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ブルーライトニング 改訂版 第13章

プレスト海軍の極秘作戦「亡霊」の始まり、「暁作戦」にマルスが投入されることになる。


高野長官 プレスト海軍の長官。プレストシティ議会の重鎮の一人。

スコット大将 プレスト海軍総司令

サム・ダグラス大佐 プレスト海軍ロボット運用の責任者。



 サムはマルスの訓練のあと、川崎から事情を聞き、とりあえず、ケンを呼び出した。サムにとっては両親とは違った立場で接することができる経営陣の一人だった。

「呼び出してすまなかったな」と、サムはケンにわびた。

「いいよ、サムはいろいろ大変だろ。呼び出した理由はマルスのことだろう?」

 サムは口の端に笑みを浮かべる。

「察しがいいな。そのとおりだ。いったいぜんたい、マルスの契約破棄とはどういうことだ?」

 ケンは首を振った。

「あれは経営陣の決定ではないよ。スミス博士が騒いでいるだけだ。ソレイユの裁判とか、いろいろあるんでね。戦闘用アンドロイドを作ったという事実が、我慢できないんだよ」

「そんなことで、マルスを葬ろうとするのか」

 到底、受け入れがたいことだが、サムの立場では打つ手がない。

「サム、なんとかしてみせるよ。この件は俺や父さん、母さんに任せてくれ」

 サムは大きく息を吐くと、

「頼む」とだけ言った。今はそれしかない。

 それより、サムには大きな任務が待っていた。



 その夜、高野海軍長官により司令部要員が招集された。プレスト海軍総司令スコットのほか、副司令の川崎、主だった司令部要員も顔をそろえている。高野はプレストシティ議会の議員のひとりで、牧原市長の片腕と評される人物であった。

「先ほどアルトシティから、非公式に戦力派遣の要請が来た。西郷中将、暁作戦の準備は整っているか?」

 作戦の立案者であるプレスト海軍第7艦隊司令、西郷中将がそれに答えた。

「はい、人員の選出、装備の準備、すべて整っています。それから、作戦の指揮を担当するダグラス大佐から提案があります」

 西郷のあとを継ぎ、サムが発言を続けた。

「作戦を実行するにあたって、一つ、提案があります。完成したばかりですが、マルスを暁作戦に使わせてください。マルスなら、無人戦闘機ホーネットを効率的に使うことができます。今回の作戦に大きな力となりましょう」

 会議の参加者は一様にざわめいた。無理もない、開発されたばかりのアンドロイドを、すぐに実戦に投入するというのだ。

「そのマルスが欠陥品で、ダグラスインダストリーが返還を求めているというが、大丈夫なのか?」と、幹部のひとりが聞いた。サムは毅然として答える。

「家事用機能がないから欠陥品だと言うのです。そんなでたらめな話はありません!」

 高野がその場の流れを戻した。

「ダグラスとのもめ事は、ひとまず脇に置いておこう。スコット司令。マルスの実戦投入に関するあなたの意見は?」

「マルスの実機試験を見る限り、問題はないと考えますので、ダグラス大佐の提案を支持します。また、ホーネットの使用についても、ぜひ、許可願いたい。ホーネットを使った連携試験は成功裏に終わっています。マルスの高度なサブロボット制御システムなら、ホーネットを効率よく管制でき、派遣部隊の総合戦力を高めることになります」

「災害派遣訓練と称する暁作戦に、ホーネットを派遣する理由はあるか?」

 これには、西郷が答えた。

「広域探査のデモンストレーションを行えばいいでしょう。ホーネットは偵察能力も優れてますので、問題はありません」

 暁作戦の立案者でもある西郷司令の明確な回答に、高野は頷いた。

「わかった。ダグラス大佐、マルスとホーネットの使用を許可する」

「ありがとうございます」とサムは一礼した。

「調達部長、ダグラスインダストリーがマルスの引き渡しを要求した場合は、断固、拒否してください。私の責任において、いかなる手段も許可します。マルスを長官名で強制的に徴用する手続きもありです」

 咳払いをしながら、調達部長が答えた。

「現在、違約金の支払いをちらつかせて、交渉しています。経営陣はマルスの家事能力の有無は問題にしてませんので、クリアできるだろうと思います。ただ、今回の騒ぎはスミス博士が主導しているようなので、今後も注意は必要でしょう」

「よろしい」と、高野はこちらの問題は軽く片づくと判断した。

「情報局によると、数日後にテロリストがアルトシティを攻撃する可能性が高いと報告があった。これを妨害するため、災害対策支援を名目とする、アルトシティへの部隊派遣「暁作戦」を直ちに実行する」

 高野は起立し、サムに命じる。

「ダグラス大佐、君が提案した内容はすべて承認する。必ず、アルトシティを守り、君らの身の保全も忘れずに、作戦を遂行して欲しい」

 サムは起立し、敬礼して言った。

「承知しました。必ず成功させて見せます」

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