伝説の始まりを告げる番人
完全に見切り発車です(;^_^A
ドラゴンクエストⅠ:ロトの洞窟
「今日も来るといいわね、新しい冒険者さん。どうせまた、がっかりして帰るんだろうけど……。」
ロトの洞窟は、そう呟きながら、自分の内部を見渡す。土と岩がむき出しの壁は、ここ数百年変わらない姿を保っている。天井からは、時折、冷たい雫がポタポタと落ちる音がする。それが、彼女の体内を流れる微かな脈動のようなものだった。
彼女の日常は、驚くほど単調だった。朝、日の光が差し込む入り口の岩肌をぼんやりと眺め、昼は内部のひんやりとした空気を味わい、夜は闇に包まれて瞑想する。モンスターがいないため、体内で派手な戦闘が繰り広げられることもない。宝箱がないため、冒険者たちが我先にと内部を荒らすこともない。ただひたすらに、静謐な空間が広がっているだけだ。
それでも、彼女は決して退屈しているわけではなかった。彼女にとっての喜びは、何よりも出会いだったからだ。
「来た来た!これまた随分と危なっかしい足取りね。しっかり松明で足元を確認するのよ。」
「お、この子はまだ若いわね。杖なんか持ってるけど、魔法使い志望なのかしら?いやいや、ロトの勇者を目指すならやっぱり剣の稽古も怠っちゃダメでしょ。」
彼女が一番心待ちにしているのは、「ロトの血を引く者」の訪問だ。しかし、訪れる冒険者の大半は、伝説に憧れてやってきたものの、真の勇者ではない。
「この若者は、途中で引き返しちゃったのね。まあ、仕方ないよね。みんながみんな、勇者になれるわけじゃないからね。」
彼女は、冒険者たちの様子を、じっと見守っていた。彼らが期待に胸を膨らませて入ってくる姿、何もなくて肩を落とす姿、それでも諦めずに奥へと進んでいく姿。その全てを、彼女は静かに、しかし温かい目で見つめている。
魔物も出ない、貴重な宝物もない彼女の中には、たった一つだけ特別な場所がある。それは、第二層の奥深く、光も届かない深部であるにも関わらず周囲には草が生い茂りひっそりと佇む石碑だ。そこに刻まれたメッセージは、この世界を救うための旅の目的を、そして真の勇者が進むべき道を示してくれる。
「さあ、よく読んで。焦らなくていいの、ゆっくりと、その言葉の意味を噛み締めるのよ。」
石碑の前に立つ冒険者を見ると、ロトの洞窟は内心で声援を送る。彼らが石碑のメッセージを読み終え、瞳に決意の光を宿した時、彼女は何よりも満ち足りた気持ちになるのだ。
「よし、これでいいわ。さあ、行くのよ、若き勇者よ。お前には、この世界の未来がかかっているわ。我は、ここからお前たちの旅を見守っているわ。」
彼女は、冒険者たちが石碑のメッセージを読み、新たな決意を胸に旅立っていく姿を見るのが大好きだった。まるで、自分の子供が巣立っていくのを見守る親のような心境だ。
しかし、時にはこんなこともある。
「ん?なによ、このおじさん。まさか、間違えて迷い込んできたの?……やめてよ、ここはトイレじゃないわよ!」
そう、たまに、冒険者でもなんでもない、ただの迷子や、酔っぱらいが彼女の体内に入り込んでくることがあった。彼らは、石碑のメッセージに興味を示さないどころか、中には落書きまでしていく不届き者までいる。そこまでではなくとも松明が途中で燃え尽きてしまい、ただ出口を探してうろうろするばかりの者もいる。そんな時は、ロトの洞窟も、思わずため息をついてしまう。
「はぁ……。まあ、それもまた仕方ないことなのね。」
彼女の日常は、ひたすら「待つ」ことの繰り返しだった。しかし、その「待つ」ことの中には、限りない希望と、未来への願いが込められていた。彼女は知っていた。いつか、真の勇者が現れ、この石碑のメッセージを読み、魔王を打ち倒し、世界に平和をもたらす日が来ることを。
その日のために、彼女は今日も静かに、そして誇り高く、その場所にあり続ける。時折、鳥が入り口の岩に止まって歌を歌い、風が彼の体内を吹き抜けていく。それは、彼女にとっての、ささやかながらも確かな喜びだった。
そして、また一人、新しい冒険者が彼の入り口に立っている。ロトの洞窟は、今日も静かに、そして温かい目で見守るのだ。
「さあ、来るといいわ。ここから、お前たちの伝説が始まるのだから。」
これは、かつて多くの冒険者たちがその第一歩を記した、とある洞窟の、とある日常である。その名は「ロトの洞窟」。伝説の勇者ロトの血を引く者が訪れるのを、今日も静かに待ち続ける。アレフガルドの片隅で。
名称:ロトの洞窟
所在地:ラダトーム北西の砂漠
知名度:★★★★★
来訪者数:150万人
リピート率:★☆☆☆☆
見どころ:第二層最奥の石碑
まあ誰も見ないと思いますが、万が一見てくれたら「つまらん」でも「くソ」でもいいので反応していただけると喜びます♪




