ひどい言いがかりの婚約破棄
「イザベラ・フォン・ローズウェル! 君との婚約は破棄する!」
王立学園の卒業パーティー。
今堂々と宣言したのは、この国の王太子であるフェリクス・エル・アルカディア殿下。
彼の左腕には、ピンク頭の令嬢がひっついている。
公爵令嬢である私は、彼がピンク頭に入れ込んでるのは知ってたから、婚約解消は想定していた。
だから、つけ込む隙を与えないように気を付けていたのに、どんな理由で破棄とか言い出すつもりなんだろう。なので聞いてみた。
「理由をお伺いしても?」
「人格が、王太子妃にふさわしくないからだ!」
「といいますと?」
フェリクスは側にいるピンク頭の令嬢を手で示しながら言った。
「ここにいるミア・フローレス嬢を、いやらしい目で見ただろう!」
は?
会場中がしんとなる。なに? 今なんと言ったのこの人は?
「いやらしい目……?」
「そうとも!『あの顔は、絶対に私を恋愛対象として見ている』とミアが言っていた! 想像の中で、あんなことやそんなことをしてるに違いないって!」
「はああ?! なんですかその気持ち悪い妄想は!?」
「ごまかさないで! 私にはわかるんです!」
ピンク頭がキッと顔をあげて大声で叫んだ。
「イザベラ様が私を見る目は、他の人と違うんです! 他の令嬢たちのことはとても優しい目で見るのに、私にだけは冷たくて!」
「いやそれは、あなたの態度が目に余るから……」
「嘘! 嘘です! 私にはわかります! きっと、イザベラ様は、私のことを愛しているのです……! 道ならぬ恋に苦しんでいるから、あんなきつい表情になってしまうのです!」
「……」
あまりにびっくりして、ぽかんと口を開けたまま固まってしまった。
なんだこの途方もない言いがかり。
「そういえば、ミア様があんなに殿下にベタベタしてるのに、イザベラ様は一度も注意しなかったわ」
「それどころか、イザベラ様の命令で、ミア様に護衛をつけていたらしいじゃない」
「もしかして本当に、ミア様のことを…?」
会場中の人間がなんかざわざわしてる! いや違うから! 誤解だから!
態度を注意したら「ミアをいじめた」って言われるかもしれないから、黙ってただけだし!
「教科書を破かれた」とか「池に突き落とされた」とか、やってもいない冤罪を着せられるのを阻止するために、見張りの護衛をつけてただけだし!
「誤解しないで! 私が愛してるのは殿下…」
と言いかけて、いや別に愛してはいないなあ、と思い至る。
こんな公の場で、王命である婚約を破棄するようなバカだし、ピンク頭にころっと騙されるバカだし、婚約解消となれば『はーやれやれ助かった』ぐらいしか思わないくらい、どうでもいい存在だわ。
「……と思ったけど、そうでもなかったので受け入れます。この婚約はなかったことに」
と言ったら会場が湧いた。
「じゃあ本当に!?」
「イザベラ様はミア様を愛していたってこと!?」
「違うそうじゃない! そういう理由で了承したわけじゃないから!」
私はあわてて否定した。しかしピンク頭が私の手をそっと握って、
「イザベラ様……! あなたのお気持ち、嬉しいです! 二人で幸せになりましょうね」
と言ったせいで、私の言葉など誰も聞かなかった。
ついでに王太子の
「あれ? ミアは私と結婚するんじゃなかったの?」
という言葉もかき消された。
そしてこの国は、『性別にこだわらない自由恋愛の国』として有名になったのであった。
10月7日、[日間]コメディー〔文芸〕 - すべて
で3位いただきましたー! 嬉しいです!!
ありがとうございますー!
10月8日、[日間]コメディー〔文芸〕 - すべて
で1位になってました~~。
びっくり~。スカっとしないからだめかな~と思ってたので嬉しいです。
ありがとうございます~~。




