夢のマイホーム
初めてその夢を見たのは、ちょうど仕事で物件に関わり、将来私も家が持てたらなぁ、などと漠然と考えた日だった。
真っ白な外壁、洋風の2階建て。
日当たりが良く、広いルーフバルコニー完備のまさに理想を体現したような家。
夢から覚めた後も興奮は冷めやらないほど素晴らしい構造で、将来家を建てるなら絶対これに似せようと思ったほどだ。
そこから決まって毎週火曜日、この家の夢を見続けた。
最初は1つも無かった物や家具が夢を見る度に追加されていき、それらは全て私の趣味嗜好に合う最高の逸品達だった。
大きな暖炉、大理石の浴槽、陽を浴び燦燦と輝くステンドグラス。現実的に考えて実現が困難な物も見当たったが、夢で味わう分には全く問題ない。
と、思っていたのだが。
しばらくして結婚した夫が、一念発起し会社を興したことで、私達夫婦は家を建てるのに潤沢な資金を手に入れることが出来た。
夫とは例の夢を見ている期間、既に付き合っていたので私の理想の家を知っている。
是非、それに沿った家を建てようと提案してくれた。
私は理想は理想、現実は普通の家でいいと何度も断ったが、付き合っていた頃から理想を知っていた夫は、本当に私の夢に出てきた家とほぼ同じものを建ててくれた。
家が完成し、家具が増えていく。
その度に私は、とても恐ろしくなった。
当初夫に1つだけ、不気味過ぎて伝えていないことがあったからだ。
ある火曜日を境に家の夢は見なくなった、までは話したのだが、その日最後に増えたもの。
それは私の理想の家に全く似つかわしくなく、唯一理想とは無縁のもの。
真っ黒な仏壇だった。
ここまで夢の通りに進むのなら。
おそらく、私はいつかの火曜日に死ぬのだろう。