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第六話 ソラの特訓は困難を極める

翌日、自宅の庭にて。


「どうだった?怒られた?」

私はソラに小声で聞く。


「お母さんにしか叩かれたことないのに状態だった」


「……何それ、どういう状況?」


「まあ、色々すっ飛ばして言うと、強くなれって言われた」


「それ、すっ飛ばして良いやつ?……まあ、いっか。そんなあなたに朗報です!今日は、ソラの必殺技を考えてきましたー!!」


ソラが私を見る目からは、「何言ってんだ?」という感情がひしひしと伝わってくる。


「ちょっと!頭おかしい奴を見るような目で見ないでくれる?ちゃんと考えてきたから。ソラでも使える魔法を」

そう言って、私はニヤリと笑う。


そう、このソラとか言う奴、実は魔法が使えないのだ。


「本当か!?」

ソラの目の色が一瞬で変わった。


「もちろん!崇め奉りたまえ!」


「ははぁ。って、誰がするか」


チッ、正気に戻ったか。


「今回ソラに教える魔法は破壊魔法の一種で、ザックリ言うと、刀に魔力を纏わせて何でも斬れるようにする魔法かな」


「成程。本当に俺でも使えるんだな?」


「うん、今から詳しく説明するね。まず、魔力ってエネルギーじゃん?」


「そうだな」


「そのエネルギーを使って、物質同士の結合を切断するとどうなると思う?」


「二つに割れる?」


「大正解!これが破壊魔法の原理ね。じゃあ次は、このエネルギーにどうやって指向性を持たせるか」


「う〜ん、イメージするとかか?」


「そう!ソラって刀で何かを斬るとき、その物体を刀で斬るイメージするでしょ?」


「成程!そういうことか!!でも、俺ができないのはイメージじゃなくて、魔力のコントロールなんだけど」


私は人差し指を立てると、左右に振る。

「チッチッチッ、私がそんなことも考えてないと思うのかい?」


「思う」


「えっ、酷くない?まあ、いいや。ソラって魔力垂れ流してるでしょ?」


「不本意ながらな」


「多分ソラって、日常的に魔法使ってるんだよ」


「はぁ?使えないから困ってるんだが?」


「まあ聞きなって。ソラって力強いでしょ?それも、無意識のうちに魔法を使っているから。例えば、重い荷物を持とうと思ったら、持ち上げるイメージをするでしょ?そのイメージにソラの垂れ流しの魔力が反応して、力を貸してくれてる訳。ちなみに私、クイントの森でソラとハイタッチしたとき痛かったこと忘れてないから。ギルドでグータッチしたときは痛く無かったのに……。絶対勢い良くハイタッチするイメージしてたでしょ」


私は口を尖らせてソラを責め立てる。


当のソラは、斜め上を見てこう言った。

「……そんな気もする」


お前マジ許さん。


「まあ、とにかくやってみてよ。多分、今の時点で刀……というより体に魔力を纏わせて何でも斬れるようにする魔法?なら使えてると思うんだよね。あとは、垂れ流す魔力を増やして、固い物でも斬れるようにするだけ」


「分かった。やってみる」


それから数十分が経過したが、全く何も進展しなかった。

私は暇すぎて本を読んでいる。


「フィル、魔力ってどうやって感じたら良いんだ?」


「えー、そんなこと言われてもなぁ」

本を読む手を止めて顔を上げるが、解決策は何も浮かばない。


う〜ん、そうだなぁ。

魔力を動かす感覚さえ分かればできると思うんだけど、それをどうやって教えるか……。


私がソラの魔力を動かすことができれば一発なんだけど……って、それだー!!!


今まで魔力は指紋と同じで一人一人質が違うと思ってたけど、よく考えたら全員同じ質なのでは。

だってそうじゃなきゃ、私がこうやってソラの魔力を感じることもできていないはず。


よし、やってみよう。


「ソラ、ちょっとそこで立ってて」

私はソラに近づくと、ソラの背中に手を当てて魔力を動かす。


「どう?何か感じた?」


「……何かが動いてる感じがする」


「それが魔力。じゃあ、次はソラが動かしてみて?」


「分かった……こうか?」


「そう!それ!!」


「じゃあ、体の外に出してみて?」


ソラの魔力はすんなり体外に出て行った。


普通はもうちょっと体が抵抗するはずなんだけどなぁ。

まあ、あんだけ魔力垂れ流してりゃそうなるか。


「あとは、何か斬るものを……」


周囲を見ても特に良さそうなものは無かったので、ソラの前に土魔法で岩を作る。

「これを斬ってみて」


ソラは刀身を鞘から抜くと、岩に向かって上から刀を振り下ろす。

岩は音もなくパッカリと二つに割れた。


「おぉー。すごい威力」


「考えた本人が驚いてどうする」


「まさか本当に斬れるとは……」


「思ってなかったのか?なのにやらせたのか!?」


「いや、そんなこと無いよ?」

口笛を吹いて誤魔化す。

私、口笛吹けないけど。


「……まあ、できたから許す」

ソラは何とも形容し難い表情になったが、最終的には許してくれた。


「よっしゃ。じゃあ、記念にご飯食べに行こ!」


「ああ!」



☆・..・★・..・☆・..・★



「……結局いつもと同じじゃねぇか。記念とやらは何処行った?」


「まあ、良いじゃん。それとも、金鶏の卵亭に文句でも?」


「それは無いけど……」


「ど……?」


「だから、無いって」


「そっか、じゃあ問題ないね」

そう言うと、私はカツ丼を頼んだ。


「すみませーん!カツ丼を一つ!」


「あいよ!」

カルラおばさんが遠くから答える。


「ソラはどうする?」


「じゃあ、俺もカツ丼にする」


今私たちには、人が食べているものを食べたくなるという現象が起こっている。

何故なら、隣でカイルとイオとリリアがカツ丼を美味しそうに食べているからだ。


「カツ丼一つ下さい!」


「あいよ!ちょっと待ってな」


しばらくしてから二人分のカツ丼が届いた。

それまでに三人はカツ丼を食べ終えており、私たちはそれを羨ましそうに見る羽目になった。


「美味しい!」


「待った分の旨味が上乗せされてるな」


「うん!そんなもの無いけどね!」

私たちは、どちらともなく笑い出した。


これぞ平穏な世界。

しかし、その平穏は長くは続かなかった。


ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン……。


突然、鳴り響く鐘の音。


「スタンピードだー!領主の館へ急げー!」

誰かが叫ぶ声が聞こえる。


「スタンピード!?アンタたち、お題は後でいいから早く領主の館に向かいな!」

カルラおばさんが店に居る客全員に聞こえるように叫ぶ。


「おう!」

「分かったわ!」

「ありがとよ!」

感謝の声が続々と聞こえてくる。


「リリア、カイル、イオ、フィリア、ソラ、全員いるね。トーマス!!」


「今行く!」

店の奥からトーマスおじさんが返事をした。


「さて、トーマスが来たら私たちも領主の館に行くよ。ちょうど全員揃っていて良かったよ」


私はユリアおばさんの言葉に真剣な面持ちで頷いた。

第七話は、明日の午前五時に投稿します!

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