エンディングノート 6
エンディングノート 6
c:\end\エンディング.doc
『エンディングノート』
家族へ
このファイルを開いたということは、本当に僕の身に何かあったってことだね
くどいようだけど、好奇心やいたずらでこのファイルを開けたなんてことないよね
もし、そうだとしたら、今からでも遅くないから正直に僕に言って欲しい。言わなくてもわかる仕組みになっているから、そういうことは、隠し事なしにしようよ
で、やはり、そうでないのなら、まずは誤らなければならないね
どういうことかはわからないけど、どうやら僕は死んでしまったか、或いは植物人間のような状態なのか、行方不明なのか、そのいずれかであるらしい。
ごめんね
さて、まずは事務的なことからはじめよう
まず、僕の会社の連絡先とかはわかるよね。第3事業部の佐藤部長に連絡を取ってもらえば、万事そちらのほうはやってくれると思う。部長がいない場合は、同僚の加藤か山本でもいい。彼らの連絡先は僕のメールソフトを立ち上げてもらえばすぐにわかる。パスワードとかは設定してないから、使い方がわからなかったら、お姉ちゃんに手伝ってもらってくれ。お姉ちゃんならすぐにわかると思う。
生命保険の担当者の連絡先は、保険証書と一緒に名詞があるから、そこに電話をすればいい。僕は2件入っているから、それぞれ電話をして欲しい。それからあいにく僕にはへそくりのようなものはない。カードを使って現金を引き出したいときは、「1192」で引き出せる。僕の数字4桁のパスワードはだいたいこれだ。
さて、それでは僕の遺品の処理についてだけど、何か特別に残してもらいたかったりするものは特にない。ただ、捨ててしまうのは忍びないのでレコードやCDや本の類は、業者に買い取ってもらってくれ。もちろん、気に入ったものがあればそれはとっておいてもらってかまわないし、誰か引き取りたいという人がいるのであれば、譲ってあげて欲しい。なんにしても売れば少しばかりの金にはなると思うし、再び誰かの手に渡って大事にされるのであれば、それに越したことはないのだから。
あと、大量にあるビデオテープやデータが記憶されたDVDだが、これは廃棄してほしい。子供たちの運動会や学校行事のものはラベルが貼ってあるからすぐにわかると思うけど、それ以外のものは捨ててくれ。僕にも多少恥ずかしいビデオやDVDは持っている。それを事細かに教えるつもりはないから、そんなものが遺品として誰かの目に触れるのは、なんとも忍びない。
それからこのパソコンについてだけど、面倒でもいくつかやって欲しいことがある。ひとつは僕の身に何がおきたかということを、僕の親しい友人に伝えて欲しいこと。でも、間違っても、メールソフトにあるアドレス全部に案内を出すなんてことは止めて欲しい。今からリストにあげる何人かにメールを送ってもらえばいい。それは――
中略
――以上だ。
それから僕には実際に会ったことがない人ともSNSを使って仲良くしている人たちがいる。子供たちは多少知っていると思うけど、ガッツさんやケロちゃんは、お姉ちゃんが小学生の頃からネットの中で遊んでもらっているんだ。そういう人たちにも一応、知らせておいたほうがいいと思う。
インターネットブラウザーを立ち上げて(デスクトップの一番右上にあるアイコンをダブルクリックすればいい)画面の中の「お気に入り」というところをクリックして中を見てもらうとフェイスブックというのがあるから、それを立ち上げて欲しい。もし、IDとパスワードを求められたらこのファイルの最後にそれぞれのブラウザーのIDとパスワードの一覧があるから、それを参考にして欲しい。
みんなにはあまりわからないかもしれないけど、ソーシャルネットワークで繋がった人たちの絆って結構強いんだ。時には家族にはいえないような愚痴を聞いてもらったり、バカをやって盛り上がったりして、会社の同僚なんかよりも付き合いが濃いメンバーがたくさんいたりする。そういう人たちに、僕はきっちりとお別れをいいたいし、もしかしたら残されたお前たちの力になってくれる人もいるかもしれない。だから、そういう人たちに感謝の気持ちを伝えることと、お別れの挨拶を代わりにしてもらいたい。面倒なことをお願いするけど、これは本当に心よりの僕の願いなんだ。
彼らがもし、僕の見舞いや葬儀に来てくれるというのであれば、安心して連絡先を教えてあげて欲しい。僕が付き合っている人たちは、わりときちんとした人たちが多いから、トラブルになるようなことはないから安心してくれていいよ。
僕の学生時代からお付き合いがある人や親戚筋は年賀状のデータを見ればわかる。場所はプログラムの中にはがき編集ソフトが入っているからすぐにわかると思う。あとは、もしも僕が昏睡状態で、安楽死や臓器提供の話があったら、それは前向きに検討して欲しい。僕としてはなるべく誰かの迷惑になりたくないし、誰かの役に立てるならそのことを拒みはしない。ただ、最後は残された君たちが決めて欲しい。僕はそれをどんなことであっても受け入れるし、その結果を尊重するから。
じゃあ、実務的なことは、ここに箇条書きで書いておくから、後はよろしく頼む。
――中略
それからもし、ソーシャルネットワークの人たちにどんなメッセージを出したらいいかわからなかったら、次の文章をコピー&ペイストして使ってくれ。
この文章がこうして皆さんの目に届いているとしたら、僕はすでにこの世にいないか、或いはそれに等しい状態であるときです。グロッキーは皆さんにお会いできて本当に良かったと思っています。こういう形でお別れを告げなかればならないことは、ともてとても残念ですが、しかしそれもまた運命だったり、抗うことの出来ない定めだったりなのでしょう。今まで本当にお世話になりました。いずれこのアカウントも、サイトも削除されるでしょうが、もし皆さんの心の中に残ることが出来るのであれば、とてもうれしく思います。
ではでは
以上だ
あー、グロッキーというのは、僕のハンドルネームだから、みんな僕のことをグロッキーさんとか、グロさんとか呼んでくれている。みんなからコメントが寄せられたら、それには一言でいいからコメントを返しておいて欲しい。
じゃ、これで、エンディングノートは終わりだ。
最後に、お前たち、本当にゴメンネ。そしてありがとう。
平成23年8月25日
パパより
つづく




