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【第6話】許すまじ、仮面の男。


 

「本当にすみません、うちの子が⋯⋯」


「ん、大丈夫」


「ほら、カヤ。お家に帰るから二人にさようならしなさい」


「は〜い。それじゃあバイバイ、おねえちゃん!」


「ごめんね。魔法、見せられなくて」


 と、私は少しかがんで女の子の頭に手を置いた。


「今度は、めちゃくちゃすごい魔法を見せてあげるから」


「うん! やくそくっ!」


 女の子は元気よく笑うと、母親と手を繋いで歩いて行く。


 「じゃあね〜まほうつかいのおねえちゃん!!」


 女の子は振り返り、手を繋いでいる方と逆の手を大きく振った。


 私は小さく手を振って返すと、


「いこうか、アスト」


 そう言って、親子とは逆方向──街の中心部へと身を繰り出した。



⋯⋯



 「子供って可愛いよね。気分はどう?」


「やる気2割、怒り8割ってとこ」


「詳細は?」


「“あの子のために早く魔法を取り返すぞ!”っていうやる気2割と、“あの仮面の男絶対許さない、見つけ出してボコる”っていう怒り8割」


「やる気10割だね」


「怒り10割だよ」


 ということで私達は今、図書館に向かっていた。

 街の人に聞いたところ、この街にはそこそこ大きな図書館があるとのことなので、この世界の発展具合を調べる為に向かうことにした。


 それ次第で、私達がどれくらいで帰れるかが分かる。


「私が魔法を使えたらすぐに帰れたのに」


「そうなのかい?」


「私、転移魔法使えたから」


「それは⋯⋯すごいね。列車を使わなくて済むじゃないか」


「だけど、距離が遠いとすごい酔う。最低でも数日はフラフラになる」


「それは⋯⋯ひどいね」


「それでも、変な男に襲われて列車ごと知らない世界に叩き付けられるより100倍マシ」


「あはは、違いない」



 それから少しして図書館に到着した私達。この図書館は基本的に入場料無料で、一部の書物は閲覧するのにお金が掛かるらしい。


「一部の書物って何ですか」


 私は司書のお姉さんに聞いてみる。

 “別世界”について記された本なら、お金を払ってでも見る必要がある。


 調査の結果、この世界で使われてる通貨は私たちが持っているそれとは完全に別物。だから、そうじゃないことを祈る。


「大人向けの、ちょっと難しい本ですね」


「難しい本⋯⋯ねえアスト、もしかしたら──」


「⋯⋯違うんじゃないかな。多分、僕たちにはまったく関係ない本だと思う」


「知ってるの?」


「何となくね⋯⋯」


「すごい、旅人じゃないのに物知り」


「あはは⋯⋯」


 私とアストは手分けして目当ての本を探すことに。

 途中、魔法について書かれた本が置かれたエリアを見つけたが、読むと逆に心がやられそうなのでスルーすることにした。


「ない⋯⋯やっぱり、難しい本のとこにあるんじゃ⋯⋯」


 アストはああ言ってたけど、あるかないかは実際に見てみないと分からない、結局の話。


 でも、お金がないし⋯⋯。


「どうしよう、困った」


「はい、どうぞ」


 突然、目の前に一冊の本が現れる。

 いつの間にか背後に立っていたアストが、私の頭上から本を手渡そうとしていたのだ。


「これは?」


 それを受け取ると、私は背表紙を見て題名を確認する。


「『十二星道』──⋯⋯?」


「そう。中を軽く見た感じ、“別世界”どころかこの宇宙について書かれてたよ」


 それじゃあ、この世界では少なくとも“世界の外”が観測されているんだ。


「──それに、()()()()()()()についても少しね」


 と、アストは得意げな表情(カオ)をする。


「大手柄、偉い」


 少し背伸びをして、アストの頭を撫でる。


「僕は子供じゃないんだけど⋯⋯」


 私は近くにあった椅子に座ると、すぐに本を読み始めた。


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