよっ
でも、ひねくれて星は見上げたりしない
メタ的に読者に突っかかってどーするんだよって、ちょっと精神的にピリピリ来ている
なんとなく・・・なんとな~くだけど分かるんだ・・・自重なんかする必要の無い、いや手加減とか考えてたら倒される、そんな強者の気配・・・この奥の方から
- 待チ侘ビタゾ・・・ -
耳ではなく体に直接染み込んでくるような声
・・・・・・・・!!
音にならない音、地響きのような振動のような、衝撃のような
風圧とも違う、マナでもない・・・純粋なエネルギー・・・ということは?!
目の前に現れた熱気をまとう巨体・・・イフリート?!(※1)
「待チ侘ビタゾ冒険者、最後ノ試練ハ我ト戦ウ事」
目立つ大きな湾曲した角、左右に広がり後ろに流れている
表皮はやや黒ずんだ内側から赤い光が透けるような、固まり始めの溶岩のような質感
そして全身を包む炎、これでもかって位に火炎属性をアピールしている
手にする得物は巨大なメイス。トゲトゲのモーニングスター風
赤熱した岩塊を金属の枠で補強し、その熱が枠から突き出たスパイクに熱ダメージを追加している
言ってしまえば蓄熱式ヒートメイス、『石焼き槌』って辺りだろうか
防ぐにしろ打ち合うにしろ、長時間触れていたら蒸し焼きにされてしまう
生半可なイモ冒険者は美味しく石焼きにされちゃうんだろーにゃ
「我ハいふりーと、コノ迷宮ニ召喚サレ受肉セシ者、盟約ニヨリココヲ守護スル者、
モシココヲ通リタケレバ我ト戦エ」
イフリートが薙ぎ払うように腕を振る、弧を描いて床から炎が吹き上がる
闘志溢れるポーズだねぇ
・・・なんて思ってたら薙ぎ払った地面の炎から何か生えてきた
サラマンダー召喚 それも5体、お約束の『眷属』ってヤツですかー
ボス+取り巻き ってどれだけ定番なんだよっ
「あっちゃ~これ、どー足掻いても鉄板戦法使えなくない? 俺っち大ピンチ?」
「そうだな、イフリートだけならなんとか出来そうかも」
「分断するっきゃないね、この広さなら出来ると思う、でもこのスキルちと恥ずかしいんだよっ」
「むふー、そーゆーの大歓迎、やっちゃって~~」
「きゅ・・・神よ、この罪深き者達に悟慈悲を・・・」
「頼めるかい、おーちゃん」
「おっけ、ボスの方、任せたよっ」
「まって、1枚盾を着けるね・・・三つ目の丸盾、1眼開放っ!」
薄っすら透けた丸い盾がアタシの周りを漂う、コピー元の方の盾は3つの目の内の1つが閉じている。
「マーくん、これって・・・?」
「うん、この盾の力。1眼につき1つ、3つまで盾が飛ばせる」
「すごいね、盾もだけどいきなり使いこなすマー君の才能も」
「きゅ・・・盾の裏に説明書が付いてた・・・」
むー・・・この正直さがマー君の魅力・・・細かい事は戦闘が片付いてから
・・・とりあえずボスと取り巻きを分断するよっ
分断作戦開始! アタシは単身一歩前に出る、剣は二本とも鞘の中、両手は空のまま・・・
1・2・1・2・1・2・1・2・・・かる~く足踏み、ステップ踏んでリズムを取る
あっけに取られたような表情を見せるサラマンダー
キリキリぱしっと取り出す1本の棒・・・バトントワリングじゃないよっ、お気に入りの赤いフルート
魅了の行進曲! 笛吹いてるからセリフは叫べないよっ
吟遊詩人スキルの1つ、
軽快な行進曲が朗らかに響く、1・2・1・2・1・2・・・
ズシン、ズシン・・・
サラマンダーたちがリズムに乗り始める
アタシは演奏を持続しながらパーティを離れて斜め後方へ歩き出す
その後をぞろぞろと1列に並んでついてくるサラマンダー、イフリートを巻き込まないように距離とスキル強度とコースを微調整しながらお互いの戦闘に影響が出ない距離まで離れる
1・2・1・2・1・2・・・
距離を十分とったら、今度はぐるりと大きく円を描いて行進。
アタシの歩いたコースをなぞるようにサラマンダーが輪を描く
はい、分断完了っ! あとは殲滅するのみ
「ファ~イ~ナ~ル~ぅ ミ~ラ~ァ~ジュ・・・」
フルートから持ち替え、2刀を構えた身体にオーラが立ち昇る
行進曲が止み、われに返るサラマンダーたち・・・しかしもう遅い!
「・・・ソード・ストームっ!! 」
発動開始と同時に弾丸のように全身を弾き出す超加速、残像を残して突進する
終焉幻想剣嵐
前に大量の敵に囲まれた時(※2)に使った上位スキル、
一定時間、自らを剣撃の鬼神と化す剣術奥義
ガガッ! ガガッ! ガガッ! ガガッ! ガガッ! ・・・
4人の分身が立ち代り入れ替わりサラマンダー5頭を殴りつける
実はこれアタシは順繰りにぶっ叩いてるだけなんだよね、残像ってヤツ。
サラマンダーを円形に配置したのもこの為、このスキルの特長であるほぼ瞬間移動に近い踏み込み
そのワンステップで届く範囲に各サラマンダーを並ばせたんだよっ
着弾点で爆発性のブレス(※3)を吐こうとする奴もいるが、うまく狙いが付けられないらしくカクカクとその首を左右するばかり。
そりゃそーだ、アタシは4人に分身・・・厳密には一般的な認識時間0.1秒の間に4回の踏み込みダッシュと攻撃を行っている。
残念ながら認識時間内に1週は出来ていない。
そのせいで5体に対して1箇所は残像が途切れてるわけで、結果全体的にチラ着いた不完全な分身の術になっている。
まー分身したいわけじゃなくて超高速各個撃破をやってるだけなんだけどね (¬▽¬;
0.125秒に1発の剣撃、並みのダメージだったとしても塵も積もればでそれなりのダメージになる
スキル終了まで、概算で1匹辺り240発は殴れてる計算、フェイントや回避その他で半分になったとしても2刀流なんで2倍の・・・結果的に相殺っ、うん『ゆで理論』(※4)
回転のぞき絵のようにチラつきながら、傷を増やし、破片を飛ばし、炎だか体液だかを吹き出して崩れ行く火炎トカゲ・・・サラマンダー
超絶踏み込みのループを止め、頭上大上段から左右同時に血振い。剣に纏ったオーラが大きく
「X」を描く。厨二病全開そのものだけど2刀流だとどーしてもソッチ方面な感じになってしまうのは致し方ない。やや反り気味仁王立ちに口元だけ笑うヤンギレポーズ、誰も見ちゃいないけどね
「殲っ滅! 完了ッ!!」 (※5)
スキル終了限界まで5秒ほど余ってたけど、目的は達成したのでスキル解除っ
ほとんど底を突いているスタミナ、インベからマー君ご謹製の焼き菓子の最後の1個を取り出して頬張る。このバターをたっぷり含ませた焼き菓子、他の人はどうか知らないけど、アタシにはスタミナ一気に回復の効果がある。
『元気100倍』どころじゃない、町に着いたらまた作ってもらわなくっちゃ
「・・・さ~ってと、あとはボスの方だねっ」
取り巻きは片付けた、ここからは力を合わせて決戦だー
ガゴォンッッ!!
グレートソードの一撃をかろうじて武器で受け止めたイフリート、巨体がノックバックしてズザザーっと間合いが開く。
心配はあまりしてなかったけど善戦中だぁね、急いで合流して戦いにケリをつけよう
・・・ん?
イフリートがまた、大きく腕で地面を薙ぎ払った。薙ぎ払った地面から炎・・・そして再度現れるサラマンダー
え? サラマンダー再召喚?!
ひょっとしてマサカ『無限湧き』ってヤツ? せっかく分断したのに『ふりだしにもどる』なの?
少なくとも今の絶妙に優勢な戦況バランスがくずれちゃう
専門家がチームを組む、互いの役割をしっかりとこなし、欠点を埋め合い長所で攻める・・・とても強い! そしてそれは手がたい。
『かたい』と言う事は『脆い』面もある、勝ちパターンができてる時はいいのだけど崩れた時の建て直しが大変
カオスな乱戦だけは避けないと
拙い作品をお読みいただきありがとうございます
イフリートに眷属サラマンダー・・・目一杯 炎属性
炎ってのは、それだけで強いんよね。
小さな火だってちょっと触れば火傷になる、氷だとかなり長く握っててシモヤケ程度。
氷って刃や鈍器にはなるけれど属性だけでダメージにするにはかなりのパワーを必要とする
(極低温とか広範囲を冷やすとか・・・)
炎以外ほとんどの属性がそうなんだよね、よっぽど集めなきゃ武器にはならない
・・・どーりで、カラフルな戦隊のリーダーが赤で炎なのか・・・お手軽で強いからなんだね
【解説】
(※1)イフリート: アラビア系のお話、クルアーンにでてくるジン(魔人、精霊)の一種。イスラム教における堕天使。
西洋歴史では異教の神とかは総て悪魔にしてしまうけど、この世界では悪魔族ではなく上位精霊
属性は言うまでも無く炎、モンスター認定されたのは言うまでも無くゲームのせい
主として「D▲D」と「Fなるファンタジー」辺り
(※2)前に大量の敵に囲まれた時: 3章-07で小型トレントの数の暴力に対抗した時に使用、そう言えば単体への使用なら6章-06のミスリル-アダマンタイトの突然変異ゴーゴンにも使った、基本的に切り札スキルだけど意外と「ぶっぱ」してます
(※3)着弾点で爆発性のブレス: アタシの使うファイア・ボルトに近い特性を持ったサラマンダーのブレス。一般にはブレスといえば火炎放射器のような連続掃射が主流だけど、爆発性ってかなり厄介なんよね。
吹き飛ばし&転倒がほぼ確定なのが怖い、複数から集中的に撃たれたら何もできないまま空中お手玉状態になりかねない
(※4)ゆで理論: 超人さんたちのパワー計算によく使われる。
「普段の倍、気合を入れて×2! さらにいつもの3倍の回転を加えて×3!」ってヤツ
(※5)「殲っ滅! 完了ッ!!」 : はい、某逆輸入レトロ格闘ゲーの中ボスさんです。水○灯モドキとゆーか(「改ちゃん」ともいう) ・・・アケ版はネ○カ筐体でまだプレイできたと思う
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『メタもベタも極めてみせるよっ!』