8章-06 まあるい空だよっ
これまで旅とか、ちょっとした冒険とかしてきて、アタシはこの世界についての1つの仮説を立てた
『この世界の人々は、誰もが何らかのチートっぽい能力をもっている』と
もって生まれた『才能』と言い換えるとわかりやすいかもしれない
ただ、その能力が何なのか、自分のやりたい事に合っているのかは、まったくの未知数
わかりやすい例だと、ティル村の料理研究家ケイティさん
この人は人間離れした怪力の持ち主で、中身入り大樽をポーチか何かのように取り扱う
先の村襲撃事件ではオーガとをホブゴブリンを瞬殺KOし、村人達を守り抜いた
ひょっとしたら、アタシが全スキルのリミッターを解除して万全のステータスにしたとしても腕力では敵わないような気もする。でも料理研究と怪力の間に関連性は多分ない
生まれ持った能力が何なのかに気づいて、上手く使うことが出来た人が表舞台に立つのだと
そしてその道を貫いた者の生き様が伝説と呼ばれるのだと思う
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ただいま高度1500m、夜風が気持ちいい
うん・・・火山口や間欠泉とかから離れたこの辺りの上空は空気が澄んでいる
いやさね、
寝付けなかった事と夜風の気持ちよさ、星空のきれいさに引かれてつい・・・
ついうっかり、夜空の散歩に出ちゃった
いやね、この先進む道とMAPの追加表記分とか気になるでしょ、上から見て地図と俯瞰画像とアタシのミニMAPを比較すれば確認できる
それに、この猫シッポ着けてから飛んだ事まだ無かったのよ、身体の重心とか変わっちゃってるんよね、
済んだ空気の中キラっキラの星々に360度囲まれてると、気分もそれっぽくなってきちゃう
足場は無いけど空中をステップしてみたりして、
空をマラソン 夢をユニゾンしたい・・・なんちゃってね
いやここは、ゆったりと大きなスライドでゆったりと駆けるのが似合いそう
みつめてごらんよ~
(略)
・・・バ○ス○ン・ウ○ル 覗けます
フェアリィ・ウィングと言えばコレでしょう・・・やってみたかったけど、ゲーム世界では出来なかったし
こっちの世界では自重してた妖精さんごっこ
嬉しはずかしオンナノコです
・・・元ネタみたいに脱がないよっ、衝動的なお遊びだからコスプレとかもしてないよっ(※1)
夜空はステキ、あぁそれなのに
・・・そーいや地面の方は岩ばっかりでつまんなかった(※2)
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「そう言えば、昨日の晩は流れ星が見えたねえ、結構大き目の」
ぎ、ぎっくぅ・・・
「この辺りは町灯りとか他に光を発するものが何も無いから星がよく見えるんだよ」
ヤバい・・・
「雨の少ない土地だから雲も少ない」
「火山のガスや煙が少ない時は結構遠くまで見渡せる」
「生活する人がいない土地だからこそ見られるけしきでしたねぃ」
うかつだった・・・
アタシの飛行スキル「フェアリィ・ウィング」は光で形成された妖精の羽、昼間は目立たなくても夜中、特に昨日みたいに星明りしかない空だと隠し通すことは難しい
ちなみにアタシが単独で飛行可能だって知っているのは、マミさん、鎧さん、タヌ子の3人
つまり、王都魔道トーナメント本年度優勝者リーザ選手のセコンドメンバーだけがこの秘密を知っている。
ぶっちゃけ、天翔るオイナリサマ(ロリ)リーザの正体は髪型変えてキツネ巫女に扮したアタシなのだけどね
「昔から山には未知なものとかいるものですぅ、妖精さんでもいらしたのかも」
タヌ子、グッジョブ その方向でごまかそう
これからは、気分的に高揚しても怪しまれるような事は控えよう
我慢できない時は、変装なりアリバイなり用意しよう
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朝食は昨夜のスープの余りとパンで軽く済ませ、てくてくと火山地帯を進む
同じ未踏の地でも、信用置ける地図があるのと無いのでは大違い
ついでに言っちゃうと、既に地形確認済みなのでアタシのミニMAP機能にも未確認時より多目の情報が表示される(※3)
一行はサベイア氏の案内で調査隊メンバーの避難場所へと足を進める
左右両側が切り立った崖、平均台の上ではなく谷底のような細道
「うわ、くっせ」
鼻を押さえるように少しむせるオギ
「おっと、この辺りはガスが溜まりやすいんで、姿勢をあまり低くしないように」
空気より重い火山ガスは当然下に溜まる、気づかずに靴紐を結び直してそのまま死亡した例もある
一番背の低いオギが真っ先に影響を受けた
「下は危ない、しばらく乗ってるといい」
鎧さんが片手でひょいと掬い上げるかのように、オギを持ち上げると自分の左肩へと乗せた
高さにして約3m、ガスもここまでは届かない
「次は、おーちゃん・・・」
「アタシは大丈夫、このくらい『毒物耐性』スキルで撥ね退けれるよっ(※4)」
この程度の濃度のガスなんてのはアタシにとってほとんど障害物とならない
肩の上に載ったら、有事の際にアタシの最大の武器である機動力が失われてしまう
『オレハ、マダ、ツカエル』なんてね
「問題は、ここを抜けた後なんですよ・・・いなくなってくれてたらいいんですけど」
サベイア氏は弱気そうな口調でつぶやいた
「何かいるんかい? 俺っちワクワクしてきたぜ」
「タツアン、油断大敵だよっ」
ツッコミを入れながら警戒を強める
「この先を突っ切った奥の洞窟に仲間達はいます・・・ただ・・・」
言いよどむサベイア氏、ここに何がいる?
少なくとも昨夜の上空観察では何も引っかからなかったよっ、敵対MOBの反応は無かったよっ
「ここからはゆっくりと、お静かにお願いします」
谷底細道の終わりからそっと覗くと、ただっ広い野球場クラスの平地、周りはほぼ垂直な岩壁で囲まれており、さながら自然の生んだコロシアム
そしてその中央付近には、無造作に山と積まれた大量の赤い岩
見るなといっても目に入るくらい赤い鮮やかな大岩、一部光ってる。
これひょっとして宝石?
ネコミミがピンと立ち、目が釘付けになってらんらんと光る。いちおー女の子ですもの
今まで見たことも無い巨大な宝石(原石)
ふと脇を見るとアタシ以外の女性2名も完っ全に釘付け状態
もっとも内心思ってる所はそれぞれ違うんでしょうけどね(※5)
「お嬢さん方、言い出し難いんですけど、あの赤いのが最悪の魔物なんですよ」
え?
とっさにミニMAPに意識を向けるが敵対魔物のアイコンは表示されていない
「そんな、魔物の気配は無いよっ」
「あの赤い岩塊、近づくと動き出すんですよ」
むー、ミミックのようなタゲ認識阻害能力持ち?(※6)
厄介だなー
「あいつが居るせいで他の面々はほぼ監禁状態、あの奥の洞窟から出てこれない
・・・そっと、出来るだけ近づかないように洞窟まで回り込んでください」
「気づかれた時は?」
「洞窟までダッシュしてください」
穴だらけの作戦だなー
「今ここで一気に粉砕しちゃうとか、流れ星でも召喚したら叩き潰せるよっ、跡形も無く」
「それってジョークですよね? まさかホントに・・・」
引きつった表情でパーティ一同を見渡すサベイア氏
一同は申し合わせたかのようにゆっくりとうなづき返す
無言のうなづきが『この人、本当にやっちゃうから・・・』と語ってる
大きな声で、×××理科ピリ辛~
うるさーいだなんて、火山が大噴火~
そーいや昔の記憶によると、ダンジョンのボスって入室する前から部屋で待機してるモンだから
ボスルームに入る直前 部屋の外から室内にメテオ叩き込んで、着弾の直前に入室(※7)とかやってたし・・・(_*`ω´*)ふんすっ!
「できちゃう人なんですね・・・」
再度ゆっくりとうなづき返す一同
「お願いですから、ここでは止めてくださいっ!」
角度90度の深い礼
わかってるって、『叩き潰せる』とは言ったけど『叩き潰す』とは言ってない
だってこの広場とゆーかコロシアム地形、穴の埋まった休火山の噴火口なんでしょ
メテオとかの大火力ブチ込んだら噴火再開も十分ありえる
あと、『大地震』とか、『泥沼』とか地面の深いところまで影響を与える類の魔法も要注意だぁね
自重って大切だよね、
「まーとりあえずは調査隊と合流するのが先決だな」
鎧さんが一同を促し壁沿いに開いていく
ただこの人が居る限り、隠密行動とはいえないわけで・・・
ガシュン・ガシュン・・・今なんか気づかれた様な気がする
ぱきっ
小枝か骨かそれっぽい細いものを踏んだような音がした
ゴガッ、ガララララ・・・
赤い岩が動いた
ガララララ、ガシガシッ
パーツが移動して組み上がる、少し透明感のある赤い岩で構成された岩巨人
身長10m弱、全体的にずんくぐりした体型、首は無く胴体と頭部が一体化している
頭部付近に光る単眼が透けた岩の中をぐりぐりと動く
なんつーか、某超有名ロボットアニメの水陸両用型みたいなデザインなんですけど・・・
「こいつを片付ければ、調査隊全員を救出して『一件コンプリート』ってなるんだよねっ?!
なら、今ここでやるっきゃないよっ!」
赤くても宝石っぽくっても、所詮は『岩石巨人』、物理的に砕いてしまえばいい
アタシは2本の剣を抜くと同時に身を捻るようにジャンプ、とりあえず狙うは、比較的サイズの細い上腕部のパーツ。
「まずは腕1本いただくよっ!!」
ばきぃぃん!!
!!!なんなのっ?
・・・剣が振り抜けなかった。 こんな事初めてだよっ
硬い、そして何より刃が滑る
予測と実際で動作の違いが生まれ、バランスを崩しつつ着地するアタシを追いかけるように単眼の視線がこちらに向く、そして光る! 走る剣線?
「ちっ、判断遅れたっ」
とっさに剣線の予想されるコース上に剣を出し、ダメ元でガード
ガギュウゥゥン・・・
ボヴァッ・・・
一閃が通り過ぎる・・・
「守りは僕の役目だよ」
間に割って飛び込んで着てくれた鎧さん、地面にほぼ一直線に走る傷跡
走った一閃は剣なんかじゃなかった・・・熱線?
鎧さんの重盾の下端の方が赤く鈍く光って・・・灼熱化している
ガードしようとして突き出したアタシの剣は、1/3程が切り落とされている(※8)
なによコレ、目から光線? 赤いクセに
目から光学兵器放っていいのは『青いサイクロップス』だけだよっ(※9)
「こーなっちまったもんは仕方ねーな」
素早く走りながら立て続けに矢を放つタツアン
「やっかいな目玉だ、あちこち動き回りやがる」
「それ以前にぜんぜん刺さらないみたいじゃないの、剣で斬れないのならヤスリで削るまで!
破滅の漆黒宝珠!」
ヴヴゥゥンッ・・・ギャリギャリギャリギャリギャリ・・・・
魔力の球体回転ヤスリが巨人の顔面に押し付けられる
さすがにこれは岩巨人も足を止めなんとかして逃れようとする
・・・ギャリギャリギャリギャリギャリ・・・・バギンッ!
抱えられ、しばし押し合いをしていた魔力球が、ついには砕けた
巨人の頭部から胸にかけて、妙につやつやしている
確かに削った、でもピカピカに磨いて何の意味が有るんだよっ
ピンチ、ピンチ・・・
せめて建て直しの時間を稼ぎたい
詠唱を重ねて強化圧縮した火球を撃ち込む!
命中と同時に弾けて転倒させる呪文、コレなら隙の1つくらい作れるはず
「砕けなくともせめて・・・すっ転べ! 強化鬼火っ!!」
ズドンッ!
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・?
普段ならここで ドーンってきて爆圧で相手は巨大を転倒させる・・・はず
不発?
火球はそのまま赤い鉱石ボディに吸い込まれて消えた
剣は効かない、一部の魔法は吸い取られる
こりゃヤバいよね
「とりあえず撤退だ! 洞窟へ避難して対策を練ろう」
とりあえずリーダーの意見に賛成っ
非戦闘メンバーがちょっと気になったけど、こちらの戦闘中にも走り続けてて既に洞窟近くまで逃走中
「とにかく洞窟まで走れぇッ!!」
『撤退ではなく戦略的移動』って誰かが言ってた気がする
拙い作品をお読みいただきありがとうございます
キラキラしたものはいつだって心を高揚させる、
人、それを乙女心という (by□ム兄さん 言うだけで断言はしない)
後半出てきた「名称未定の赤いヤツ」
剣も魔法もいまいち効かない上に光学兵器持ちという凶悪な魔物
デザイン的には『~ク』『~グ』とか『~ガイ』で終わる系列のアレっぽいシルエット
ただし関節は中に浮いていて魔力で駆動されてるらしい、ロボ共通の弱点にも死角無し!
しかも地理的に大火力で殲滅という切り札も封じられている・・・どーしよ
せめてもの救いは『赤いくせに3倍というほど速くはない』事くらい
【解説】
(※1)コスプレとかもしてないよっ:実は昔々コスプレしたこともあったりして・・・妖精さん
どーせ少々(?)たわわな「身・フェ○リオ」だったよっ、ぜーにくは向こうの世界に置いて来たからっ
(※2)地面の方は岩ばっかりで詰まんなかった:本来の目的は地形確認だったはず、本末転倒
町灯り1つすら無い真っ暗な大地をどうやって見てるのかは、かなりチートな方法
システムメニューから視界の「明度」を調整しただけ、これで暗くてもそれなりに見えるようになる
作者がMMORPGで「暗くて見えにくいエリア」でよく使う手だったりする
(※3)ミニMAP機能にも未確認時より多目の情報が表示される:基本的に空間続きの範囲が表示されるのでオープンフィールドだと全て見えることになるけど、確認済みだとその場所はより細かく表示され、解像度も上がる
(※4)このくらい『毒物耐性』スキルで撥ね退けれるよっ:体内に入った毒物を中和・排除するスキル
即死系の毒は無効化し、ほとんどの毒は数十秒で体内にて中和される
ただし苦痛が無いわけではないし中和の際には体力も消耗する
何故かアルコールに対しては発動しない、でもアセトアルデヒドは中和するので二日酔いは無い
薬は効くので何が無効化されるのかは試すまでわからない、けど自ら人体実験する気は今の所ない。
当然この手の生命維持関連スキルは下げ設定せずにマスターランクのままにしてる
(※5)内心思ってる所はそれぞれ違うんでしょうけどね:研究熱心なマミさんは魔動的な素材的な価値か何かを見出していると思われるし
質素な隠れ里の生活から今の(ややチート的な)快適生活を知ってしまったタヌ子なんかには巨大な宝石はお宝の山以外に見えません
(※6)タゲ認識阻害能力持ち?:ゲーム世界では宝箱に擬態したミミックは、キャラが接近してミミックが行動開始する瞬間まではモンスターとしてターゲット指定できなかった。
正攻法なら必ずミミックから先制攻撃を受ける事になる面倒な敵・・・
もっともミミックと宝箱を事前に見分ける方法はいくつかあり、ミミック自体さほど強いMOBではないのだけどね(おーちゃんの召喚獣のミミックは高レベルまで鍛えてあるのでそれなりに戦えます)
(※7)着弾の直前に入室 :一応ボスキャラを倒す瞬間はボスルーム内に居ないとね。システム的に矛盾(ボスが倒されてるのに倒した相手がいない)が発生すると、バグとかハマり現象(例:奥に出口が開き、ボス部屋に入れなくなる)とか発生しかねない
(※8)アタシの剣は、1/3程が切り落とされている :平たくぶっちゃけて言えば『肉厚』の違い。
技主体で戦うおーちゃんの剣は「切れ味」と「クリティカル率」を重視のチューニングてせ刃が薄い
熱線で鉄を切断する場合、刃の鋭さなんて関係ない、薄い刃は容易く熱切断され、分厚く熱が分散伝導する重盾なら少しなら多少は耐えられる
連続で長時間の照射を受けたなら焼き切られるのは明白だけど
(※9)目から光学兵器放っていいのは『青いサイクロップス』だけだよっ :マー君(の中の人)が大好きなシリーズの突然変異体のリーダーさん
作者は某格ゲーで知った、調べてみると色々問題も有る人物らしい?
作者はアメコミはニワカです
【余談】
解説※1のネタ「身・フェ○リオ」の人、いちおー友人でセンパイです、おなじ[○ン○インFC]に居た人なのです、年上の先輩なのです
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