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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

食べたり食べられたり

 航空機の爆弾に直撃された輸送船は、あっという間に沈んだ。乗り組んでいた者たちは逃げる間もなく船と共に海中に没した。輸送船に乗っていたB君は危ういところで助かった。沈む船の甲板から夜の海に飛び込んだのだ。

 しかし難を逃れたとは言いにくい状況である。海にプカプカずっと浮かんでいられるわけにいかない。このままだと溺死確実だ。絶望していたら救いの手が差し出された。救命ボートに乗るよう言われたのだ。

 救命ボートには輸送船の船員が一人で乗っていた。その船員は沈む輸送船から救命ボートで脱出したのだった。

「ありがとう、助かった」

 そう言ってボートに上がろうとしたB君に男は拳銃を突きつけた。

「乗ってもいいが、条件がある。それを飲まないと、射殺するぞ」

 条件というのは、性行為の強要だった。その気がないB君は拒否したが、男――その名を借りにL君としておこう――が自分を本気で殺そうとしていると悟り、条件を飲むことにした。

 戦時中のことだ。まして、生きるか死ぬかの瀬戸際である。現在であればセクハラとして指弾されることが闇の中で行われた。

 満足したL君だったが、それでもB君を撃ち殺そうとした。

 B君は怒った。

「話が違うぞ!」

 L君は笑った。

「君の肉体で性欲を満たした。次は食欲を満たすよ。君を殺して、その肉を食べるんだ」

 飢えた兵士が人肉を食べる事件は幾つか起きている。それが今、B君の身に起きようとしていたのである。

 B君はL君に許しを乞うた。

「助けて!」

「うるせえ、死ね!」

「愛し合った仲じゃないか!」

「お前みたいな醜男を好きになるか! 肉にして食ってやる!」

 その時ボートに強い衝撃が走った。揺れるボートからL君が海に落ちる。その体にサメがガブリと噛みついた。L君は下半身を噛み千切られて絶命した。

 B君は敵艦に救助されるまで十数日の間、救命ボートに乗って海を漂流した。L君の肉体を食べなかったら脱水で死んでいただろう。BLの愛が彼を救ったのである。めでたしめでたし。

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