8章-03 会いたかった~よっ
そーそーこの流れ、今までいけなかった場所にいけるようになるってRPGの典型的パターン
熱気球なんてコンシューマーの黎明期作品なんかでもよく見られるキーアイテム
ここまでコンパクトに持ち運べるのはファンタジーだけどね
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とりあえずワイバーンは上空へ追い払った
さて、やっとここからが捜索のスタート
さすがに折り畳めるとはいえ熱気球一式を引きずって山岳地帯を探索するのは無謀というもの
熱気球は気嚢を畳んでしまえばよほどの嵐でも無い限り吹き飛ばされる事はないので
ゴンドラ部分はそのままにしてこの崖の上に置いていく、帰る時に崖を下る為に・・・
崖の上からここまでの道のりおよび地形を再確認しておく。
地質学とかちょっと小耳に挟んだ程度のシロウトだけど、なんとなーく分かる
元々はこの崖から続くように海岸線付近まで、なだらかに山が続いてたんだろーな
それがホールケーキを切り取ったかのように扇状に切り取られている
火山活動恐るべし(※1)
くるりと反対側に目をやると、しばらく平らな岩肌が続いた後、少しずつ下っていくと同時に岩の露出が増えていく
進めば進むほど平らな部分が減って、険しくなる一方の未知なる道
何か岩陰に動くものが見えた
「岩サソリ・・・だな。手を出さなければ襲っては来ないだろう」
鎧さんは火山地帯のことも少し知っているみたい
岩サソリ、このラズハ地方では、クモよりサソリが生息しているとのこと、お約束のごとく・・・デカい、体長1mを超えるくらい
そしてもっとお約束な事に毒をもっている
よくサソリの毒では死なないといわれているけど、それは一般的地球産のサソリの場合。
ここにいるサソリは体長にして5倍、すなわち注入される毒の量は125倍(※2)になる事を忘れてはいけない。毒の強さが同程度だったとしても分かるよね?
ちなみに蛍光現象といって、サソリに暗闇でブラックライトを当てると、どの種も緑色に光るのだよっ【本当】
この光は脱皮を繰り返した個体ほど強い、つまり苛酷な環境を生き抜いたものほどよく光る
上手く応用できれば野営中のサソリ警戒に使えそうだと思うんだけど、まずブラックライトを発明しなくちゃいけないよね。
現代知識なんて、応用して無双しようと考えた所で実際はこんなもんだよっ
岩陰を這い回っているみたいだけど出て来る気配はない。開けた所にいたらワイバーンのエサ確定だからね
あえてヤブヘビな事はしないで先へ進もう、襲い掛かって来るまでは無益な戦いは避けるべき
「ねぇししょー、コレって人探しが目的だよね」
「一応は・・・ね、」
「だれがいちばん先にみつけられるか、きょうそうしようぜ!
オイラかくれてる動物さがすのってとくいなんだ」
オギ少年よ、任務を楽しむ姿勢はよし
「じゃあ、アタシもネコミミレーダー使うかな」
ぶっちゃけ、ソナーだね
「じゃあ、あたしは気配を探ってみるですぅ」
そーいやタヌ子は危険回避のために多用してきたらしいね
「きゅ~! 自慢の鼻の出番です」
犬型獣人の嗅覚はすごいらしい
「まずはオイラが」
ぼんっ、したたっ・・・とーん!!
オギが黒キツネに変化すると、手近にある最も高いもの・・・鎧さんを駆け上り垂直に跳んだ
おいおい、あまり高く跳ぶとワイバーンにさらわれちゃうよっ
オギがやろうとしているのは狐の持つ能力、ダイビングの際に使われる地磁気の感知を応用した生物探知
「だめだぁ!この辺りって、大地の力がぐちゃぐちゃだよぉ・・・」
多分溶岩や火山岩の中に鉄鉱石とか
ニッケル鉱脈っぽいのが混ざってたんでしょね
だとしたら地磁気は乱れるはず
場所が雪山だったりしたら、それなりに効果があったかもしれない
「タヌ子は何かつかめた?」
「・・・うわぁ、敵意ばっかりですぅ 『喰いたい』とか『うまそう』とかこんな気配ばっかりですぅ」
・・・そりゃそーだろ、エサになるものの少ないこの地にすむサソリ達や、そのサソリを食べているオオトカゲがそれなりの数で生息してるからね~
装甲ガチガチの毒サソリとぽよぽよタヌ子を並べられたら、どっちを食べたいかはアタシだって同意見だと思う
「火山トカゲまでいるのか、厄介だな」
鎧さんの説明によると火山トカゲとは、火山地帯に適応し、重装甲化・巨大化したトカゲ、サイズ的にはワニ、数mクラスのもいる
強靭な肉体を持つが知性の方は据え置きされた為ドラゴンになれなかったある意味不憫な魔物
動きはあまり速くは無いらしい、それでも強靭な鱗による防御は連撃の途中であっても割り込んで反撃してくるスーパーアーマー状態であり、相打ち上等で攻めてくる獰猛な性格、加えて体内に火属性を持っていて、ブレスのようなものを吐けるので油断ならない魔物なのだそうな
「きゅ~~真打登場~、同じイヌ科とはいえど、そんな付け焼刃の素人技術で人探しができるほど世の中は甘くないのですよ~」
得意満面、自信に満ちた足取りでマー君が前へ出る
前とは違っておどおどした感じがない・・・彼なりに修行を積んだことが見てわかる
「全ての物事には匂いがある、我ら犬獣人の常識です
目で見えるもの、聞こえるもの、それだけが全てではないという事なのです。幸いここは風下、流れてくる匂いに他の人がいるかを感じられるかなんてカンタンな事なのですよ、きゅ~」
(・・・パパ、マーベリックは今、一人前の冒険者として最初の一歩を踏み出すよ)
背筋を伸ばし、集中力を高めるマー君
スッと息を吸い込む
・・・・・そのまま動かない、多分吸い込んだ匂いの分析をしているのだろう
ぶわっ・・・その目に涙が浮ぶ
ぱたっ、そのままうつ伏せに倒れた
「きゅぅぅ~・・・腐ったタマゴの臭い・・・」
そりゃそーだ、火山地帯だものね、嗅覚に関しては人間の100万倍から1億倍とも言われているらしい、それでいて我々人間ですら少々鼻につく火山の臭い・・・ダメージはちと想像つきかねるよっ(※3)
「苦痛の臭い、サソリの毒の臭い、トカゲの鱗の焦げた臭い、かなりの間お風呂に入ってない人の臭い、恐怖の臭い、腐敗した死骸の臭い・・・」
ぱたり・・・あ、今完全に気絶した
あくまで推測でしかないけど、締め切った部屋の中でシュールストレミングの缶を開けられるようなもんなんでしょうね
・・・って、今重大な事言わなかった?!
さてアタシもネコミミレーダー・・・は使わない、べつにエコーロケーションが必要な状態じゃないし、受動的に集音モードでなぎ払いスキャンした所で、対象が声でも出してない限りつかめる訳じゃない
救助活動が本来のミッション、久しぶりにこっそりとチート能力を使う事にする、最も黙ってれば誰にバレるものでもない能力だからね
マー君は言った、風上に『人』がいる事を
アタシはミニMAPを開くとその縮尺を変更、表示範囲を拡大、風上と思しき方向へスクロール
赤いアイコン、敵対性魔物があちこちに散らばる。今重要なのはこいつらではない
意識の視線(※4)を走らせ、探すものは1つ! 「人」を意味する『白いアイコン』
残念ながらアタシの持つMAP機能に検索機能なんてものはない
比較的簡素化された地形MAPとカラーコード分類されたキャラ&MOBが位置表示されるだけ、近づくまでその種類すら分からない。サソリもトカゲもMAPだけでは同じ赤アイコン
とあるゲーム開発者転生さんのデバッグ仕様とは残念ながら違うのだよっ
むー、ひたすらスクロールして探す、見つけた、かなり遠い所
・・・意識だけの操作は手でマウス操作するのと違ってけっこー集中力いるんだよっ
「みつけたっ! 距離的には察知できるギリギリだけど方角だけはつかんだよっ」
「「「ふうぅ~~っ」」」
ガショッ
物音を立てないように息を潜めていたパーティメンバー、が気を抜いた
後の音は、全身彫像化してた鎧さんが硬直解除した音
音響探知を行う際、他のメンバーは出来るだけ音を立てないという
ウチのパーティ内ローカルルール
他にも嗅覚探査中に臭いの出るような事をしないとか、基本的に他人が特技を使う時はジャマしないよう協力する。とくに探知系
目標は見つけた、後は救出するのみ。パーティは移動を開始する
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荒れた山道を一行は進む
たまに飛び掛ってくるサソリやトカゲを撃退しながら反応のあった地点へと向かう
遠方に人影?ひょっとして調査隊の人?早々にミッションクリア?
突っ伏していて動きも鈍い、弱ってそうだ
「おいで、スパクロウ」
GaleSwallowのスパクロウ、20cm程の小さな愛玩用ペットの小鳥だけど機動力&瞬発力等、飛翔力においては追随を許さない、小さな身体にもかかわらず勇猛果敢で偵察や斥候にも役立ってくれる
「コレを届けて、お願い」
ヒールポーションの小瓶を持たせると一直線に向かわせる
遠過ぎてよく見えないけど、ロックオンアイコンのHPバー(※5)が伸びていくのが見えたから、上手く回復できたんでしょう
こちらに向かって手を振っている
いや、ちょっと違う、両手を振り上げるように上げ・・・頭上でクロス・・・バツ?
「・・・ク・・・ル・・ナ・・・・・ニゲ・・・ロ・・・」
遠距離最大望遠集音MODEでかろうじて聞こえる遠い声、声が途切れているのは風のせい
音も空気の中を伝わるものである以上風の影響を受ける
「来るなと言われて、救助隊がUターンできるわけ無いよっ!」
「うきゅっ!まかせて、先に行って治療するよっ」
俊足のマー君が先行して遭難者に駆け寄る
さすがは犬型獣人
いちおー他にも2名、イヌ科の獣人はいるんだけど・・・ね・・・(※6)
「もう大丈夫です、基地まで帰りましょう」
マー君、しばし見なかったうちに成長したね、立派な聖職者の立居振舞いだー
「・・・何故来た! もうすぐ日が落ちる、そしたらこの辺りは・・・今すぐにでもここから逃げろ!」
確かにもうすぐ日が暮れる、もう少ししたら夕焼けが見られるだろう
何かの影が岩陰からチラリと見えた
何か黒い影っぽいものが見えた気がする
「ひょっとして・・・アイツか?」
鎧さんが背負っていた巨大盾を手にとる
「そうさ、ウワサくらいは聞いたことがあるんじゃないかな・・・絶対に会いたくない黒い野獣
やつらは夕暮れとともに狩りを始める」
遭難者、調査隊の一人は悟りきったような目をして吐き出すように語った
「ったく、な~にを死期を悟ったような言い方してるんですぅ」
この荒野に不似合いな狸メイドが雰囲気を塗り替えた
「ここには最近名を上げつつある冒険者一行がそろっているんですよっ
何の不安があるって言うんですぅ?」
くるりとステップ、その身を弾ませる様に軽く両手穂広げたポーズ
「巨体と重装甲、鉄壁の守りを誇るタンク、『装甲巨人』アマド!
去年の王都魔道トーナメント覇者『理不尽の黒魔女』マミトリ卿!
敬虔たる神の代行者、マーハ大聖堂エグザヴ大司祭の一人息子、『無垢たる使徒』マーベリック!
シーフにてトレジャーハンター、狙った獲物とロマンはは逃さない『夢の狩人』タツアン!
どーですぅ? この面々」
いきなり芝居がかった紹介をされて戸惑うパーティ各員、そりゃそーだ、これはちょっと恥ずい
たまには勝手な『二つ名』付けられて、こっ恥ずかしさに内心のた打ち回る側の気分を味わうといい
まー、この後の事を考えると早々笑ってられないんだけど・・・
「そしてぇぇっ!!」
ステップターンから片膝着いて両手で指し示すヨイショなポーズ
「こちらが我が師匠、この小さな身体で悪魔を爆砕し、巨大タコを切り刻んだ猛者中の猛者!! 」
やめてータヌ子~、恥ずかしいぃ~~∠(≧△≦)ゝなー
「オーガも泣き出す『ダヌパ訓練所の鬼教官』、敵に回って生き延びたものは無い『一撃仔猫』、『ティル村のラズハ黒豹』オーリ師匠なのですぅっ!!」
ひー、カンニンしてー
・・・ところで最後のネタは何処でこんな事を知ったん?(※7)
メタ能力を持ってるようには思えないけど・・・
感じる気配が強くなってきた、数も増えている・・・そろそろ来るのかな
アタシは急遽ミニMAPの縮尺を戻し、周囲の警戒を開始する
ポツリ、ボツリと赤いアイコンが出現、その数をどんどん増やしていく、ラズハ黒豹
・・・1匹、また1匹と集ってくる・・・15体?!
曲がりなりにも、アダナの元ネタ・・・どんな相手なんだろう
『オラぁ、ワクワクしてきたぞ』とは言ってあげないよっ
拙い作品をお読みいただきありがとうございます
更新遅れて申し訳ありません、体調崩し気味で寝落ちばかりしてました or2
プロットとかは用意できてたのですが、文章がうまくまとまらなかったのです。
専門家じゃないですけど、地形とかもある程度説明ができる程度に設定するよう心がけています
この地は結構北の方の高緯度にあるのですが、火山地帯の地熱で温暖なのです
ちなみに、地熱が無かったら凍った雪国になるくらい寒くなる
今回は解説もちょっと多め
【解説】
(※1)火山活動恐るべし:厳密には湧き出た温泉の圧力と水量で山が削られたのだろうけど、そのエネルギーの大元は火山だから・・・
(※2)すなわち注入される毒の量は125倍:サソリのサイズを20cm→1mとすると5倍、
体積は縦×横×高さ で倍率の3乗になる
ここまで大量だと、毒性が弱めでもタダでは済まない?
(※3)ダメージはちと想像つきかねるよっ:卵の腐った臭いは温泉とかにつき物の硫黄臭、厳密には硫化水素。一応毒ガスだけど、人類はある程度の分解能力を持つので毒性はあまり高くない。
犬型獣人も同様、毒ダメージを受けるほど吸い込んではいない。ただし臭いによるダメージは我々人間では想像するくらいしかできない
(※4)意識の視線:メニューとかミニマップとかの表示位置は眼球より内側にあるイメージ
タップとかクリックとかできるモノではない、詳しくは1章で詳しく説明しているので読み返してもらえるとありがたい
(※5)ロックオンアイコンのHPバー:忘れちゃった人のために補足、おーちゃんは対象1つに対しターゲーットロックオンが可能、これは攻撃対象に限らない。簡易的なHPバーが付いている為、遠かったり見えにくかったりする時に便利、ちなみにロック可能な距離は視認距離ギリギリ付近
(※6)他にも2名、イヌ科の獣人はいるんだけど・・・ね・・・:獣人2名、やや遅れてます。
どちらも戦闘職ではないし一人は子供、もう一人は・・・お世辞にもスピード出そうにない
(※7)ところで最後のネタは何処でこんな事を知ったん?:確か2章初頭のネタ、口にしたのは出会ったばかりの鎧さん・・・
タヌ子「そりゃ、ティル村の中で色々聞き込みしましたですぅ」
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