8章-05 爆ぜろ自重! 弾けろ常識!だよっ
一人が駆け出すと、ついつい周りもつられて走ってしまうってのが世の常
・・・いや、人間の習性
って、最初に飛び出したアタシが言っちゃいけないよね、てへぺろ
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「ふっ、上から来るってわかってれば、怖い事なんてないのよ」
口元に笑みを浮かべてマミさんが杖を振るう
「堕ちたる窓っ!! 」
岩山の上から襲いかかって来る黒豹3頭、そのそれぞれの真上に四角く光る魔法陣が現れる
「堕ちろォォッ!!」
宙を舞う黒豹たちをハエ叩きのように地面に叩き落す
ドグシャッ! バキャッ! ゴギャアッ!
うわー、明らかにどこか折れたような音
石魔物すら砕く、マミさんお得意の対空呪文
空中にいる限り問答無用で地面に叩きつけられる
「ラクに・・・してやるよっ、徹甲矢!」
タツアンの放った矢が、地面に打ち据えられた黒豹の頭部に突き刺さる!
「先を越されたか、もう一頭は僕がやろう」
ズシャァァァッ! ゴスッ! シャラララッ・・・キンッ
鎧さんの伸縮剣が、足の折れた黒豹へ伸び、正中線を貫いた
「ひっ・・・ボクだって・・・」
マー君は天を仰ぐように両手を広げ祈りを捧げる
「神よ、我が目の前の邪なる魂に、鉄槌を・・・神の拳骨!(※1)」
空から光の塊のようなものが垂直に落ちてくる
ズゴォン!
それは黒豹もろとも地面に数メートル四方を、数センチ程度ではあるが地面にめり込ませると霧散するように消えた。
「神様、ありがとうございます」
周りの岩にひび割れを残しだ局所的クレーターもどき、どう見ても拳の跡っぽい凹みの中には、ほとんど流血もせずにぺしゃんこになった黒豹、なんと言う威力
ヒュ~ッ、神聖魔法? あれがカミサマの拳骨?
う~ん、いつの間にかものすごく司祭としての実力をつけてたんだねぇ
MAPレーダーを確認、伏兵は見当たらない、ミッションコンプリートだ
「お疲れ様だよっ、もう黒豹はいないみたい」
「でゅふ?15匹いたって言ってなかったっけ?」
マミさん変な所覚えてるなー
「ま、確認してみりゃいいってだけの事よん」
何やらおもむろに金属製の筒状のものを取り出すと頭上に掲げた
「跳ねる眼!」
シュパァッ!
筒の中からさらに筒状のものが勢い良く打ち出される
手元に残った筒の一部を開くと、四角い水晶表示パネル(液晶ではない)が現れ明かりが点る
「みててみ、魔道技術は協力し提携しあう事で飛躍を続けるのよん・・・」
パネルに映像が現れる、かなり上空から見下ろしたこの付近、岩山ばかりの殺伐とした風景
「無線インカムの技術とビデオカメラの技術提携で生まれた『跳ねる眼、試作V3段階』(※2)、打ち出し式アイデアの大元の発想は、モコモコ頭の青年なんだけどね」
発射筒自体がコントローラーになっているらしく、傾けたり捻ったりするごとに映像も切り替わる
あ、これアタシ達だ・・・近づいてくる・・・
ひゅるるるん・・・・コーン
軸のやたら太い竹トンボ状のカメラが落ちてくる、回転翼がブレーキをかけてるらしく落下速度はあまり速くない、落下の衝撃で壊れない工夫
なるほどねー、無線通信の仕組みで向うからはカメラ映像、こちらからは操作コマンドを送ってるって訳だ
「これまだ自由に飛べるわけじゃなくって、まっすぐ打ち上げて、せいぜい落下地点を調整できる程度でしかないのよ
最終的には自由に空を飛ぶカメラ・・・まだまだ先は長いわ」
マミさんは薄いブルーグレーの金属筒、ホッパーの羽根を畳むと筒の中に収め荷物の中に戻した
「まだまだ召喚獣には敵わないけど、状況確認くらいなら十分使えるわ」
すごいなー、本来こーゆー発明って転生者がするもんじゃあないの?
自由に空を飛び空中撮影をするカメラ、21世紀にはもう売っていたりするんだよね
一般的な異世界転生モノ作品だと、21世紀から来た主人公が『ドローン作ってみました』って無双するってのが流れだよねー
「最終的にはどんな形の完成形になるの?」
「理想は手のひらより小さく、指定した標的を自動で捕らえ続ける(※3)・・・おはようからおやすみまでずっと片時も離れず見守り続ける・・・でゅふふぅ・・・・」
一瞬寒気がした・・・でもやっぱこの人らしい
わかってるよっ、どーせ狙われる『標的』ってアタシなんでしょ
- 愛されるというのは 幸せなことなのかな? -
某カード集め魔法少女さんは、撮影魔お嬢様の事を重く感じなかったのだろうか・・・
アタシ個人としては、こんな寂しさを感じる暇のない世界も悪くない、むしろ望んでたんじゃないのだろうか・・・
ダメダメ、変に自分の中だけで悩んじゃいけない、そんな自分は向こうの世界に置いて来たんだよっ!
「おぉいおい、アンタ達何者なんだい、この辺りのボス格魔物をいとも簡単に・・・」
アタシの内面ループ入りを阻止したのは今しがた救出した調査隊の青年だった
「おっと、自己紹介が遅れてすまない、自分は調査隊の一人 名前はサベイア、クラスは測量士。この辺りの地図を作り上げるために調査隊メンバーに参加してる」
「ならなんで一人でこんなところにいたんだい?」
初対面との交流・対話とかは、タツアンに任せとこう。
彼以外は癖の強すぎるメンバーだからね、ウチのパーティ
リーダーの鎧さんは身の丈3mの巨人だし、マー君は司祭だけど獣人
一般に魔法使いは真っ当な人間が少ないという通説があるらしく問題外
残ってるのはタヌキメイド、狐ショタ、そしてネコミミ幼女
盗賊のタツアンが一番フツーの人に見える・・・いいんかな?
「おっと、大事なことを忘れていた・・・自分は助けを呼ぶためにベース基地を目指していた」
「ってー事は、この奥に他のメンツがいるって事か」
「ああ、とんでもないやつに出会っちまってな・・・皆とある場所に隠れている
自分が一番地形に詳しいから抜け道を使って助けを呼びに行った・・・」
「だけど急ぐあまりに、夕暮れの黒豹出現タイムにちょうどぶつかってしまった・・・と」
タツアン、半ばあきれた表情
「うかつ者よねー、たまたま私達が通りかかったから良かったようなものの」
マミさんがシリアスMODEで冷たい視線を向ける、ご立腹の様子
つい先ほど目の前で実力を見せ付けられている事もあって、威圧感がハンパない(※4)
普段の「ぐだ顔」や「でゅふ顔」でも「営業スマイル」でもない、多分意図的な「どS顔」
とどめこそ男性陣3名がそれぞれ刺したものの、迎撃から押さえ込むまで彼女一人でやっているのだ
交渉ごとは大人の面々に任せておく、アタシが矢面に立っても信憑性が減るだけだし
そもそも交渉ごとは子供のアタシには向いてない
「本当に助かった、なんと礼を言ってよいのか判らないくらい。
その腕を見込んで頼みがある、仲間を助けてはもらえないだろうか」
腰の低い物言いで、緊張の糸が切れたように膝をつく調査員
それを見てマミさんの表情も少し和らぐ、気になっていたのは礼節のところだったらしい
読者の皆さんは、助けられたらとりあえずお礼は言おう
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とりあえずこの付近でひときわ高い岩山に登って、そこで態勢を立て直す事とする
現地の調査隊り情報によると、トカゲやサソリは岩肌を登ってくる事はあまり無く、黒豹は高いところにいる者はまず狙わないとの事
辺りは既に薄暗くなって来ているので、この岩山で夜を明かすことになるかな
この苛酷な環境を徹夜で突貫するのは無理がある
現代人の知識チートみたいなんであまり言いたくは無いのだが、火山ガスは基本的に重いので低地や窪地は避けたい。聞いた話によると、靴紐を結び直すためにしゃがみ込んだ登山家がそのまま死んでしまったケースもあるという。
腐った卵の臭いならまだ少しながら耐性はあるが、刺激臭がしたら即対処しないと危ない
しかも火気があれば、前者の硫化水素ガスは後者の亜硫酸ガスへと変わる
「この奥の地形はこうなっていて、自分はここからこう辿ってここまできたんですよ」
「なるほど、もらった地図にはまだ無い部分はこうなっているのか」
調査隊のサベイア氏が手書きの地図を出して、道取りを説明してくれる
地形マッピングをしながら進むのと、既に地図が出来上がってるのでは進みやすさは桁違い
アタシ個人としては、調査隊の救出はミッション目標なんで 「助けない」という選択は最初っから無いし、まだ生きている可能性のある調査隊員がいるのなら救出に向かうのはごくごく普通のことだと思ってしまう。こういった辺りがまだまだゲーム的な思考なんだと思う
死んだらそれまでなのだよ、復活・蘇生なんて生ぬるいものは存在しないのだよっ
「召喚する ハカセ!」
もう定番になってる夜の護衛の召喚獣、白フクロウのハカセを呼ぶ
リンクしなくてもこちらの言う事を判ってくれる頭の良い子だ
(だけどその分の報酬は要求してくる)
わしっとアタシの頭の上に止まる、ちゃんと着陸用に腕を出してももどーゆー訳か頭に止まる
でもアタシが触られるのを嫌がるネコミミをちゃんと避けて頭にとまる
「夜間の警戒たのむよっ、ガスが溜まってるから窪地なんかは避けるようにね」
「ホウ」
白フクロウは一言返事するとほぼ無音で飛び立った
鳥類は視覚に優れるけど嗅覚が余り良くないから、ガスには気付きにくいんだよね
「獣使い・・・いや召喚師さんですか、これなら夜も安心して越せそうです」
むー、実は無職なんだけどねー
コトコトと鍋の煮える音と匂いがする、タヌ子が夕飯を作っている
「村とはまったく違った夜空・・・」
尖がった岩山の頂上の台地に散らばる岩柱の1つに腰掛け、すっかり暗くなった空を見上げる
ほぼ360度広がる夜空のパノラマ、天然のプラネタリウム
いやはやプラネタリウムは人工で作られた夜空、ホンモノの夜空の方への例えに使うもんじゃあない
でもアタシの元いた世界では、周り全周囲見られる夜空なんてめったに出会えるもんじゃないと思うのよん
インドア派だった人間の浅い考えだと思うけど、開拓者の気分ってこんなンなんでしょね
しんみりと夜風を楽しむ
「ししょぉ~、ごはんできたですぅ」
「おっけ、いまいく~」
にゃん、ぱら~り・・・したっ
音もなく着地、2~3mの石柱なんて高所のうちに入らない。もちろんフライホイールの起動なんか必要ない
むー、だんだん人間離れしていくにゃあ(※5)
「今日のディナーは、新居でオギと3人で食べた、ししょ~が作ってくれたスープなのです
ししょ~にもらった『コケイヴイヨン』ってのを使ってみたらすっごくコクが出たのですぅ」
「ほぅ、『ポトフもどき肉食系野菜煮込みスープ、タヌ子アレンジ』かー、たのしみだよっ」
多人数で集まっての食事に鍋物はベストだ
ちなみに、この世界で「ヴイヨンを使って作られた料理」の第1号となる
お肉も野菜もたっぷりの、冒険者の旅の食事としては贅沢過ぎる一品
でもアタシは食に関して極力妥協しない主義、身体的も精神的も、美味しい食事あってこそベストを維持できるよっ
「はいはい、多めに作ってあるんで心配いらないですよぉ」
具沢山スープ煮込みが面々に配られ、ついでにパンが配られる、これはオギの担当
パンはちょっと硬めだったけどスープと併せるならかえって味わい深くなる
「おいおい、こんな豪華な料理、野営キャンプで食べるようなシロモノじゃないって!
何でこんなに静かなんだよ」
サベイア氏は興奮気味に声を上げるが他のメンバーはもくもくと食事を続行
初体験の人と慣れてしまってる人の違い
一人テンションMAXの彼の肩に手を置き、したり顔で語るタツアン
「よく見なよにーちゃん、静かなのは味に集中してるんだよ
初めての味だろ?」
「ああ、一見普通の具沢山スープだが味わいが違う、こんな料理初めてだ」
「いいか、あそこのケモミミ3名は料理の達人なんだ。
あそこの茶色いモコモコ、マーハ大聖堂の御曹子にて菓子職人、スイーツに限定すれば王宮料理人にも引けを取らなねえってウワサだ」
「話に聞いたことがある、マーハの聖堂には神の甘味があると・・・その創り手だったとは」
「今日のスープを作った狸のメイド、2名の師匠から料理の真髄を学びその腕を磨き上げたという、師匠の一人はティル村の料理研究家ケイティ」
「王室料理大会の審査員でよく聞く名前だ、もう一人の師匠ってのは?」
「奥の岩場にいるピンクのネコミミ、斬新にて緻密、誰も食べたことのない独特の料理を生み出す天才、タヌキ娘のもう一人の師匠だ。彼女の手にかかれば海の悪魔キンペーすら御馳走に変わる」
むー、タツアンのヤツずいぶんと大風呂敷広げてるにゃあ
この程度の距離、全部聞こえてるって
いちいちツッコミ入れるの面倒なので聞き流しつつアタシもポトフをいただく
炒めたベーコン&ガーリックがベースとなり脂分と香りの骨格となりしっかりとすっきりとした澄んだスープ。主役のソーセージ、ジャガイモ、ニンジン、タマネギの野菜もしっかり火が通ってギリギリで形を保ってるようだ、わずかに煮崩れたかけらがスープに絶妙なコクを添えている
しかしそれだけではない、根底に流れる深いコク、使ったな・・・アレを
「腕を上げたな、タヌ子」
「判ってるのです ししょ~、スープストックは主張しすぎず、料理の土台になる、縁の下の力持ちなんですよねぃ」
ケイティさんの所で修行しただけはある、調味料はあくまで調整にとどめ、素材の持ち味とその調和を重視した料理法はまさに彼女の店の持ち味だ。あの短期間でケイティ流の真髄を身につけたというの?
-タヌ子、恐ろしい子-
天然でドジっ娘属性を持つタヌ子ではあるが、料理に関して大きなミスをしでかした事は無い
飲み込みは早いし作りも丁寧、こりゃ料理に関して追い抜かれるのも時間の問題かも
掃除その他の家事については既にアタシの及ぶ所ではなくなってる
「日の出とともに出発するから、早めに休むぞ」
何処ぞの平均的転生者さんのように家具寝具一式フルセット付きの家をポンとインベントリから取り出したりは出来ない、せいぜい組み立て式テントがやっと
天候も気候も悪くないので皆に倣って野宿する
風通しが良くて地熱が届きにくいせいか、火山地帯の熱気は感じない。
火山ガスの心配はない岩山の上で一行は一夜を明かす。
夜専門の警備員を召喚しといたので、比較的ぐっすりと休むことができた
・・・とだけ言っておこう
拙い作品をお読みいただきありがとうございます
目標の調査隊メンバーとエンカウント、思いっきり暴れると気持ちがいい
とか思ってるのは多分におーちゃんだけです・・・ハイ
多分、一番変わったのはマー君ことマーベリック。あれからしっかり修行してそれなりに戦えるようになったみたいです。近接攻撃力はあまりなさそうですが、防御と神聖魔法を重点的に鍛えたとの事です。
マミさんは、相変わらずのトンデモアイテム研究に余念がないようで
再度偵察用の召喚獣呼べば事は済むとは思うけど、それが無粋だって思うくらいの分別は持ってたりする
家事全般を取り仕切るメイドが板についてきたタヌ子
今はまだだけれども、タヌ子の料理スキルはいずれ師を超えるかもしれません
・・・最初の目的覚えてるのかな? (Ans.既に頭に無い)
【解説】
(※1)神の拳骨:神聖呪文、神様にお願いして拳骨してもらう、司祭には珍しい攻撃呪文。威力は術者のレベルと信仰心に比例する
神様は惨たらしいことを嫌うらしいので、倒された魔物は比較的キレイに潰される
マー君はエグザヴ司祭のように格闘家ではないので自分の身にカミサマを降ろしたりせずに直接殴ってもらっている、強力だけどその分消耗が大きい上、色々発動条件が必要らしい
(※2)『跳ねる眼、試作V3段階』:例の『同期の必要な無線機』と魔道ビデオカメラを組み合わせたアーティファクト、「V3~」とバージョンを先に言ってはいけません(W)
到達高度はおよそ100m、半径約300mを撮影可能、滞空時間はおよそ20秒少々
まだ試作品なので自力飛行能力も録画機能もありません
アイデア原案者は「TOP NYAN」のあだ名をつけたメカクレ魔族・・・
(ちなみに「V3」を魔族は「ぶいすりゃあ」と発音するらしい)
この世界の魔族は何故か特撮系の趣味嗜好があるみたい
ちなみに、21世紀では円筒状の撮影ドローンは既に販売されています。自力飛行が可能だから打ち上げ式ではないですけど
(※3)指定した標的を自動で捕らえ続ける:指定した目標を自動追尾する撮影ドローンは、ちょいとググれはいくつも出てくるくらい21世紀現在には普及してる?
連続稼働時間はさほど長くは無いけど
(※4)つい先ほど目の前で実力を見せ付けられている事もあって、威圧感がハンパない:調査隊員の目の前で戦ったのは4名、おーちゃんは一人先行して自分の分を始末し終わったあと後続が追いついて来てから戦闘になったため、おーちゃんが自重ヌキで戦ってる所ははっきりとは目撃されてない
ちなみに3章の迷宮にてガーゴイル撃破数が一番多かったのも彼女
(※5)だんだん人間離れしていくにゃあ:今更である、言い訳は程々に
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『メタもベタも極めてみせるよっ!』