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こちら風の化粧を施された顔は、普段から化粧っけのないエレノアにとって他人の顔のようだ。
磨っていたのは赤い顔料で、その赤で目じりや唇を赤く彩っている。
アーシュラは、青い顔料で目元をくまどられている。唇は、エレノアより淡い色で染められていた。
「なんか、この口に塗られているの、まずい」
アーシュラが口を歪める。
エレノアも同感だったので、特に注意はしなかった。
こちらの化粧はいかにも化粧をしましたという仕上がりになる。かつての世界では、ブラウンや色のない発行素材を使って、化粧してないように見える化粧が主流だったので妙な違和感を感じる。
普段はゆったりとしたラインなのに身体にぴったりとした衣装も。
この建物はやたらと大きい。そのため、部屋に閉じ込められていた機関があるのを差っぴいても未だはいったことのない場所が腐るほどある。
だから、こんな大広間なんかがあるのも今まで知らなかった。
床は、材質の違う木材を組み合わせて、茶色だけで模様を描かれている。そんな床が延々と端から端まで続いている。
床だけでなく、壁にも細かいプリント模様の布が張り巡らされている。うるさくはないが、ぎっしりと。
直線距離でどのくらいだろう。エレノアは目測を試みるが、その大広間にはけっこうな数の人間がいて、なにやら談笑にふけっている。
いわゆるビュッフェパーティーというものだろうか。
どういう種類のパーティーなのだろうかとエレノアは、周囲の人間を観察してみる。
化粧をしているのは女性のみだ。エレノアが思ったいかにも化粧をしている顔だ。
壁際に料理を盛り付けたテーブルと、給仕をする人間がスタンバイしている。
真ん中に、セレクがいるのがわかった。
その隣に、小さな十歳くらいの少女が立っていた。
つぶらな瞳も柔らかそうな髪も淡い薄茶色で、肌も抜けるように白い。
薄茶の髪は結い上げられ、頭のてっぺんで薄緑のリボンでまとめられている。
リボンと合わせてきている衣装もしろを基調としてポイントポイントに薄緑を使われている。
お人形のようにかわいいという形容詞は、その少女のためにあるそんな愛らしい少女だった。
しかし、ほかに少女と同年代の子供の姿は見えない。ほかはすべて大人で、少女だけが浮き上がっている。
この場でセレクに話しかけようかしばらく二人は迷った。
これがどういう集まりなのかもはっきりしない今、あえて動かず様子を見ることにした。
二人の背後には、衣装を着替えるのを手伝ってくれた女たちが控えている。
エレノアは、壁際で飲み物を調達した。
アーシュラに、杯を一つ渡すと、なめる様に少しずつ口にする。
食事は、実は最近進まないようになっていた。
食べれば美味しいのだが、食べたあと、異常に胃もたれがする。消化不良に近い症状だ。
それはアーシュラも同様なのか、普段より顔色が悪くなってきている。
アーシュラも杯に口をつけるが、ほんの一滴ずつしか口にしていない。
最近は口にしても大丈夫なのは、水くらいだ。
「少しずつ毒を盛られているわけでもないような」
アーシュラは、実は毒物に多少免疫をつけている。自分と同じような症状をエレノアも起こしているのを考えれば、毒物ではないかもしれないと思っている。
おそらく、この地球の食物に、身体が合わないのだ。
しかし、このままでは問題だ。地球の食物に身体が合わないままどれほど続くかわからない旅を続けることになったら。おそらく身体が持たない。
おそらくこの地球に救助は来ない。
そう考えると、このまま身体が食べ物に慣れないと、それほど長生きができないかもしれない。
かなり暗い見通しに、アーシュラは、傍らのエレノアを見た。
エレノアは、どうやらセレクの隣の少女に気をとられているようだ。
可愛らしい少女だが、セレクにはあまり似ていない。血縁者にも見えない。
セレクは少女に時折話しかけているようだが、次々と来客に話しかけられているので、それも後が続かない。
少女は、それ以外の人間に緩やかに無視されているようだった。
セレクを時折見上げるけれど少女はそれ以外は、周囲の人間をただ眺めていた。淡い、感情のない目で。
頭の頂点で結んだ淡い緑のリボン。時折セレクが目を向けなければ、少女が見えているのは自分達だけなのかという錯覚に陥りそうだ。
セレクは傍らのお仕着せを着た女性に何事か話しかけた。
そういう衣装の女性は、このセレクの王城の使用人なのだと聞いていた。
女性は、ガラスの鉢に果物を盛り付けて持ってきた。
少女に差し出すと、セレクが、少女の手を引いて壁際の、椅子とテーブルが用意された場所に少女を座らせた。
そして自分を凝視している視線に気づいていたのだろう。
視線だけで二人を呼んだ。
エレノアたちはナチュラルメーク、地球は儀式メークの差があります。




