寂寥のクリスマス
クリスマスイブの前日。彼から電話がかかって来た。大好きな彼からの電話で心がポカポカしていた。
だが明日のクリスマスイブをウキウキと楽しみにしていた私には、とても残酷な内容の話だった。
『別れて欲しい』
「え?」
突然のことで頭の中が真っ白になる。声を震わせつつ気丈に振る舞う。
「どうしたの? 何の冗談?」
その問いに返って来た言葉は、裏切りを意味する言葉だった。
『他に好きな子がいるんだ』
離れて行きそうな彼の心を必死に引き止める。
「私は別れる気ないからね! 絶対に」
だが彼には私の想いは届かない。
『もうその子と付き合っているから。菜緒と付き合っているつもりはないから』
付き合っている? 一体いつから? 昨日は私と二人で出かけたのに……。
昨日の彼のことを思い出す。何かいつもと様子がおかしかった。だがちょっとした気分の問題だろうと思い、そっとしておいた。
ひょっとしたら、昨日別れ話をしようとしたのかもしれない。
話を聞くべきだったと後悔する。だが怒りもこみ上げる。
他の女性と付き合っていたということは、短い期間であろうと二股されていたのである。
それでも好きという想いはその女性に負けていないと自信があり、引き止める。
「二股してたってことだよね? 怒らないからその女と別れて、私の元に戻って来て」
『もう戻る気はないから』
言うだけ言うと、電話はプツリと一方的に切られた。
すぐさま掛け直すと無機質な音声が聞こえて来た。
『お掛けなった電話番号は、電波の届かない所にいるか、電源が入っておりません』
一番近くにいた人が、電話ですら連絡が届かない遠くに行ってしまった。冷たく乾燥した空気が漂う部屋で、私は泣き崩れた。
私のクリスマスの思い出は悲しいものになった。




