告白までの珍道中
「さて、そもそもログインしてるのか…?」
俺はフレンド欄からレイラを探す。…オンラインになっているのでまぁ大丈夫だろう。適当にレベリングしながら彼女を探すとする。今いるところは【断罪の渓谷】。高レベルご用意足しの穴場だ。
「久しぶりに納品でもするか。…感覚強化」
近くにいるのは竜が数体。先制攻撃で撃ち落とすか。
「転移。蒼天蹴武」
「グギョァ⁈」
うむ、クリーンヒット。俺は魔法系スキルなんて覚えてないから物理攻撃しかできねぇんだよな…。そう思いつつ竜の頭に蹴りを入れる。蒼天蹴武は半径1mm以内で0.5秒間の間、3回同じ方向に転移スキルを使用してから敵の前に転移して攻撃(今回は蹴り)を放つ事でバグ(鬼畜仕様なだけ)を発生させる攻撃だ。そもそも転移スキルは慣性とか無視して任意の場所に転移するスキルなのだが、このバグを使うと慣性が適応されるようになる。計算式の『みはじ』の『じ』は1秒で固定されているが他は転移次第という訳だ。因みにこれを使いたいなら転移スキルと無口頭詠唱スキル、数秒間のリキャスト無視スキル、そして身体強化が必要になる。正直、リキャスト無視はあっても無くても、転移スキルが4つあれば問題ないが身体強化は絶対にいる。だって攻撃した部位が吹っ飛んで自滅するから。あと火力が乗る。
「追撃」
「グァアァァ!」
「るっせぇよトカゲ。他の竜来たらどうすんだ」
そんな文句を垂れると、知るか、死ね!と言わんばかりの炎のブレス。
「わー怖い。死ね」
そう言いつつアイテムボックスから槍を数本取り出して全て空に投げる。
「転移」
「グベッ……」
体内の座標に槍を転移された竜はやがてポリゴンとなり、素材を落として消えた。俺自身が高レベルなので経験値はちょっと渋い。
「正直、素材もう要らないんだよな…。この間周回したし。さっさとレイナ探すか」
「あ、あのっ!もしかして、【HAIZIN】ギルドの『ファントム』さんですか?」
…誰だコイツら。PNは…@work chと金策mad。…なんというか、奇抜な名前だ。レベルはそこそこ。聞いた事ないし中堅の人か?
「まぁ、うん」
「まじか、あの鬼畜技常時発動できる人に会えるなんて!」
「ほんと!【WORLD ORDER】の全サーバーで1、2を争う狂人の『ファントム』さんに会えるなんて思ってなかったなぁ…!」
「それめっちゃディスされてねぇか?」
「まぁまぁ!ここら辺狩場なんですか?」
「まぁそうだな。俺はそれなりにレベル高いけど4、5体キルすればレベル1上がるくらいの良い狩場だし。あと素材が美味い」
「ドラゴンを素材として見るのはあんたくらいだと思うよ…?」
いやいや、うちのギルメンは大体素材として見てると思うんだが…敵モブな時点でもう素材だし。
「あ、そうそう。ここら辺で『剣聖』レイラに会わなかったか?」
「『剣聖』…見てないですね。そもそもログインしてるんですか?」
「一応オンになってるし、このゲームVR型だから放置周回できないからな」
「…え、あの『剣聖』とフレンドなんですか?」
「うん」
何か問題でもあるのか?…まさか、レイラのファンクラブ的な?襲ってきたらベルコンPKしよう。
「『剣聖』ってあの百合ギルドのギルマスだよね?」
「男嫌いって有名だよ?」
「百合ギルド?【Arthur Night】じゃないのか?」
「あのギルド、男子禁制なんですよ。ネカマもダメ。ネナベはいいらしいです」
「…それが花と関係あるのか?」
「「花?」」
「いやだって百合…」
「(え、この人純粋すぎん?流石にぶりっ子?)」
「(これは素。絶対。100%。教えていいやつなのこれ?!)」
ヒソヒソ話をしている。もう用はないしさっさと探す事にする。
「じゃ、転移」
「「あっ」」
この時はまだ知らなかった。その様子が動画になっているなんて。
ベルコンPKとは
ハルキがギルド対抗戦のために編み出したPK法。敢えて一本道に誘導して自分の逃げ道を失う代わりに1対1か2を強制してひたすらバグとプレイヤースキルでボコボコにする。それはさながら、ベルトコンベアーのように。




