第8話「新しい黒幕の影」
三十二日目、全てがつながった。
ガルディア男爵家とセルヴィア子爵家の土地争い。ヴァイン伯爵家の介入。そしてダリオス侯爵家。
書類を並べて見ていたら、一本の線が見えた。
「クロード」
「何」
「この土地の地下、鉱脈があります」
「それは調査済みだろ」
「ええ。でもこの鉱脈、王家の管轄地域とぎりぎり隣接しています。どちらの土地かで、採掘権が変わる」
クロードが眉を上げた。
「王家の採掘権を横取りするために、土地争いを起こした?」
「そしてその利益をダリオス侯爵家が得る構図です」
「……でかい話だな」
「もっと大きいかもしれない」
私は地図を広げた。
「この鉱脈と同じ方向に、他にも三箇所、最近土地争いが起きています。全部小さい話として処理されてきた。でも全部つなげると」
クロードが息を呑んだ。
「組織的に動いている」
「ダリオス侯爵家は、王家の財源を少しずつ削っている。十二年かけて」
(十二年)
アルヴィンが母親の件を調べ始めた頃から、ダリオス家は動いていた。
「主任に報告する」
「俺も行く」
二人でアルヴィンの元へ向かった。
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報告を聞いたアルヴィンは、長い間沈黙した。
「……やはり、そうか」
「知っていましたか」
「薄々は。でも全体像までは見えていなかった」
「これは、今すぐ動く必要があります」
「ああ」アルヴィンが立ち上がった。「ただし、相手も感づいている可能性がある」
「どういうことですか」
「ここ数日、俺たちの動きを誰かが探っている気配がある」
(探られている)
「だから単独で動くなと言った」
「なるほど」
「これからは三人で行動する。離れるな」
「分かりました」
「特にお前は」アルヴィンが私を見た。「単独行動が癖になっている。気をつけろ」
「……そんな癖はありません」
「ある」クロードが即座に言った。
「二対一は不公平です」
「事実だろ」
アルヴィンが、珍しく少し声を上げて笑った。
(笑った。ちゃんと声が出た)
初めて聞いた気がする。低くて、静かで、でも確かに笑っていた。
「二人とも、頼む」
その言葉は、短かったけれど、十二年分の重さがあった。
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◇
──私のメモ帳より。
『主任語録:ちゃんとした笑い声←初めて聞いた。案外、いい声だった。要注意』
要注意の項目が増えていく一方だった。
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*次話:「罠にはまった」*
本作は『転生したら悪役令嬢でしたが、攻略手順をうろ覚えすぎました』の続編です。アルディアがなぜ転生者なのかは前作で描いていますので、よろしければあわせてお読みいただけると嬉しいです!




