ブルーライトニング 第16章 マルス対ドラグーン
ドラグーンとの戦いに思わぬ苦戦を強いられるニーナ。アルトシティに向けて発射された巡航ミサイルをマルスが追う!
マルスの指示が「リンク3」を通じて4機のホーネットに伝達される。だが、2機の攻撃はドラグーン3番機の防御フィールドに弾かれた。強力なフィールドを持つドラグーンは、戦闘機や戦闘ヘリの攻撃をほぼ無効化できる。原型のグリフォンと同様だった。
しかし3番機は、ホーネットを小型無人機と侮ったのか、防御を切り、対空レーザーを発射し、マルスのドルフィンとホーネットを撃墜しようとした。
「まずは、両足だ!」
マルスの号令に従い、地をかすめるように突入した2機がドラグーンを襲う。フィールドを切った隙を突かれ、膝関節を撃ち抜かれた3番機はバランスを崩し、前のめりに倒れ込んだ。
その背のコンテナから巡航ミサイル二発が発射される。即座に情報がデータリンクを駆けめぐり、ニーナからマルスに迎撃指令が届いた。
「マルスがミサイルを追います! 私たちは3番機を!」とノーマが翻訳してサムに伝える。
「よし、3番機は俺たちが仕留める。ノーマ、武器のコントロールを渡せ!」
「了解!」
マルスは2機のホーネットを伴ってミサイルを追撃。残りの2機は反復攻撃で3番機の対空システムを乱す。ホーネットでは致命打に至らない。背部コンテナからさらにミサイルを撃とうとする動きを、サムは見逃さなかった。
「させるか!」
サムはためらわず引き金を引いた。ドルフィンの大出力ビームが首後ろのハッチを貫き、爆炎が吹き出す。続けざまにコンテナを撃ち抜き、ミサイル発射機構を完全に破壊した。
「ノーマ! 発射されたミサイルは!?」
「マルスが追撃中です!」
高速で逃れるミサイルを、ドルフィンF型は圧倒的な加速で追いすがる。ミサイルは回避行動を取るが、その単純なパターンをマルスは瞬時に解析した。
「そんな動き、通用しない!」
ドルフィンとホーネットの一斉射撃で、2本のミサイルが空中で爆発した。監視していたミネルバも撃墜を確認する。
「巡航ミサイル、全弾撃墜」
「上出来だ、マルス!」とサムは返す。だがマルスは浮かれずに答えた。
「これからニーナの援護に戻ります」
ブラックタイタンと交戦中の2番機は、完全な無人機で、ニーナは思わぬ苦戦を強いられていた。
「セレクターズが無人兵器を使うなんて。槍を持ってくるべきだったわ」
サムはニーナの援護を指示するが、ノーマは拒む。
「ダメです。このドルフィンではあの対空防御を回避できません」
その時、戻ってきたマルスが4機のホーネットとデータリンクを再結合する。ホーネットの動きは再び鋭さを取り戻し、ドラグーンの迎撃を乱す。その隙にマルスのドルフィンが、ビームでドラグーンの右腕を吹き飛ばした。ニーナはそのチャンスを逃さず、サーベルの一撃がコックピットを貫き、2番機は崩れ落ちた。
帰投する編隊の中で、サムはモニターを見つめながら言った。
「あの2番機、しぶとかったな。ニーナはどう思う?」
「間違いなく無人機です。人間が操縦する機体だと思い込んでいたのは誤算でした」
「まあいい。アルトシティを守れたのが大事だ」
サムはマルスに声をかける。
「初陣はどうだった?」
「作戦成功はよかったけど。ミサイルを発射させてしまって、ごめんなさい」
「気にするな。撃墜したんだから問題ない。マルスを連れてきて正解だった」
マルスはふと問いかけた。
「テロリストが失敗したと聞いて、玲子さんは喜んでるかな?」
サムは少し間を置き、答える。
「アルトシティが無事と知って、安心したと思うよ」
サムは玲子の過去を語り始めた。四年前のテロで家族を失い、伯父である敷島博士に引き取られたこと。その後プレストシティへ移ったが、アルトシティは今も玲子にとって他人事ではないのだと。
「それで玲子さんは安心できるんですね」
マルスは胸の前で手を組み、つぶやいた。
「よかった。ぼくは玲子さんの役に立てたんだ」
サムは静かに微笑んだ。
「みんなの役に立ってるんだがな」
2026年8月2日加筆




