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神を拾った竜殺し~星の少年と炎の少女~・改訂版  作者: みつまめ つぼみ
星の少年と炎の少女

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第21話 新薬開発(1)

 夜になり、ノヴァたちがベッドに入り世話係たちが出ていった。


 静まり返った部屋で、ノヴァがアイリーンに告げる。


『起きているな? 今日は“アレ”の日だぞ』


 アイリーンが渋々答える。


『はーい……』


 アイリーンがベッドの中でもぞもぞと服を脱いでいき、ノヴァがゆっくりとアイリーンのベッドに近づいた。


 小さな照明魔法が灯され、アイリーンのベッドから布団がはぎとられた。


 一糸(いっし)(まと)わぬ姿のアイリーンが、恥ずかしそうに告げる。


『体のためとはいえ、やっぱり恥ずかしいわ』


『仕方あるまい、命をつなぐためだ。

 それに伴侶なら、この程度で恥ずかしがるものでもあるまい?

 では開始する』


 週に一度の再調整――第二離宮に来てから、二度目となる。


 ノヴァが慎重に検査魔法でアイリーンの体を監視しながら、補佐魔法の調整を行っていく。


『ふむ……やはり一週間程度で歪みが出るな。

 お前の父(ヴォルディモート)の魔導知識では、これが限界か』


 アイリーンが小さく息をついた。


『この体も、早く作り変えたいわよね。

 このままだと、不慮(ふりょ)の事故でノヴァを残して死んでしまいそう。

 それはとっても不本意よ』


『確かにそうだな……お前に渡したテディの鱗を媒介に、護身術式を組んでみるか』


 アイリーンがきょとんとした顔でノヴァを見つめた。


『それはどういうこと?』


 横たわったアイリーンが、首から下がるチェーンネックレスを握り締めた。


 その先端には、テディの鱗がつながっている。


 第二離宮に来た日に、ノヴァが作った首飾りだ。


 ノヴァがその鱗を見つめて告げる。


『星幽界にはテディの(むくろ)と共に魂も送ってある。

 そのテディの魂と経路をつなぎ、その力を借りる。

 テディは火竜だ。お前の魂とも相性がいいだろう』


『護身術式って、どうなるの?』


『お前がテディに助力を求めれば、鱗を通して星幽界からテディが力を貸してくれる。

 テディができることを、お前はできるようになる。

 火竜の息吹(ドラゴン・ブレス)を吐くことや、空を飛ぶことがな』


 アイリーンがクスリと笑みをこぼす。


『それはすごいわね。でも自分が気が付かなければ、不慮(ふりょ)の事態にはどうしようもないわ』


『経路をつないだ時点で、テディがお前を守るだろう。

 テディと同じ、二千五百年を生きた竜と同じ物理耐性や魔法耐性を持つことになる。

 突然竜に襲われようと、建物の下敷きになろうと、怪我をすることはなくなる』


 アイリーンが眉をひそめて(たず)ねる。


『それはテディの負担にはならないの?

 私はこれ以上、テディを苦しめる真似はしたくないわ』


『無限の魔力が満ちている星幽界にテディは居る。

 竜は周囲の魔力を食べるから、テディが魔力で困ることはない。

 ――さぁ、終わったぞ。もう服を着ていい』


 アイリーンは手早く服を着こんでいき、ベッドに腰掛けた。


 その手はまだ、テディの鱗を握りこんでいる。


『その護身術式はすぐにできるの?』


『経路をつなぎ、テディにお前を守るよう頼むだけだ。

 すぐ終わる。その鱗を貸してみろ』


 アイリーンがネックレスを首から取り外し、ノヴァに手渡した。


 ノヴァは鱗を媒介にアイリーンに魔法術式を展開し、(またた)()に魔法の行使が終わった。


『――これでいい。もうお前の魂にはテディの魂と経路ができているはずだ。

 今までよりテディを身近に感じるのではないか?』


 ノヴァがアイリーンにネックレスを着けた。


 アイリーンは目をつぶり、自分の中の魔力を探っていく。


『……そうね。確かに私の魂のすぐ(そば)にテディの魔力を感じる。

 今までより、ずっと共に生きている気がするわ。ありがとう、ノヴァ』


 ノヴァは優しく微笑みながら答える。


『礼ならテディに言え。奴も喜んでお前を守ることに同意した。

 お前はよほど、テディに愛されているのだな』


 アイリーンもノヴァの微笑(ほほえ)みに優しく微笑(ほほえ)み返し、二人は同じベッドで共に眠りに落ちた。





****


 翌朝、ニアに連れられて第二離宮にある魔導工房の一つにノヴァたちはやってきた。


 ニアが自慢気(じまんげ)に腕を掲げて工房を指し示す。


「ここが私の魔導工房よ。

 あまり使われていないけど、一流の設備は一式揃ってるわ」


 アイリーンが思わず顔を引きつらせながら告げる。


「……ニアさんには悪いと思うんだけど、一流の魔導士の魔導工房でもこの水準なのね」


 ニアが苦笑を浮かべて答える。


「ここの設備でそんな感想を持つだなんてね。

 先史文明の一流魔導士が構える魔導工房がどんなものだったのか、想像もできないわ。

 ――それより、どう? ここで新薬の開発はできそう?」


 ノヴァが本棚から魔導薬学のほんを取り出し、目を通しながら答える。


「流通している素材を把握してからになりますが、加工技術は何とかなると思います」


 アイリーンも本棚から本を取り出して目を通し始める。


「現代の製薬技術に縛られるのは、どうしようもないものね。

 あとは調合でなんとかするしかないわ」


 ニアが目を輝かせて(たず)ねる。


「先史文明に魔力回復薬はあったの?

 どんな素材? それは今でも作れる?」


 アイリーンが本に目を通しながら答える。


「ホムンクルスの補給薬以外に、人間が服用する薬も当然あったわ。

 素材は人工生命体を使うことがほとんどだったわね。

 その方が最適な素材を用意しやすいの。

 不死鳥や竜、一角獣が有名どころね。

 製薬技術は比べ物にならない水準にあったから、今作るのは不可能だわ。

 私たちにも、先史文明の先端機材を作る知識はないもの」


 先進機材を作るには、先進技術で作られた工房が必要になる。


 その工房もまた、先進技術で作られる。


 そうやって、先進技術をいくつも経た先にあるのが、当時の魔導士の魔導工房だ。


 先史文明の魔導士が構える魔導工房は、先史文明の叡智(えいち)の結晶ともいえる。


 現代で古代遺跡(ベリド・アーク)古代遺物(ロスト・アーツ)と呼ばれる物こそ、その名残なのだ。


 アイリーンの説明を聞いて、ニアは残念そうに答える。


「そっかー。確かに現代技術で古代遺跡(ベリド・アーク)古代遺物(ロスト・アーツ)を作るのは、知識だけじゃどうしようもないわね。

 不死鳥も竜も一角獣も、現代に生息してるわ。

 あとは機材が何とかなれば、作れてしまうのね」


 アイリーンが首を横に振って答える。


「野生に戻った人工生命体が、必ずしも先史文明と同じ性質を持つとは限らないわ。

 野生の変位種になっているとみるべきね。

 薬品ごとに変位種を作ることだってあったし、そこは全く頼りにならないわよ?」


 ノヴァがいくつもの本を積み上げた(あと)、最後の本を閉じた。


「素材の目星は付けました。

 新薬の調合に必要な素材を教えますから、それを調達してください」


 ニアが(うなず)いて、ノヴァから素材のリストを書いたメモを受け取った。


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