【第5話Alter】仮面の男。
主人公視点ではない回では話の題名に「Alter(今後はA)」と書くようにします。今回は世界観補足的な回なので短いです。
「はあ……正気かい、ヴェリウス。〈権能者〉の成り損ない……時代遅れの魔法使いなんかに〈破滅〉の印を刻むなんて」
「何か不都合でもあるのか?」
「都合不都合以前の問題だろ? 意味がないって言ってるんだよ。これ以上“星瞳”の保持者を増やして何になる?」
「いつか──全世界、全宇宙を巻き込んだ大戦が勃発する。生き残る星道は、ただ一つ」
「聞いたよ、前も」
「……〈破滅の児〉は、進まなければならない」
仮面の男の言葉に対し、もう一人の男は肩をすくめた。
「まるで〈黎明〉の連中みたいなことを言うね」
「これはお前が気にすることではない。ただの、気まぐれだ」
「……ふう。君の気まぐれで人生を狂わされた彼女が気の毒で仕方がないよ」
十二星道──〈聖天〉、〈命煌〉、〈白契〉、〈黎明〉、〈相律〉、〈解識〉、〈空観〉、〈破滅〉、〈永劫〉、〈翼理〉、〈幽淵〉、〈虚絶〉の十二種からなる、この宇宙を構成する要素。
それは同時にこの宇宙の勢力を表しており、それぞれに〈星念〉と呼ばれる“星道の歩み方”が存在する。
──本来、個人が特定の星道を歩むことはない。
多少の差はあれ、この宇宙の殆どの者は十二星道全てを偏りなく歩んでいる。
例を挙げるのなら、「純なる正義」が星念である〈聖天〉は、“嘘偽りない、自身の信じる正義を歩み続ける”ことでその者の星道はそちらに大きく傾く。
一方で、「虚なる存在」が星念である〈虚絶〉は、“虚無、虚寂、虚構──他に一切の関心を持たず、虚ろに歩み続ける”ことでその者の星道はそちらに大きく傾く。
一見、対極に位置するこの二つの星念は、両立しうる。
難しい話ではない。どんな人間にも表と裏があるように、正義の心を持ちながらも、虚構を吐く人間はいる。
だからこそ、前述のように個人が特定の星道を歩むことはないのだ。
そう──寧ろ、難しい。
無意識にその道を歩む者もいれば、その道を歩むことに人生を捧げる者もいる。
そして祝福か呪いか、特定の星道に強く傾くことで、その者の瞳孔に“星瞳”と呼ばれる模様が浮かび上がるのだ。
「ま、何でもいいけどさ──僕を厄介事に巻き込むのだけは勘弁してくれよ。今、忙しいんだから」
両立しうる〈聖天〉と〈虚絶〉──星道が極端に傾けば、それらは当然対立する。
今現在、それぞれの全ての星道を統一しようとする過激派勢力が現れ始めている。
「──ああ、分かっている」
そうだな、“星道戦争”とでも言うべきか。
俺の目的はただ一つ。
俺はこの戦争の終結を以って────、
────■■■■と成る。
この先のストーリーであり得ないくらい出てくる設定なので、今のうちに軽く触れておきました。
まだ触れてない単語がありますが、それは次回以降のお楽しみです。