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ブルーライトニング 改訂版 第97章

 玲子とマルスはダグラス社の整備棟に続く廊下を歩いていた。

「私に会わせたいって、誰」

 特別に立ち入りを許可されている玲子でなければ、これないエリアである。

「どうしても、お姉ちゃんに会いたいっていうんだけど、シティに行けないんだ。大きすぎて」

「はい? 大きすぎてって、何・・・」

「うん、こっち」と、言ってマルスがドアを開く。中は巨大な格納庫だった。数体の巨人が整備用ベッドにもたれながら立っている。

「これ、ブルータイタンね」

 玲子もファントムの主力大型メタロイドのことは知っていた。

「お姉ちゃん、こっち」とマルスが招く。招いた先には明らかにブルータイタンとはちがう大型メタロイドが立っていた。

「お姉ちゃん、これがプロメテウス。ぼくの仲間だよ」

 いかつい顔のブルータイタンに比べ、やや、親しみが持てる顔をしていた。そう、なんとなくゼムに似ている。プロメテウスがゆっくりと顔を動かし、玲子とマルスの方を見た。玲子のハンディに着信があったので玲子はハンディを取り出した。

「あなたが私のマスターですか?」とハンディから音声が聞こえてきた。

「えっ?」

「プロメテウスがお姉ちゃんのハンディを通じて喋ってるの」とマルスが言った。

「あなたがプロメテウスなの」と玲子はプロメテウスの方を見ながらハンディに喋った。

「そうです。あなたの目の前にいる大型メタロイドが、私、プロメテウスです」

「あなたには意思があるの?」

「はい、私はマルスと同じ人工頭脳を持ちます」

 ブルータイタンは人間サイズのロボットが操縦するので意思はない。しかし、プロメテウスには意思がある。

「あなたにお願いがあります。私のマスターになることを承認していただきたい」

 玲子はファントムのロボットたちにマスターとして認証されていることは自覚していた。なぜ、彼らはこうも自分をマスターとして認証したがるのか。

「いいけど、理由を聞かせてくれる?」と、玲子には聞き返す余裕があった。

「あなたがマルスのマスターだからです。私とマルスは一心同体です。マルスのマスターであるあなたは、すなわち、私のマスターでもあるのです」

(すごい、理由だこと)と玲子は思った。だが、マスターとしての責任も果たす覚悟はあった。

「いいわ、私、あなたのマスターになる。それで、あなたが私に求めるものは何?」

「あなたがマルスに施すこと全てです」

 それは玲子をマスターとするファントムのロボットたちが望むことであった。ソレイユですら望んだことでもあった。

「わかったわ」

「ありがとうございます」

 ぷつんとハンディの接続が切れた。玲子はハンディの接続先にプロメテウスを設定した。玲子のハンディに連絡をよこすのは、マルスやレナ、ルーナやゼムとロボットも多い。さすがに直接面識のないロボットが連絡をよこしたことはないが、ソレイユに付き合って、格闘訓練に参加したロボットは、たまにご機嫌伺いの連絡をよこしたりする。上原はそれが彼らの心の支えにもなっているというので、玲子は嫌がりはしなかった。

「ありがとう、お姉ちゃん」

「会わせたいロボットというから、新しい仲間かと思ってたけど、大きさだけは想像できなかったな」

「プロメテウスはお姉ちゃんに会いに行けないから」

「それにしても、強そうなロボットね」

「ドラグーンと戦って、勝ったんだよ」

「それじゃあ、私たちを守ってくれたんだ」

「ぼくは守れなかったけどね」

 しょげるマルスに玲子は

「マルスはサムを守ったんでしょ。それも大事よ。私はマルスがサムを守ってくれて、ありがたかったわ」

「うん・・・」

 玲子は俯きかげんのマルスの頬に手をあてた。

「プロメテウスが言ってたでしょ。一心同体だって。プロメテウスもゼムもマルスと一緒なの。みんなでシティを守ってるんだよ」

「うん」

「マルスはね、みんなのかなめなの。みんなを代表しているんだよ。みんな、マルスを通じて私と繋がっているんだから」




 そのとき、けたたましい警報が鳴った。マルスが弾けたように顔をあげる。

「どうしたの?」と訝しげに玲子が聞く。

「警戒体制だって、お姉ちゃん。ダグラス社の社屋に避難して。ぼくはこのまま待機にはいるから」

 今の今までしょげていたマルスが、人が変わったようにキビキビと動く。こういうところはマルスもロボットなんだと玲子は思いながら、社屋に向かった。とりあえず、邪魔にならないところまで退避しないと行けない。途中で、案内のロボットが玲子と合流し、一つの部屋に案内した。

「ここでお待ちください。状況を知りたければ、モニターをつければ確認できます」

 そう言って、ロボットは出て行った。モニターをつけると割と詳細な状況が表示されていた。

「こんなの、私に見せていいのかしら」と玲子は思った。だが、玲子がここにいることなどを含め、情報を一括して制御しているのは、軍の中枢コンピューターを兼ねているコンピューター「ニック」である。そのニックが玲子に見せて良いと判断しているのだろう。それにマルスや玲子の知っているロボットの待機状態が表示されていることからしても、明らかに玲子に向けて発信されている情報である。


 状況は不審な航空機が接近しているということだった。旅客機でもなく、プレストシティ向けの貨物機でもない。機数は三機。すでに迎撃機が接近し、警告を行っているが構わず侵攻しているようだった。すぐに緊張状態が戦闘状態に移行する。迎撃機は一旦、間合いをとり、撃墜を警告し攻撃を開始する。どうやら、人間が搭乗していない無人機であると判断したようだ。攻撃は容赦なく行われたが、三機の侵攻機はどうやら回避しながら、何かをばらまいているようだった。マルスがプロメテウスに搭乗し出撃する。そこまでは玲子にわかったが、それから先の乱戦はほとんどわからなかった。ただ、マルスとプロメテウスを示す輝点が、ばら撒かれた物体の侵攻を食い止めてるようだった。


「マルス、私の制御を委ねる。私は索敵とホーネット(無人戦闘攻撃機)のコントロールに専念する」

「了解、プロメテウス。君の制御を受け継ぐ」

 マルスの制御下にプロメテウスが入る。

「巡航ミサイルが三十機」

 接近しているミサイルにプロメテウスとホーネットがビームを撃つが回避された。

「プロメテウス、レーダー発信による索敵を止めろ。射撃レーダーは回避される」

「了解。光学による索敵に限定する」

 プロメテウスの指揮下にあるホーネットのレーダーが停止し、光学による標的追尾にきりかわった。しかし、高速ネットワークにより情報交換をする彼らは、敵の情報は詳細に捉えていた。

 プロメテウスやホーネットからレーザーが斉射された。射撃レーダーを使わず完全な沈黙状態で発射されたレーザーは、巡航ミサイルをことごとく撃ち落とし、二回の斉射で全ての巡航ミサイルが撃破された。しかし、その後、侵攻機の外壁を破って、三機の未確認が現れたと、迎撃に当たったホーネットから情報がもたらされた。映像はすぐにプロメテウスにもたらされた。

「飛行型ロボット兵器かな」と、マルス。

「今までのデータにはない。新型のロボットだ。注意を要する」

 敵のロボットは、ホーネットの攻撃を難なく回避している。

「迎撃のホーネットのコントロールをぼくに! プロメテウス、いくよ!」

「了解!」

 プロメテウスはスラスターを吹かして、加速する。マルスの指揮下に入ったホーネットは連携攻撃で一機のロボットを撃破した。

「手強いな」とマルスが呟く。

「会敵まで三十秒!」とプロメテウスがマルスに伝える。

「接近戦で叩く! プロメテウス、ライトセイバーを抜刀!」

 プロメテウスがライトセイバーを抜いた。敵のロボットのビーム攻撃をフィールドで偏向しつつ、複雑な機動で敵の懐に踏み込む。ズバッとプロメテウスのセイバーが一閃し、敵のロボットが真っ二つになった。

「残り、一機!」

 プロメテウスはもう一機に急接近し、これもセイバーで一太刀で破壊する。

「全機、撃破!」

 哨戒機からも全ての侵攻機が撃破されたと連絡がきた。

「これで、全部かな?」

「とりあえず、補給のために帰還しよう。後続の警戒機はすでに出撃している」

「そうだね」

 プロメテウスはゆっくりと体を翻し、帰還の航路に乗った。

「しかし、マルスのコントロールには切れがある。やはり、私では敵わない」

「そうかな」

「ああ、私の体を最も効率的に使うのはマルスしかいない」

「リョーカもいるよ」

「いや、リョーカはまだまだだ。マルスには敵わないな」

 すでに稼働テストでリョーカのコントロールを受けていたプロメテウスがそう断言した。

「マルスだって、リョーカのことはわかっているだろう」

「そのうち、ぼくに追いつくと思うよ」

「それはそうだが、今は違う」


 


 警報が解除されたことを玲子はモニターで知った。最後の混戦はマルスとプロメテウスが中心だったことはなんとなくわかったが、その凄さを理解はできなかった。

「マルスとプロメテウスがカタをつけたということなのかなあ」

 あとでマルスに聞いてみようかとも思う玲子だった。




 指揮管制室に詰めていたサムは状況をつかみかねていた。あまりにも推移が激しかったからである。マルスからホーネットの指揮権を要請されたとき、間髪を入れずに承認したのはサムだった。

「私じゃ対処できなかったかも・・・」と、傍らのノーマが言った。

「それ、かなりやばいって言うことじゃないか」

「あの新型のロボット、足がないから完全な空戦型のロボットだろうけど、人間のコントロールじゃない、完全なロボットだと思う」とノーマは分析した。

 サムは先ほどの戦闘状況をモニターに表示しながら、分析を試みたが、さっぱり解らない。マルスはレーダーを止めたり、複雑な機動をホーネットに指示しているので、ニックでも解析が追いつかないのだ。サムは危機感を感じた。

「マルスじゃなかったら、勝てなかったか?」

「マルスか、最低でも、ルーナかレナじゃないと無理だったと思う」

 サムは直ちに報告を上げる決意をした。

「すぐに、スコット司令と、西郷司令に情報を送ってくれ。ついに、マルスクラスじゃないと対処できないロボットが出てきたと。脅威度が増してきた」

 ノーマは短い報告書をつくり、情報を転送する。傍らで、オペレーターが報告した。

「ブルーライトニング(マルスのこと)とプロメテウスが帰還しました。後続の警戒機が引き続き空域の警戒は続けます」

 サムは、「ああ、警戒態勢は続けていてくれ」と答えつつ、事態の深刻さを感じていた。

「貨物輸送機だと思ったら、偽装された侵攻機だったか、油断も隙もないな」

「でも、情報局の分析で、攻撃日時が解ったので、侵攻機の候補を絞り込めましたから助かりました」とノーマが言う。

「情報局さまさまだな。確かに、我々にとって、情報局は最大の武器だ」

 西郷は情報こそかなめと主張し、情報局を充実させた。それが効果を発揮していたのだ。

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