ブルーライトニング 改訂版 第95章
連邦軍第二艦隊が起こした連邦軍司令部の激震はすさまじかった。連邦軍司令部の主流派は、対テロリスト対策のための連邦軍艦隊の構築を主導してきた。しかし、ロンドシティ防衛軍に拘束された第一艦隊司令部が、偵察映像の証拠を突きつけられ、テロへの荷担を認めるに至った。ここにおいて、連邦軍司令部の主流派の面目は潰れ、「マフィア」と呼ばれていた改革派の台頭は揺るがないものになった。
マフィアの指導部の一人、ボイド大佐はプレストシティへ向かう連絡機の中で、ここ数週間の劇的な変化に考えを巡らせていた。
「第二艦隊が裏切り行為に至ったのは偶然か?」ということがボイドの胸に引っかかっていた。先に攻撃を仕掛けたのが第二艦隊であるのは間違いない。戦場を記録していた様々な偵察映像、フォースネットの戦闘記録からも明らかだ。しかし、不意打ちを食らったはずの第七艦隊には全く被害がない。そのあとの第二艦隊へのたたみかけるような攻撃は、
連邦軍第二艦隊が起こした連邦軍司令部の激震はすさまじかった。連邦軍司令部の主流派は、対テロリスト対策のための連邦軍艦隊の構築を主導してきた。しかし、ロンドシティ防衛軍に拘束された第一艦隊司令部が、偵察映像の証拠を突きつけられ、テロへの荷担を認めるに至った。ここにおいて、連邦軍司令部の主流派の面目は潰れ、「マフィア」と呼ばれていた改革派の台頭は揺るがないものになった。
マフィアの指導部の一人、ボイド大佐はプレストシティへ向かう連絡機の中で、ここ数週間の劇的な変化に考えを巡らせていた。
「第二艦隊が裏切り行為に至ったのは偶然か?」ということがボイドの胸に引っかかっていた。先に攻撃を仕掛けたのは第二艦隊であるのは間違いない。戦場を記録していた様々な偵察映像、フォースネットの戦闘記録からも明らかだ。しかし、不意打ちを食らったはずの第七艦隊には全く被害がない。そのあとの第二艦隊へのたたみかけるような攻撃は、全く不意打ちを感じさせない。第七艦隊の攻撃にさらされるセレクターズの潜水艦隊を救うため、第二艦隊が第七艦隊に攻撃を加えたというプレスト海軍の主張は理解できるが、「第二艦隊は罠にかかった」というのがボイドの結論だった。証拠がたくさんあることも、十二分に準備を整えていたということだろう。むろん第二艦隊が罠にはまり、ぬれぎぬを着せられたとは考えていない。テロへの荷担は事実だったのだから、正体を暴かれたというのが正しいのだ。証拠を集めつつ、最後にとどめを刺すパーフェクトなシナリオを、誰が書いたシナリオかボイドには関心があった。
「スコット司令や川崎副司令ではないな。できれば首謀者と直接、話したいものだが」
その望みはかなったとボイドは思った。プレスト海軍基地に降り立ち、最初に設けられたスコット司令との会談の場に、第七艦隊司令の西郷の姿を認めたからだ。一通りの挨拶のあと、スコット司令がボイドの来訪を歓迎する言葉を述べた。
「遠路はるばる、お疲れさまでした。ようこそ、プレスト海軍司令部へ」
「プレスト海軍という呼び名もあとわずかでしょう。近いうち、プレスト防衛軍となりますからね」
最初からそのつもりだったのだろうか? 六年前に成立した現プレストシティ政権は、プレスト防衛軍から海上部隊を独立させてプレスト海軍を設立した。陸海空軍を統合するという連邦軍の防衛軍構想に逆行する動きではあったが、強大な戦力をもつ戦闘艦隊を管轄するにふさわしい人材をプレストシティ政権は集めたのだ。それほど大胆な政策を実現しうるほど、当時からプレスト防衛軍の凋落は明らかだった。そして、先の攻防戦から、その判断が正しかったことが明らかになった。テロに加担した旧プレスト防衛軍は解体され、テロに荷担したものは逮捕された。そして、プレスト海軍が新たなプレスト防衛軍として生まれ変わることになる。
「我々は、我々の仕事をするだけです。組織の名など、どうでもよろしい」とスコットは答えた。
「今回、第七艦隊が、第二艦隊を殲滅したことは連邦軍司令部は支持します。第二艦隊は明らかにテロに加担し、第七艦隊を攻撃してきた。テロリストに容赦は無用です。また、ご存じのように、第一艦隊のテロへの加担も明らかになりました。こちらはロンドシティが第一艦隊の司令部要員を逮捕し、テロリストとして処罰する方針です。連邦軍司令部としては、地道な証拠収集を行ってきたプレスト海軍、およびロンドシティ防衛軍に感謝するところです」
スコットは背筋を伸ばして、言葉を受けた。
「お役に立てて、光栄です」
ボイドは本題に入った。
「しかし、今後のことも考えねばなりません。第一艦隊と第二艦隊を所管していたラルゴシティは、テロへの加担には無関係だったと主張しています。しかし、艦隊司令部の人事を握っていたのはラルゴシティであり、無関係と主張されても信じがたい。加えて、先のフォルテシティの襲撃はラルゴシティのガバメント社が絡んでいることもプレスト海軍の偵察機がつかんでいます。彼らはでっち上げだと主張していますがね」
「そうでしょうね」とスコットは皮肉な笑みを浮かべて言った。
「それで、ラルゴシティがテロの黒幕として、今後、どのような行動にでるのか? 我々としてはどのような体制で迎え撃つべきなのか? あなた方はどのように考えているのですか」
スコットは西郷の発言を促した。
「第七艦隊司令を務める西郷です」
(やはり、この男が首謀者か!)とボイドは思ったが顔には出さなかった。
「ラルゴシティがどうでるかは、プレスト海軍情報局が探っているところですので、まだ、可能性を論じる段階に過ぎません」
ボイドは話を促す。
「それでも結構です」
「セレクターズの戦力、および第一艦隊、第二艦隊を失ったいま、ラルゴシティが実行しうる実力行使はロボットや既存の活動家を使ったテロリズムでしょう」
ここで西郷は一拍おいた。
「現在、ピースメーカーという平和団体がテロを実行し、民間の警備ロボットに鎮圧されるという事例が多発しています」
「確かに・・・」とボイドは頷く。
「鎮圧しているロボットはガバメント社の影響がある警備会社および、ガバメント製のロボットです」
「なるほど、出来レースか。それで?」
「従来はセレクターズを使って不安をあおり、軍事的需要を生み出し、供給を独占していたわけですが、その独占を阻む動きを潰さねば、ガバメント社は利益を享受できません」
「リヨン大統領や私たちは、その障害になり得るのか」
「そうですね。まずはリヨン大統領の排除。そしてマフィアの排除が行われ、ガバメント傀儡の政権および軍幹部の擁立がはかられるでしょう。そして、ガバメント社のシェアに食い込むローウェル社とダグラス社の排除でしょう」
「リヨン大統領の暗殺の可能性があるのか」
「はい」
「それで、最新鋭のアンドロイドとロボットを送り込んだのですか」
「むろん、リヨン大統領の意思でもあります」
ボイドは率直な印象を口にした。
「あの、子供のようなロボットに、それほどの力があるとは思えませんが」
「リヨン大統領は間近に活躍を見ていますので、そうは思ってはいません」
「確かに、大統領は彼らを信頼しています。あなた方のファントムを指揮するロボットは子供の姿をしたアンドロイドですね。あの大統領を暗殺から守ったアンドロイドとは会えますか?」
「会ってどうなさいます」
「好奇心ですよ。会って話をしたい」
「ソレイユとなら会わせられますが」
「マーサとは」
西郷は一瞬、言いよどんだ。
「それはできません」
「そうですか・・・ それは、残念です」
なぜ、できないのか。それに疑問を感じながら、ボイドは言葉を飲み込んだ。




