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ブルーライトニング 改訂版 第88章

 同じ頃、防衛軍がプレスト海軍の部隊を攻撃した事実を受け、レッドファントムは防衛軍施設へ突入した。

 本来は災害対応や救助を担うロボット部隊だが、副次的な戦闘任務にも対応する。

 施設内では、武装した防衛軍兵士が銃で応戦した。

「武装抵抗を継続する者は、テロリストと同等に扱う。投降せよ。抵抗を続ければ射殺する」

 なお抵抗を続ける者をレッドファントムのロボットはテロリストとして射殺した。レッドファントムの圧倒的な攻撃力が施設に残る兵の士気をへし折る。散発的な抵抗を排除しつつ、レッドファントムは施設の制圧を進めていった。


 だが、その最中、防衛軍基地の滑走路からシティ政府専用機が離陸した。

「反乱の首謀者・伊藤司令は確保できません。専用機で脱出した模様」

 指揮官ロボットが司令部へ報告する。レッドファントムの対人装備では、航空機を止める手段がなかった。

「それは捨て置け。まず防衛軍基地を完全掌握しろ」

 西郷は短く指示を返した。




 同時刻。シティ政府専用機・機内。

「……予想外に対応が早かったな。ギリギリだった」

 伊藤は政府専用機の豪華なソファにどっかりと腰を沈めた。とりあえず家族を連れて脱出できた。それだけで勝ちだと思えた。このまま専用機でラルゴシティへ亡命する――手筈は整っている。

「綾。プレストシティはドラグーンにめちゃくちゃにされる。ラルゴシティで改めて学校に入ればいい」

 綾は玲子を敵視し、誹謗中傷サイトまで作り停学処分となった。綾が自主的に退学したことが伊藤家のプライドを傷つけた。

「そうよ。それがいいわ」

 母親も夫に同調する。だが娘は顔を曇らせた。

「でも……」

 不安を拭えない娘に、伊藤は吐き捨てた。

「おまえを追い出した学校なんて、吹っ飛べばいい。いい気味だ」

 ピースメーカーの連中をそそのかし、ダグラス社と併せてミネルバ学園を攻撃させたのは伊藤だった。武器を供与し、用意周到に実行させたのだが、実行犯は学園の生徒を一人も殺せず、ただロボット達に制圧された。

 今度こそ、ドラグーンとその支援部隊がプレストシティを火の海にしてくれるはずだ。セレクターズのモルガン提督による攻撃作戦は完璧――伊藤はそう信じていた。


 一方、ドラグーン編隊。七機のドラグーンと三機の攻撃型ライドアーマー(有人攻撃用ロボット)はプレストシティに迫りつつあった。しかし、ドラグーンのコックピットで、指揮官クロトワは舌打ちした。防衛軍の攻撃部隊を撃破した海軍のドルフィンが射程外へ退避したからだ。

「それにしても、タイタンが出てきていない。これでは陽動が不発になってしまう」

 だが、それでもプレストシティへミサイルを撃ち込めば、作戦目的の半分は果たせる。防衛軍の攻撃力が削がれたとはいえ、自分たちの攻撃力でも十分な効果が出る。クロトワはそう踏んでいた。


「クロトワさん、2時と10時の方向に熱反応!」

 僚機からの報告でクロトワはモニターを確認する。地形の陰を縫って、人型ロボットが二体、飛び出してきた。

「来たか!」

 クロトワはライフルを連射した。だがロボットは身軽に射線を外し、先鋒の一機のドラグーンへ肉薄する。


「ぎゃあっ!」

 断末魔が一瞬だけ響き、途絶えた。

「なっ……?」

 コックピットをライトセイバーで貫かれ、一機のドラグーンが沈黙した。資料で見たことのある、青い機体。

「ブルータイタンというやつか……!」

 ドラグーンよりやや小ぶりだが、圧倒的な機動力。コックピットを失い、戦闘不能になったドラグーンを、さらにライトセイバーの一閃で上半身を粉砕し、機体を爆散させた。


 ブルータイタンのコックピットの中で、

「ふーん、有人型のドラグーンか」とアトスが独りごちる。その情報は即座に味方へ共有された。

「無人型に改造する手間を惜しんだな。思うつぼだ。プロメテウス、リーダー機を落とせ。なるべく派手にな」

 ブルータイタンとは違う、一機の異形のタイタンが、クロトワ機へ迫る。


「テロリストの命は保証しない」

 それは連邦軍の非情な宣言だ。もっとも、実質的にドラグーンを撃破できた例は少ない。


 ドラグーンのコックピットの中でクロトワは冷静に状況を読み取った。ドラグーンは七機で出撃していたが、すでに一機が落ちた。残るは六機。

 そして敵のタイタンは、五体。

「黒いやつはいない……。だが、ほとんどこちらに来ている。作戦は成功だ!」

 クロトワは高揚感を押し殺しつつ、迫る異形の青いタイタンと対峙した。数ではまだ優勢だ。なんとかなる。

 クロトワのドラグーンは至近距離でライフルを撃つ。だが異形のタイタンは軽くかわし、ライトセイバーを抜いて踏み込んできた。


「ぬっ!」

 クロトワはライフルを捨て、ライトセイバーを抜いて振り下ろした。だが、その一撃すらあっさり外される。異形のタイタンは、クロトワ機の腕を難なく切断する。

「なに!」

 クロトワは絶望のあまり息を呑む。モニターの中で異形のタイタンは、ライトセイバーを振り下ろす。

 僚機のパイロットが叫んだ!

「クロトワさん!」

 クロトワのドラグーンが縦に真っ二つにされ爆散する。コックピットは跡形もない。ドラグーンのパイロットたちに衝撃が走る。

「あいつら、俺たちを殺す気だ!」

 セレクターズのパイロットたちは震え上がった。


 残る五機のドラグーンへ、五体のタイタンが襲いかかる。仲間をいとも簡単に殺された動揺が、彼らの判断と動きを鈍らせた。抵抗は散発的で、連携は崩壊する。五機のドラグーンは、あっという間に破壊された。


 後続の三機の攻撃型ライドアーマには、ライトニングファントムとブルーファントムが群がり、絶え間ない攻撃で動きを止めていた。

 だが彼らの火力は小さい。防御フィールドに立てこもり、戦力温存を図るライドアーマを決定的に崩しきれない。


 指揮を執るゼムが命じた。

「退避しろ。プロメテウスが来る」

 一糸乱れずライトニングとブルーが退避すると、異形のタイタン、プロメテウスが踏み込み、ライトセイバーでコックピットごと一機を両断した。破壊力はゼムたちとは桁違いだ。続けて、アトスとポルトスのブルータイタンが残り二機のライドアーマを撃破する。ここで戦闘は終わった。


 ブルータイタンのコックピットから、アトスが司令部へ報告する。

「ドラグーンの制圧は完了しました」

「よくやった、アトス。部隊撤収の指揮を頼む」

 司令室からスコットが答える。

「了解」


 コックピットの完全破壊と、生存者がいないことを確認したポルトスが言った。

「それにしても、アトス。人間は脆いもんだね。殺されるとわかった途端、判断力がボロボロだ」

「いや、動揺しなくても脆いけどね」

 アラミスが淡々と続ける。

「玲子さんに害を加えるものは排除だ」

 アトスはそれだけ言った。結局のところ、それが彼らの行動原理だった。


 アトスは、ブルータイタンで初陣を飾ったルーナへ声をかけた。

「ルーナもよくやった。たいしたものだ。……とはいえ、マルスがやられるなんて想定外だな」

「人工頭脳は回収できたみたいだから、大丈夫だと思うけど」

 ルーナが答えた。マルスを回収したメタロイドは、すでに後退していた。

「まあ、あいつは設計上タフだ。大丈夫だろう」

 アトスは自分に言い聞かせるように、そう締めくくった。

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