8章-01 チェンジ!越えていけだよっ
ふっふっふ・・・オープンフィールドなのだよ
周りはみな大自然っ、一緒に行動するのは気心知れた仲間
第三者の目を気にせずにのびのびと冒険が出来る
悪目立ち防止の為の自重をちょぉ~~っとだけ緩めることができるとゆーか、余計な神経を使わないで済む分、気がラクと(※1)
でも、世界を壊すようなことをしてはいけない、ココ大切!
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温泉を堪能し、ベースキャンプにて1泊した冒険者たちは、パーティごとに別れて探索の旅に出る
ベースキャンプよりの各方位へ向けて出発
パーティは6チーム、港と海岸線しかない東と南東に向かう必要はないのでちょうどいい
ちなみにアタシたちのパーティは西の火山へ向かうルートを担当することになった
とりあえ西へ進み温泉地帯を抜ける。温泉はベースの西側に位置してるからね
もうひとっ風呂浴びてていきたくなる感情は自制して進む
「昨日は旅疲れもあって、ベースの人たちに進められるまま一休みしちゃったよねー」
「好意と歓迎は素直に受けるべきだけど、いいんかね?こんなのんびりしてて」
「・・・待ってよ、なんか不思議に感じない?」
アタシは気付いてしまった。
「本土の村や町みたいに防壁とかが有るならともかく、どうして魔物が近づいてこなかったの?」
「そーいや結界の類もなかったわねぇ」
「確かに『謎』だな」
「きゅ~、きっと神様が魔物と人の住み分けを指示してらっしゃるんだよ」
聖職者のマーくんは黙祷し祈りをささげた
ちょい待ち、マー君や・・・カミサマを否定はしないけどさ、どんだけ人類優遇されてるの
それじゃあまるで『ゲームのように魔物が配置されている』ということになるって訳?
人間の運営する町や村ならともかく、自然そのままの中に安全地帯なんて存在しないはず
もしありえるなら、そういう『設定』を行った者がいるはずと懸念していた
魔物に行動範囲の設定がされてあって、温泉地帯へは近づいてこない、そんな采配
でなきゃ、無防備に装備外して温泉になんか入ってられない
「人間に都合よく魔物ユニット配置をするのは、ゲーム開発者から転生してきた神の代理人だけだよっ」 ですまっ!
この世界がにカミサマが複数いるって事は認めてるし信じてる
しかしこの事は、これから生きていく上で根底の考え方に大きく関わってくる
そう、この世界が
『神様と一緒に暮らす自然な世界』 なのか
『神様が綿密に計算して創った箱庭世界』 なのか・・・
後者ではないことを祈りたい
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そして早々の難関にぶち当たり、さらには何か腑に落ちない昨日の状況に納得がいった
温泉地帯の西側は巨大な岩の壁だった。
そそり立つほぼ垂直で比較的平らな岩の塊、高さはおよそ60m、落下したのなら時速約120kmで地面に激突、粉砕骨折、マスターランクの落下耐性スキルでもギリギリ相殺できるかどうか
回り込み迂回しようにも北側へ壁はずっと延びており南端には蒸気が吹き上がっている
どーりで温泉地帯に魔物が寄って来ないはずだよっ
あの断崖絶壁を降りてこれるヤツなんてそうそういない
実際に絶壁の麓にはそれなりの数の白骨が地面に半ば埋もれ風化しかけている
この崖から落下した哀れな犠牲者の成れの果てなのだろう
空を飛べばいいって思った人もいるだろう、だがそれも難しそう
絶壁の上、遥か上の空を見上げてみる
この辺りはまだ少し温泉地帯から流れてくる湯気が少し漂っていて視界が鮮明ではないけど
いたんだよね・・・空の魔物、たぶんワイバーン、しかも1匹じゃなさそう
湯気でかすむ空は正確な数をつかませてくれない
ワイバーンってヤツは縄張りというか制空権にこだわる。へんな言い方してしまったけど、要するにこの空域の縄張りは譲れないってタイプ
地上戦ならともかく空中戦でワイバーンに勝てる魔物はそうあまりいない
あの崖っぷちは丁度ワイバーンの餌場なのだろう
まーそのお陰でこの岩壁よりこちら側は比較的安全な環境を保っている
「でもなんでワイバーンはこっちの下のほうには来ないのかな?」
「言われてみれば不思議な話だな」
「きゅ~、きっと神様が魔物と人の住み分けを指示してらっしゃるんだよ」
聖職者のマーくんは黙祷し祈りをささげた
んなバカな、カミサマを否定はしないけどさ、どんだけ人類優遇されてるの
でも油断はならないよ、ワイバーンはたまたまこちらに興味を示してなかっただけなのかもしれない
「少し前、我々が到着する前まで、この辺りに人間自体ほとんどいなかったんだしな」
温泉地帯に現れるのは野生の猿くらい、しかもそれすらごく稀な事らしい
なんていってたら、見つけちゃった・・・お猿さん
ちょっと茶色がかった灰色の体毛
絶壁をフリークライミングのように下りてきている
岩肌の割れ目や突起をうまくグリップして降りてくる、人間と違って足にも手と同様な握力があるのは便利だねぇ
ひょこひょこと崖降りをしているのを見物、多分湯治にでもいくのかな?
しかし、その行為を好く思わないものが・・・そう、ワイバーンが1匹
上空から高度を落として近づいていく
「あちゃ~、運の悪いおサルさんだねぇ・・・」
気が付いたら勝手に身体が動いてた
「The Third Le Parcours!(※2)」
シッポのAIが学習・最適化した壁面走行、かの有名なサル顔の大泥棒のように岩壁を斜めに駆け上がっていく
駆け出しちまったもんはしょうがない、高度にして約30m少々、野生の猿MOBだったとしても、硬い地面に叩きつけられたら多分に死ぬ
飛び出した岩塊で跳ね宙に放り出されたサルを片手につかむ
「なるほど、そーゆーことなのね」
ジャイロ駆動により無理やりに足の爪を岩肌に叩き込みブレーキを掛けながら地上へとステップを刻む
地面までたどり着いたんで、硬直して・・・多分もう死んだと思い込んでる猿を地面に転がすと、下で見ていたパーティの元に小走りで合流した
縁も所縁もないただの野生のサルだけど、温泉のすぐそばで血まみれの肉塊を作りたくはなかった
「帰りに入る予定の温泉で潰れた死体の臭いなんか嗅ぎたくなかった、それだけだよっ
あとは前回のデータの最適化が正しいかどうかのテスト、ほかに意味なんかないよっ」
「ししょ~は優しいのですぅ」
「でゅふ、最近してなかったツンデレいただきやしたァ」
しばらく硬直して転がっていた猿が動き出し、走り去っていった
アタシは軽く足を打ち鳴らし、空を仰ぐように声を上げた
「全ての謎は解明されましたよっ、ワイバーンが降りてこない理由」
「この地に都合よくユニット配置なんかしていた神様なんていなかったよっ」
そう、実際に触れてみて気付いた。ここは自然の微妙なバランスで成り立っているセーフティゾーン
事実は小説より奇なり、リノリュウム(※3)はプラスチックより木なり
とあるGAMEはMOBには座標と行動範囲が設定された結果、荒野にほぼ等間隔でMOBが息を合わせた動きでうろついているというソーゼツな光景を見たことがある
理由も考えも無くユニット配置されたMOBなんてこんなもん
「この事件は玉子をたっぷりと使い、じっくりと火を通したプディングのような、わたしを今チェンジッするような味わいでした」
クルリとステップを踏むようにポーズつけて大見得を切る
「なにを言っているのか、よくわかんないよ」
うんうん、マー君いいタイミングでわんこツッコミさんきゅだよっ(※4)
アタシ自身もノリだけでしゃべってる
シルクハット付きのカチューシャはないけれど
「あのお猿さん、半分凍らされてた。つかんだ時に冷たいのが伝わってきた」
「アイス・ワイバーンのフリージング・ブレス」
「そして吹き上がる温泉の湯気と熱気!」
岩壁の南端の方に立ち上る巨大な間欠泉が見える
壁を回避して進もうにも壁の端は熱湯地獄だ
あくまで推測だけど、昔あそこから大量の湯水が噴出し、この温泉地帯をほぼ平らに削ったんだと思われる
本来平野を形成するのは河の類
土砂を削り堆積させ平らな土地を形成しているもの
その水源が温泉であったとしても、この火山地帯では何らおかしい事ではない
おそらくこの間欠泉は大地を削った水源の名残り、ここから東方面一帯がほぼ平らな平野となっている
大方それまではこの温泉地帯からベースキャンプ辺りまでの一帯も山あり谷ありの地形だったんだと思う
「大量の温水に流され不毛な平地へと変わった地帯、餌場としては役に立たなくなったと」
「そして削られた大地に温泉がさらに湧き出し、近づくには常に熱い蒸気や湯気が噴出している」
「氷属性のワイバーン(※5)にしてみれば、近づきたくない土地よね」
「それでも縄張り意識の強いワイバーンはあの崖の上空に縄張りを維持している」
「それがこの辺り一帯に魔物が発生しない原因って事なのね」
「そのとーりっ! このびみょ~な地形と魔物の力関係バランス、コレこそがこの一帯に魔物が現れないという謎の全貌なのです
現実は、いつも稀有なものなのです!」
きらきらしゅらしゅら
「おー」
「答えは一つ」
「謎は全て解けた」
「真実はいつも1つ」
・・・ったく、みんなドコでそーゆーネタ仕入れてくるんだよっ
「この辺りが安全な理由は分かったけど、
問題なのは、ここから先をどう進むかだと思うのだが」
ええ、ごもっともで・・・
拙い作品をお読みいただきありがとうございます
第8章スタートです
章タイトルの「にゅう・ふろんてぃあ」は、かつてNet黎明期にアドバイスくださった先輩&師匠(故人)より頂いた言葉です
ファンタジー世界でミステリーは難しいけど、低年齢少女マンガ系でやれば何とかまだいける?
がむしゃらにステキになりたい
やっぱどうでもいい?温泉地域かが安全地帯になっている理由なんて
いやいや、実はコレとぉ~っても大切
ゲーム的に設定された安全地帯なら、多少何かあっても安全地帯のまま
何の心配も要らないって事になる
ユニット配置されたMOBは持ち場を勝手に外れない
条件が絶妙に重なって生成した安全地帯ならば、各要素のバランスシフトが崩れたら
温泉はもちろんベースキャンプまでが魔物の脅威にさらされる
そう、これは「暴れ力押し解決」を封じる伏線なのだよっ
【解説】
(※1)余計な神経を使わないで済む分、気がラクと:大自然「迷惑な話だ」
(※2)The Third Le Parcours!:アクロバティックな曲芸機動、壁面を走り岩肌を蹴り、屋根を飛び塔に張り付く。物理的に「そりゃないだろ」と言われるギリギリで思い描く地点までたどり着く逃走術、対キンペー戦での触手上疾走時のデータを最適化したもの
ネーミングはこの機動の始祖と思われる3代目大泥棒に敬意を称して付けてみた
(※3)リノリュウム:天然素材の亜麻仁油、石灰岩、ロジン、木粉、コルク粉などから作られる建材。
抗菌性&環境に優しい特性から床材としてバブル時期に流行ったけど、コストが掛かるので塩ビとかに取って代わられる。ぶっちゃけ粉にした木から作った素材
(※4)いいタイミングでわんこツッコミさんきゅだよっ:元ネタにした作品では、主人公がへんな例えを使うと、必ずイヌがツッコミを入れるのです
(※5)氷属性のワイバーン:ワイバーン=氷属性ではない。他の属性のワイバーンも色々います
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『メタもベタも極めてみせるよっ!』