表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

【第2話】希望と絶望。


 「アスト──!!」


 消えた、


 アストが、


 私のせいで。


「……」


 謎の人物はこちらを向く。そして今になって、おかしな仮面を着けていることに気付く。更に全身は黒衣で覆われており、その内側には不思議な模様が広がっていた。


 あれはまるで、星の海──。


「……アストを、どこにやったの」


「近くの星へ飛ばした。安心しろ、運が悪くなければ死にはしない」


「……」


 信じていいのか分からないけど……こんな嘘をついて意味があるとは思えない。


 ひとまず、アストは無事なんだ。


 ……別にアストの身を案じていた訳じゃない。ただ、ちょっとした知り合いが目の前で死んだとなると、嫌な気分になってしまうから。


「次は、お前だ」


 やけに聞き取りづらいくぐもった声。声質的には間違いなく男。


 私は杖を両手でぎゅっと握る。


 やるしかない。


──シュンッ!


「──っ!」


 素早い動きで迫ってくる謎の男。その左手は大きく振りかぶられていた。


 私はすかさず左へ飛び退き、その手を回避する。


「『エアブラスト』!!」


 瞬間、列車にとてつもない突風が巻き起こる。

 列車内という空間で発生したそれは、5M(メートル)程度の樹木ならば容易に吹き飛ばせるほどの威力。



「うそ⋯⋯」


 ──しかし、男は吹き飛ぶどころか、微動だにしなかった。



「魔法、か──」


 こうなったら、列車破壊覚悟で────、


「デルタ・ブレイ──っ!!」


 ほんの、一瞬。


 男に杖を向けてから、たった一文の詠唱をするまでの間に────、


「──かはっ……!」


 男は私の目の前に現れ、右手で私の首を掴み上げた。


──カランッ……


 杖が音を立てて地面に転がる。


「この時代に、()()()()を持っているな。それに……良い目だ」


 グググ……と、首を絞める力が強くなっていく。


()()が、お前にとっての“希望”か」


「こ、の──……!!」


 バタバタと、無様にもがくことしか出来ない私を真っ直ぐ見据え、男は続ける。


「ならば、それは俺がもらおう」


 私の首を容赦なく絞めつけている男の右腕が、黒衣の内側に広がる星海模様に染まり、淡く光る。


「──絶望、失意、悲観……人は、深い闇の中でこそ“真の光”を見ることができる」


 こ、こいつは何を言って────、


「代わりに、()()()をやろう。無限の可能性に満ちた、()()()()だ」


 私の中から、大切な何かが消えていく感覚。それが何かなんて、考えるまでもなく一瞬で分かった。


 それは私の生きる理由で、私の存在理由で……、


 入れ代わるように、私の中に入っていく得体のしれない不吉な何か。


(かえ)、して──……!! それは、私の──!!」


 私の、たった一つの────、



 ────光……!!



 その時、男の手を首から引き離そうと強く握った私の両腕が、男の右腕のように黒く深く光りだす。


「……そうだ、それでいい……」


 湧き上がる力──、


 腕に力を込めた、その覇気だけで車内はゴゴゴ……と音を立て揺れ始める。


 今までの私じゃ考えられない、圧倒的な力。


「その力を、使いこなしてみせろ」


「か、えせ────っ!!」


 だけど、それでも尚、この男には届かない。私が死ぬまで力を振り絞っても、この腕を振り解くことはできないだろう。


 圧倒的で、絶対的で、絶望的な壁。


「その力を使いこなし、お前の存在がこの俺の耳に届くようになれば……また、お前の前に現れてやろう」


 力を込めれば込めるほど(あふ)れていく力、それに比例するように口から(こぼ)れていく血液。



「力で証明し、力で奪い返せ────」




「────お前の、光を」




 男の背後に現れる、謎のゲート。男は私をその場に放ると、ゲートへと歩き出した。


 あれは確か、転移魔法の────。


「わ、たしの……まほう──……」


 目の前の景色はひどく歪んでいる。


 力の代償(ダメージ)によるものなのか、涙で滲んでいるのか、はたまたその両方か。


 意識が途切れるその瞬間まで、私には分からなかった。



────ガシャアアアアアアンッッ!!



 最後の聞こえてきたのは、そんな音だったと思う。


 お察しの方もいるかと思いますが、この物語はとあるゲームにインスパイアを受けています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ