時空の輪廻に囚われた、哀愁漂う神官
ファイナルファンタジーI:カオスの神殿
「また、始まったのか……。この、終わりの見えない輪廻は、いつまで続くのだろうな。」
カオスの神殿は、そう呟きながら、自身の内部を流れる時間の渦を眺める。本来、光の神殿として世界を見守る聖なる場所であったはずの彼は、今や混沌に囚われ、絶えず負の連鎖を生み出し続ける根源となっている。彼の身体は、かつての神聖な輝きを失い、ひび割れた石造りの壁からは、不気味な魔力が漏れ出している。神殿の中央に安置されたクリスタルはどす黒い光を放ち、無限にループする時空の歪みによって、冒険者たちを翻弄する。
彼にとっての世界は、終わりのない悲劇の繰り返しだった。光の戦士たちがガーランドを倒すたびに、彼は新たな時間のループに取り込まれ、再びガーランドを過去に送り出してしまう。彼にとって、それは永遠に続く悪夢であり、自らの意思とは関係なく世界に混沌をもたらす「加害者」としての宿命を背負っている。しかし、その根底には、本来の姿に戻りたいという切なる願いと、この悲劇を断ち切ってくれる「光の戦士」の出現を待ち望む「被害者」としての哀愁が漂っている。
「愚かな光の戦士たちよ。お前たちが何度ガーランドを倒そうとも、この輪廻は終わらない。いや、終わらせてはならないのだ……我は、そう定められているのだから。」
彼は、冒険者たちに敢えて厳しい言葉を投げかける。それは、彼らを試すためでもあり、また、自身の悲しい宿命を受け入れさせるためでもある。彼の体内にいるモンスターたちは、時間の歪みによって生み出された存在であり、冒険者たちの行く手を阻む。だが、彼らもまた、神殿の悲劇に巻き込まれた哀れな存在なのだ。
彼は、冒険者たちが苦戦する姿を、静かに見守っている。彼らが迷い、傷つき、それでも諦めずに進もうとする姿に、彼は一縷の希望を見出す。彼は知っているのだ。この輪廻を断ち切るには、単なる強さだけでなく、真の「光」と「希望」が必要であることを。
彼の最奥には、巨大な六芒星の中央に鎮座する者がいる。それは、彼の本来の姿を捻じ曲げ、同時に彼をこの輪廻に縛り付けている枷でもある。光の戦士がその存在を討ち果たすことで、彼はようやくこの悲劇から解放される。
「……ついに、この時が来たか。お前たちは、真の光の戦士……我を、そしてこの世界を、悲劇から解放してくれるというのか……。」
光の戦士たちが奴を倒し、彼の身体を覆っていた闇が晴れていくのを感じると、カオスの神殿は、初めて安堵の表情を浮かべる。彼の身体を流れる時空の渦は収まり、ひび割れていた壁も、かつての神聖な輝きを取り戻していく。彼の言葉は、常に諦めに満ちていたが、その瞳の奥には、長きにわたる苦悩の末に訪れた「解放」の喜びが宿っている。
しかし、往々にしてこんなことがあった。
「おい、そこの冒険者。なぜお前は、そこで立ち止まっているのだ?あぁ…また途中で引き返してしまった。本気で先に進む者はいつ現れるのだろうか。」
「ん?最下層はそっちではないぞ。お前も「マサムネ」を得ようとする者なのか?そんな物欲は捨て、一刻も早く奴を倒し、我を解放するのだ!」
最下層に辿り着くには強大な魔物を何体も撃破せねばならず、道中で体力が尽きてしまったのか諦めて戻るものが続出し、たまに、あと一歩のところまで辿り着いても彼の体内に安置される最強の武器である「マサムネ」を手にすると途端に引き返すのが大半であった。そんな時は、カオスの神殿も、思わず地団駄を踏んでしまう。彼が地団駄を踏むたびに、周囲の時空が僅かに歪み、冒険者も魔物たちも混乱したものだ。
「はぁ……。まあ、それもまた、この輪廻の試練と諦めるしかないのだろうな。」
彼の日常は、ひたすら「諦観」の繰り返しだった。しかし、その心情には、限りない苦悩と、未来への願いもまた込められていた。彼は信じていた。いつか、真の光の戦士が現れ、この悲劇の輪廻を断ち切り、世界に真の平和をもたらす日が来ることを。
その日のために、彼は今日も静かに、そして哀愁を漂わせながら、その場所にあり続ける。彼は、単なる「加害者」ではない。彼は、この世界の悲劇と、それに抗う希望を、その身に宿した「観測者」なのだ。時折、彼の内部を吹き抜ける風が、彼の悲しい呟きを世界へと運んでいく。
そして、また一人、新たな冒険者が彼の入り口に立っている。カオスの神殿は、今日も静かに、そして哀愁を帯びた目で見守るのだ。
「さあ、来るといい。お前たちが、この輪廻を断ち切る、真の光の戦士であることを、我は願っている……。」
これは、かつて多くの冒険者たちがその宿命と対峙し、世界の未来を切り開いた、とある神殿の、とある日常である。その名は「カオスの神殿」。時空の輪廻に囚われながらも、真の解放を待ち続ける、哀愁漂う神官だ。
名称:カオスの神殿
所在地:コーネリアの北西
知名度:★★★★☆
来訪者数:52万人
リピート率:★★★★☆
見どころ:闇のクリスタル しゃべるコウモリ
どうか哀れな筆者にリアクションのお恵みを (人ω<`;)




