帝国の檻
「改めて伝えるが、今日の任務は野営地にいるブライド王国の将軍の暗殺だ。手順としては……」
拳が振り下ろされ、通信端末が砕け散る。
「うるせえな。何度も何度も俺を物覚えの悪いジジイだと思ってんのかよ」
青年がイライラした様子で言う。まだ若いがその目は光を吸い込むような暗さをしていた。赤い髪に細身の体。茶色い布切れのような服を着て、服の端からは傷がいくつも見える。
その傍には同年代の女性がいた。白い長髪。顔立ちは整っているが、神経質そうな顔、目元には隈がある。体は細いが筋肉質で、黒いローブを着ていた。
ここは洞窟の外だった。魔法灯が点々と着いた洞窟の入り口には金属の柵が付けられ、二人はそこから出てきたところだった。
太陽が暗闇から出てきた彼らを見下ろしている、二人の首元の赤い金属の首輪が光を反射した。
二人の傍には鎧を着て、剣を腰に佩いた騎士たちが沢山いた。二人からは一定の距離を置き、敵を見るかのように侮蔑的な目をしている。
「はあ、外だ外。待ちくたびれたよずっと。なんで外に出してくれるのがこんなにも遅いのかな。それに関して答えるべきじゃない? 私ずっと聞いたよね。なんで答えなかったのかな?」
白い髪の女が騎士に詰め寄る。
「離れろ。近寄るんじゃない」
騎士が後ずさりしながらも警告する。
「うるさいうるさい! 答えないなら死ね! お前なんかいらないんだから!」
女が突然叫びだし騎士に手をかざす。その手に強力な魔力が集まる。
「おい! 『座れ』!」
騎士が手に持った石を掲げ、叫ぶ。
「ああ!!!!」
すると女が悲鳴を上げながら地面に座り込んだ。首を絞めつける首輪を両手で抑え、必死に声を出す
「いだいいだい。やめてやめてやめて」
「なら従え。いいか」
「分かった分かった!!」
「よし。いいだろう」
すると首輪は緩み、女の身体が弛緩する。
「はあ、はあ」
女は息も絶え絶えになり、その場に蹲った。
青年はその光景をイライラした様子で見る。
「いつまでやってんだよクソ野郎ども。任務だろ。さっさと終わらせるぞ」
そう言って彼は歩き出す。
「おい待て! 勝手に動くな。作戦通りにしろ!」
「ああ?」
「あ……」
「いいか、おい。お前がこの首輪で俺を服従させるならな。解放されたときに直ぐにお前を殺すからな。分かったか」
「……はい」
「ちっ」
青年はそのまま女や騎士たちを置いて歩き出した。
そして歩きながら呟く。
「さっさと任務を終わらせよう。そして檻に戻ってこんな世界忘れよう」
そう決めるのだった。
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