8章-07 一人より二人がいい・・・だよっ
世界御免の必殺プレイ
ピンチさえチャンスに変えるのさ
・・・それにはまず、作戦だー
・・・ヒュ~ッ
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洞窟の入り口は2mあるかないか、鎧さんがギリギリ通れる程度のサイズだった
確かにあの赤い奴の巨体では入ってこれない、今回ばかりはご都合主義のカミサマに感謝しておこう
入り口に詰まってしまう展開も予測できたけど、創造神に採用されちゃうと困るので考えないことにした
アタシの『メタ能力』は良いことばかりではない、オイシイけどシャレにならない発想は禁忌なのだよっ
狭いのは数mだけで奥の方はそれなりの広さ、ランタンを囲むように座っている調査隊メンバー5人
彼らを無事に連れて帰ればミッション終了って事になるのかな
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「あの巨人、我々は『ジュエル・ゴーレム』と呼んでるが、アレを何とかしないと何も出来ない、だから今ここに立て篭もっている訳なんだが・・・」
と、リーダーらしい人のよさそうなオジサン、ヴィンさんが我々を招きいれてくれた
職種は、トレジャーハンターとの事、サブクラスがプリーストだったんでヒーラーも兼ねているんだとか、ブロンドのショートボブにカイゼル髭ってプリーストっぽさ全開やん
「あーそのデカいの、大変だったろ」
「いい装備だ、だが色がいかん」
「黒はダメだ、熱を吸う」
「ピカピカに磨け、光を弾け」
立て続けに2人の小柄な戦士がまくしたてる
双子のドワーフ、サダとカル
「初対面でその物言いはないだろ、酒樽よ
・・・あやつらは口は悪いが悪気は無いんでどうかご容赦願いたい」
ひょろりと長身な魔法使いが口を挟む
「俺ら双子だからって混ぜるなコラ」
「おまかて隊編成の時、カワイイ名前だったから期待してたンに」
「若作りなジジイでがっかりだったんだぜ、キャン」
なるほど、『サダ』と『カル』で『さかだる』かいな
キャンと呼ばれた魔法使いは少し長い耳が尖ってる、エルフかな髭無しロン毛紳士
ベタベタのテンプレだねー、ウマのあわないエルフとドワーフ
こーゆーのって実戦では意外といいコンビネーションできたりするんよね
とりあえずこちら側も自己紹介しとく。ついでに経緯も、この辺りはリーダー任せ
-かくかくしかじかまるまるぐまぐま、くまくまかえるナハハでちょん-
「巨人に魔女に犬猫狸狐、色とりどりだがや」
「むさくるしいパーティへようこそだ」
「マトモな人間だっているぞー」
「影うすくてもドンマイ・・・でゅふ」
スルーされたタツアンにマミさんが突っ込みをいれる
マミさんや、アンタも人間でしょーに
アタシもいちおー人間だけど、アーティファクトの耳とシッポ着けてるからねぇ
獣人扱いされるのはむしろほめ言葉
地位や身分がどーのこーのいう奴は、もとより冒険者なんかになったりしない
「影が薄いのは斥候として優秀な証だよ、おいらはパック、レンジャーさ」
少年がフォローを入れてくれた、いや少年じゃない小人族だー
いやはや、なんともウチらと違ってオーソドックスな種族編成
人間・ドワーフ・エルフ・ハーフリング、正統派の最初期D&Dだねっ
これがハーフリングじゃなくてノーム・ホビットだったら初期ウィザードリィだー(※1)
とりあえず攻略法を見出すために話し合う
「タヌ子」
アタシが指示すると、てきぱきとお茶を入れはじめる
とりあえず落ち着かなきゃ頭だって回りゃしない
笑顔でティーカップを配るタヌ子と甲斐甲斐しくお手伝いするオギ、見た目だけでもほっこりできる
この 場の空気コントロール能力はアタシには無い
戦闘力なんてのは専門に任せときゃいい、癒しの要だよね
調査隊メンバーの話をまとめるとこんなカンジ
「硬い上に滑る、文字通り『刃が立たない』のだよ」
「関節部分を狙おうにも、その部分は何も無い空間で浮いていて攻撃しようが無い」
「胸ブロックの奥に核となるものが透けて見えた。そこさえ破壊できれば倒せそうな気がする」
「エネルギー系、特に炎系の攻撃呪文はほとんど吸収されてしまう」
と、デカくて赤くて硬くて強い
・・・敵に回すとヤバたにえん
まったく持って同感、
アタシも斬り付けた幅広片手剣を眺めて思う
あ奴は完っ全に鉄より硬い、直接殴ってみたから分かる
ここら辺で元理系女の薀蓄をたれてみる
この剣の刃が潰れているのを見る辺り、硬度8以上あるのだろう、ルビー・サファイア並みだ
ちなみに鉄の硬度ってのは5~8の間で様々だけど、硬すぎる鉄は脆くなるので武器には使用されない
鉄鋼材料は安価ながらに強度と靱性(※2)を備えているから武器その他に広く使われている
延性(※3)、展性(※4)という過負荷の際にも変形しつつも耐える性質が金属材料の強みだ
ぶっちゃけ『金属には根性がある』って事
余談だけど硬い=強いとは限らない、靱性が無いと脆くてすぐ割れてしまう。
20世紀末あたりに流行ったセラミックの包丁、確かに良く切れるけど結構すぐに刃が欠ける事を
どれだけの人が知っているのだろう
硬いものの代表かつ最高峰のダイヤモンドは、靱性ではルビー・サファイアに負けてる事を
さらには瞬間的にはあずきバーがサファイアの硬度8.5を越える存在だということを
脱線しすぎた、てへぺろ
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打つ手・・・ねぇ・・・
情報共有も一通り方が付いて対策を立てることになる
「ありがちだけど、罠・・・落とし穴とか落として動きを止めれば倒せるんじゃないかな?」
鎧さん、単純かつ古典的な手を・・・王道・定番・ベタ、正攻法
「問題は厚さも強度もさっぱり未知数な、この火口の蓋なんだよ」
「そもそも、目の前に相手が居るのにどうやって掘る?」
さっそく調査団達にダメだしされてる
確かにここは、冷えて固まった溶岩の表面と少々の堆積がある程度
下手にいじったら休火山が活火山になってしまう可能性もあるって事かー
「ていあーん」
こんどはマミさん
「たとえば、何とかしてこの火口上からジュエル・ゴーレムを移動させて、火山への影響を考えなくて済む位置にて極大火力な魔法にて殲滅する・・・なんてのは?」
「無理だな、アイツはこの火口から離れようとはしない、だからこそこうやって洞窟に逃げ込んだら早々にあきらめて火口中央で活動停止している」
「休眠状態のアイツならそちらのパーティも既に見てるんじゃないかな」
確かにこの洞窟に手を突っ込むくらいはやられてもおかしくない、最悪覗き込むように顔を近づけて熱線撃たれたらひとたまりもない
「なんか引っかかるわね、侵入者撃退用のゴーレムなら、こんな近くに立て篭もらせるはず無いわよね」
「追撃がまったく無い、諦めが良過ぎるのが気になるな」
「むきゅう・・・もしかして、あの場所を離れる事が出来ないんじゃないかな」
「あの場所って休火山の噴火口の中心」
「あの位置にこだわるのは保身のためなんだろぅな・・・ウチの魔法使いみたいなのに遠くから飽和攻撃されねぇ為に」
タツアンが首を捻る
「まったくだ、『二次災害とか気にしなくていい、全て更地にしても地形が変わっても構わない』なんて国家間の戦争ですらありえない、大地とは自然の作り出した芸術作品なのだ」
サベイア氏、地形とか好きなのね・・・根っからのマッパーとゆーか
「更地までならアリだけど、火山を爆破しちゃったら天災どころじゃないわねぇ」
マミさんや、更地はいいの?Σ( ̄□ ̄;)
「むー、『斬ってダメなら叩き割る』って訳にはいかないのかな?」
要するに、相手が硬くて斬撃が効果ないのなら、鈍器による打撃で靱性を上回る衝撃を叩き込めばいい
ダイヤモンドを包丁で切るのはまず無理だけどハンマーで叩けば割れる
そんなことが出来るのかって? ・・・個人的に思い当たるものは2つある。
1つはチートもう1つは最近完成したばかりの切り札
切り札はともかくチート主体の力押しはリスクが大き過ぎる
スキルにかけてあるリミッター取っ払ってランクをMAXにするならば、力押しでも勝てるかも・・・
ただし、それはもう人間の所業ではない。
『与えられし能力の呪縛に囚われた化物』でしかない
表向きはにこやかに微笑んでいても内心は危険物を扱うような畏怖
なにかをしでかしても「まぁ、アイツだから」と笑って許され、その実は腫れ物を扱う思い
そんな飼い殺しの化物になるのは絶対に御免被る
「・・・でも、何でぶっ叩くか、それが問題だよっ」
アタシは、『無双』より『夢想』したいんだよっ
だから今回は基本的に援護側にて動きたいと思う
切り札を切るのは作戦が崩れそうになってから
「はいはーい!」
「この地形って周囲が山になってるですよねぃ、高い所から大岩とか落とせば倒せるんじゃないですぅ?」
「いや、岩はあるんだが落としてしまってよいものなのか、山壁を削り落とせば岩で雪崩を起こせる。
だけど問題は,上手くその位置へ行かせる事が出来るかの方なのだよなぁ」
「確実に落石を命中させる方法もないわけじゃないんだけど・・・ちょっと難しいというか」
こーゆー所でこそ理系女子の知識を運用すべきだと思う
別に複雑な方程式なんか使わなくても応用できる法則があるんだよっ
中学・高校生レベルで十分っ!
「これこれこうすることで・・・」
大まかな図を洞窟の壁に書いて説明
「へぇ・・・」
「なるほど、そんな法則が・・・」
「とりあえず作戦はこの方向で・・・」
拙い作品をお読みいただきありがとうございます
調査隊の面々、実は最初は名前の設定なかったんよね・・・
ふといきなり名前が降って湧いたように思いついて、とたんに性格とかのアウトラインが出来上がった
キャラの生まれる瞬間ってこんなカンジだよね
ちなみに一人だけ先に名前のついたサベイア氏は、この隊の中では最年少だったりする
エルフ・ドワーフ・ハーフリングは長命種族なもんで
【解説】
(※1)初期ウィザードリィだー:1作目(無印)から5までが初期型、ここまでなら作者はとても詳しい
どれくらい詳しいかとゆーと、大昔にア○キー主催で開かれたウィザー○リーフェスティバルの大会で準優勝し原作者ロバート氏と謁見しているくらい
(※2)靱性: 材料の粘り強さ、耐衝撃性。材料の中で亀裂が発生しにくく、かつ伝播しにくい性質
実は靱性では ルビー、サファイヤ、翡翠が8、
ダイヤモンド、石英、アクアマリンが7.5 と、ダイヤは最強ではない
有名どころではエメラルドが5.5とかなり弱いので注意
(トパーズ、ムーンストーンは5、アパタイトは3.5)
(※3)延性: 弾性の限界を越えて、破壊されずに引きのばされる性質。もっちり感、うにょーん度数
猫の延性ってすごいってのは皆ご存知だよね
(※4)展性: 金属が打撃や圧延によって、破壊を伴わずに薄い板や箔になる性質。でろーん度数
金属では金の展性がものすごい、叩いてメッキ並みの厚さまで伸びる。金箔なんてのが最たるもの、あれ金の量はものすごく少ないのでかき集めても殆ど目に見えるかどうかの状態になる
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『メタもベタも極めてみせるよっ!』