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123で、こっちを向いて。 3

「私の気持ちは両親に知られていてね。それでうちの父が張り切ってちょっと強引にね、話をまとめたの」


 どことなくばつが悪そうな顔で、環希さんは苦笑する。


「まーそれでオヤジもOKしたんだから、両想いだったってことだよねぇ」


 自分の親ながら中てられるわぁ、と美宇ちゃんは目をつむり、顔を手で扇いだ。


「両想いだったかどうかは正直わからない。すごく優しい人だから」


 そう言った環希さんの声が少し寂しげだった気がして、私は顔を上げる。


「とにかく、修平さんには感謝してるの。だから毎年、結婚記念日にはたくさんご馳走を作ったりして、御礼をするのよ。ありがとうの気持ちを伝えるために」

「あー、あれってそういう意味があったんだ」

「そう、感謝祭ってこと」


 笑いながら言って、環希さんは続ける。


「結婚記念日ね、もうすぐなのよね~。今年は結婚ニ十周年で──そうだ!」


 環希さんは何かを思いついたように手を叩き、私を見た。


「そういうパーティーのプランニングも、外商さんにお願い出来るのよね?」

「! はい、色んなスタイルをご提案出来るはずです」

「今年は思い切っておまかせしちゃおうかしら。ニ十回目ともなるとね、なんだかもうマンネリしちゃってね」

 私の仕事も忙しいし、と苦笑いしている環希さんに、美宇ちゃんも「いいんじゃん?」と頷く。


「いっつも凝ったテーマでびっくりするけど、たしかにそれが当たり前っぽくなっちゃってたもんね。ここらでさ、ずばっと目新しいことをやって、オヤジをびっくりさせちゃおうよ」


 イベントの企画の内容を考えて欲しいというご用命は、なかなか多いと佐倉に聞いていた。

 提案できる内容は様々で、用途や主旨に合わせたユニークなプランを立案出来るのが虎澤百貨店外商部の強みなのだとか。


 たとえば屋形船を手配したり、縁日を開催したり、外国のお客様へのおもてなしのために語学の堪能なケータリングのお寿司屋さんを紹介したり。

 海外へ出るのであれば、お子様のサマースクール付きのプランを手配して、ご夫婦でゆっくり出来る時間を確保したり、などなど。


 大事なお友達の、ご両親のアニバーサリー。

 私もお手伝いさせてもらいたい……! と、強く思うのだった。




 帰り際、玄関で私がスニーカーに履き替えていると、美宇ちゃんが口をとがらせる。


「何なら泊まって行けばいーのにさぁ」


 その横では、環希さんが呆れたように笑っていた。


「あはは。次回はぜひ泊まらせてね」


 嬉しいことを言ってくれる美宇ちゃんに答えていた、その時だった。

 美宇ちゃんの日に焼けた頬に小さな光がかかって、思わず私は声を出した。


「あ。この光って、綺麗だよね」


 美宇ちゃんが「ああこれね」と自分の頬を指さしてから、天井を見上げる。


「親父がこういうの好きで、つけてもらったんだっけ。家建てる時に」


 環希さんは「そうそう」と頷き、


「照明でアート作品を作ってる作家さんにデザインしてもらったのよね」


 照明のアートを作っている作家さんがデザインした証明だなんて。

 す、素敵……!

 天井を見上げてため息をついてから、私は慌てて顔を引き締めた。

 いつまでも間抜け面をさらしていないで、しっかり言うことを言って、お暇しなければ。

 

「ご用命の件──ご成婚ニ十周年パーティー。素敵なプランをご提案できるよう、がんばりますね」


 真剣な顔で言った私に、環希さんはにっこり微笑んだ。





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