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断罪されかけた悪役令嬢、王家に就職しました  作者: 夜凪 蒼


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3/12

第3話「同僚がクロードなんですが」


 八日目の朝、執務室のドアが開いた。


 「おはよう、アルディア」


 クロードだった。


 手に書類を持って、当然のような顔で入ってきた。


 「……なんで」


 「配属になった」


 「いつ」


 「今日から」


 「聞いていない」


 「俺も昨日知った」


 クロードは私の隣の机に荷物を置いた。当たり前のように椅子を引いて座った。


 (同僚になった。職場に幼なじみが来た)


 「クロード・バレンシア、本日より着任します」


 アルヴィンに向かって敬礼した。アルヴィンは書類から目を上げずに「ああ」とだけ言った。


 (主任、部下が増えたのにリアクション薄い)


 「よろしく、アルディア」


 「……よろしく」


 こうして、職場の人員が三人になった。


---


 クロードの仕事は「護衛兼調査補佐」という名目だった。


 つまり何でもやる、ということだ。


 最初の一時間、クロードは私の仕事を眺めていた。


 「何してるの」


 「見てる」


 「なんで」


 「お前がどんな風に働くか、知りたかった」


 (知りたかった、って何)


 「見ても参考にならないわよ」


 「そんなことない。お前、仕事速いな」


 「慣れてるから」


 「何に」


 「……色々」


 誤魔化したら、クロードは「ふうん」と言って、それ以上聞かなかった。


 (この人、昔からこうだ。聞かない。でも見てる)


---


 昼になった。


 アルヴィンは一人で書類を読みながら食べる。私はいつも一人で食べていた。


 今日はクロードが隣に座ってきた。


 「一緒に食べていいか」


 「どうぞ」


 「お前、ちゃんと食べてるか」


 「食べてます」


 「量が少ない」


 「これで足りています」


 「足りてない」


 「足りてます」


 「俺の目には足りてない」


 (職場でも始まった)


 「クロード、ここは職場です」


 「だから?」


 「心配の圧が強いと、業務に支障が出ます」


 クロードが少し笑った。


 「業務に支障って、お前らしい言い方だな」


 「事実です」


 「じゃあ業務連絡として言う。昼食はちゃんと食べろ。体が資本だ」


 (業務連絡として言われた)


 なんとなく負けた気がしたが、言い返せなかった。


---


 午後、調査案件が入った。


 貴族の屋敷で使用人が一人行方不明になったという話だ。逃げたのか、連れ去られたのか、それとも別の何かか。


 「現地に行く」アルヴィンが言った。「二人もついてこい」


 初めての外勤だった。


 馬車の中、三人並んで座った。アルヴィンは書類を読んでいる。クロードは窓の外を見ている。


 狭い空間に、無言が続いた。


 (気まずい)


 いや、気まずいのは私だけかもしれない。この二人は普通にしている。


 「主任」


 「何だ」


 「現地では私はどう動けばいいですか」


 「状況を見て判断しろ」


 (また判断しろ系だ)


 「クロードは」


 「俺はアルディアの護衛だ」


 「私の護衛? 主任じゃなく?」


 「主任は強い」


 アルヴィンが書類から目を上げた。


 「俺の護衛はいらないのか」


 「いります」クロードが即答した。「でもアルディアの方が危なっかしい」


 「危なっかしくないわよ」


 「前回、一人で飛び込もうとしたじゃないか」


 「あれは状況が」


 「危なっかしい」


 アルヴィンが小さく、本当に小さく息を吐いた。


 笑ったのかもしれない。確認できなかった。


 「二人とも、状況判断を優先しろ」


 「「はい」」


 馬車が揺れた。


 (これが、うちの職場か)


 悪くない、と思った。


---


    ◇


 ──クロード・バレンシアの日記より。


 『同じ職場になった。毎日顔が見られる。悪くない』


 私も同じことを思ったが、日記には書かなかった。


---


*次話:「リリアが相談に来た」*


本作は『転生したら悪役令嬢でしたが、攻略手順をうろ覚えすぎました』の続編です。アルディアがなぜ転生者なのかは前作で描いていますので、よろしければあわせてお読みいただけると嬉しいです!

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