堕天裁判 共通① 神話成て
私は堕天使キュエレッタ・ドリーユ。天使と悪魔の混じったの種族で、彼等より格下。
私は生まれたときからしたっぱになる運命だったのだ。
そうだ上には上がれないのなら。
いっそのこと誰より下位に堕ちてしまおうか―――――――。
誰も成しえなかった大罪を私が起こして、そして名を世に知らしめる。
そうすればたとえ存在が消えても名は語られる。
なぜなら私はランク最下位の堕天使だから。とにかくなんであろうと名を後世に残したいのだ。
私は天使のような外見と、悪魔のような心を会わせ持つ生まれながらの堕天使。
「おいキュエレッタ」
「なあに、リスノク」
彼は悪友の悪魔だ。
「俺と一緒に天界を揺るがすような、悪い事しようぜ」
「なによそれ?」
「今日もラミュガストにエンゼルフロッグ仕掛けようぜ!」
「よーし!その話乗った!!」
「君たち相変わらずだなあ」
彼は幼馴染で、堕天使のシャンテンだ。
「僕は善い堕天使だから君達みたいな悪ガキて違って、ラミュガストにプレゼントをしてやりたいな頭骸骨とか」
「お前の場合ガチで悪い奴だろ」
悪い奴代表の悪魔にそれ言われてはお仕舞いだ。
「なにか善からぬことをたくらんではいませんか?」
こいつはたしか“ルツゥイエ”、にっくきエリート階級の天使だ。
早くも私のスカスカな計画は崩壊しそう。
ラミュガストにフロッグを仕掛けてから数日。
悪戯がバレて私とシャンテンは天界の偉い方に呼ばれてしまった。
とうとうラミュガストの怒りに触れて消されるのかと、短かった私の存在期間を惜しんだ。
「顔をお上げ」
彼女は大女神エレクティエ。
真偽は定かではないが我々や他の世界の全ては彼女から始まったとされている。
「あなたたちには人間界へ向かってもらいます」
私とシャンテンが人間界に!?
「そして、上天使ラミュガスト」
「はい!」
「この二人を連れて、人間界を監視してください」
「はっ!」
なんでどうしてなにがどうなってんの!?
●
女神マスヴェイユ様の天界を守護するのが与えられた役目。
「あれは…!」
―――――人間の青年が、空から落下している。
私は一目散に翼を広げ、天を羽ばたいて、青年を受け止めた。
人間の住む地、何もない丘の頂上におろした。
「う…俺は…」
もうすぐ青年は意識を覚ざめさせる。
「私は天使、キュエレッタです」
なぜ青年は空を舞っていたのだろう。
「天使…!」
目をカッと見開き、青年は両手で私の手をつかんだ。
「はい、貴方はなぜ堕ちていたのですか?」
「オレはカイレス、見ての通り人間なんだけど、空を飛びたくて翼を作ったんだ」
「つまり、偽物の翼はうまく飛んではくれなかったと?」
「うん」
ニコニコとまるで命など惜しくないように頷く。
人は空を飛べはしない、落下すれば死を味わうことになる。
そのような判断もできないのか、なんと無謀で愚かな人間だろう。
「貴方は死が恐ろしくはないのですか?」
「全然!君のほうこそ天使なのに死ぬことが怖いことなんて、どうしてわかるの?」
カイレス…なんと核心を突くようなことを言う人間だろう。
きっと、彼の者はただの愚かな人ではないのだろう。
私はカイレスを頂上から村へ下ろして別れた。
人間の世界を監視するのも私の役割。
翼を隠し、村人に扮装する。
「聞いたか~ユウノ王は傍若無人な悪い王になったってよー」
この国はユウノ、ここの王は悪名高いようだ。
しかし人間達への沙汰は女神マスヴェイユによって下される。
よって私は悪い人間を正すことはしない。
先ほど別れたばかりのカイレスが小屋から出てきた。
あの小さな家は…医者がいるのか。
まあ当然と言えば違いない。
カイレスは目に見える怪我をしていなかったが、人間が高い所まで飛んだのだから。
私は長居する理由もないため天界へ戻った。