もういいかい
掲載日:2026/08/16
「もういいかい?」
部屋にいると、そう聞こえてきた。
押し入れから。
妹のまやの声ではない。
もっと小さな女の子の声だ。
もちろんそんな女の子は、ここにはいないはずだ。
驚いていると、また聞こえてきた、
「もういいかい?」
どうしようかと考えた。
でも混乱して、何も思いつかない。
そのまま固まっていた。
すると、まやが部屋に入ってきた。
「お兄ちゃん、なにしてるの?」
僕はまやを見た。
僕になついてくれているのはいいのだが、いかんせんうるさくてうっとおしい。
おまけにパパもママも僕には厳しいくせに、まやは甘やかし放題だ。
ふと思いつき、言った。
「ちょっと、ここで待ってて」
「うん」
すると押し入れから再び声がした。
「もういいかい?」
僕は声を聴いてびっくりしているまやに、もう一度待つように強く言った。
妹はわけがわからないまま激しく首を縦に振った。
僕はまやを目で制しながら「もういいよ」とつぶやくと部屋を出て戸を閉めた。
その時、部屋から声がした。
「見いつけた」
僕はしばらく待った後で、部屋に入った。そこには誰もいなかった。
あの後まやの姿を見たものは、誰もいない。
終




